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書籍「きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする」2月27日発売
新世代の“ビデオゲーム・マニア”作家ジャミル・ジャン・コチャイ氏による短編集
2025年2月20日 16:44
- 【きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする】
- 2月27日 発売
- 価格:2,750円
河出書房新社は、書籍「きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする」を2月27日に刊行する。価格は2,750円。
本書は、アフガニスタン系アメリカ人作家のジャミル・ジャン・コチャイ氏による短編集。著者の父や母たちが逃れてきた戦争、あるいは多くの仲間が逃れられなかった暴力と死の記憶を、現代アメリカのポップカルチャーを経由した視点から、実験的ともいえる様々な形式、手法を駆使して描いている。
ジャミル・ジャン・コチャイ氏は、アメリカ本国においてアスペン・ワーズ文学賞、O・ヘンリー賞、クラーク・フィクション賞といった著名な文学賞を続々受賞し、ニューヨーカー誌のベストブックにも選出された。2023年にはアメリカで最も影響力を持つ「全米図書賞 フィクション部門」最終候補の5作に選ばれている。
短編集「きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする」
著者のゲーム・マニアぶりがうかがえる表題作では、アフガニスタンからの移民一家で育つ少年が期待に胸を膨らませ、発売されたばかりの「メタルギア・ソリッドV」のスタートボタンを押す。アフガニスタンを舞台にしたオープンワールドのマップ上に、主人公であるスネークの姿で降り立つ少年。彼は他者の目を通してアフガニスタンの地を見つめ、そこで暮らすひとびとを見つめる。自分や家族によく似た姿のノンプレイヤーキャラクターの銃撃を受けながら、彼は叔父が殺されようとしている村に向かうことを決断する……。
……それはメタルギアで、コジマの作品で、きみの幼少期の思い出の中でも、欠かすことのできない大切なシリーズの最終作なわけで、ときどき過去作をプレイして、
「The Best is Yet to Come」のアイルランド系ゲール語の歌声を聞くと、涙が自然とあふれ出て、キーボードへと落ちていく。
その他にも、配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親(「差出人に返送」)、パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たち(「ハラヘリー・リッキー・ダディ」)、いつまでも死ねない老女を見守る天使と地球(「ヤギの寓話」)、サルに変身し反乱軍を率いることになった青年の数奇な運命(「サルになったダリーの話」)、アフガニスタン系移民一家を監視する謎の人物(「巡礼者(ハッジ)ホタクの呪い」)など、語り得ない痛みの歴史を独特のユーモアで描いた作品群が収録されている。
誰もナビーラのことを知ってるはずがなかったのに、その父方のおばさんだか母方のおばさんだかいとこだかの人たちは皆、愛の愚かさについてそれとなく話してた。その人らには二度と会うことはなかった。その後は、「ヴァンガード」の記者が取材に来て記事を書いた。「アフガニスタン人学生、絶食でパレスチナ人テロリストの解放を要求」。その三日後、誰かがオレらの駐車場にブタの死骸を置いてった。
書誌情報
書名:「きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする」
著者:ジャミル・ジャン・コチャイ氏
訳者:矢倉喬士氏
仕様:46判/上製/272ページ
発売日:2月27日
税込定価:2,750円
ISBN:978-4-309-20920-3
ブックデザイン:川名潤氏
※近日中に電子書籍の発売が予定されている。詳細は各電子書籍ストアにて確認していただきたい。
目次
きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする
差出人に返送
もういい!
バフタワラとミリアム
ハラヘリー・リッキー・ダディ
サバーの物語
職務内容は以下の通り
予感、を、思い出す
ガルブディンを待ちながら
ヤギの寓話
サルになったダリーの話
巡礼者(ハッジ)ホタクの呪い
謝辞
訳者解説
ジャミル・ジャン・コチャイ氏は、1992年アフガニスタンの内戦が激化するなか、パキスタン・ペシャワールにあるアフガニスタン難民キャンプで生まれ、間もなく、家族と共にアメリカ・カリフォルニア州サクラメントへ移住。世界最大の難民コミュニティの一つに帰属することになった。
家族の故郷アフガニスタン・ロガール州で使われるパシュトー語、ペルシャ語で、両親、親戚から聞かされた物語、また、故郷への定期的な訪問は、ジャミルに創作のインスピレーションを与え、その後の小説執筆に大きな影響を与える。
高校卒業後は自身で学費を稼ぎながらカリフォルニア州立大学サクラメント校で学士号を取得。その後、カリフォルニア大学デービス校とアイオワ・ライターズ・ワークショップでクリエイティブ・ライティングの修士号(MFA)を取得し、2019年、長編小説「99 Nights in Logar」でデビュー。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン他各紙誌から高く評価され、PEN/ヘミングウェイ賞、DSC南アジア文学賞の最終候補にも選出された。
2作目となる本書でアスペン・ワーズ文学賞、クラーク・フィクション賞、O・ヘンリー賞を受賞したほか、全米図書賞フィクション部門の最終候補にも選ばれるなど、いま最も注目を集める新世代作家のひとり。