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ポケモンは小さいほど鳴く頻度が高かった。「ポケモン」たちの“環境鳴き声”をリアルに再現する方法【CEDEC2023】

【CEDEC2023:ポケモンの せかいを かけめぐる おと!】

8月24日13時30分~14時30分 実施

 2日目を迎えている開発者向けカンファレンス「CEDEC2023」。本稿では、ゲームフリーク 開発部の一之瀬 剛氏らによるセッション「ポケモンの せかいを かけめぐる おと! おんきょうデザインで ひろがる ぼうけんの すがた!」の模様について紹介する。

 RPG「ポケットモンスター」シリーズは、最新作が出るごとにグラフィックスなどの表現方法が進化してきた。それはポケモンたちの鳴き声や環境音などの「音響デザイン」についても同様で、特に「ソード・シールド」以降は目覚ましい発展を遂げている。

 セッションでは、ゲームフリーク 開発部 サウンドの一之瀬 剛氏、コネクテコ代表取締役の北村一樹氏、フリーランスのサウンドプログラマーである岩本 翔氏の3名によって、「ポケモンの世界」でのリアルな鳴き声や環境音の制作方法を解説。最新作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」や「Pokemon LEGENDS アルセウス」での開発談なども語られた。

ゲームフリーク 開発部 サウンドの一之瀬 剛氏
コネクテコ代表取締役の北村一樹氏
フリーランス サウンドプログラマーの岩本 翔氏

現実に存在しない「ポケモンの環境鳴き声」をリアルに再現。制作のために山や動物園へ

 まずはポケモンたちの「環境鳴き声」の歴史について振り返りが行なわれた。「環境鳴き声」は、プレーヤーがフィールドに居る際に流れる鳴き声だが、これは2002年に発売された「ポケットモンスター ルビー・サファイア」にて初めて導入された。

 その後、2016年発売の「ポケットモンスター サン・ムーン」で進化を遂げ、それまではポケモン1体につき1つの鳴き声しかなかったが、「サン・ムーン」ではフィールド専用の環境鳴き声を作り、ランダムで再生されるようになった。そしてハードがNintendo Switchとなり、2019年の「ポケットモンスター ソード・シールド」ではカメラ操作が追加されたことから、サウンドシステムも大きく進化する必要があった。

「ポケモン」では現実世界の鳥や虫は存在しない。そのため、一から鳴き声を作り上げる必要がある
初めて環境鳴き声が登場したのは、2002年発売の「ルビー・サファイア」
その後、2016年発売の「サン・ムーン」で大きく進化
フィールド専用の鳴き声を作成し、“情緒ある環境音”となった
「ソード・シールド」ではカメラ操作も登場し、サウンドシステムが大きく進化する

 「ポケモン」の世界には「ポケモン」たちが住んでいて、現実世界の動物などは存在しない。だが、ゲーム内では「ポケモン」たちが自然環境の中で鳴いている様子をリアルに再現しなければならないため、開発者たちは横須賀の山奥に向かいポケモンに“会いに行く”ことにしたという。

 だが実際にポケモンは居ないため、山のあちこちに小さなスピーカーを設置してポケモンの鳴き声を再生し、その様子を録音。そこでの気づきとして環境音としてのクオリティは高いが、どうしても鳥や虫の鳴き声が入ってしまうため、スタジオで“空間の響き”をシミュレートしつつ、ベースの環境音をミックスすると“イイ感じ”だったことを明かした。

「ポケモン」しかいない世界の環境音をリアルに再現する必要がある
どうすればポケモンたちの“環境鳴き声”が聴けるか考えた結果……
ポケモンたちに会いに行くため、横須賀の山に向かったという
【山での録音の様子】
環境音としてのクオリティは高かったが、ポケモン世界にはいない鳥や虫の鳴き声が入ってしまう
そこで空間の響きなどをスタジオでシミュレート
スタジオでの収録の様子
この結果、“イイ感じ”の音声が仕上がったという

 「ソード・シールド」では、昼用・夜用・ウール―がいるエリアの昼用というポケモンセットを用意してスタジオで録音していたが、ステージごとの差分が用意できないことが課題となった。一方「Pokemon LEGENDS アルセウス」では、登場する全てのポケモンの鳴き声を遠距離・中距離で録音したが今度はアセット数が膨大となり、「スカーレット・バイオレット」のようなポケモン登場数の多い作品では使用できなかった。

 そこで「スカーレット・バイオレット」では、ソフトウェア「Wwise」のエフェクトによって距離感を演出。さらに、ポケモンたちの鳴き声をより“進化”させるために、増田順一氏や一之瀬 剛氏にヒアリングなども行なわれた。

「ソード・シールド」では、昼用・夜用などのポケモンセットを用意して録音
だが、課題としてステージごとの差分を用意できなかった
「アルセウス」では、登場する全てのポケモンの音声をスタジオで録音
クオリティは高かったが、アセットの数が膨大になってしまう
そこで「スカーレット・バイオレット」では、Wwiseを使用してエフェクトで距離感を演出した
鳴き声そのものを進化させるために抱えていた課題もある
そこで増田氏や一之瀬氏にヒアリングを実施
「その音になってユーザーが喜ぶかが大事!」

 また「ポケモン」たちの生態にあわせて、環境鳴き声を実装するために動物園へ出向いたエピソードも披露。東武動物公園へ行き、朝から晩まで動物たちの鳴き声を録音した結果、体が小さい動物ほど鳴く頻度が多いことや、時間帯で虫と鳥の鳴き声が入れ替わっていくことなどがわかった。そこで「スカーレット・バイオレット」では、鳴き声のシステムとして鳥ポケモンや虫ポケモン、大型ポケモンなどで鳴らし方を変えていることを明かした。

「Pokemon LEGENDS アルセウス」でも生態に合わせたポケモンの鳴き声を実装
エリアごとに鳴らし方を調整
だが天候や時間帯での表現など、課題もあった
そこで「スカーレット・バイオレット」では、場所や時間帯で鳴き声をコントロールしたかった
そこで開発陣は……
森での録音や……
東武動物公園にて録音
動物たちを観察した結果、見えてきたことも
「スカーレット・バイオレット」での実装に繋がった

「ポケモン」の“声”へのこだわり。環境鳴き声の進化は続く

 「ポケモン」シリーズの環境音・鳴き声の進化や実装方法について紹介された本セッション。最新作の「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」では実際に山や動物園に行った結果が、作品に反映されていることがわかる興味深い講演になっていた。

 「ポケモン」はグラフィックスのみならず、サウンド面もシリーズを通して着実に進化している。「ポケモン」で耳を澄ましてプレイしてみると、新たな発見が生まれるかもしれない。