E3 2011レポート

スクエニ、「TOMBRAIDER」プレビュー&インタビュー
新たなララ・クラフト像・冒険を提示、“再起動”を目指した最新作


6月7日~9日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 株式会社スクウェア・エニックスの新作タイトル「TOMBRAIDER」は、“シリーズの再起動”を目指して作られるアクションゲームだ。PS3/Xbox 360で、2012年の発売予定だ。E3では、デモプレイとシニアアートディレクターを務めるCRYSTAL DYNAMICSのBrian Horton氏にインタビューを行なった。

 前作までのプレーヤーは「TOMBRAIDER」でのララ・クラフトを見たとき誰もが、「今作のララは本当に今までと同一人物なのか」と思うだろう。本作のララは、弱々しく、血や泥で汚れており、危険の前に嘆き、愚痴る。冒険を楽しむのではなく、生き残るため前に進んで行く。

 「TOMBRAIDER」では“誰も見たことのないララ・クラフト”が描かれるという、これまでの強靱で、セクシーなララのイメージをがらりと変える本作は、どのような想いで生み出されたのだろうか。



■ 共感を生む感情表現、広大な場所を冒険する要素など、これまでとは違った要素を多数盛り込む

血や泥で汚れたララ。閉塞感のある表現など、これまでと違った演出も盛り込まれている
ロスを助け、安堵の表情を浮かべるララ。共感を生む感情表現だ

 デモプレイでは、「経験と強さを身につけていくパート」と、「広い空間を自由に歩き回れるパート」の2つが紹介された。「経験と強さを身につけていくパート」の場面そのものは、マイクロソフトのカンファレンスと同じ物だったが、より細かく説明が行なわれた。

「TOMBRAIDER」のララは21歳。経験豊かな船長「コンラット・ロス」に導かれて最初の冒険に出るが、謎の嵐に巻き込まれ船は転覆、ララは海中に投げ出され、意識を失ってしまう。気がついたララは、自分が布に包まれ、逆さ釣りにされているのを知る。このパートは、ゲームの冒頭であり、プレーヤー自身が、基本的な操作とゲームでの駆け引きを学んでいく事になる。

 本作の目指す「ララの感情をプレーヤーが共有する」という要素は、冒頭から強くアピールされている。宙釣りにされているララは体を揺らし炎を体の布に燃え移らせ、脱出に成功するのだが、落下した衝撃で木片を腹部に突き刺してしまう。腹部から木片をひき抜いたララは大きな悲鳴を上げる。本作のテーマは「サバイバル」であり、ララは置かれた状況におびえ、怒り、自らの境遇を嘆きながら、生き残るために進んでいく。

 感情をむき出しにするララの表現は「生きているキャラクター」であることをプレーヤーに印象づける。また、水に首までつかりながらなんとか顔だけを出して進むシーンでは閉塞感を強調し極端にカメラがアップになり、島の住人に襲われるときにはララを前から見た視点になるなど、カメラワークも工夫されている。

 このパートで学んでいくのは、「火と水のパズル」だ。本作ではオリジナルのゲームエンジンにより、自然な物理表現を可能にしており、自然な重力表現、物を火に近づけると燃え移ったり、リアルな水の流れを再現している。水の流れを利用した仕掛けや、可燃物を燃やして道を造ること、赤い樽に火を付けると爆発する事などを学んでいき、組み合わせて進んでいく。

 この時にララの能力としてプレーヤーの前に「サバイバル・インスティンクト」という能力が提示される。この能力を使うと視点が灰色になり、特定の物だけがオレンジ色に変わる。これにより何をすればいいかが明確になり、パズルのヒントが提示される。ララの冒険者としての資質を表す能力だ。今回ハイライトされるのは「燃える物」だが、状況とララの経験で変わるという。

 ステージ後半は、崩れる洞窟からのハイスピードの脱出劇となる。指示が出る操作を素早く行なうことで、ララは岩をさけたり、崖をよじ登ったり激しいアクションを行なう。カメラワークと音楽、ララの声で、ぐっと引き込まれるシーンだ。

 続いて場面が変わり、「広い空間を自由に歩き回れるパート」となる。冒頭、ララはロスと再会するが、ロスはけがを負っており、目の前で倒れてしまう。ララは彼を助けるため、狼が潜んでいる場所での探索を決意する。ロスを見つけたときの安心した表情、倒れたときの狼狽ぶり、そして困難に立ち向かう緊張した顔。ララの表情はめまぐるしく変わり、最後の決意では、まだ秘められた強さの片鱗がのぞく。

 このパートではシリーズ初となる広大な空間を歩き回れるという要素が紹介された。ララの優れた身体能力を実感できるシーンでもあり、谷間に造られた建造物を、ララはジャンプを駆使して、移動していく。現時点では進めない場所もあり、ララが新たな能力に目覚めたとき進めるようになる。

 さらにこの場所は1度の冒険で通り過ぎる物ではなく、何度も戻ってくる。ロスを助けることでベースキャンプを得たララは、ここを拠点に様々な場所へ何度も行くことができる「HUBシステム」が今作の大きな特徴だ。

 ゲームでは、進めることでララが身につけていく「サバイバルスキル」、いろいろなところを何度も探索する「ファストトラベル」、そして現在は明かせない「サルベージ」という要素が重要になっていくという。ララの表現だけでなく、ゲームシステムにも新しいチャレンジを積極的に行なっている作品になるとのことだ。


体を縛る布を火を付けて燃やす。落下したララは木片を腹に突き刺してしまう。右は火と水を組み合わせたパズル



■ 新たなララ像の構築を目指す。謎の島では日光で取材した日本要素にも注目

シニアアートディレクターを務めるCRYSTAL DYNAMICSのBrian Horton氏
「ドラゴンズトライアングル」という船が消息を絶つ謎の海域にある島。ここからの脱出が目標となる

 シニアアートディレクターを務めるCRYSTAL DYNAMICSのBrian Horton氏へのインタビューで最初にぶつけた質問は、「ララをなぜか弱い存在として描く事になったか」というものだ。「TOMBRAIDER」を見たとき、誰もが感じる疑問だ。

 Horton氏は「ララは世界的にファンを獲得したキャラクターだが、シリーズを重ねて、どんどんプレーヤーが共感できない存在になってしまっていた、だからこそ彼女の原点に戻り、成長していくキャラクターにしたかった」と語った。ララの成長と言うことで、本作の終盤では、今作のララも終盤ではシリーズのようなスーパーヒーローになってしまうのだろうか? Horton氏は「そうではない」と答えた。

 世の中には色々なヒーロー像があり、今作のララは、おびえ、怖がりながらも困難に立ち向かっていく、人間味を持たせたキャラクターを目指し、今作をきっかけに新しいララ・クロフト像を再構築していくという。「以前のキャラクターとバランスを持たせつつも、もっと実在を信じられるキャラクターにしたい」とのことだ。

 加えて、「TOMBRAIDER」のララで気になるのは顔の造形である。目が細く、肌が浅黒く東洋系に見えるデザインだと感じた。Horton氏は設定的にはララはイギリス人だが、世界中の人に共感してもらえるように、東洋系や、ラテン系にも見えるデザインとなっていると語った。

 こういった新たなララ像を提示した上で、Horton氏は「TOMBRAIDER」でのメインテーマは、「サバイバル」だと語った。今作のララは、今までのように宝を探すために冒険をしているのではなく、生き残るために困難に挑戦していく。目指すのは「島からの脱出」だ。冒険の目的そのものも、これまでの作品とは違うものになっている。

 ちなみに、この島は「ドラゴンズトライアングル」という船が消息を絶つ謎の海域で、日本のすぐ近くにあるという。このためか、島にはアジア風の灯籠があった。Horton氏は文化のリサーチのために、日光へ行き2,000枚ほどの日本の景色を撮影し、本作に活かしているという。日本では、草木や山の線などの自然と、寺院などの建造物の調和が特に素晴らしく感じたとのことだ。

 ゲームシステムにも聞いてみた。今回のデモでは、“Day”という単位で冒険が区切られ、時間で状況が変化していった。開発ではこの展開を「サバイバルジャーナル」と呼んでおり、毎日新たな冒険が提示される。今作では、「HUBシステム」により様々な場所に移動できるが、いきなり複数の場所が提示されるのではなく、ゲーム内のストーリーと共に1つ1つ新しい場所が登場していく。登場した場所は、何度でも探索できる。

 既存の場所を探索するメリットは、ララの能力のアップグレードや、アイテムの獲得だ。ララを成長させることで、既存の場所でも行けなかったところに行けるようになる、具体的な成長の方向はまだ明かせないが、ララをどう成長させるかはプレーヤーが選択できるという。

  ララの冒険者の資質を表わすサバイバル・インスティンクトはプレーヤーに対してハイライトでヒントを提示するが、どう使うかまではわからない。ヒントに対して、試行錯誤が必要となる。また、サバイバル・インスティンクトには回数制限などはないが、クールタイムが設定されていて連続使用はできないとのことだ。

 成長要素としては、プレーヤー自身の成長もある。デモプレイでは、ララは高いところも物怖じせずにジャンプし、壁を蹴って進むなどのアクションも華麗に行なっていたが、これは、プレイを重ねたからこそできる操作だと感じた。Horton氏は「ララは優れたポテンシャルを持っているが、プレーヤーがそこに気づかなくては、思い切ったアクションはできない。ゲーム内でララと成長することで、ララは冒険者としての能力を発揮できるようになる」と語った。

 最後にHorton氏は、「これまでララを愛し続けていただき、ありがとうございます。私達のララの新しい冒険を是非楽しんでください。以前からのファンの方には勿論、新しい方にも楽しんでもらいたいと思います」と日本のファンへのメッセージを語った。


左の恐怖におびえるララは、冒険を重ねることで、、中央ような表情へと変わっていく。右は、崩壊する洞窟からの脱出シーン

TOMB RAIDER (C) 2011 SQUARE ENIX LTD. Published by Square Enix Co., Ltd. CRYSTAL DYNAMICS, the CRYSTAL DYNAMICS logo, EIDOS, the EIDOS logo, LARA CROFT and TOMB RAIDER are registered trademarks or trademarks of Square Enix Ltd. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are registered trademarks or trademarks of Square Enix Holdings Co, Ltd.

(2011年 6月 11日)

[Reported by 勝田哲也]