テクモ、PS3/Xbox 360「NINJA GAIDEN 3」
ステージイベントレポート&早矢仕氏ミニインタビュー


2012年春 発売予定

価格:未定

CEROレーティング:審査予定


早矢仕洋介氏

 株式会社コーエーテクモゲームスは、プレイステーション 3/Xbox 360用アクション「NINJA GAIDEN 3」を2012年春に発売する。価格は未定で、CEROレーティングは審査予定。本稿では、ビジネスデイに開催されたステージイベントと同社ブースにて行なわれたミニインタビューの模様をお届けする。

 全世界のアクションゲーマー待望の新作「NINJA GAIDEN 3」ステージイベントは、弊誌にも掲載されているデモムービーからスタート。続いて登場したプロデューサーの早矢仕洋介氏は、本作のテーマを「ジャパニーズ・ダークヒーロー」と説明。先日開催されたプレスカンファレンス「Team NINJA UNMASK 2011」でも述べられたように、今回は単純に敵を倒して先に進むのではなく“人を殺める”ことにフォーカスし、その業に苦悩するリュウ・ハヤブサの姿が描かれる。重いテーマだが、早矢仕氏は「もう一歩未来に向かった、大人のエンターテインメントとして楽しんでもらいたい」とコメントした。

 ステージでは、体験版を使用しゲームを説明。初心者にもプレイしやすくなった点をアピールするため、普段はパズルや簡単なゲームしか遊ばないというブースコンパニオンさんを体験版プレーヤーとして起用。「アクションゲームは苦手です」と明言する彼女が、はたして本当に「NINJA GAINDE 3」をまともにプレイできるのか? 早矢仕氏は「今回はじめて触る方やアクションゲームが得意じゃない方と、今まで『NINJA GAIDEN』シリーズを応援してくださっている皆さん、両方に楽しんでいただきたい。そこで、今までのアクションゲームとして遊んでいただきたい人向けに『NINJA スタイル(難易度:ノーマル、ハード)』、『HERO(アクションゲームが不慣れな人向けにサポート機能つき)』を用意した」という。

 新作はロンドンからスタート。ある敵と向かい合うことで“報い”を受け、苦しむシーンからゲームが始まる。夜の時計台から急降下し、敵の一団を急襲するハヤブサ。そのまま地上に降り立つと、周辺の敵を凄まじい勢いで斬り伏せていく。□ボタンと△ボタンを使い分けていくのが基本だが、HEROモードにつき適当にボタンを連打する、いわゆる“ガチャプレイ”でも見栄えのするアクションが次から次へと繰り出されていく。歴代シリーズをやりこんだ人が見れば「これはシステム側にフォローされた動きだな」とわかるが、そうでない人は「アクションゲームが苦手とか嘘でしょ? 余裕でやれてるじゃん」とまったくとりあってもらえないだろう。

 HEROモードでは、Lボタンでガードしてないくても一定確率で自動的に敵の攻撃を防いでくれる。絶対に死なないというわけではないが、早矢仕氏によれば「残り体力が低くなるほどオートガードの発生率があがる」という。また、本モードでは忍法を使うと体力が一気に回復する。周辺の敵を一掃すると、やや状況が落ち着く。このとき、次にどこにいけばいいかは“R3ボタン”を押せばカメラ視点がそこにフォーカスし切り替わる超親切設計。スムーズにストーリーが体験できるよう、細かい部分にもフォローが行き届いている

 敵キャラは、画一的に襲い掛かってくるのではなく、明確な戦力差を察すると腰をぬかしてへたりこみ後ずさっていく。早矢仕氏は「こうした人間らしさ、人間臭さい敵が『NINJA GAIDEN 3』のひとつの特徴。逃げる敵を斬ることもできる」と説明。体験プレーヤーのコンパニオンさんは、終了後「思ったより、自分ができるんだなぁ! ってびっくりしました。ボタンを押すと勝手に動いている部分もあったので、できるような感覚に陥ってしまいました」とコメント。

 イベントの最後は、ツイッターアカウントに寄せられた質問に早矢仕氏が回答していくコーナーが設けられた。「前作のように高難易度モードはありますか?」という質問には「先ほどは逆に優しいところを説明したが、『NINJA GAIDEN 3』はナンバリングタイトルですから、ファンは腕を磨いて待っていてください!」と回答。「今までのシリーズをプレイしていなくても問題ありませんか?」という質問には「『NINJA GAIDEN 3」だけでストーリーは完結しており、まったく問題ありません。過去シリーズに触れていれば『あのキャラクタがまた出てきた』、『このシチュエーションは、あのときの……』とわかるが、それはあくまでもオマケ要素になっていますから、今回初めて触れる人も楽しんでいただけます」と回答。「クリア後にシークレット要素は?」との質問には「オンラインにも対応しており、周回プレイ向けの要素も検討している。決まり次第お伝えしたい」とコメントした。


ブースでは各要素がギュッと詰まった充実の体験版がプレイできた。ビジネスデイ、一般公開日ともに大人気で常に長蛇の列シリーズ初体験の人も、やり込んだ人も両方満足できるよう「HERO」、「NINJA」ふたつのスタイルを用意アクションゲームが苦手というブースコンパニオンがHEROモードに挑戦。華麗なアクションを披露して見せた



■ 早矢仕洋介氏・ミニインタビュー! ~大人の心に刺さるアクションゲームにしたい~

GAME Watch編集部: 「NINJA GAIDEN 3」ブース、大盛況ですね!

早矢仕洋介氏(以下:早矢仕氏) 良かったです! 日本の方々に触れていただける、初めての機会ですし。触ってみて、いかがでした?

編: いやもう、気持ちいい!! の一言でした!。

早矢仕氏: 良かったです(笑)。

編: ファンの方々にも、2通りのスタンスがあったと思います。ナンバリングタイトルに対する純粋な期待感を抱いていた人と、初心者向けに配慮された点を踏まえ「俺たち従来のファンは……」。

早矢仕氏: 「俺たちの『NINJA GAIDEN』を返してくれ」!?

編: そこまでいってないと思いますけど、それに近い心配はあったかと思います。ただ、実際触ってみると全然そんなことはない。1番大事にされているものは、きちんと守られている。

早矢仕氏: 「NINJA GAIDEN」も、幸せなことにシリーズ3作目を迎えることができました。歴史を重ねてきているぶん、ずっと応援してくれた方、初めて触れる方は、開きがあると思うんですよ。どちらにも等しく遊んでいただきたい! というのが我々開発側の“想い”ですから。ただ、難易度を10段階用意するから適当なのを見つけてよ、ということではなく。そもそもゲームに対する付き合い方が違うんだから、そこにゲーム側があわせていく。それがプレイスタイル。今までのファンのみなさんに応えるプレイスタイルは、しっかり用意してあります。体験版は1番最初に難易度を選ぶところがありますが「HARD」は結構歯ごたえがあって、ブースでテストプレイしたうちの開発スタッフのひとりがゲームオーバーになってしまったくらいです(笑)。

編: 新たなプレイスタイル「HERO」は、初心者にとって「NINJA GAIDEN」シリーズへの入り口になるのでしょうか?

早矢仕氏: そうですね。近作のテーマとして“報い”、“ジャパニーズ・ダークヒーロー”という物語をアクションゲームとして体感していただきたいというのがあった。「難しくて先に進めない!」という方がいては、我々がこのゲームでみなさんい楽しんでもらうエンターテインメントとしては、中途半端になってしまう。最後までしっかり遊べるものを用意するのは大切だと思いました。Very Easyみたいな難易度を用意しても……私もゲームを大好きで色々やりますが、そんなにゲーム得意じゃないんで。でも、そこでVery Easyを選ぶって……自分にとってプライドがあるじゃないですか。

編: 負ける、というか。オマメで遊ばせてもらってるみたいな。

早矢仕氏: せっかくゲームというエンターテインメントを遊ぶのに、凄くそれってもったいないことだと思いました。HEROスタイルとNINJAスタイルという言い方にしたのは「みんなに活躍してもらいたい!」という我々の想い、願いからです。(アクションが苦手でも)みなさん気兼ねなくHEROスタイルを選んでプレイしていただきたいです。

編: NINJAスタイルを選んで「きついな」と思ったら、HEROスタイルでやり直したり?

早矢仕氏: 今回、難易度はゲームの途中でいつでも変えられます。ノーマルでチャレンジしてみて「ちょっと、この先は進めそうにないな」と思ったら、その場でHEROスタイルに変えてもらえれば、その先を体験できるようになっています。ゲームを進めるごとにハヤブサが、呪いというか“人殺しの業”を背負っていく。その先に最終的にどういう物語が待ち構えているのかがゲームの狙いでもあるので、途中で止められてしまうと、メッセージが伝わらなくなる。そこはしっかりと、ゲーム側でサポートしようと考えました。

編: 最初にそういった重いテーマを据えようとしたとき、社内的な反応はいかがでしたか? たとえば「重過ぎないか?」といった意見は?

早矢仕氏: ゲームって、バイオレンス表現が盛んにありますよね。我々としては「中身のないバイオレンスを描くことのほうが危険で、薄っぺらいんじゃないか」と思っていて。バイオレンスを描くなら、その“報い”もしっかり描くのが必然というか。「だからこそバイオレンスが必要なんだ!」ということにもなるんじゃないのかな、と思います。私もずっとゲームを遊んできましたけど、大人の人にしっかり楽しんでもらえるゲームって、まだまだ日本に少ないと思うんです。そういうところも、しっかり。我々としては“大人向けのエンターテインメント”、そういうメッセージのゲームをやってみたくありませんか? というのが、我々からの提案です。

編: 昨今はソーシャルゲームが大流行していますが、まったく真逆のアプローチですね。

早矢仕氏: そうですね。エンターテインメントとして本当に楽しめる、大人向けのゲームです。

編: 操作してると“殺陣”と申しますか、動きのメリハリが本当に凄い。これは、何か参考にされたものなどはあるのでしょうか?

早矢仕氏: 刀を振る行動がありますが、たとえば空中で刀を振ったときと人の身体を斬ったときと、今までのアクションゲームではどちらも同じだったんですね。バーン! って敵が飛んじゃったり。そうじゃなくて、刀が人の身体のなかにググググッ! って入っていく感覚。手元に物凄い手ごたえを感じているわけですよね。そこをゲームのなかに落とし込んで、みなさんにコントローラーを通じて“人を斬った”ことを感じてもらいたい。じゃないと“人殺しの業”を感じてもらえないと思いまして。ゲームデザインとメッセージ性をこめています。アクションとしてもメリハリがついていますので、従来シリーズでも1番気持ち良くもなっていると思います。

編: ボタンを押して発展していくアクションのバリエーションも増えていますし、調整もかなり難しかったのではないでしょうか?

早矢仕氏: 我々アクションゲームマニア……ずっと「NINJA GAIDEN」を作っていたスタッフもおりますので、手触り、迫力、気持ち良さっていうのは1番に作っています。

圧倒的な力の差を前に戦意を失った兵士が怯むこともしばしば。このあとどうするかはプレーヤー次第

編: 敵が怯むシーンが結構ありますが、あれは作り方が難しかったのではないでしょうか? あまりやりすぎると鼻につくし、軽いと白々しくなる。

早矢仕氏: 凄くみなさんに印象の残していただけるシーンだと思うんです。単純にアクションとデモを繰り返すのではなく、ああいうことで実際のアクションとストーリーが1本につながる演出じゃないかと思います。

編: そこは凄く“一体感”を感じました。ブツ切りではなく、やっていく流れのなかで各要素が連なり、ひとつの本流をなしていくイメージでした。

早矢仕氏: アクションゲームってステージとクリアを繰り返すのが従来型でしたけど、そうではなく、アクションも、しっかり1本の“話(ストーリー)”になっているものを目指したところです。それを感じていただけると、凄くうれしいです。

編: つながりすぎて止め時が見つからないくらいでした。ただ、ある程度は大きな章というか、そういったまとまりはあるんですよね?

早矢仕氏: そうですね。色々なステージに切り替わっていきますが、その理由はデモシーンでしっかり語られていきます。1本の話でつながっていきますので、最初のほうでやっていたアクションが、実は後半で意味がでてきたりとか。そこは通して、1本のエンターテインメントとして楽しんでいただきたいな、と思います。

編: 新規と続編、特に今回のような「NINJA GAIDEN」シリーズのように“コア中のコア”なファンがいる作品を手がけるとき、プレッシャーに違いはありますか?

早矢仕氏: やはり、シリーズならではの……いいことをいえばこだわっている部分だし、悪い言い方をすると、しがらみみたいなものってあると思うんです。シンプルに「我々開発者が1番熱狂できるものをとろう」と、今回色々な部分に改良というか、違うものを採用させていただいています。ちょうど触っていただいたように、アクションゲームとして捨てちゃいけないものっていうのは、我々も絶対に外さないでおこうって大事に作っている部分。変えていいもの、変えちゃいけないもの、我々も議論を重ねて今の形になっておりますので、ファンのみなさんが心配されるのはわかりますが「大丈夫です!」といいたいです。

編: いちユーザーのはしくれとして、ですけど。「これで文句を言われたら困る」って感じです。本当に、気持ちいいですよ! 基本ボタンふたつなのに、ここまで痺れるアクションが楽しめる。そういう意味では「体験版のリリースは、いつだ!」と。やってもらうのが1番いい。

早矢仕氏: 今って、ゲーム動画が簡単に出ちゃうじゃないですか。あれで(実際に)ゲームをやった気になられる方もいるのかなと。たとえば、我々としてはチュートリアルでボタンを表示しているのに「クイックタイムイベント(QT)だ、QTだらけだ!」といわれちゃう。だけど、触っていただくと凄く自然に画面に出ているだけ。ゲームをわざわざ止めるチュートリアルではなく、自然と操作方法を覚えてもらいたいと思ってやったんで……そこは本当に、触ってもらいたい。ゲームって見ているだけじゃ伝わらないものがある。

編: そこで話が戻りますが、体験版の配信予定は……。

早矢仕氏: まだまだ決めてないんです。まだまだ開発期間は残っていますから、出展バージョン以上に磨いたものを製品版ではご用意いたします。

編: 実は私も、体験版に触れるまで不安がゼロというわけではなかったんです。HEROスタイルってどうなんだ? みたいな。

早矢仕氏: 色々と誤解を招くというか、コアなファンの人たちを見ていないんじゃないかとか。以前は欠損表現を行なっていましたが、今回はない。欠損表現の有る無しでいえば、マルだったものがバツになっている。でも、スペック表じゃわからないものというか、プレーヤーが実際に触って動かして感じるものは、凄く大事にしています。

編: 前作の攻略本を作った人たちと当時雑談をしていた際「(『NINJA GAIDEN 2』の欠損表現は)別になくても良かったよね」という話になったことを思い出しました。今作は、欠損表現がないにも関わらず、内面に響く、ある意味もっと衝撃や迫力がある。

早矢仕氏: 我々開発側のコンセプトで話をしていたのは、「NINJA GAIDEN 2」は“視覚的なバイオレンス”なんですけど、今回我々が目指したのは“心に残るバイオレンス”。そこは皆さんに、いい意味でグッ! っと心に残るバイオレンスになっていると思います。我々は、中身のないバイオレンスを描くつもりは、まったくないですから。必然としてのバイオレンスを表現していますし、それが苦手な方でも、見た目だけでは感じないような出来にもなっているんじゃないかと思います。

刀で斬りつけたときの感覚に、とことんこだわっている。前作のような欠損表現はないが、ある意味それ以上にインパクトがある

編: “体験”の部分ですよね。

早矢仕氏: そうですね。プレーヤーの方々がコントローラーを触って“斬っちゃった!”その感覚を大事にしています。

編: 体験版をプレイさせていただいて1番感じたのは、戦闘が作業にならないことです。スコアラーの方々は、また別なんでしょうけど……あの究極効率プレイは何度見ても戦慄します。スコアランキングは、当然今回も用意されるのでしょうか?

早矢仕氏: やり込み派のために難易度も用意していますし、“NINJA RECORD”っていうんですけど……みなさんのプレイ記録もしっかりデータとして録っています。それを各オンラインでプレーヤーのみなさんに拝見していただけるようにします。あと、マルチオンラインも対応していますから、上手い人同士ぜひ殺しあっていただいてもいいかなと(笑)。

編: 今の時代にあった、新しい「NINJA GAIDEN」の形ですね。上手いプレーヤーのプレイを見たくなるのは、いいアクションゲームのひとつの証明ですから。つながっていく、途切れないテンション。こちらが能動的なアクションで起こしている波がある一方で、システム側がそれを想定して徹底的に考え抜かれていることもわかる。考え抜かれた敵の配置や動きを感じると、もう頬が緩んでしかたなく、うれしくて仕方ないです。特に今回は動きが激しいですから、各要素がバラバラだと、どうしても軽く迫力がなくなってしまう。その点、本作は視聴覚を通して伝わった各要素が、体内でひとつの奔流になる。その怒涛がたまらない……って、本当に感じます。

早矢仕氏: (笑)。アクションゲームって、まだまだ「アクション」と「それ以外」の部分にわけられるみたいなところがあります。アクションしている最中に“気持ち以外”の感情が芽生えることって、あんまりないよなって思うんです。「NINJA GAIDEN 3」では「ジャパニーズ・ダークヒーロー」ってコンセプトでいってますけど、人を斬る感覚って、気持ちいいだけじゃなく“感情を動かしてくれるはず”だと思っているんですね。アクションゲームで、今まで体験できない、描ききれない感情、プレイしている最中に感じる表現は、非常にこだわっていますので、そこはぜひ皆さんに体感していただきたいと思います。

編: ゆえに、敵キャラの存在を強く感じます。それぞれが点ではなく「個」だと。

早矢仕氏: よく宣伝担当と話をするのは「『敵』という言い方をしないでくれ」と。「人」なんだ、と。僕らも便利でつい「ハヤブサの『敵』」が、っていう言い方をしちゃうんですけど。実際にハヤブサが斬っているのは、人。それを伝えたいなと思いまして。

編: ファミコン時代のゲームでも、波が作ってあるとドットでも「人」っぽく見えてくるんですよね。

早矢仕氏: プレイされたあとは、その狙いって伝わるんじゃないかと思っています。

編: ゲーム的なロジックではなく、それ以外に何か考えて盛り込まれているものがある。ただいやらしくやるのではなく、こうするとき、こうなるべきでこうしているのではないか? とか。そういった意志を感じます。

早矢仕氏: そういう、なんていうんでしょう? ゲームを遊んでいるときって、プレーヤーには色々な感情があるはずじゃないですか。でも「感想を書いて」とか「このゲーム、どうでした?」って書いてもらうとき、そういうのって出てこないんですよね。コントローラーを持っているときには、みんな必ず心が動かされている瞬間があって、それを僕らのほうですくいあげてゲームに落としていく作業っていうのは、非常にデリケートですけど、でもそこが1番面白いというか。

編: 物凄く気を遣うし、手間もかかるし、時間もかかし……。

早矢仕氏: たとえば自分の1番大事な人が死んだシーンで「泣け!」っていってるのと一緒で、そんなシンプルなもんじゃないじゃないですか、人間って。

編: ここ十年くらいの流れって、ゲームに限らずシチュエーションを作ってハメてあげて「そうしてください」って。映画やドラマでいえば「また病死か! また不治の病かよ!」みたいな。

早矢仕氏: こういうのって泣くよね、っていうフォーマットがあって。ゲームもなんかそういうところがあって。今回もたとえば「人がハヤブサに驚いて後ずさっていきます」っていうのが入っていると「今回は○×システムが入りましたね。それはいつ発動するんですか?」ってなっちゃうんですけど。それで結局、お客さんがどう感じてもらえるかが大事だと思います。

編: 私はスコアを狙うときであれば「驚かせたほうがいいのか悪いのか」とか考えちゃうと思います。

早矢仕氏: それはそれで(笑) 1番大事なところって、違いますから。体験版をやっている最中に「なんとかシステム」みたいな言葉は使っていません。システムって、あくまでツールであって表に出るものではないと思っています。

編: マーケティング的な意味で表に出すのは仕方ない面もありますが……あえてそれをせずアピールとしてもったいないと思う一方、早矢仕さんの深い本気度を感じます。

早矢仕氏: 型にハメて欲しくないっていうか。私も開発として仕様をきっているので、システムを全部お伝えすることは可能なんですが、それって最終的な目的とは違いますから。何の知識もなく裸でゲームを触ってみて、どう感じるか。実際やりこんでもらって「あぁ、こういうシステムが入っているのか」とやってもらえれば、それで全然いいと思います。「今回はどんなアクションが追加されているんですか?」、「何個くらい新しいアクションがあるんですか」とよく訊かれるんですが、あまりそういうのは……。

編: それは訊く側としても「わかりやすい」、「便利だから」なんですよね。新要素が何個あるとか、見出しにつけやすいですから。ユーザーさんも「あぁ、新しいのが何個あるんだ」となってしまう面もあります。

早矢仕氏: 新しいゲームだったら、これくらい新しいアクションが入っていて当然だよね、みたいな。ゲームって数字で見えるというか……感情が動くようなものじゃないと、意味がないと思うんですね。

編: これだけ技術が進んでも、手法としてはアナログの集合体ですから。

早矢仕氏: 今回、忍法を唱えたあとに敵兵がワッ! と驚くんですけど、あれはやはり人外なるものが出てきたときって、人間はこういう感情になるんじゃないか。刀だったら勝てるかもしれないと思うけど、あの龍に噛み付かれると思ったら戦う気がなくなるだろうな、と。そこはシステムを強く感じさせないように作っています。感情って、万国共通だと思います。

編: 表現としては難しいと思いますが、現時点での完成度は?

早矢仕氏: 難しいですけど、発売までもう少し時間があるので、50~60パーセントっていう感じでいいのかな? と思います。

編: では最後に、ファンの方々にメッセージをお願いします。

早矢仕氏: 今回「NINJA GAIDEN 3」の体験版ということで、やっと我々がゲームとして目指している、今の時代のゲームが大好きで育った大人の心に刺さるアクションゲームにしたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。

編: 本日はお忙しいところを、本当にありがとうございました。完成を心待ちにしております!


【スクリーンショット】

(C)コーエーテクモゲームス Team NINJA All rights reserved.

(2011年 9月 19日)

[Reported by 豊臣和孝]