イメージエポック、ゲームパブリッシャー事業に参入
PSP「最後の約束の物語」、「ブラック★ロックシューター THE GAME」など新作を多数公開


11月24日 発表


 株式会社イメージエポックは、ゲームパブリッシャー参入および新作に関する発表会「JRPG宣言決起会」を都内にて開催した。会場には業界関係者、流通、招待された一般客など多数の方々が来場。代表取締役の御影良衛氏から、2011年以降に発売予定の新作および2012年以降の施策などが説明された。

 御影氏は、まず発表会タイトルの“JRPG”に言及。「単純明快に“Japan RPG”の略称。クラシックスタイルとも呼ばれ、海外では若干否定的な意味合いで使用されることが多い。非常に悔しいと思っていて、日本のJRPGにもいいところはたくさんあるぞ! ということで、普遍的な面白さ、新しい可能性を模索できると信じている」とコメント。関連タイトルについては、ポータルサイト「JRPG」にて情報を順次発信するとしている。

 パブリッシャー参入については「参入を決意したのは、最近のコンシューマ業界、ゲーム業界は、ここのところ少し元気がないというか。新作があまり出ていない、売れていないという状況。ぼく自身、RPGが大好きで、RPGを作りたいがために会社を興したようなもの」といい、スクリーンにて'98~2010年までのオリジナル新作RPGタイトル数の推移(累計3万本以上の販売タイトル限定)と、2008~2010年における同社開発タイトル販売数シェアの各データを提示。厳しいとされる新作RPG市場で、一定のシェアを確保しつつ成長曲線を常に描いている点を強調した。

 ゲストで登場した株式会社ソニー・コンピューターエンタテインメントジャパン プレジデントの河野弘氏は「イメージエポックさんがJRPGを宣言されて、立ち上げる。おおいにチャレンジをするということと、もうひとつは新作をPSPで出していただける。イメージエポックさんのお名前はディベロッパーとしては存じ上げていた。これまで手がけられたタイトルの企画力、クオリティの高さ。それに加えて2本の新作。そこにも、JRPGを確立したい、誇りを取り戻したいという強い志(こころざし)、意識を感じる。プレイステーションプラットフォームにまた新しい仲間が加わったことを、私たちは本当に喜んでいる」とコメントした。

 後述するPSP「最後の約束の物語」、「ブラック★ロックシューター THE GAME」の流通対応については、株式会社セガが担当。会場には、セガ 国内リージョン統括本部 CS事業部 国内営業部部長の野本章氏が登場。「セガとイメージエポックさんは、結構長い間柄。改めて申し上げますが、イメージエポックさんのパブリッシングタイトルはセガが預からせていただきます」とコメント。会場では、セガがパブリッシング、イメージエポックが開発を手がける新作が発表された。生オーケストラによるイメージ楽曲の演奏とラフスケッチ1枚が公開されたほかの詳細は不明。発売は2011年予定で、近日中に続報がリリースされる予定だという。


御影良衛氏河野弘氏野本章氏


海外ではネガティブな響きを伴うことが多いJRPGだが、それを覆すべくイメージエポックはパブリッシャーとして新たな1歩を踏み出す


シークレットタイトルは、セガ販売、イメージエポック開発による完全新作。オーケストラによるイメージ楽曲の生演奏とともに公開された1枚のラフスケッチ。「2011年発売予定で、近々情報も出せるのでは(御影氏)」という


(C)Imageepoch



■ PSP「最後の約束の物語」

喜多村英梨さん

 JRPG第1弾となるダークジュブナイルファンタジー。コマンド式のRPGで、かなり高めの難易度設定で、ストーリーも「物語としてはド直球。といっても、王道の『勇者が勝つぞ!』といった感じではなく、本当に“最後の1日”の物語。1日で、すべて……仲間、家族、一緒に住んでいる人々が滅ぼされてしまうという世界設定になっている(御影氏)」とシビア。プレイそのものは、ナビゲーションがあるため初心者でも十分操作できるという。

 ゲームコンセプトは“ロストゲーム”。御影氏は「ロストゲームとは、何か。RPGで宿屋だったり、何かアイテムを使うと“生き返る”という設定を全部とってしまおうと。とある一定条件を満たすと、キャラクタが完全にロストしてしまう設計になっている。ふたつのポイントがあり、まずエンディングがマルチに近い設計。キャラクタがロストすると、物語が変わる。最初に決められた人数しかいないので、それが何人残ってエンディングに到達するのか。一言で言ってしまえば、全員残ってクリアできれば、なかなか凄い。逆にいうと『このキャラクタだけ殺さないで最後まで行きたい』というスタイルであれば、なんとかクリアできるんじゃないか」と説明した。

 会場には、リゼット役を演じた声優の喜多村英梨さんがゲストで登場。「収録のとき、スタッフの方々に『リゼットは影のヒロイン。システム音声で常に声を聞いている状態なので、作品のなかで1番声を聞くキャラクタになります』と言われた」とコメント。御影氏によれば、ヒロインと並ぶ重要な役割につき、スタッフともども悩んだ末に喜多村さんに白羽の矢を立てたという。リゼットのイメージについて聞かれると「非常に凛とした女性。歳相応というよりは、ナビゲーション、仕事として任務を遂行する、強い意志を持った女性。台詞、お芝居のニュアンスも、非常に淡々とした感じになるが、ちょっとした人間らしいところも。心配したニュアンスだったりとか。そういうところで、可愛らしさ、人間っぽさが垣間見える声にもなっています」とコメント。2011年4月28日発売予定で、価格は6,279円。早期購入特典として、新規描きおろしイラストなど設定資料集を添えた「Art Graph」と、後述のJRPG第2弾「ブラック★ロックシューター THE GAME」プレビュー映像が用意される。



(C)Imageepoch



■ PSP「ブラック★ロックシューター THE GAME」

安藝貴範氏

 JRPG第2弾。タイトルにある「ブラック★ロックシューター」は、イラストレーターのhuke氏が描いた1枚のイラストから誕生したキャラクタ。ゲストで登場した有限会社グッドスマイル・カンパニー代表取締役社長の安藝貴範氏によれば「ニコニコ動画発といってもいい、大人気キャラクタ。hukeさんがPIXIVに投稿した1枚の絵。それに感銘を受けたスーパーセルの作曲家ryoさんが曲をつけた。それに感銘を受けたhukeさんが、オリジナルPVを作成し投稿された。これがオリジナルで、今370万回くらい再生されている。フィギュアも大ヒットして、全部あわせると25万個くらい売れている。来月にはBlue-ray Discでアニメーションがリリースされる」といい、今後さらなる発展が期待されているコンテンツだ。

 御影氏によれば、制作のキッカケはイメージエポックの新納一哉氏。hukeさんが新納氏に「『ブラック★ロックシューター』(のゲームを)作って欲しい」と昨年の早い段階で持ち掛け、御影氏に「社長、うちで作っていいですか」と提案。ゲームは、西暦2032年の地球が舞台。「異星からの使者と、彼らが率いるメカによる侵略。人類は、対侵略者用の最終兵器「ブラック★ロックシューター」を作り上げた。彼女が目覚めたとき、人類は滅亡寸前の状況にあった」というストーリーになっている。

 本作は「ブラック★ロックシューター」の派生作品だが、御影氏は「僕らは『ブラック★ロックシューター」と言わず“B★RS”という言葉を使わせていただいています」と説明。これは、新納氏をはじめとするスタッフが「オリジナルをリスペクトした、新しい世界観をユーザーの皆様に提供していきたい。『ブラック★ロックシューター』は、僕たちのゲームだけではなく、これからも色々な広がりがユーザーさんの手によって作られていくと思う。その中の一助になる提案になれば」と考えているからだという。詳細は明らかにされなかったが「PSP「ラストランカー」の戦闘システムを見てもらえばわかるとおり、新納は必ず“変わったこと”をやる(御影氏)」といい、非常に期待が持てる作品になりそうだ。2011年夏発売予定で、価格は通常版が6,279円、huke氏描き下ろし特製BOX、オリジナルフィギュア(figma「ブラック★ロックシューター(white:仮)」、アートワークス(仮)、リミテッドサウンドトラックが同梱される限定版が10,479円。



会場ロビーにはグッドスマイル・カンパニーのフィギュアが展示されており、来場者から高い関心が寄せられていた

(C)huke/B★RS Project (C)2011・GSC / AG-ONE / Imageepoch



■ PS3、PC、スマートフォン「シュバリエ・サーガ・タクティクス」

森川亮氏

 「2010年度よりオンライン開発に参入。JRPG進化の過程で、オンライン連動タイトルが今後さらに増えることは避けられない。しかし、日本国内でネットワークに対応できる技術を持ったコンシューマディベロッパーは多くないといわざるをえない。そこでイメージエポックは、早期に取り組むための施策」と前置きして公開されたタイトル。

 「シュバリエ・サーガ・タクティクス」は、PS3、PC、スマートフォンの3キャリア連動を目指した作品。ゲーム部分はイメージエポック、ネットワークは株式会社NHN Japanがそれぞれ開発を担当。NHN Japan代表取締役社長の森川亮氏は、本作について「ポイントは3つ。ひとつめは、今までのブラウザゲームは、地味、ちょっと難しいというイメージがあったが、ぼくらが作るのは“次世代型”ブラウザゲーム。グラフィックスや世界観はコンソールゲームに近いものを実現したい。ふたつめは、今流行りの“ソーシャルゲーム”の要素を取り込んでいる。ゲームは時間がかかると思われる方も多い。もちろん時間をかける本格的な要素もあるが、ちょっとずつ遊べる要素を盛り込む。これはスマートフォン向けサービス実施後に導入したい。みっつめは、PS3、PC、スマートフォン、すべてが連動した世界初の新しいゲーム。単なる新作ではなく、それぞれの価値を連携させることで新しい世界を提供したい」と説明した。

 御影氏は「開発のキッカケは、2008年の『ルミナスアーク』。Wi-Fi対戦をつけて北米でリリースしたら、某サイトで1位をとった。なぜ1位と疑問に思っていたら『シミュレーションRPGで対戦できるとは思わなかった』というコメントを頂戴した。そのときから、いつかネットワークでシミュレーションRPGを作ってみたいと。こういう形になって、非常に幸せなプロジェクトです」とコメント。サービスインは2011年夏予定。



(C)2010 NHN Japan Corp.
(C)Imageepoch



■ ニコアプリ「ぷちっと★ロックシューター」

夏野剛氏

 「今までのタイトルと一線を置く、ちょっと変わったタイトル。ちょっと拍子抜けするかもしれません。ただ、こういタイトルもあるよね、というところをお見せできるかと思います」と前置きした御影氏。スクリーンに映し出されたのは、なんとも可愛らしいSDキャラが描かれた「ぷちっと★ロックシューター」。

 ゲストで登場した株式会社ドワンゴ取締役の夏野剛氏は「12月からニコニコ動画が新しいゲームプラットフォーム機能をそなえる。何をやるかというと、動画を観ながら、横のコメントウィンドウでソーシャルゲームをやる。あるいは、そこをクリックすることでウィンドウを大きく開いてゲームをやる。ぼくの知り合いばかりに声をかけたということもあるが、当初は十数タイトルに絞る。ニコニコ動画のユーザー数はいま1,900万人、うち100万人以上が月額利用料を払っている。ユニークユーザーの1日平均アクセスが300万人近く、滞在時間が平均35分以上。よく考えたら、これ凄いゲームプラットフォームじゃん! と思っていたけど、何もやっていなかった」と説明。「ニコニコのアプリをみた瞬間、ダラダラやるゲームを作りたいと思った」という御影氏の思惑と合致したというわけだ。

 huke氏にブラウザゲーム化したい旨を打診したところ「ちゃんこさんという大人気のちびきゃらイラストレーターさんがいる。その人に描かせたら、御影さんがいっているとおりゆるいゲームになるんじゃない?」と、ちゃんこさんの絵柄で現在鋭意開発中。まだゲーム内容が発表できないため、会場ではイメージイラストのみ数点が上映された。サービスインは2011年春とされていたが、「リリースより3週間前に(開発が)終わる予定(御影氏)」、「今じゃん(夏野氏)」と、なんとも微妙なやりとりが……。本発表会はニコニコ動画で中継されていたが、はたしてどうなることやら。いずれにせよ、近日中に判明することは間違いなさそうだ。





■ その他のタイトル

 以降は、タイトルのみで詳細は明らかにされなかったタイトルについて簡潔にふれていく。「JRPG for アンドロイド&スマートフォン」、「JRPG SNS 型 for アンドロイド&スマートフォン」は、株式会社ウィルアークと業務資本提携をおこない開発するタイトル。年明け1月に開発をスタートさせるといい、サービスインは2011年夏~秋を予定しているという。

 「TYPE-MOON×Imageepoch Project」は、「Fate」など強力なコンテンツを有する制作会社とのコラボレートプロジェクト。「フェイト/エクストラ」を制作した際に武内崇氏らと懇意になった御影氏が「何か次、1本やりませんか」と相談中の完全新作。御影氏は「個人的な意見としては、開発に3年くらい使うんじゃないか。3年使うということは、ハード、規模、ジャンルは想像できるんじゃないか」と説明した。

 「ARK Project」は、オリジナルシミュレーションRPGプロジェクト。「アークという名前がついたゲームをたくさん作らせていただいた。なかでも『ルミナスアーク』は非常に思い出深いタイトル。イメージエポックのパブリッシュタイトルでもオリジナルシミュレーションRPGを1本仕掛けたいと、現在絶賛制作中。発売時期などはシークレット。TYPE-MOONプロジェクトよりは短いかな」とコメント。「MARS Project」は、JRPGクリエイターとの共同プロジェクト。「“MARS”という名前があるので、勘のいい人はわかるんじゃないか。あと、たぶん今日この会場のどこかにいるだろうな、と。そのクリエイターさんと一緒に、来年……今年すぐになるかもしれないけど、1本制作させていただく」とコメント。

 「REMS Project」は、伝統あるシリーズをJRPG化するプロジェクト。「今まで、本当に古いPCゲーム、オールドRPG、伝統あるものを弊社で再構築していこう、という形。再構築が得意なプロデューサーが何人かいるので、彼らの手によって、もう1回遊べるような状態になるのではないか」と説明。将来が発表できるのは来年といい、気になる人は続報を楽しみに待つとしよう。


(C)Imageepoch

(2010年 11月 24日)

[Reported by 豊臣和孝]