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ゲームはこう変わる。業界人3人が、新CS機から見える2021年を展望
2020年9月25日 16:31
- 9月25日 開催
初の完全オンライン開催となった東京ゲームショウ 2020。2日目最初の放送は「2021年に向けたゲーム業界最新技術トレンド」と題して、ゲーム機の技術面に詳しい3人のゲストがプレイステーション 5やXbox Series Xなど次世代コンソール機、10月に発売されるスタンドアロンのVRヘッドセット「Oculus Quest 2」についてインプレッションを語った。
ゲストはゲームジャーナリストの新 清士氏、テクニカルジャーナリストの西川善司氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン プロダクト・エヴァンジェリスト/教育リードの簗瀬洋平氏の3名。モデレーターは日経BP、日経クロステック/日経エレクトロニクスの記者、東 将大氏が務めた。
新型コンソールの注目ポイントはサウンド、ストレージそしてソーシャル
最初に、予約が始まったPS5とXSXについて、新氏は「今回のびっくりポイントは値段」と言う。これまで、新型コンソール機発売時には、全世代に比べて性能が上がるぶん、比例して価格も高くなっているという印象があったが、PS5とXSXは性能に比例すると価格を抑えてあるという印象が強い。つまりお買い得ということだ。新氏も「値段が想定よりも1万円くらい安かった。特にXbox Series Sが予約開始直前に突然3,000円の値下げを発表したことは大きなインパクトになっている」と語っていた。
グラフィックスの向上はもちろんだが、西川氏はサウンド回りに注目。PS5はGPUベースの「Tempest」3Dオーディオシステムという独自の3Dサウンドシステムを開発。これは簡単に言うと、前後左右上下360度の音をヘッドフォンやイヤフォンで聴き分けることができるという技術だ。対してXSXはProject Acoustics(プロジェクト・アコースティック)と呼ばれる、空間内での音の波の伝わり方を事前に計算して正確な音響効果を生み出すというテクノロジーを搭載する。この技術はAndroidなど他のプラットフォームでの利用も許可するといいうことで「面白いシナジーが生まれるかもしれない」と期待を口にした。西川氏はこれらサウンド回りの技術によるゲーム体験のレベルを上げるような進化を期待している。
簗瀬氏は、グラフィックス性能が向上していることに関して、解像度が上がると人間が画面が見て解釈するコストが下がり、情報量を増やすことができる。そのため作る側としてもできることが増える、と開発者支援をしている立場からの感想を述べた。
新CS機は、PS5、Xboxシリーズ共に光学ドライブあり、なしの2バージョンが発売されるが、それらすべてにZen2世代と言われるAMDのRyzenプロセッサーと、navi 2またはbig naviと呼ばれるRadeon RDNA 2をベースにしたGPUが搭載されている。西川氏は、SoC部分は共通していても、微妙に性能差があるのでそれがハードとしての評価にどう繋がるのかという部分に注目したいという。
今世代機の特徴でもあるストレージについては、PS5はデータを転送するための転送路(レーン)の数が4レーンで、XSXは2レーンという差がある。しかし単純にXSXが劣っているわけではなく、XSXは外付け用の2レーンスロットを別に備えており、外付けSSDからもゲームを起動することができる。PS5は外付けからは起動できないため、PS5は最高性能を追求、XSXは利便性を追求とアプローチに差があるのだと西川氏。簗瀬氏も、高速SSDによって、ゲーム体験がどう変化するのかということには注目しているという。
ズバリどちらを買うべきかという質問に対しては、「遊びたいゲームが出た時に買うのが一番」と西川氏。ちなみに西川氏はPS5本体はまだ手に入れてないが、コントローラーと充電器はゲットしたので、もし本体が手に入らなければ年内は充電して楽しむということだ。
簗瀬氏は新CS機のネットワーク周りに注目している。近年のハードは、スクリーンショットや動画を撮影してSNSに投稿したり、実況配信をしたりといったソーシャルな機能が必須といってもいい状況だ。簗瀬氏は、ハードが変わるので、ソーシャルな機能がどう変化するのかに期待し、ネットワーク的なSNSとの境目がどんどんなくなっていくのではないかと語った。
また、新CSは光学ドライブなしの廉価なモデルが用意されていることからも、Xbox Game PassやPlayStation Nowといったサブスクリプションサービスへのシフトが明確になった世代でもある。マイクロソフトによるZeniMax Media買収が大きなニュースになったが、ゲームも映像のような定額配信が当たり前になる時代がもうすぐそこに迫っている。
Oculus Quest 2の発売で日本にもビッグウェーブがくるか?
10月13日に発売するOculus Quest 2発売を第二のVR元年と呼ぶ声もあるように、VRでも大きな革新が起きようとしている。Oculus Quest 2はPCにつながなくても稼働するスタンドアロンのVRヘッドセットだが、その描画性能は現状最高峰であるValve Indexを凌駕する。その画質は、新氏が「びっくりするくらい綺麗」というほど。
価格も64GBが33,800円と前世代に比べて低価格に抑えられており、販売経路も通販に加えて一般の家電量販店の店頭にも並ぶ予定だ。
VRヘッドセットはアメリカではかなり一般に普及しており、「VR Chat」のようなコミュニケーションツールもにぎわっている。日本ではまだまだマイナーな存在だ。とはいえ、簗瀬氏は日本でもコミュニケーション方面に使う人が増えていると指摘。ゲームを知らなかった人が「VR Chat」で自分のアバターを作ってアップロードするなど、VRをコミュニケーションツールとして利用する人が増えているという。FacebookがOculusを買収したのは、ある程度そういう流れを予見していたからではないかとも考察した。
リアルとバーチャルが融合していくということなのか、という東氏の問いに、西川氏は、このコロナ禍の中、実際にリアルで会えなくてもバーチャルなら物理的な距離を無効化できる。Zoomやテレビ電話でもそれは可能だが、VRならその場にいるという感覚、顕在感をも転送できる。Facebookはそういう人と人とが触れ合うようなコミュニケーションまでVRでやっていきたいという目標があるのかもしれないと語った。
インターネットを介した対戦プレイはもちろん、「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」や「Demon's Souls(デモンズソウル)」にみられる非同期コミュニケーションまで、現代のゲームはスタンドアロンであってもインターネットを通じたコミュニケーション要素が入っていることが多くなってきた。
ネットを通じたコミュニケーションが技術的に楽になり、できることが当たり前になってきていると簗瀬氏。「フォートナイト」のように、バトルロイヤルゲームでありながら、プレーヤーが集まってライブを楽しむようなコミュニケーションの場としてゲームが重要になってきている。SNSはゲームやゲーム配信で人を集めており、相互補完的にどんどんゲームとSNSの区別がなくなっていくのではないかと予測した。
Unityはモバイルゲームのエンジンとして使われることがおおいが、「Fall Guys」のようなゲームにもバックエンドとして使用されている。小さなプラットフォーマーが、ソーシャルな技術を使って新しいゲームを作ることができるかもしれないと期待を寄せた。
2021年に期待することは
「ソード・オブ・ガルガンチュア」というVRゲームの開発にも携わっている新氏は、2021年にリアルとヴァーチャルを分ける意味がなくなるようなコミュニケーションを期待している。その時にいる場所によってアバターを使い分け、自分のアイデンティティをも使い分けるような時代が今後進んでいくのではないかと語った。
大画面マニアの異名を持つ西川氏は、ウルトラワイドアスペクトへの対応を望みたいと、ぐっと現実的な期待を述べた。一般的なウルトラワイドモニターの解像度は3,440×1,440。このモニターを50cmから70cm程度の視距離で見ると、視野角は90度ぼどになる。一般的な16:9のモニターでは45度、VRの最新機種で100度程度なので、ウルトラワイドモニターを使えば手軽にVRに匹敵するような没入感を得ることができる。「次世代機はハードウェア的にもポテンシャル的にもいけるので、ウルトラワイドに対応して欲しい。グランツーリスモで自分の車のフェンダーから追い越している車が見えたりすると最高じゃないですか!」と期待を熱く語った。また、PCでもNVIDIA GeForceの3000番台が発売され、年末にはRyzenの次世代プロセッサーが発売されるPCの進化にも注目したいとのことだった。
簗瀬氏は「今想像できないもので遊びたい」と簡潔。ゲームクリエイターが脳内で思い描いている究極の形が、技術的な問題で実現できていなかった場合、新しいハードによって実現できる可能性が出てくる。「それが新しいゲーム機の醍醐味です」と語った。また簗瀬氏は遊んでいる時に周囲と隔絶されないMRにも期待を寄せていると語っていた。