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“紙の世界”を舞台としたPS Vita「Tearaway」プレビュー&インタビュー
PS Vitaを突き抜け画面内に指が出現! アイデア満載のアクションアドベンチャー
(2013/2/2 09:48)
SCE Asiaが2月1日に開催した、プレス向け体験会「The PlayStation Asia Media Session at Taipei Gameshow」では複数の欧米産タイトルが紹介されたが、本稿ではPS Vita「Tearaway」を取り上げていきたい。
「Tearaway」はPS Vitaの機能を活かし、“紙の世界”に住む「メッセンジャー」をプレーヤーが助け、力を合わせて進んでいくアクションアドベンチャーだ。面白いのは、現実世界とゲームにの紙の世界がリンクしているところで、PS Vitaの背面パッドに指を触れると、ゲーム内の紙を突き破ってプレーヤーの指が出現したり、スクリーンに息を吹きかけるとゲーム内に風が吹いたり、様々な干渉が可能なのだ。
ゲーム内の主人公と、外の世界のプレーヤが力を合わせて進んでいく冒険
「Tearaway」のタイトルの解説を行なったのは、開発元のMedia MoleculeのJames Spafford氏。「Tearaway」では封筒に手足がついたキャラクター「メッセンジャー」が紙の世界を冒険する。台湾での発売は2013年秋を予定し、日本発売は未定。
紙の世界とは、全てのオブジェクトが紙による立体工作でできた世界だ。生き物は箱を組み合わせたような形で、のり付けされた目鼻がついている。丸まったり、切り込みを入れたり、ペーパークラフトで全てのオブジェクトを作ったような世界である。メッセンジャーは封筒の中にプレーヤーへのメッセージが入っている。このメッセージを届けるための冒険がはじまるのだ。
本作を作るに当たり開発者達は様々な方法で世界を作り上げていった。コンセプトアートを描くだけでなく、実際に様々なペーパークラフトを作ってみたり、紙を巻いてみたり、切り抜いた紙を色々な形で貼り付けてみたり、実際の風景を紙で作ってみたり、これまで様々な国での紙を使った表現の歴史を学び直し、世界を構築していったという。
ゲームの中の紙の世界に、プレーヤーはPS Vitaを通じて干渉できる。背面パッドに指を触れると紙の世界の地面を突き破って指が出てきたりする。その指でオブジェクトを回転させたり、敵をはじいたりもできる。またある場面ではPS Vitaを傾けると世界そのものの傾斜が変化したり、プレーヤーが画面に向かって声をぶつけると、世界がその声で揺れたりする。プレーヤーは“神のような力”でこの世界に干渉できる。
メッセンジャーの旅は危険に満ちている。ずっと身体の大きなモンスターに襲われたりもするのだ。プレーヤーはメッセンジャーを操作するだけでなく、様々な方法でこの世界に干渉し、メッセンジャーの旅を助けていく。暗い森や、大きな都会、切り立った山々なのステージは紙を使った多彩な表現によって描き出される。「今回はいくつかの場所を短めに体験してもらえます。紙の世界での冒険を楽しんでください」とSpafford氏は語った。
世界を見ているだけでも楽しい、アイディアたっぷりの冒険フィールド
体験会では複数のステージが体験できた。それぞれコンセプトがはっきりしており、本作の多彩なアイデアの一端に触れることができた。ゲームの基本はメッセンジャーを操作する3Dアクションだ。ちなみに、マルチプレイに関しては未発表だ。
ジャンプボタンでオブジェクトを飛び越え、ジャンプボタンを押しっぱなしだメッセンジャーは身体を丸め、コロコロと転がることもできる。操作感は軽快でレスポンスもいい快適なアクションが楽しめる。
思わず笑みが浮かんでしまうのは紙の組み合わせで構築された世界だ。花や木、草むらといったオブジェクトはもちろん、丘や川といった地形も全部紙でできている。色の違った紙を貼り付けただけで表現されてる「水たまり」に足を踏み入れると波紋のような形の神が現れるのが特に面白かった。ねんどを使う「クレイアニメ」的な手法も取り入れられていると感じた。
最初は「ウェンディゴ」という怪物に追いかけられる展開が多いステージで逃げ回るアクション性の高いゲームが楽しめた。ウェンディゴは真珠が好物で、真珠を投げると追いかけていく。これを使って罠に誘い込んだりしてウェンディゴから逃れていった。一見移動できないようなところでも、壁に“ノリ”が塗ってある場合があり、ここはでは足を貼り付けることで垂直な壁も登れる。
次のステージではPS Vitaを傾けてボールを転がしてスイッチを押し、メッセンジャーを前へと進めていく。デバイスそのものを傾けボールを転がすというアクションは他のゲームでもあったが体験できたステージでは、傾きを調節しボールを1カ所にとどめながらメッセンジャーを操作することで突破できた。傾きとスティックを併用するのが新鮮だった。
もう1つのステージではメッセンジャーにアコーディオンが手渡された。このアコーディオンは“風”を生み出すことができ、Lで吹き飛ばし、Rで吸い込むことができる。敵を吹き飛ばしたり、プロペラのオブジェクトを回して仕掛けを操作するなど、パズル的要素の強いゲーム性が楽しめた。全体的に、世界を見て回るだけでも楽しい、もっともっとプレイしたくなるアクションゲームだと感じた。
ゲーム内と現実世界を行き来する手法を模索しながら組み上げていくゲーム性
インタビューはJames Spafford氏とWWS XDev StudioのRobert Karp氏にゲームの様々な質問をしてみた。本作に紙の世界を選択したのは、「PS Vitaの背面のタッチパッドのアクション」がアイディアの最初だという。PS Vitaを突き抜けて、ゲームの画面内に自分の指が出てきたら楽しいと考え、突き破るための“柔らかで薄い世界”を考え紙を選んだという。
「紙を利用するということには人類は長い歴史を持っています。その文化を作品にたくさん使っています。一方私達のオフィスにも紙が溢れていて、『Tearaway』の世界はすでにオフィスの中にあったのか、とも思いました」とSpafford氏は語った。
ゲーム内では様々なアイディアが詰め込まれているが、オブジェクトの使い方など、スタッフの説明を受けなくてはわかりにくい部分もあった。プレーヤーのガイドに関しては現在検討中であり、良い方法を模索しているという。1つのギミックを学んでそれを応用し、さらに組み合わせて楽しめるようなプレーヤーが成長していく様な方法を模索しているという。
ギミックに関しては「使いすぎないこと」も考えているという。持っている機能をあらん限り無理矢理使おう、というのではなく、必要に応じて使う。機能に引っ張られてゲーム性がおかしくなってしまうということは避けたいという。また、「PS Vitaに声を出して敵を倒す」というギミックは、電車内などではできない。声だけでない方法でもゲームが進むなど、常に色々な検討をしているという。
トレーラームービーではPS Vitaのカメラで外のものを取り込みゲーム内に反映させるというギミックもあった。ゲーム内の動物の体表にカメラで取り込んだ模様を貼り付けることができる。それだけではなく、ゲーム内のキャラクターなどを実際に作れるペーパークラフトとしてプリントアウトでき、ユーザーが現実世界に工作で生み出させるという。理想はカメラで取り込んだペーパークラフトをゲーム世界に出現させたいが、方法を模索中だという。
ここから両氏は本作のコンセプトアートを見せてくれた。CGで描いたり、鉛筆で描いたり、実際にペーパークラフトを作った人もいる。また、メッセンジャーに関してもいくつものアイディアを盛り込むなど試行錯誤を繰り返してゲームを制作しているという。
「Tearaway」はトレーラーを見てゲームに強く引き込まれ、実際に触ってみて面白さを実感することができた。次はどんなものを見せてくれるかとてもワクワクさせてくれる作品だ。これからさらに作り込みが行なわれていくなかで、楽しさはさらにさらにアップしていくだろう。早く製品版をプレイしたい。
Tearaway (C) 2012 Sony Computer Entertainment Europe. Published by Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Media Molecule.
“Tearaway” is a trademark of Sony Computer Entertainment Europe. All rights reserved.