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これもeスポーツ! 麦わら帽子が乱れ飛ぶ「Farming Simulator League」レポート

小麦をいかに素早く大量に収穫できるかを競うチームバトルに会場は大盛り上がり

【Farming Simulator League】

8月20~24日開催

 E3でもgamescomでも感じたことだが、ゲームショウにおけるeスポーツのムーブメントは一段落したと思う。それはネガティブな意味ではなくポジティブな意味で、eスポーツがゲームシーンにおいて当たり前になった結果、こうしたゲームショウでeスポーツイベントが特別なものとして捉えられなくなっているということだ。gamescomでは最大手のESLをはじめ、uniliga.ggやLogitechなど様々なメーカーがeスポーツイベントを展開していたが、いずれも規模を縮小するか、形を変えて開催しており、欧米ではeスポーツが人びとに浸透した存在になったんだなということを実感した。

【eスポーツ関連の出展は減少傾向】
ドイツのeスポーツ運営会社uniliga.gg主催の大会

 そうした中で、eスポーツの分野で、ほぼ唯一大フィーバーしていたと言えるのがGIANTS Softwareだ。日本でも発売されている農業シミュレーション「Farming Simulator」シリーズを手がけるメーカーだ。スイスに本拠を置くGIANTS Softwareは、毎年gamescomに出展し、最新作をアピールしているが、今年は若干様子が違っていた。「Farming Simulator」のeスポーツリーグ「Farming Simulator League」を立ち上げていたのだ。ビジネスデイでその存在を知って、大会が実施される一般公開日に改めてブースに足を運んでみた。そこには、まさにeスポーツらしい熱狂と歓声があった。

【GIANTS Software】
GIANTS Softwareブース
ビジネスデイの設営中の様子。「Farming Simulator League」ってなんだ?

 正直に告白すると「Farming Simulator League」の看板を最初に見たとき、正直甘く考えていた。「ファーミングでeスポーツなんていくらなんでも無理でしょ」と、「ファーミングシーンに人びとは熱狂できるのか」と、「果たしてこの試合を観るために人びとは会場まで足を運ぶのか」と。しかし、これはすべて筆者の完全な間違いだった。

 ファーミングでチームベースeスポーツは成立するし、チームの水際だったファーミングを期待して大勢が足を運んでいたし、角形ベール(干し草を運搬しやすいように固めたもの)が倉庫に運び込まれた瞬間、あるいは収穫した小麦が格納された瞬間、拳を突き上げて歓声を挙げるのだ。なるほど、これは確かにeスポーツだ。

【eスポーツ!】
本大会で優勝したTRELLEBORGの一戦
3対3のチームバトル
まさかの凡ミスに顔を曇らせる敵チームの選手
勝ったら固い握手を交わす

 「Counter-Strike: Global Offensive」や「オーバーウォッチ」、「League of Legends」、「ストリートファイターV」といったメジャーなeスポーツばかりに触れ、いつしかそれがeスポーツだとタガを填めていた筆者にとっては、すべてが未知の世界だったが、純度の高い熱狂と歓声に単純に感動した。

 実況解説がドイツ語のみなのと、何度か農業機械で収穫してみたというほどのプレイ歴しかない筆者には、正直何がどうなっているのかわからないのだが、何試合か観戦していくうちに、15分の試合時間の中に、あたかも「LoL」のサモナーズリフトのような壮大なドラマと戦術が組み立てられていることがわかり、会場取材をさぼって観戦し続けてしまった。

 見始めの頃は、最前列に陣取っている麦わら帽子勢は何なのかと、さすがにいくら「Farming Simulator」が好きだからといって麦わら帽子を被ってはこないだろうと、最近日本でもたまに見かける“サクラ”なのかといぶかしんでいたが、試合のインターバルの間にMCが配っていたものであることがわかり、むしろ熱心なファンがずっと観戦していることがよくわかった。

【謎の麦わら帽子勢】
朝からずっと最前列で試合を見守るファン達。全員、インターバルで配られる麦わら帽子を被っている
筆者も1つゲットしようと思ったが、この凄まじい熱狂の中で勝ち取らなければならず、無事敗退

 こうした無知から来る偏見を完全に取り払ってピュアなeスポーツとして観戦すると、「Farming Simulator League」はeスポーツとして非常によく考えられていることがわかる。農業機械をバンするフェイズのストラテジー、あるいは農業機械の巧みな操縦術、広大な小麦畑の収穫方法、どういうサイクルで収穫物を倉庫に搬入するか、農業機械の切り替えのタイミング、そして各パートでの3人の連携、これらが最終的にスコアとなって現われてくる。ビジュアルがとにかくずっと地味であるため、甚だわかりにくいが、実にeスポーツとして良くできている。

【基本的な試合の流れ】
まずは農業機械のバンを行ない、相手の有利な戦術を潰していく
バンが終わると、農業機械がズラリと並ぶ
いざ試合スタート。どの機械で何をするか、いきなり無限の選択肢が与えられる
見事な連携で小麦を刈ったそばから収穫していく
一定時間が過ぎた状態。青がかなり有利に進めているように見えるが、実はそうでもなかったりする
ベールを倉庫のそばに降ろしていく。この降ろし方も細かいテクニックが要求される
角ベールの格納シーンを見守る、ただそれだけのビュー。スコアが加算されると盛り上がる
こちらは小麦をサイロにため込んでいく
最終結果はスコアで決まる

 ゲームはリアルな物理演算で処理されているため、操作ミスで農業機械を横転させたり、スピードの出し過ぎでコーナーリングを誤ったり、ベールの積み下ろしで山を崩してしまったりなど、大小様々なトラブルが続発する。観客はその都度一喜一憂し、小麦やベールが無事、最終地点に格納され、スコアがカウントされると歓声が上がる。

【様々なアクシデント】
農業機械で農業機械を押して運ぶ
油断すると運び損なう
ベールを搬入する際、浮かび上がってしまう
味方が待つその地点に角ベールを落とす技

 競技性、ルール、フェアネスがあれば、どういうタイトルであってもeスポーツは成立する。やっぱりeスポーツはおもしろいなと思った。すでに昨日行なわれた決勝の模様がYouTubeにアップされているので、興味を覚えたeスポーツファンは一度見て見ては如何だろうか。

【Farming Simulator League @ gamescom 2019】

【子供にも人気】