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日本HP、ゲーミング事業をさらに強化。エントリーからプロまでフルカバーへ

「HP Pavilion Gaming」を新設。「OMEN」はeスポーツブランドに昇格

7月12日開催

会場:e-Sports SQUARE AKIHABARA

 日本HPは7月12日、東京秋葉原のe-Sports SQUARE AKIHABARAにおいてゲーミングに特化した記者発表会を開催し、「OMEN by HP」に続く新たなゲーミングPCブランドとなる「HP Pavilion Gaming」を新設し、「OMEN by HP」をeスポーツブランドに昇格させることを明らかにした。それぞれのブランドに属するゲーミングギアも合わせて発表され、試遊することができた。そのラインナップについてはニュースでもお伝えしたとおりだが、本稿ではより詳しく日本HPのゲーミング事業戦略についてお伝えしたい。

発表会はeスポーツのメッカであるe-Sports SQUARE AKIHABARAで行なわれた
ゲームのデモも織り交ぜられ、わかりやすい内容になっていた

 HPは、グローバル戦略の一環としてゲーミング事業を急ピッチで強化している。同社が明確にゲーミングを事業のひとつとして位置づけたのは、ゲーミングブランド「OMEN(現OMEN by HP)」を新設した2014年12月からで、PCメーカーの中では最後発といっていい。

 ところが現在は、「Overwatch」のプロリーグ「Overwatch League」の独占的PC/モニタースポンサーとして、OMENの名は世界中で知られるようになり、日本でも2017年の東京ゲームショウへのブース出展にはじまり、今年はeスポーツキャスターの岸大河氏や、ゲームストリーマーのNottinTV氏をエグゼクティブアドバイザーに迎え、プロチーム野良連合のメインスポンサーに就任、さらに彼らをゲストに招いたイベントを行なう(参考記事)など、ゲーミングブランドOMENの普及に余念がない。

 また、ゲーミングノートPCからスタートした「OMEN」も、現在はデスクトップPC、モニター、キーボード、マウス、ヘッドセットと、PCを飛び出してゲーミングギアの領域にまで進出し、“PCゲーミングの総合メーカー”として年々その存在感は増しつつある。

 そんな日本HPが、今回、eスポーツの殿堂であるe-Sports SQUARE AKIHABARAを会場に、ゲーミングに特化した発表会を実施したのは、実に自然な流れといえる。発表会には、常務執行役員 Eコマース事業本部兼コンシューマー事業本部 事業本部長の岡戸伸樹氏と、パーソナルシステム事業本部 コンシューマー事業本部 製品部プロダクトマネージャーの森谷智行氏が登壇し、日本HPのゲーミングに関する事業戦略を発表した。主な発表内容は以下の通りだ。

【登壇者】
日本HP 常務執行役員 Eコマース事業本部兼コンシューマー事業本部 事業本部長 岡戸伸樹氏
日本HP パーソナルシステム事業本部 コンシューマー事業本部 製品部プロダクトマネージャー 森谷智行氏

・日本HPのメインブランド「Pavilion」にゲーミングモデル「Pavilion Gaming」を新設し、ゲーミングPCのラインナップを強化。より幅広い層に、ゲーミングPCを提供していく

・ゲーミングブランド「OMEN by HP」をeスポーツ向けのハイエンドゲーミングブランドに昇華させ、さらにブランドを強化していく

・先進的な機能を備えたゲーミングギアを提供し、総合ソフトウェア「OMENコマンドセンター」を含めたトータルソリューションで、ゲーミングシーンをより深くサポートしていく

・APAC規模のeスポーツ大会「OMEN Final Circle」を主催し、eスポーツにもフルコミットしていく

【日本HPゲーミング事業戦略】
ゲーミングブランドがPavilion GamingとOMEN by HPのツートップ体制となる
ポートフォリオはPavilion Gamingの分だけ拡充され、それぞれ明確に差別化される
Pavilion Gamingはメインストリーム層、OMEN by HPはパフォーマー層、エンスージアスト層をカバーする
TGS2018に出展するほか、eスポーツ大会「OMEN Final Circle」も開催する

 順番に見ていこう。まず、「Pavilion Gaming」は、“シンプルゲーミング”という日本HPらしい発想に基づく、新たな世代のゲーミングPCだ。森谷氏によれば、OMENのオーナーから定期的に「OMENの赤いLEDをオフにできないのか?」という問い合わせが来るという。ゲーミングPCにおけるLEDライトは、“ゲーミング”を象徴する機能のひとつと言えるが、それを良しとしないユーザーもOMENを購入していることに気づき、そういった装飾を省いたモデルとして「Pavilion Gaming」を新設したという。

【Pavilion Gamingのラインナップ】
OMEN by HP同様に、ノート、デスクトップの各PCのほか、ゲーミングギアも展開していく

 ノートモデル「Pavilion Gaming 15」では、LEDライトは“ゴーストホワイト”と名付けられた白いLEDを採用し、デスクトップモデル「Pavilion Gaming Desktop 790」では“アシッドグリーン”と呼ばれる緑色のLEDを採用。シンプルな筐体デザインに、現行のAAAタイトルをプレイするには十分な性能を盛り込み、日本HPならではのコストパフォーマンスの高い価格設定で販売していく。岡戸氏は、事業規模として「Pavilion GamingはOMENを上回る可能性がある」とも語っており、この新ブランドに大きな期待を寄せていることが窺えた。

【Pavilion Gaming 15】
Pavilion Gaming 15は7月12日発売で、価格は109,800円(税別)より

【Pavilion Gaming Desktop 790/690】
こちらはデスクトップモデル。Pavilion Gaming Desktop 790は7月12日発売で、価格は188,000円(税別)より。Pavilion Gaming Desktop 690は8月9日発売予定で、価格は143000円(税別)より

 次に「OMEN by HP」は、eスポーツブランドとして、圧倒的なゲーミング性能とゲーミングらしい高デザイン性をウリにしたプレミアムモデルとなる。

 今回唯一の新製品となる「OMEN by HP 15」は、144Hz/G-Syncに対応したフルHD液晶を搭載したノートモデルで、CPUは第8世代インテルCore i7プロセッサー、GPUはGeForce GTX 1070 with MAX-Q Design、16GBメモリ(最大32GB)と豪華なスペックを備えつつ、前モデルから筐体やベゼル周りを一新し、同じ15インチモデルながら一回りコンパクトになっている。それでいて価格は219,800円と、同じ144Hzモニターを搭載したコンペティターと比較して圧倒的なコストパフォーマンスを実現している。

【OMEN by HP 15】
OMEN by HP 15は7月12日発売で、価格は199,800円(税別)より。

 そして「OMEN by HP」を象徴する独自機能がゲームストリーム機能となる。OMEN PCをホストに、他のPCからネットワーク経由で接続し、OMEN PCのマシンパワーを使ってリモート環境でPCゲームが楽しめるクラウドサービスだ。「OMENコマンドセンター」から利用することができ、すべて無料で利用できる。「OMEN by HP 15」はもちろん、必要スペックを満たした既存の「OMEN」各モデルでも利用することができる。

 このゲームストリーム機能は、実際に会場で体験することができた。会場では「OMEN by HP 15」と、オンボードの日本HPのホームPCが並べて置かれ、それぞれ有線LANで接続されていた。いわば自宅のような環境だ。この環境で「ザ クルー2」をプレイすることができたが、まさにオンライン対戦をしている程度の遅延で、快適にプレイすることができた。利用には「OMEN」が必要になるとは言え、オーナー心をくすぐるサービスと言える。

【ゲームストリーム】

【総合ソフトウェア「OMENコマンドセンター」】
「OMENコマンドセンター」は、OMEN向けの機能を用意するだけでなく、ゲーミングギアのドライバや追加機能も提供する総合ソフトウェアとして、独立したアプリケーションで全ゲーマーに無料で提供される

 続いてゲーミングギアについては、これもなかなかおもしろかった。PCメーカーのゲーミングギアは、良くも悪くもゲーミングブランドのポートフォリオを揃えることが主目的で、各ギアの性能は、ゲーミングギアメーカーのものと比べると“大人しい性能”のものが多い。ところが今回発表されたPavilion Gamingブランド、あるいはOMENブランドのゲーミングギアは、どれも一芸に秀でており、日頃ゲーミングギアを愛用しているコアゲーマーにも注目を促す吸引力を備えている。

 ゲーミングモニター「HP Pavilion Gaming 32 HDRディスプレイ」は、VESA(ビデオエレクトロニクス規格協会)のHDR規格である「Display HDR 600」に対応した32インチHDRモニター。HDR対応ゲームにもしっかり対応した美しいHDR表現でAAAタイトルが存分に楽しめる。最大リフレッシュレートが75Hzなのが、FPSゲーマーにはややネックだが、ビジュアル重視のAAAタイトルをプレイするには最適なゲーミングモニターと言える。8月9日発売予定で、価格は54,800円(税別)。

【HP Pavilion Gaming 32 HDRディスプレイ】

 ゲーミングヘッドセット「OMEN by HP Mindframeヘッドセット」は、世にも珍しい“イヤーカップ冷却システム”を採用したゲーミングヘッドセット。これまで風を送る、空気が通るようにするなど“空冷”による換気システムは存在したが、直接冷却してくれるのは筆者が知る限りこれが初めてで、「涼しい(気がする)」、「熱くない(気がする)」というレベルではなく、「あ、冷たい!」と感じたのはこれが初めてだ。

 技術的にはイヤーカップの金属にペルチェ素子を採用し、ペルチェ効果を利用して無理矢理冷やすというもので、その代償としてイヤーカップの外側は熱くなる。実際、触り続ければ汗ばむほど熱かった。このため、あまりいないと思うが、プレイ中にヘッドセットを触る癖があるプレーヤーや、たびたびヘッドセットを装着し直すプレーヤーは、その都度熱い思いをしそうだ。取り組み自体は非常にユニークで、ヘッドセットが蒸れ蒸れで困っているというゲーマーは一考の価値があるゲーミングヘッドセットだ。9月下旬発売予定で、価格は13,000円(税別)

【OMEN by HP Mindframeヘッドセット】

【キンキンに冷えたイヤーカップ】

 ゲーミングキーボード「OMEN by HP Sequencerキーボード」と「OMEN by HP Reactorマウス」は、メカニカルスイッチに光学検出機能を組み合わせ、通常のメカニカルスイッチよりも速い入力が可能になるデバイスだ。キーボードでは通常比の10倍となる0.2ms、マウスでは通常比の3倍となる0.2msでの入力が可能と言うことで、実際に使ってみたが、このレベルになると体感ではわからない。そもそも入力速度は、スイッチ部分だけで決まるものではないため、トータルで他のコンペティターよりも速いかどうかもわからない。ヘッドセットと同様、技術的にはユニークな製品で、プロの検証を待ちたいギアといえる。キーボードは8月中旬発売予定で、価格は12,800円(税別)。マウスは7月12日発売で、価格は8,000円。

【OMEN by HP Sequencerキーボード】

【OMEN by HP Reactorマウス】

 そしてゲーミングギアでもっともユニークな存在と言えるのが、ゲーミングバックパック「OMEN X by HP Transporter バックパック」だ。最大17インチまでのゲーミングノートPCとケーブル、ゲーミングマウス、キーボード、ヘッドセットなどが綺麗に収まるバックパックで、TSA準拠で荷物チェック時にPCを取り出す必要がなかったり、容量に応じてサイズ調整が可能なロールトップデザインを採用するなど、PCゲーマーの使い勝手を考えた仕様になっているところが好印象だ。7月12日発売で、価格は12,800円(税別)。

【OMEN X by HP Transporter バックパック】

 最後の「OMEN Final Circle」については、「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」を競技種目にして、APACを対象に、各国/地域で9月に予選を実施し、アジアで20チームを選出し、決勝をタイバンコクで11月3~4日に実施する。日本からはアマチュア1チーム、インフルエンサー1チームがタイでの決勝大会に参加する予定。賞金総額は5万ドル(約560万円)。

 発表会終了後に情報を集めた限りでは、米HPがメインスポンサーになっている「Overwatch League」は北米でのリーグであり、APAC地域とはタイムゾーンがズレていて、APACのゲームファンにあまり観られていない(=OMENがアピールできていない)ため、あらためてAPACを対象にした大会の実施が米HPで企画され、APACに降りてきたという。日本予選はすべてオンラインで実施する方針で、日本HPは東京ゲームショウ2018にもブース出展するということだが、会場で日本予選決勝という計画は今のところないという。日本HPではこの大会のほか、様々なeスポーツ大会に関わっていきたいということで、今後OMENを目にする機会が増えてきそうだ。