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「サイコブレイク」予約特典“ゴアモードDLC”について高橋徹氏に聞く
大ヒットが“当たり前”。大ヒットを生み出すベセスダのマーケティング施策とは!?
(2014/7/8 11:30)
大ヒットが“当たり前”。大ヒットを生み出すベセスダのマーケティング施策とは!?
――「サイコブレイク」の日本での目標本数は?
高橋氏: 言えませんが、これまでとはぜんぜん違います。海外タイトルではなく、三上真司が作る国産のサバイバルホラーなので。僕らは常にナンバーワンを目指しています。
――海外タイトルは日本では、10万本が合格ラインで、20~30万本でヒット。ハーフミリオン(50万本)あたりが天井というイメージがありますが、それらを軽くぶち抜く数字を求められているわけですね。
高橋氏: 数字に関してはノーコメントですが、「Oblivion」や「Skyrim」が初回約10万で、込み込みで約30万。そういう感じですよね。でもこれはシリーズを重ねてブランドができてきているから出せる数字で、普通はもっと厳しいですよ。僕がカプコン時代に担当した「GTAIII」で18万本、「バイスシティ」で30万本いったかどうか。「GTAIV」で40万本、「GTAV」で50万本を超えましたよね。でもそれぐらいです。なぜならZは一気に広がることはないからです。
仰るように、海外ゲームは50万本が天井というのは確かにそうなんですが、冷静に考えると、国産のIPでもブランニュータイトルが50万本を超える例ってどれだけありますかって話ですよね。最近だと「ダークソウル」とか、数えるぐらいですよね。がんばっても20~30万本で終わってしまう。「サイコブレイク」は新世代機でナンバーワンのサバイバルホラーのフランチャイズにしたいと思っています。(数字はすべてF-ism調べ)
――それはグローバルでということですよね?
高橋氏: もちろんです。グローバルの目標も数字は出せませんが、低くはないです。三上は日本を代表するクリエイターですし、良い物を作り続けてますよね。数字が出ているかどうか、売れてるかどうかはともかくとして、Metacriticsの評価は常に高い。で、売れるか売れないかというのは、ゲーム云々以上にパブリッシャーのパワーが左右します。
タイトルの名前は出しませんが、日本で50万本ぐらいいった“あるタイトル”がありますが、Metacriticsも8点台で悪くなかったのに、海外で100万本も売れてない。それはパブリッシャーが弱いからです。海外で日本のタイトルがどう扱われているかを見ていればわかると思いますが、もっとプッシュすればいいのに、それをしない。(数字はすべてF-ism調べ)
――なるほど、ベセスダはそこが違うぞと?
高橋氏: 私はゲームビジネスに携わって10数年経ちますが、一貫して海外タイトルを日本で売る。日本の大手パブリッシャーの力を借りて浸透させていくということをやってきました。僕もやっぱり一応日本人ですから(笑)、日本のタイトルが海外でももっと売れてもいいのになとも思ってます。
ただ、ベセスダに入って感じたのは、いろんな意味で、ビジネスの規模感が全然違う。広告宣伝予算にしても、目標数値にしても、相当数いかないものは、次回作はない。そういう環境の中で日々商売をしているパブリッシャーたちと、日本で50~60万本、海外100万本出ればペイできますというものとは、ぜんぜん規模感が違うわけです。潜在的なマーケットは欧米のほうが圧倒的に大きいわけだから、ビジネスを考えたら日本を捨ててでも海外を取りに行くべきなのにどこもそれをしていない。もったいないというか、もっと積極的にやればいいのにとはいつも思っています。その逆も然りで、海外のパブリッシャーに対して、「おまえらが売るより俺らが売った方が、絶対多く売れる」と言ってきました。実際その通りなんです。
――そういう意味では「サイコブレイク」は、高橋さんによって新しい領域のビジネスということになりそうですね。
高橋氏: 新しいビジネスというほどでもないですけど、たとえばRockstarは、カプコンの力を借りて、日本での「GTA」のマーケットを拡大したのは事実としてあるわけです。今は自社で日本法人を作って販売していますが、あのやり方が正しいんです。ある程度は地元にやってもらって、土台ができたら進出してくる。
あとは、日本の開発力について、皆さん世界で元気がないと言いますけど、技量や技術力の差だけではない。もちろん、そういった要素もありますが、実はそこが大きな問題じゃ無くて、営業力、マーケティング力が足りないという問題も大きいと思ってます。ここまで大口叩いて売れなかったらアレですね(笑)。
――「サイコブレイク」はその高橋理論を実践する大きな機会になりますね。
高橋氏: これで予定通り、欧米で高い評価を得て、高い目標の数字が確保できて、という話になれば、日本発のブランニューのものでも、海外で高い数字が目指せるという証明になりますよね。そういう良い事例があれば、他社の開発スタジオの方々も、国内だけで数字を取っていくのではなく、海外に出て行こうという気持ちが出てくるかもしれませんしね。
――「サイコブレイク」のE3 2014での出展の手応えはいかがでしたか?
高橋氏: 凄く良いです。社内の評価も非常に高いですし、メディアも10人が10人良いというわけではないですが8人は良いと言ってくれました。残りの2人はサバイバルホラーが嫌いだからどうしようもない(笑)。
――つまりそれはAAAタイトルとして、「サバイバルホラーという表現方式はニッチじゃないの?」という批判ですか?
高橋氏: そうですね。これは三上も言ってることなんですが、サバイバルホラーの原点に返るのは難しいことなんです。近年のサバイバルホラーゲームが、アクション寄りになっているのはそれなりの理由があって、怖さってシリーズを重ねる毎に薄れていくのと、メジャー受けするためにはアクション寄りになりがちなんですが、「サイコブレイク」は初回作なので、思いっきり原点回帰しているんです。だから、「これは怖すぎるから嫌い」とハッキリ言ってくれる人がいるぐらいで丁度いいんじゃないかと思っています。
――絵作りに関してはどのような評価ですか? 「サイコブレイク」のグラフィックスはどちらかというと国産っぽくない、海外に強くアピールするデザインになっていますよね。
高橋氏: 映画のようなノイズのエフェクトについてあれこれ言う人はいましたが、それはゲームの性質がゆえですし、リアリティ追求型のゲームではなくサバイバルホラーですから、その前提を納得できる人から不満は出ませんでした。サバイバルホラーが嫌いな人にとっては難癖を付けやすい部分ではありますけどね(笑)。僕としてはリアルっぽくしたら怖くなくなるだろって思うんですけど。