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自宅に「体感ゲーム」がやってくる!? 「GTultimate V2 Motion Racing Simulator Cockpit」を体験してきた

7月20日より日本販売開始

価格:504,296円(税別)

 マイルストーンが7月20日より日本での販売を開始する「Next Level Racing」ブランドの家庭用体感型レーシングシミュレータシステム「GTultimate V2 Motion Racing Simulator Cockpit」は、レーシングゲームで利用するレーシングシミュレータ用コックピットに可動ユニットを取り付けることで、シート全体が可動する体感型システムだ。

 同社ではこれまでも、ハンドルコントローラやペダルを固定できるスタンドと、レース車両などと同等のシートをセットにしたレーシングシミュレータ用コックピット「GTultimate V2 Racing Simulator Cockpit」を販売していたが、今回新たに発売する「GTultimate V2 Motion Racing Simulator Cockpit」ではそれに可動ユニットの「Motion Platform V3」をセットにした製品となっている。なお、既存の「GTultimate V2 Racing Simulator Cockpit」オーナー向けの可動ユニットの単体販売は現段階では予定されていない。

 今回、マイルストーンのショールーム「most」で体験会が開催された。筆者も可動ユニットを搭載した体感型レーシングシミュレータを実際に体験してきたので、その様子をレポートしたい。こちらのショールームでは、予約をすれば購入を検討している人は体験も可能だ。興味がある人は見に行って実際に乗ってみるのもいいだろう。

 なお、今回体験してきたレーシングシミュレータに搭載されていた可動ユニットは「Motion Platform V2」という、国内では販売しなかった前バージョンの物だ。同社によると、V3はまだ国内に入ってきていないため、デモでは旧バージョンのV2を使用しているという。ちなみにV2とV3の違いについては、国内販売時に必要な電気製品の安全保障の認証(PSE)などを取得しているかいないか(V3は取得済み)、ユニットの耐久面や構造など、内部的なアップデートのみ行なわれているため、プレーヤーが実際に体感できる挙動などの面においては特に変更はないとのことだ。

マイルストーンは海外製のPC周辺機器などの国内代理店。特に椅子関連に強く、各社のゲーミングチェアも取り扱っている
今回体験した「GTultimate V2 Motion Racing Simulator Cockpit」。なお、ディスプレイ用スタンドやコックピットの下に敷くマットはオプションとなる
シート下部に可動ユニット「Motion Platform V3」を取り付けることでシート全体が可動するようになる。なお、写真は「Motion Platform V2」

懐かしさと新しさが感じられる次世代「体感ゲーム」の感覚

 今回編集部から「シートが稼働する体感型レーシングシミュレータシステムを体験してみないか?」という依頼を受けたとき、筆者の頭に浮かんだのは、30年以上前の学生時代の「体感ゲーム」の記憶だった。

 筆者が学生だった1980年代、ゲームセンターと呼ばれるアミューズメント施設には、通称「体感ゲーム」と呼ばれる大型のゲーム筐体が数多く並んでいた。これらは車のコックピットの形状を模した物や、飛行機のコックピットを模した作りになっており、ゲームに合わせて筐体が「グィングィン」と稼働するのが最大の特徴だった。規模の大きいゲームセンターの一角はこうした体感ゲームの筐体が並べられていたのだ。

 当時筆者がよくプレイしていたのは、セガの「パワードリフト」や「アフターバーナー」だった。家庭用ゲーム機の主流がファミコンだったこの時代、ゲームその物もファミコンでは再現が難しい疑似3Dのビジュアルで印象的だったが、何より筆者の胸を躍らせたのは、筐体全体が動く衝撃だ。ハンドルを右に切ると、自身が乗っている筐体ごと右に傾き、左にハンドルを回せば左に傾く。さらに車がスピンするなどのミスをすると筐体が激しく上下に揺れて、ペナルティを肌で感じられる。

 こうした筐体はゲームごとにチューニングされていたため、それぞれゲームごとに専用の筐体が用意される。実際に買ってみた事はないため正確な値段は不明だが、100万円以上する筐体ばかりだったと記憶している。また、通常の家庭用電源では利用できず、業務用の200V電源を用意する必要があるなど障壁も多く、購入して家にこれらの筐体を設置するなんてのは、お金持ちの子供であっても実現するのは容易ではなかった。

 今回体験した「GTultimate V2 Motion Racing Simulator Cockpit」は市場想定価格504,296円(税別)とかなり高額だ。しかし電源は最大出力350Wで、家庭用の100V電源で利用できる。さらにPCとUSBで接続して利用するため、対応タイトルが40種類以上あり、さらにコントローラは別途必要になるがフライトシミュレータにも対応するなど、汎用性が非常に高い。

ハンドルを握りコクピットに座る。体感ゲームの興奮が蘇る

 今回は「Project CARS 2」と「Assetto Corsa」の2タイトルで可動する体感型レーシングシミュレータシステムを体験してきた。

 実際に本システムを利用するにはゲームタイトルを起動する前に、同社が提供する専用ソフトでのセッティングが必要になる。と言ってもやることはあまり難しくなく、同ソフト上に表示される該当タイトルの画面を開き、実際の可動のセッティングを確認して問題なければ、「Activate」を実行するだけだ。

 これで可動ユニットと対応タイトルが連動する仕組みとなっている。あとは同じ画面から「Run Game」でゲームを開始すれば、可動ユニットと連動した状態でゲームが開始する。

専用ソフトをPCにインストール。「Profiles」に並ぶ対応タイトルの中から手持ちのゲームを選択する
ゲームを選択すると設定画面が出るので、ここで「Activate」ボタンをクリックして設定情報をゲーム側に反映し、「Run the game」ボタンを押下することでゲームが実行される。なお、画面右の画面では可動の状態を手動でも調整できるようになっている

 まず「Project CARS 2」を体感してみた。コックピットに座り込み、ゲームを開始すると、ピットからコースに出るまでは自動で動き出すのだが、かなりの急加速のため、いきなりLogitech製のハンドルコントローラのフィードバックと同時に、シートその物も激しく揺れ動きだす。

 この感覚は正に1980年代の体感ゲームそのものだ。車の挙動が文字通り体で感じられる。ハンドルを切ればその通りにシートが傾くのが感じられる。またアクセルを踏み込むほど、シート全体の揺れが激しくなる感覚はコントローラだけのフィードバックでは得られない。懐かしさもありつつ、PCゲームとしてみるとこれまで味わったことのない新たな体験と言える。

 今回は複数の車両を交互に変更してその挙動を試してみたが、車両ごとにユニットの可動状態が異なる事に驚いた。椅子から伝わってくるアクセルを踏み込んだ時の車両のブレや、速度を上げた時の振動、カーブを曲がる時の重力のかかり方などが車両によって微妙に異なるのだ。

 例えばフォーミュラーカーでは、ストレートの直線であっても椅子からの振動がかなり強めで、最高速度が高いため、アクセルを全開まで踏み込むと、かなりのブレがハンドルコントローラと椅子から同時に襲ってくる。それに対して、普通車では椅子からの振動が若干控えめになっているほか、アクセルを控えめに踏みつつ曲がれば、カーブであっても椅子の揺れはかなり軽微になるなど、細かい点にまで調整が行き届いているように感じた。

 また、「Assetto Corsa」もプレイしたが、こちらの方が振動は全体的に控えめだった。半面、加速時に前面から受ける重力の体感は気持ち強めに感じた。この辺りの挙動については、ゲームタイトル毎にチューニングされているため、タイトルによってセッティングが毎回異なるという。

 今回レーシングシミュレータを使用してレースゲームをプレイしてみた感触としては、これは普通のゲームではなく、正に昔ながらの体感ゲームだと感じた。ゲームのタイムをよりよくしたい場合などは恐らく手先だけで操作できる普通のゲームコントローラの方が、ハンドルコントローラやペダルを使ったプレイよりもスムーズに慣れることができると思う。ハンドルコントローラやペダルを使う意味は、実車により近い体感を得るための手段であり、その最終地点にこの可動ユニットを搭載した「GTultimate V2 Motion Racing Simulator Cockpit」のような体感型のシステムがあるのだろう。

シートの傾き加減は絶妙で、どんなにハンドルを切ってもスピンしてもひっくり返ってしまうほどには傾かないようになっている。筆者が数10分プレイした感覚では、酔いもほとんど感じなかった

 ここまでくると、もはやこれ以上に没入感を得るために残された道はビジュアル面となりそうだ。具体的には今回のシステムでは、前面に設置したディスプレイを見ながらのゲームプレイとなったため、体感の要素は強かったが、没入感の面においては物足りなく感じた場面もあった。VRを利用したレースゲームと連携すれば、更に仮想的なレーシングシミュレータに進化できる可能性も感じられた。今後そうした連携の登場にも期待したいところだ。

 なお、本製品が現時点で対応しているソフトは40種類ほど。また、今回はレーシングシミュレータしか試していないが、本製品はフライトシミュレータにも対応する。また、現段階で対応していないタイトルについても、将来的にアップデートなどで対応することが可能とのことなので、今後対応ソフトが増えていくことにも期待したい。

ハードセッティングでは可動ユニットが牙を剥く!

 前述の2タイトルをプレイしながら感じた事があった。どちらも全体的に可動領域が控えめに感じたのだ。2製品ともリアル志向なレーシングシミュレータのため、あまり激しい可動はしないのではないかと思い、確認してみたところ、やはりいずれもデフォルトではリアルな体感を訴求していることから、あまり激しい動作はしないようになっているという。

 ただ、筆者は本製品の持つポテンシャルが気になった。もっと激しく動くことはできるのだろうか? 本製品では、デフォルトの設定で物足りないプレーヤー向けに前述のソフト上で設定を変更することで、より激しく可動するような設定に変更することも可能だという。

 そこで、ゲーム性やリアルな体感という観点を無視し、あえて1番激しく動作するように各種可動設定を最大に上げてプレイしてみた。結論から言うとこれがめちゃくちゃ面白かった。

 何が面白いかというと、前述のような微妙かつ繊細な振動が全て跳ね上がるような躍動感あふれた挙動に変化するのだ。本製品及び本製品に対応するタイトルの多くはレーシングシミュレータともいうべき、リアル志向のタイトルばかりのため、こうしたセッティングが向かない事は重々承知なのだが、それでもこのハードなセッティングが活きるようなタイトルを家で遊べればそれは正に昔ながらの体感ゲームそのままだ。

シートにはレース用シートと同じようにベルトが装備されている。今回は装着せずに体験したが、雰囲気を盛り上げるには装着した方が気分が上がりそうだ

 本製品がもし将来的にもっとカジュアルなタイトルに対応し、ド派手なレースゲームなどでこうした激しいセッティングで遊べるようになるなら、その価値はさらに高まるため、この辺りは是非検討してほしいところだ。

 そして、ハードなセッティングにしても、全速力で壁に激突するようなゲーム内で大きな衝撃がある場合、プレーヤーへの衝撃はカットされる仕様のようだ。このあたりの動作はプレーヤーの安全面へに配慮されているのだと確認できた。

 ただし、このセッティングにした場合、かなり激しく振動し、シートが上下左右前後にガンガン可動するため、集合住宅などでは、階下に振動が伝わる可能性があるようなので注意してほしい。

シートの位置は本物の車と同じように、シート下部のレバーを使用して前後に調節ができる。筆者は深々と座った上で足を伸ばして運転したかったため、かなり奥まで広げたが、ハンドルとの距離が離れてしまうため、がっちりハンドルを握って操作したい場合は、手前にした方がよさそうだ

 現在対応しているタイトルがリアル志向のレースゲームやフライトシミュレータばかりとなっているが、個人的には前述のようにもっとカジュアルなレースゲームやレースもできるようなオープンプラットフォーム、さらに欲を言うなら、ここで1980年代の体感ゲームの移植タイトルと連動させることができたら、かなり面白い事もできるのではないかと感じた。多くのタイトルに対応する汎用的な可動ユニットが50万円で購入でき、しかも家庭用電源で動作し、自宅のゲーミングPCと接続して当時の体感ゲームと同じ雰囲気が楽しめる、というのは娯楽としては最高峰の贅沢だ。

 本製品の本来のターゲットは、レーサーのトレーニングや本格的なレーシングシミュレータを楽しみたい人とのことだが、本製品の持つポテンシャルはその枠を超えて、様々な使い方の可能性を持っていると感じた。今後はもっと幅広く展開していく事を期待したい。