ゲーミングノートPCレビュー「MSI GS70 2QE Stealth Pro」

GS70 2QE STEALTH PRO

デスクトップ級の性能。バッテリー駆動時もゲームプレイOK!

デスクトップ級の性能。バッテリー駆動時もゲームプレイOK!

3DMark

 まずは定番の3D Markから。今回、GeForce GTX 900Mシリーズの大きなウリのひとつが電力性能比の高さであることから、バッテリー駆動時の数字も取り、電源接続時のパフォーマンスと比較してみることにした。

 まずは電源接続時のパフォーマンスだが、“こりゃすごい”という結果になった。特に比較的高負荷テストとなる「Fire Strike」や「Sky Diver」については、デスクトップ用のGeForce GTX 680並のパフォーマンスが出ている。これなら今日出ているどんなPCゲームもフルHDの高品質設定で快適に遊べてしまうはずだ。

 つぎにバッテリー駆動時でのパフォーマンスだが、それぞれのテストでおおむね30%~40%程度のパフォーマンス低下が見られた。多少スコアが低くなったとはいえ、絶対値で見ればGeForce GTX 600M世代のゲーミングノートPCにおけるフルパワー相当だ。バッテリー駆動時でも充分にゲームを遊べそうな予感。これについては引き続きのテストでさらに見てみよう。

各種ゲームテスト(1080p、最高品質)

 使用したゲームの画質設定はいずれも1080p、最高品質のプリセットを使用した。電源接続時においては、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」、「バイオハザード 6」ともに“非常に快適”との評価だ。数字的にはデスクトップ向けGeForce GTX 680を搭載したシステムとほぼ同等である。「Battlefield 4」についても同様で、余裕の60fps超えを達成。

 バッテリー駆動時のパフォーマンス低下は「3DMark」よりも大きく、おおよそフレームレート半減といったところ。それでも上記2つは“やや快適”の評価であり、「BF4」でもコンソール版並みの30fpsは超えている。しかもこれは1080p、最高品質での値である。

 参考までに、「BF4」で品質の変更を試してみた、“高”で50fps以上、“中”で70fps以上となった。基準が最高品質なら、フレームレートが足りないときにいくらでも調整のしようがある。本製品なら、バッテリー駆動時でも満足のいくゲームプレイが楽しめそうだ。

バッテリー駆動時間を伸ばすBatteryBoostの効果

バッテリー接続時のピークは70W
BatteryBoostの基本はフレームレート制限
さらに各ゲームにバッテリー駆動時の最適設定を行なうことで駆動時間を効果的に伸ばす

 とはいえ問題はバッテリー容量である。上記の各ベンチマークではバッテリー駆動時のパフォーマンスを示ししたが、それはあくまでフルパワーで動かした際の値である。本製品の仕様では、バッテリー駆動時の出力は最大80W程度であるようで、いずれのテスト中もシステムの消費電力をモニターすると70以上80W以下に張り付いていた。

 本製品のバッテリー容量は60Whであるため、ゲーム中にずっと70W以上を使い続ければ50分足らずでバッテリー切れという計算だ。実際、「Battlefield 4」をフルパワーで動かしっぱなしにしてみたところ、50分弱でバッテリー残量がほぼゼロとなった。

 バッテリー満タンでも1時間も遊べないのでは心もとない。もうちょっとなんとかならないかということでNVIDIAが開発したのがコンパニオンアプリGeForce Experienceからアクセスできる“Battery Boost”機能である。これは端的に言うとバッテリー駆動時にゲームのフレームレート上限をつけ、バッテリー消費を抑える機能となる。フルパワー時に60fps以上出るゲームなら、もっと低いフレームレートに制限すればかなり消費電力が下がるはずだ、という理屈にもとづく機能だ。

 まずゲームの動作が軽くないと本機能はあまり作用しないため、GeForce Experience側で各ゲームにバッテリー駆動時の最適設定を適用する。すると、フルパワーでは余裕で60fpsを超える設定となる。「BF4」の場合、フルパワーで120fpsは出る設定となった。これにさらに、BatteryBoostで30fps制限をかける。

 こうしたところ、ゲームはBatteryBoost非使用時に70W張り付きだった出力が平均50Wまで落ちた。フレームレートは30fpsで完全固定であり、ゲーム専用機で遊んでいるようなもんだと思えば充分に快適に遊べる。バッテリーの持ちは2割ほど伸び、満タン状態から1時間10分程度のプレイが可能となった。

 もっとも、この機能は、もともと30fpsも出ないほど重いゲームには効きが悪い。1年前ほど前に出たGeForce GTX 870M世代のノートPCでは画質設定を下げてもそういったケースにぶち当たることが多く、BatteryBoostはほとんど機能していなかった。それが今世代では、GeForce GTX 970Mのハイパワーによりバッテリー駆動時でも余裕の60fps越えができるようになったため、そこに制限をかけるBatteryBoostにも大きな効果が出るようになった、というわけだ。

 このようにBatteryBoost機能にはきちんと目に見える効果がある。バッテリー駆動で2時間遊びたい、3時間遊びたい、いや1日じゅう遊びたいというゲーマーの欲は尽きないが、まずは1時間超えで良しとしよう。出先でちょろっと、新幹線や飛行機の中でちらっと遊ぶ分には、充分に実用圏内であるとは思う。

ゲームプレイを支える豊富なツールをプリインストール

「Dragon Gaming Center」では3つのパフォーマンスプロファイルをワンクリックで切り替え、騒音・発熱とパフォーマンスのバランスを指定できる
「SteelSeries Engine」でキーボードの動作を設定
配信先サイトを柔軟に選べる「Xsplit Gamecaster」
付属の「Sound Blaster Cinema 2」ツールでゲーム向けのオーディオプロファイルを簡単に設定可能

 ここから先はMSIのゲーミングノートPC製品にほぼ共通の機能となるが、本製品にはゲーム性能を引き出すためのツールが多数プリインストールされている。

 その中心となるのがMSI謹製の「Dragon Gaming Center」。本ツールではパフォーマンスモニタ機能、各ゲームや関連ツールのランチャー機能を利用できるほか、GTX 900世代向けに新規実装された「SHIFT」機能によって、電源接続時の発熱・騒音とパフォーマンスを調整するためのプロファイル選択が可能だ。

「Green」、「Comfort」、「Sport」と3種類用意されたプロファイルは、もちろん「Sport」で最大パフォーマンスを引き出す。ただ、それでファンがやかましいとか、本体が熱すぎる(実際は困るほど発熱しないのだが)と思うなら、「Comfort」以下のプロファイルに切り替えることで、システム全体のパフォーマンスが若干割合落ちるかわりに、より静音と低温の環境を手に入れることができる。この「SHIFT」機能は「Dragon Gaming Center」からだけではなく、「Fn」+「F7」キーを使ってワンタッチで切り替えられるため便利だ。

 そのほか活用したいのは、本製品に搭載されたキーボードをコントロールする「SteelSeries Engine」だ。このツールを使えばキーボードの各ボタンに任意のマクロを割り当てたり、LEDの光り具合を好みに調整することができる。手放せないツールになるだろう。

 また本製品には最近のMSI製ゲーミングノートPCではお馴染みの、ゲーム録画・配信専用ツールである「Xsplit Gamecaster」が付属する。このソフトは月間サブスクリブション制の有料ソフトなのだが、本製品には6カ月の無料期間が付属している。録画はGeForce Experienceから有効化するShadowPlayのほうが使い勝手がいいが、配信機能に関して言えばXsplitのほうがずっと使いやすい。配信に興味がある人は是非使ってみよう。

 といった感じで本製品は、高性能なハードウェアに加えてゲーム関連ツールもはじめから充実しており、実に使いでのあるゲーミングノートPCとなっている。特にパフォーマンス面ではデスクトップPCに匹敵し、バッテリー駆動でもハイエンドゲームがきちんと遊べるほどの充実ぶりである。それが21.8mmの薄型筐体に収められているのだ。20万円そこそこという価格を考えても、今世代のゲーミングノートPCの中でトップレベルの一品であることは間違いない。さらに今後、12月以降にレッドとシルバーのカラバリ展開も予定されているというから楽しみだ。

 いよいよコアゲーマーがデカくて重いデスクトップPCを離れる時期がやってきたのかも。本製品を試用しつつ、そんなことを思った。

(佐藤カフジ)