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ポケモンは小さいほど鳴く頻度が高かった。「ポケモン」たちの“環境鳴き声”をリアルに再現する方法【CEDEC2023】
2023年8月24日 18:46
- 【CEDEC2023:ポケモンの せかいを かけめぐる おと!】
- 8月24日13時30分~14時30分 実施
2日目を迎えている開発者向けカンファレンス「CEDEC2023」。本稿では、ゲームフリーク 開発部の一之瀬 剛氏らによるセッション「ポケモンの せかいを かけめぐる おと! おんきょうデザインで ひろがる ぼうけんの すがた!」の模様について紹介する。
RPG「ポケットモンスター」シリーズは、最新作が出るごとにグラフィックスなどの表現方法が進化してきた。それはポケモンたちの鳴き声や環境音などの「音響デザイン」についても同様で、特に「ソード・シールド」以降は目覚ましい発展を遂げている。
セッションでは、ゲームフリーク 開発部 サウンドの一之瀬 剛氏、コネクテコ代表取締役の北村一樹氏、フリーランスのサウンドプログラマーである岩本 翔氏の3名によって、「ポケモンの世界」でのリアルな鳴き声や環境音の制作方法を解説。最新作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」や「Pokemon LEGENDS アルセウス」での開発談なども語られた。
現実に存在しない「ポケモンの環境鳴き声」をリアルに再現。制作のために山や動物園へ
まずはポケモンたちの「環境鳴き声」の歴史について振り返りが行なわれた。「環境鳴き声」は、プレーヤーがフィールドに居る際に流れる鳴き声だが、これは2002年に発売された「ポケットモンスター ルビー・サファイア」にて初めて導入された。
その後、2016年発売の「ポケットモンスター サン・ムーン」で進化を遂げ、それまではポケモン1体につき1つの鳴き声しかなかったが、「サン・ムーン」ではフィールド専用の環境鳴き声を作り、ランダムで再生されるようになった。そしてハードがNintendo Switchとなり、2019年の「ポケットモンスター ソード・シールド」ではカメラ操作が追加されたことから、サウンドシステムも大きく進化する必要があった。
「ポケモン」の世界には「ポケモン」たちが住んでいて、現実世界の動物などは存在しない。だが、ゲーム内では「ポケモン」たちが自然環境の中で鳴いている様子をリアルに再現しなければならないため、開発者たちは横須賀の山奥に向かいポケモンに“会いに行く”ことにしたという。
だが実際にポケモンは居ないため、山のあちこちに小さなスピーカーを設置してポケモンの鳴き声を再生し、その様子を録音。そこでの気づきとして環境音としてのクオリティは高いが、どうしても鳥や虫の鳴き声が入ってしまうため、スタジオで“空間の響き”をシミュレートしつつ、ベースの環境音をミックスすると“イイ感じ”だったことを明かした。
「ソード・シールド」では、昼用・夜用・ウール―がいるエリアの昼用というポケモンセットを用意してスタジオで録音していたが、ステージごとの差分が用意できないことが課題となった。一方「Pokemon LEGENDS アルセウス」では、登場する全てのポケモンの鳴き声を遠距離・中距離で録音したが今度はアセット数が膨大となり、「スカーレット・バイオレット」のようなポケモン登場数の多い作品では使用できなかった。
そこで「スカーレット・バイオレット」では、ソフトウェア「Wwise」のエフェクトによって距離感を演出。さらに、ポケモンたちの鳴き声をより“進化”させるために、増田順一氏や一之瀬 剛氏にヒアリングなども行なわれた。
また「ポケモン」たちの生態にあわせて、環境鳴き声を実装するために動物園へ出向いたエピソードも披露。東武動物公園へ行き、朝から晩まで動物たちの鳴き声を録音した結果、体が小さい動物ほど鳴く頻度が多いことや、時間帯で虫と鳥の鳴き声が入れ替わっていくことなどがわかった。そこで「スカーレット・バイオレット」では、鳴き声のシステムとして鳥ポケモンや虫ポケモン、大型ポケモンなどで鳴らし方を変えていることを明かした。
「ポケモン」の“声”へのこだわり。環境鳴き声の進化は続く
「ポケモン」シリーズの環境音・鳴き声の進化や実装方法について紹介された本セッション。最新作の「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」では実際に山や動物園に行った結果が、作品に反映されていることがわかる興味深い講演になっていた。
「ポケモン」はグラフィックスのみならず、サウンド面もシリーズを通して着実に進化している。「ポケモン」で耳を澄ましてプレイしてみると、新たな発見が生まれるかもしれない。
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