日本マイクロソフト、「Microsoft Developers Forum 2011」を開催
Windows PC上でKinectをデモ、Windows Azureのソーシャルゲームへの採用事例などを紹介


5月23日開催

会場:品川インターシティホール


 日本マイクロソフト株式会社は5月23日、ソフトウェア開発者を対象としたフォーラム「Microsoft Developers Forum 2011」を東京品川において開催した。基調講演ではMicrosoft CEOのスティーブ・バルマー氏がエンターテインメント分野を含む今後の戦略を披露したほか、基調講演後に行なわれた日本マイクロソフト執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏による技術セッションでは、現在米本社にて開発が進められているKinectのWindows PCへの対応について、実機によるデモンストレーションが披露された。

【Microsoft Future Vision】
フォーラムの冒頭で流された、同社のビジョンの一端を示した映像。壁やテーブル、窓、マグカップなど、あらゆる生活環境にコンピューティングが溶け込み、タッチ操作を中心としたナチュラルユーザーインターフェイスで情報にアクセスする未来。紙の新聞もすべて紙のままデジタル端末と化し、PCそのものは影も形もなくなっている


■ Xboxの開発環境は次の世代へ

会場となった品川インターシティホール。開発者や開発者を目指す学生でほぼ満席となった
派手なボディランゲージを交えながら精力的に自社戦略を語った米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏。バルマー氏は開発者との直接的な対話を重視しており、今回で4回目となる
Kinectを使って「WorldWide Telescope」を両手で操作するデモ

 今回注目されたのは、先の5月10日にMicrosoftが電撃発表したSkypeの買収に関する続報である。米国で発表されたプレスリリースの中で、Microsoft LyncやWindows Live Messengerといったコミュニケーションプラットフォームに加えて、Xbox 360やKinectといったXbox LIVEを介したエンターテインメントプラットフォームにおいても、Skypeのテクノロジーを積極的に組み込んでいくことがアナウンスされた。

 今回はスティーブ・バルマー氏自らが登壇するとあって技術者向けに具体的なSkype戦略が披露されることが期待されたが、蓋を開けてみればプレスリリース以上の情報は出てこなかった。

 また、いよいよ日本進出が期待されるWindows Phoneについては、こちらもまた「明日、大々的に発表する」ということで、Windows Phone SDKのいくつかの新機能が披露されるに留まった。

 エンターテインメント分野に関しては、バルマー氏が同社のエンターテインメント事業の中核となるXboxについて、「Xboxの開発環境は、今年後半、次の段階に入る」とし、より開発が容易になるだけでなく、ソーシャルメディアへの連携性を深めることで、より高いソーシャルエクスペリエンスを得られるようになると予告。

 また大場氏のセッションの後半では、「次世代の操作性」のサンプルとしてKinectを取り上げ、日本マイクロソフトとしては初となるWindows PCによるKinectのデモンストレーションが行なわれた。デモの内容は、天体観測が楽しめる自社アプリケーション「WorldWide Telescope」を、両手だけで操作するというもの。片手操作で惑星を回転させ、両手操作で拡大縮小、右から左に手を流すことでスクロール操作など、タッチインターフェイスにも似た操作体系が採用されていた。

 気になるWindows PC向けのKinect SDKリリース時期については日米共に“近日中”としているが、現時点ではその用途は学術、研究などの非商用利用に限られる。将来的には商用利用も視野に入れているということだが、ユーザー向けのWindows PC対応ドライバの提供時期などについてもまったくの未定としている。

 仮に同社がKinectのWindows PCへの商用利用を解禁すれば、既存のKinectタイトルのWindows PCへの移植や、Windows PCオリジナルのKinectタイトルが誕生する可能性がある。いずれにしても同社ではKinectが実現しているナチュラルユーザーインターフェイス(NUI)を「次世代の操作性」と目しており、今後のなんらかの形でOSが標準サポートするUIのひとつとして組み込まれることが予想される。

【基調講演】
バルマー氏は、Windows PhoneやWindows Azure、Internet Explorer 9といった自社のキラーコンテンツを引き合いに出しながら、同社の戦略を披露。Skypeについてはほとんど語らず、「我々が重要だと思っていることを体現しているサービス」と褒めるに留めた。また、今年9月に次期OS Windows 8に関する具体的な発表を行なうこともアナウンスされた

【Q&Aセッション】
Q&Aセッションでは事前に募集された質問の中からいくつかをバルマー氏が応えるという形で進められた。最初に紹介されたアンケートでは、エンターテインメントやゲームに対する関心の低さに驚かされた。「日本のITエンジニアが成功するために必要な要素は何か?」という質問についてバルマー氏は、「グローバルを視野に入れた開発能力」と回答

【「WorldWide Telescope」のKinectデモ】
手慣れた手つきで「WorldWide Telescope」を操作する大場氏。Kinectは三脚で固定され、別途電源を取る形でPCにUSB接続されていた。2メートルほどの空間をどのように確保するのかが課題となりそうだ


■ Windows Azureのソーシャルゲーム実装事例、日本でも「コンバットチョロQ」で採用

Windows Azureは、日本では2011年からサービスが開始されたばかりだが、すでにトヨタを筆頭に多くの企業が採用している。ゲームメーカーはまだ一部に留まっている
Windows Azureの実装事例の紹介を行なった日本マイクロソフトの砂金信一郎氏

 今回のMicrosoft Developers Forumで、最も説明に時間を割いていたのは、同社が展開するクラウドプラットフォームWindows Azureである。数多くの実装事例が紹介され、中にはソーシャルゲームやモバイルゲームでの採用事例も紹介された。ソーシャルゲームがどのクラウドサービスを利用しているかは見えにくい部分だけに、意外な収穫だった。

 最初に紹介されたのは米PlaydomのFacebook向けソーシャルゲーム「Bola」。プロサッカーチームを育成するシミュレーションゲームで、Windows Azureを採用しているソーシャルゲームとしては最大規模のタイトルとなる。「いいね!」の登録は240万弱、月間アクティブユーザーは700万人を誇る。Windows Azureはすでに大規模ソーシャルゲームをカバーできるだけの実力を備えているというわけだ。

 それでは日本ではどうかというと、GREEのフィーチャーフォン向けモバイルソーシャルゲーム「コンバット チョロQ for GREE」が、実はWindows Azureで運用されている。会場ではゲームのデモに加えて、Windows Azureプラットフォームの管理ポータルも披露された。同作は日本でサービスされているタイトルだが、データセンターは香港に置かれ、シンプルなモバイルゲームながら、実に多くのサーバー群によって運用されているのがわかる。

 デモを担当した日本マイクロソフトの砂金信一郎氏は、「ソーシャルゲームを日本で開発されている方は.netよりもPHPなどのオープンソース系のテクノロジーを採用されている方が多いのですが、そういったテクロノジーもWindows Azure上でキチンとホストできることがおわかりいただけると思います」と述べ、Windows Azureのスケーラビリティの高さと、ソーシャルゲームの運用について自信を覗かせた。

 そのほかにもYahoo! モバゲーで展開されていたリクルートの女の子向け着せ替えソーシャルゲーム「おしゃれ泥棒」のFacebook移植版にWindows Azureが採用されていることが紹介された。砂金氏は「こういった日本の文化の中で受け入れられたものが、グローバルでヒットするかはわからない。不確実性の高いところではクラウドサービスは効果を発揮する。ヒットすれば無限にスケールするし、そこそこであっても低コストで運営できるため非常に相性が良い」と、Windows Azureを含むクラウドサービス採用のメリットを明快に説明。事前のアンケートでは、来場者のゲームへの関心が低かったのが気がかりだが、今後日本でもWindows Azureのソーシャルゲームでの採用事例は増えていきそうだ。


【ソーシャル×クラウド】
Microsoftはソーシャルゲームのムーブメントにもしっかり食い込んでいる。今後はソーシャルゲームに限らず、サーバークライアント型のMMORPGでも採用事例も増えそうだ

【SVG女子】
「SVG女子」は、HTML5へのネイティブ対応を謳うInternet Explorer 9の特徴をアピールするために作成されたデモ。文字通りスケーラブルなベクターグラフィックスで作られたアニメーション作品で、点の座標とそれを結ぶ線で構成されているため、ウィンドウサイズやカラーパレットの変更を即座に行なうことができる

【Silverlight 5】
HTML5に対応する一方で、ブラウザ用プラグインSilverlightの進化も継続し、独自路線も強化していく。今年後半にリリースを予定しているSilverlight 5では3Dグラフィックス機能を強化する

【クラウドガール】
フォーラムの最後にサプライズ的に発表されたのが、Windows Azureがお友達というクラウドガール“クラウディア・窓辺”。PC自作応援キャラクターの窓辺ななみは従姉妹。本日から全4話でクラウド技術解説マンガを公式サイト上で展開していく

(C) 2011 Microsoft.

(2011年 5月 23日)

[Reported by 中村聖司]