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【特別企画】進化していく「オープンワールド」。さらなる自由を提示した「ゼルダの伝説 BOW」を経て、「RDR2」はどんな世界を見せてくれるのか?
2018年8月9日 13:16
「レッド・デッド・リデンプション2(「RDR2」)」が10月26日に発売となる。各販売店では、現在予約を受付中だ。
本稿では来たるべき本作の発売に合わせ、「RDR2」の大きな特徴である「オープンワールド」というゲームジャンルを今1度問いかけたい。筆者にとってのオープンワールドの体験は「グランド・セフト・オートIII」からはじまった、3Dグラフィックスで再現された町の中を歩くという視覚体験だけでなく、街ゆく人や風景など、「ゲームで世界を表現する」という手法は、筆者の価値観を揺さぶった。
そして「スカイリム」のストーリーテリングを経て、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下、「ゼルダの伝説 BOTW」)」に至る。「ゼルダの伝説 BOTW」でオープンワールドは新たな進化を迎えたのだ。筆者は様々な海外のオープンワールドをプレイしてきたが、「ゼルダの伝説 BOTW」は特別な意味を持っている。「『BOTW』以外オープンワールドって何か知らない」という人にもその凄さがわかるように、順を追ってオープンワールドを語っていき、「ゼルダの伝説 BOTW」の凄さをちゃんと提示していきたいと思う。
そして「RDR2」は「ゼルダの伝説 BOTW」以降の、AAAオープンワールドタイトルである。前作で広大な西部を表現し、西部劇にの世界を旅する楽しさを提示してくれたRockstar Gamesが、最新作である「RDR2」でどんな世界を見せてくれるのか、期待を込めたい。
「GTAIII」のオープンワールドの衝撃! 世界を歩く楽しさがゲームの主役
筆者にとってのオープンワールドとの出会いは、日本では2003年に発売された「グランド・セフト・オートIII(「GTAIII」)」だった。オープンワールド、という言葉はそのときの筆者にはピンとこなかったが、“箱庭(サンドボックス)ゲーム”という言葉はしっくりきた。まさに1つの地域まるごとが3Dグラフィックスで描き出されており、実際の街を歩いているような体験が味わえたのだ。
今までのアドベンチャーゲーム、RPGでも広大な地域、マップはあったが、3D空間で自由に歩き回り、様々な体験ができる、「この街を自由に歩き回って良い」と提示された体験はなかった。その街を歩く楽しさは筆者に「ゲームでこういうことができるのか」という衝撃を与えたのだ。ビジネス街、貧困地域、路地裏……場所によって風景だけでなく、歩く人達の服装や、走っている車が違う。そして様々なエピソードで街の印象が変わっていく。
世界に関してプレーヤーの印象も変わっていくのだ。車で街を走る印象は歩くときと大きく違うし、ボートに乗ると行動範囲が変わる。ストーリーを進めることで行動範囲が広がる他、アイテム集めやサイドミッションもあり、街が“意味”を持っていく。「ここは○○の家だ」、「ここにはいつも防弾チョッキが出るので、ミッション前に寄っておこう」、「コールガールは人通りが少ない所に現われるのか」……などなど、プレイすることでさらに街に実在感が増すのだ。「ゲームってすげえ、世界ってすげえ」と強く心が揺さぶられた。
その後様々なオープンワールドゲームをプレイした。昔の記憶で印象に残っているのは、2009年の「レッドファクション:ゲリラ」である。火星の広大な地域をまるまる再現したというスケールのでかさと、巨大なビルなど大きな建造物も破壊できる振り切ったゲーム性で、「オープンワールドってこういうこともできるのか」と強い印象に残っている。
「GTAIII」から多くのオープンワールドが始まったためか、オープンワールドは都市を舞台にしたゲームが多い。筆者のお気に入りは「グランド・セフト・オート・サンアンドレアス」、「グランド・セフト・オートV」、「ウォッチドックス2」で描写されるカリフォルニア地域である。E3や、GDCで筆者はロサンゼルス、サンフランシスコには訪れたことがあり、見た事がある建物が再現されているのが楽しかった。
「マフィアIII」ではニューオリンズが取り上げられており、こちらはいつか観光で行ってみたいと思うほど気に入った。オープンワールドは旅行気分にさせてくれるだけでなく、街の住人として街そのものに愛着を持てるのが楽しい。「ニューオリンズの大きなお墓は、洪水で墓地が流されたときにしたいが浮き上がってくるのを防ぐため」など、地域にも詳しくなった。
「フィールドとゲーム性」という意味では、今でも遊んでいる「GTA オンライン」は今後にも繋がる未来が提示されていると感じた。オンラインゲームはプレーヤーにとって“生活空間”となる。特にやりこんでいるプレーヤーは街の隅々、路地の1本1本も把握するようになる。プレーヤーにとっては「警察が来たときの逃走経路」、「ある場所に行くための道のない場所でのルート」、「ミッションでの印象深い場所」などは把握している。
しかも、街のマップを使ってテーマに合わせたレース場も組み上げるのだ。筆者は道の隅々まで把握しているクルーメンバーの自作のレースが好きだ。「小さな車で遊ぶ、とんでもない細い路地を進むレース」、「スーパーカーの高速性能を思いっきり活かせる幅広いコース」などなど、テーマが明確で、綿密なロケーションと試行錯誤で作られている。オープンワールドをレース場として切り取る。そして他のプレーヤーと一緒に楽しむ。ゲームだから、オンラインゲームだからできる遊びである。オープンワールドの可能性を提示してくれる遊び方といえるだろう。
「スカイリム」が提示したプレーヤーの歩く道が英雄物語になるゲーム性
そして、筆者の「オープンワールド観」に強い衝撃を与えたのが「The Elder Scrolls V: Skyrim(以下「スカイリム」)」である。ファンタジー世界を歩き、そしてその道のりが大冒険に繋がる。本当の意味で世界を歩く楽しさを実感できたのが「スカイリム」だった。
1つの何気ない洞窟に入った時に得た宝物がとんでもない大冒険に繋がる。魔法使いを志して学校に入ったら、世界の秘密を握る陰謀に巻き込まれる。道行く人に助けを請われる、偶然沈没船を見つける、街の権力者争いに巻き込まれる……剣と魔法をかじった冒険者が、いずれ世界の命運を握る存在へとなっていく。「スカイリム」はその英雄の物語(サーガ)をゲームプレイに織り込んでいるのだ。
大きな冒険、小さな冒険、それは全てプレーヤーの“歩み”で積み重ねられていく。マップで目的地を決めて進んでも、険しい崖や、海、強力な怪物などで回り道を余儀なくされる。たまたま街が近くにあり、安全を求めて立ち寄る。そういった行動の先に冒険が待っている。本筋を追い求めて出会いを切り捨てても良いし、際限なく寄り道をしてもいい。プレーヤーは1人として同じ道を進まないだろう。時には寄り道をし、時には積極的に新しい冒険を求めて、プレーヤーは“世界”に旅立っていく。
多くの物語は、こういう構造なのではないだろうか。腕に覚えのある者が、たまたま遭遇した事件から冒険を繰り広げる。「こういった英雄譚をゲームとして表現したい」……「スカイリム」はそういった開発者の願望を具象化したゲームと言える。そして、「スカイリム」ほど自由度が高く、多彩な冒険が待っているゲームを筆者はプレイしたことがなかった。従来のRPGは地域によって敵の強さが決められ、プレーヤーの進む道を強制していたが、スカイリムでは、お金を払えばスカイリム地方の様々な場所に馬車で高速移動でき、様々な地域で書けだし冒険者として冒険を始められ、そして偉大な英雄として頭角を現わせるのだ。
“オープンワールドの英雄物語”とはこういうものなのか、という衝撃は今でも筆者の中にある。筆者にとっての最初の衝撃は「フォールアウト3」だったが、自由度の高さという意味で、こちらの方が大きかった。その楽しさは、「ウィッチャー3」や、「フォールアウト4」といったタイトルで様々な要素を発展させていくのだが、やはり筆者にとって「スカイリム」で感じた衝撃は大きかった。そして「ゼルダの伝説 BOTW」によって筆者は3度目の衝撃を受けるのだ。
全てが自由、「ゼルダの伝説 BOTW」が到達した真の自由度と、世界を探索する喜び
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(「ゼルダの伝説 BOTW」)」での衝撃、その「真のオープンワールド」といえる要素は、実は筆者は最初気が付かなかったのである。「ゼルダの伝説 BOTW」ではリンクは記憶を失ったまま目覚め、提示されるまま「魔王ガノン」を倒すことを使命として告げられる。
ガノンは強大な敵であり、リンクは目覚めたものの力を失っており、力の証したる「マスターソード」も失ってしまっている。リンクは、乗っ取られた4つの聖獣を取り戻し、4人の英傑の力を得、失われたマスターソードを見つけ出し厄災・ガノンに立ち向かう……というストーリーなのだが、プレイをしていて「これは、いきなりガノンに行くことができるのでは?」と気が付いてしまったのだ。
そう、「ゼルダの伝説 BOTW」はリンクが目覚めたところから最短でガノンに向かい、倒すことすらできるのだ。ネットの猛者達は50分以下という驚きのタイムでガノンを討伐している。それにはミスをしないプレイヤースキル、何度失敗してもめげない根気、経験を活かし、研究し、実行する力が求められる。ガノンを倒すのはそれだけ困難な道なのだ。もちろん普通のプレイでこれだけの厳しさは求められない、しかし、「できる」というのは、本作がどれだけゲームとして練られているかを物語っている。そう、本作の開発者は「目覚めていきなりボス直行」という極端なプレイすら可能にするゲーム設計をして、本作の“自由度”を提示しているのだ。
もちろん筆者のように4聖獣やマスターソードだけでなく、祠を巡って力を蓄え、様々な産地で特産品を得て冒険に役立つ食べ物を用意し、装備を充実させてじっくりガノンに立ち向かうというプレイスタイルだってありだし、ガノンそっちのけで世界中の祠を訪れたり、隠された宝物を探してもいい。「ゼルダの伝説 BOTW」の世界は全てのプレーヤーが自分のペースで世界を駆け回り、思うままに冒険をしていいのだ。厄災ガノンという大きな目的は提示されている、しかし、それよりもまず、「冒険」を楽しんで欲しい、「ゼルダの伝説 BOTW」はそういうゲームだと筆者は捉えている。
ストーリーだけでなく、「ゼルダの伝説 BOTW」はプレーヤーの行動、アクションそのものに世界が反応するところが革新的なのだ。例えば下生えに火をつける、といった行動は他のオープンワールドではできなかった。「ゼルダの伝説 BOTW」では下生えに火をつけることで上昇気流を生み出し、そこから高いところに飛び上がることすらできる。それは攻略に必要な限られた場所だけでなく、どこでもできるのだ。
リンクはどこの壁でもよじ登れるし、理論上リンクに上れない壁はない。プレーヤーが思いつき、試したことを実現できる世界。それは「ゼルダの伝説 BOTW」にはなかった。上れない岩壁、切れない巨木、壊せない岩でプレーヤーのオープンワールドは常に制限されてきた。しかし「ゼルダの伝説 BOTW」はそれさえも取っ払い、さらに自由な世界をプレーヤーに提示したのである。
言ってみれば「ゼルダの伝説 BOTW」は究極のオープンワールドである。本作を前にすると、他のゲームには不自由を感じるかもしれない。「ゼルダの伝説 BOTW」は壁すら登れるし、高いところに上れば滑空だってできる、困難を乗り越えた先には様々な秘密があり、無限の冒険が世界に広がっている。「ゼルダの伝説 BOTW」がどれだけオープンワールドというものを研究し、そして開発者達が自分達が目指す自由度にこだわり、ユーザーの探究心に真摯に向き合ったか、プレイすることでわかる。
その自由度は「どこまでも行ける」だけだから楽しいのではない。山は標高が上がれば雪景色となり、寒くて動けなくなる。火の山は歩いているだけで発火してしまいそうになるし、道の先に不意に巨大なモンスターと遭遇し、なでられるだけで死んでしまうこともしょっちゅうだ。気ままに歩いているだけでは、この世界は危険に満ちている。しかし、装備を調え、ハートの器を増やし、食べ物で耐性をアップすることで困難を乗り越えることができる、リンクを鍛え、プレーヤースキルを学ぶことで強力な敵とも戦えるようになる。やりこむ楽しさ、冒険を積み重ねる自由度も、本作は持っているのだ。
そう、オープンワールドゲームは「ゼルダの伝説 BOTW」という挑戦状から無関係ではいられない。特に「GTA」シリーズでオープンワールドというジャンルを切り開き、前作「レッド・デッド・リデンプション」で西部劇世界を見事にオープンワールドとして表現したRockstar Gamesが、「RDR2」でどのようなオープンワールドを見せてくれるか、期待したいところだ。
「RDR2」では“共同生活”がプレイの鍵、ギャングとして生きていく世界のリアリティとは?
「RDR2」に関しては、公式ページで一部メディアによる先行プレイレポートも掲載され、ゲームの一部が見えてきた。大きな特徴としては「前作以上に注力された時代描写、生物描写」、「ギャングとしての生活の追求」であるという。
主人公・アーサーはギャング団ダッチ・ギャングの1員だ。ギャング団は無法者の集まりであるが、擬似的な家族でもある。食料が足りなくなったら皆で狩りに行くなど、役割を持って行動し、協力し合い、過酷な西部を生きぬいてる。まだ明確なゲームデザインは秘密とされているが、この「共同生活」という要素は大きなキーワードだろう。普段の生活から準備や協力が必要となると、銀行強盗や、列車強盗などの準備や、武器弾薬の調達など、そういった所も表現されるのだろうか。
そして人物、世界の描写である。当時の人間はどこに住み、どんな生活をしてどういう服を着て、どう生きていたのか。それらは非常に綿密に考証され、表現されているのがスクリーンショットやトレーラーから見てわかる。また野生動物の描写は前作のウリの1つだが、「RDR2」ではさらにパワーアップしていくという。前作でもピューマはこちらを襲う特に恐ろしい敵だったが、前作以上に過酷な自然との闘いも体験できそうだ。
狩りや生活、荒野の旅……「ゼルダの伝説 BOTW」は旅や冒険を密接にゲーム性と結びつけていた。「RDR2」はこの時代の人間、そして無法者達の生き様をゲームとして、オープンワールドとして表現していく。それはシミュレーションゲームの様に餓死や病死などもあり得るシビアなものとなるのか、それとも西部劇の人間になりきれるロールプレイが楽しめるバランスとなるのか、気になるところだ。
「ゼルダの伝説 BOTW」以降のゲームは、示された自由度と無関係ではいられないだろう。特にオープンワールドを世界に広めた「GTAIII」を世に生み出し、その後もトップであり続ける「GTA」シリーズ、そして西部劇の世界をオープンワールドとして表現した「RDR」を作り出したRockstar Gamesがどのようなオープンワールドを見せてくれるか、注目せずにはいられない。崖や壁と言った要素もただの「ゲームとしていけない部分」では許されない。たいまつを振り回せば下生えに火がついたり、物理的な要素もより高度になるだろう。「RDR2」はどのようなオープンワールドになるか、今後の情報が楽しみだ。
そして、「RDR2」においては、オンライン要素も提示されている。「GTAオンライン」は先週クラブ要素が追加となる「ナイトライフ」が実装された。発売後4年たってもアップデートされる息の長いゲームとなったが、それは「GTAV」の街ロスサントスが魅力的で、広大な地域があったからだ。「RDR2」はトレーラーからもその緻密で魅力的な地域が提示されている。なここにどのような要素が盛り込まれていくのだろうか。
西部開拓時代は、「ゼルダの伝説 BOTW」や「スカイリム」の世界に勝るとも劣らない、未開で、危険に満ちた世界である、生きていくだけでも過酷な世界で、プレーヤーは西部の男(女)として生きぬいていく。どのような“生き様”が楽しめるのか、期待していきたい。