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これもeスポーツ! 麦わら帽子が乱れ飛ぶ「Farming Simulator League」レポート
小麦をいかに素早く大量に収穫できるかを競うチームバトルに会場は大盛り上がり
2019年8月25日 20:04
- 【Farming Simulator League】
- 8月20~24日開催
E3でもgamescomでも感じたことだが、ゲームショウにおけるeスポーツのムーブメントは一段落したと思う。それはネガティブな意味ではなくポジティブな意味で、eスポーツがゲームシーンにおいて当たり前になった結果、こうしたゲームショウでeスポーツイベントが特別なものとして捉えられなくなっているということだ。gamescomでは最大手のESLをはじめ、uniliga.ggやLogitechなど様々なメーカーがeスポーツイベントを展開していたが、いずれも規模を縮小するか、形を変えて開催しており、欧米ではeスポーツが人びとに浸透した存在になったんだなということを実感した。
そうした中で、eスポーツの分野で、ほぼ唯一大フィーバーしていたと言えるのがGIANTS Softwareだ。日本でも発売されている農業シミュレーション「Farming Simulator」シリーズを手がけるメーカーだ。スイスに本拠を置くGIANTS Softwareは、毎年gamescomに出展し、最新作をアピールしているが、今年は若干様子が違っていた。「Farming Simulator」のeスポーツリーグ「Farming Simulator League」を立ち上げていたのだ。ビジネスデイでその存在を知って、大会が実施される一般公開日に改めてブースに足を運んでみた。そこには、まさにeスポーツらしい熱狂と歓声があった。
正直に告白すると「Farming Simulator League」の看板を最初に見たとき、正直甘く考えていた。「ファーミングでeスポーツなんていくらなんでも無理でしょ」と、「ファーミングシーンに人びとは熱狂できるのか」と、「果たしてこの試合を観るために人びとは会場まで足を運ぶのか」と。しかし、これはすべて筆者の完全な間違いだった。
ファーミングでチームベースeスポーツは成立するし、チームの水際だったファーミングを期待して大勢が足を運んでいたし、角形ベール(干し草を運搬しやすいように固めたもの)が倉庫に運び込まれた瞬間、あるいは収穫した小麦が格納された瞬間、拳を突き上げて歓声を挙げるのだ。なるほど、これは確かにeスポーツだ。
「Counter-Strike: Global Offensive」や「オーバーウォッチ」、「League of Legends」、「ストリートファイターV」といったメジャーなeスポーツばかりに触れ、いつしかそれがeスポーツだとタガを填めていた筆者にとっては、すべてが未知の世界だったが、純度の高い熱狂と歓声に単純に感動した。
実況解説がドイツ語のみなのと、何度か農業機械で収穫してみたというほどのプレイ歴しかない筆者には、正直何がどうなっているのかわからないのだが、何試合か観戦していくうちに、15分の試合時間の中に、あたかも「LoL」のサモナーズリフトのような壮大なドラマと戦術が組み立てられていることがわかり、会場取材をさぼって観戦し続けてしまった。
見始めの頃は、最前列に陣取っている麦わら帽子勢は何なのかと、さすがにいくら「Farming Simulator」が好きだからといって麦わら帽子を被ってはこないだろうと、最近日本でもたまに見かける“サクラ”なのかといぶかしんでいたが、試合のインターバルの間にMCが配っていたものであることがわかり、むしろ熱心なファンがずっと観戦していることがよくわかった。
こうした無知から来る偏見を完全に取り払ってピュアなeスポーツとして観戦すると、「Farming Simulator League」はeスポーツとして非常によく考えられていることがわかる。農業機械をバンするフェイズのストラテジー、あるいは農業機械の巧みな操縦術、広大な小麦畑の収穫方法、どういうサイクルで収穫物を倉庫に搬入するか、農業機械の切り替えのタイミング、そして各パートでの3人の連携、これらが最終的にスコアとなって現われてくる。ビジュアルがとにかくずっと地味であるため、甚だわかりにくいが、実にeスポーツとして良くできている。
ゲームはリアルな物理演算で処理されているため、操作ミスで農業機械を横転させたり、スピードの出し過ぎでコーナーリングを誤ったり、ベールの積み下ろしで山を崩してしまったりなど、大小様々なトラブルが続発する。観客はその都度一喜一憂し、小麦やベールが無事、最終地点に格納され、スコアがカウントされると歓声が上がる。
競技性、ルール、フェアネスがあれば、どういうタイトルであってもeスポーツは成立する。やっぱりeスポーツはおもしろいなと思った。すでに昨日行なわれた決勝の模様がYouTubeにアップされているので、興味を覚えたeスポーツファンは一度見て見ては如何だろうか。