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【GDC 2019】ゲーム音声のオーダーメイド! 聞こえ方が劇的に変わる音声サービス「Immerse」を試してきた
耳の形を写真+AIで判定。「そこにいる感覚」を強化する音響技術
2019年3月24日 11:43
耳の形には個性がある。それは見た目の話だけではなく、“音の聞こえ方”が変わるということだ。敵の足音や銃声など、タイトルによってはゲーム音声がクリティカルにプレイに影響する。特にヘッドフォンの場合、どんなにクリアな音声が鳴っていようと、そもそもの聞こえ方が違うのだから、その影響は想像以上に深刻なはずだ。
ではもし、プレーヤーのそれぞれの耳に形に合わせた音声でゲームがプレイできるとしたら……。そんな技術を持つ企業が、GDC 2019のEXPOエリアに出展していた。企業の名前はEMBODY。「Immerse」というサービス名を掲げ、今年の第2四半期に日本を含めた世界での展開を準備中という。
実際に体験してみたところ、確かに驚くほど聞こえ方が変わった。さっそく、その様子をお伝えしたい。
ヘッドフォンで聞くゲーム音声のアンフェアな時代が終わるかも
Immerseでは、まずスマートフォンアプリを使用して、利用者の耳の形を撮影する。耳の形はImmerseのクラウドサーバーにアップロードされ、AIによって最適な音声設定を判定。利用者には固有のIDが発行され、以降はImmerseのサービスでIDに合わせた音声設定が利用できるようになる。
会場ではImmerseのWindows用アプリが展示されており、そこで自分用の音声設定で「Counter-Strike: Global Offensive」をプレイできた。さっそく、ヘッドフォンを被って準備完了。一体どこまで変わるのだろうか。
結論から言えば、特に視界に入らない足音や銃声の音が明らかにクリアになる。設定オフだとなんとなく方向がわかる程度だが、設定オンでは方向や距離感まで含めて「きっとあそこで鳴っている」とピンポイントで位置が掴めるくらいにまで変わる。試しに他の人用の設定も試してみたのだが、やはりしっくり来ない。
単なるイコライザレベルの変わり方ではないので正直驚いたのだが、多くの人が同じような感想を持つそうだ。一般的なヘッドフォンでは、平均的な耳の形に最適なように音を鳴らしている。そのため、どうしても人によってズレが起きるのだという。
逆に言えば、より平均的な耳の人(そんな人は滅多にいないそうだが)であるほどゲーム音声が精度高く聞こえていたということであり、今までがアンフェアな状態だったとも言える。
Immerseを使うことの他のメリットとしては、VR作品への没入度も大幅に上がる。今までのVR作品はグラフィック重視の傾向が強かったのだが、没入度を上げるためには音声の効果は欠かせない。
Immerseがあれば音の方向、距離感の精度が上がり、より「その空間にいる感覚」が強くなる。立ち上げ当初のEMBODYはVRへのサービス展開を想定した企業だった経緯もあり、VRへの展開も楽しみにしているそうだ。
サービスはまずWindowsアプリからスタートし、ゆくゆくはコンソール機、モバイルへの展開も目指している。GDC 2019の展示では様々な企業から反響があり、今後は各企業と連携してゲームの音声サービスを展開していきたいとスタッフが話してくれた。
料金などのサービス体系はまだ決まっていないが、まずは展示されていたWindowsアプリからスタートする予定。AI技術によってコストが抑えられたことで、より現実的な価格設定になりそうだとも教えてくれた。ヘッドフォン製品にImmerseサービスが付属するような形で展開するそうだ。ゲームシーンを変えるかも知れない未来の音声技術、展開が非常に楽しみである。