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Xbox 2018 Briefing詳報。Microsoft、世界最大規模のゲームデベロッパーに

ついに新作が解禁となったXbox Game Pass。クラウドサービスや新型機の存在も

【Xbox 2018 Briefing】

6月10日開催(米国時間)

会場:Microsoft Theater

 Microsoftは米国時間の6月10日、E3の開催に先立ち、プライベートカンファレンスXbox 2018 Briefingを開催し、50ものXbox Oneタイトルを発表した。

 Microsoft Studios傘下の343 Industriesが手がける「Halo」シリーズ最新作「Halo Infinite」を皮切りに、「The Elder Scrolls III: Morrowind」以来、蜜月関係が続くベセスダソフトワークスの最新作「Fallout 76」、Xboxの代名詞的な存在である「Gears of War」シリーズの最新作「Gears 5」(Epic Games)、そして“Briefingをハッキングする”というユニークな演出でトリを飾ったのは、「The Witcher 3」のデベロッパーCD Projekt Redの最新作「Cyberpunk 2077」と、コンテンツパワーを前面に押し出したこれまでになくストレートなゲームカンファレンスだった。

【会場はMicrosoft Theaterに】
今年から会場はGalen Centerからコンベンションセンター近くのMicrosoft Theaterに変更された

【タイトルラインナップ(一部)】
「Halo」と「Gears」最新作が発表
「Forza Horizon 4」は、季節を変えられるダイナミックウェザーシステムが導入される
近くまで来たので遊びにきたというTodd Howard氏。Phil Spencer氏との友情は「Morrowind」以来10年以上に渡って続いている
Phil Spencer氏が最後の挨拶をするところで会場がハックされ、「Cyberpunk 2077」が発表された。これが今回唯一のサプライズと言える

拍手喝采を受けるHead of Xbox Phil Spencer氏
今回発表されたタイトル

 E3恒例となっている新ハードの発表は一切無く、“史上最高性能のゲームコンソール”Xbox One Xと、“ゲーミングPC界のシェアNo.1 OS”であるWindows 10、そしてそれらを生み出す世界最高峰のソフトウェア企業であるMicrosoftのパワーを背景に、余裕すら感じられる発表内容だった。

 今回発表されたタイトルは50タイトル。うち18タイトルがXbox One独占タイトルで、15タイトルが世界初公開。日本のゲーム市場だけ見ていると、プレイステーション 4やNintendo Switchに押され、存在感の薄いXboxだが、世界的にはゲームプラットフォーマーの一角として確かな存在感を維持し続けている。

 概要についてはE3 2018速報をご覧頂くとして、本稿では、Briefingで感じた3つのことについてまとめたい。1つは、MicrosoftのゲームスタジオMicrosoft Studiosの傘下デベロッパーが5社増えて全11社となり、11以上の開発パイプラインを持つ、世界最大規模のゲームデベロッパーとなったことだ。

 今回傘下入りしたメーカーは、今回「Forza Horizon 4」を発表したPlayground Gamesや、「State of Decay」シリーズのUndead Labs、「As We Happy」を手がけたCompulsion Games、古くは「Kung Fu Chaos」、直近では「Hellblade」を手がけたNinja Theory、そして「Tomb Raider」や「Theif」などを手がけてきたDarrell Gallagher氏をスタジオヘッドに迎え、ワールドクラスのタレントを擁した新設スタジオThe Initiativeの5社となっている。

 現在、Microsoft Studiosには、「Halo」シリーズの343 Industries、「Gears of War」シリーズのThe Coalition、「Forza Motorsport」シリーズのTurn 10 Studios、「Sea of Theives」のRare、「Minecraft」のMojang、そして他社開発タイトルのパブリッシング業務を行なうMicrosoft Studios Global Publishingの6社が存在し、これで計11社となる。

 単なる11社ではなく、いずれもAAAタイトルを手がけてきたメーカーばかりで、「Halo」の生みの親であるBungieや、一時代を築き上げた「Age of Empires」シリーズを手がけたEnsemble Studiosや、「Microsoft Flight Simulator」シリーズを手がけたAces Studioが在籍していたMicrosoft Game Studios時代から遡っても過去最大勢力といえる。

 そしてここがMicrosoftのゲームプラットフォーマーとして素晴らしいところだが、傘下入りした各社は、既存の傘下デベロッパーがそうであるように、今後もリソースやクリエイティブ、そしてプラットフォームの縛りを受けず、完全な独立性を維持する。現在だと「Minecraft」が、全プラットフォームに展開している代表例だが、新たな傘下メーカーが同じような形でXbox OneやWindows 10のみならず、Nintendo SwitchやPlayStation 4にもタイトルを供給する可能性は残されている。

 Microsoft自身、Windows 10対応を皮切りにXboxタイトルのオープン化を推し進めており、後は任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメントのポリシー次第だが、「Forza」シリーズや「Gears」シリーズがPS4でも遊べるという未来があるかもしれない。

【Microsoft Studioの新たな陣容】

大規模な機能拡張が発表された「Xbox Game Pass」

 2つ目は、Xboxの事業の柱にXbox One向け定額サブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」が組み込まれたことだ。昨年のE3で発表され、海外では6月1日よりサービスが開始されている。日本では準備中というステータスで止まっているため、あまりピンとこなかったXboxファンも多かったかと思われるが、今回の発表では大幅な機能強化がアナウンスされたのだ。

 「Xbox Game Pass」は月額9.99ドルで、100タイトル以上のXbox Oneタイトルが遊び放題になるサブスクリプションサービス。昨年のスタート直後は、その多くがXbox LIVEアーケードタイトルで、ラインナップの弱さが指摘されていたが、「Halo 5」などの自社タイトルを筆頭に徐々にラインナップを充実。Xbox LIVE Goldメンバーシップ向けのフリープレイサービス「Game with Gold」と差別化を図ることで、新規ユーザーを増やしてきた。

 今回のBriefingでは、「Xbox Game Pass」について2つのアナウンスが行なわれた。1つはラインナップの拡充だ。「Fallout 4」、「Tom Clancy's The Division」、「The Elder Scrolls Online: Tamriel Unlimited」が本日より「Xbox Game Pass」の対応タイトルとなり、「Halo: The Master Chief Collection」も今冬対応することが発表された。

 サードパーティーの大型タイトルが「Xbox Game Pass」入りするだけでもなかなかのニュースだが、さらに本日発表された「Forza Horizon 4」、「Crackdown 3」、「Gears 5」、そして複数のID@Xboxタイトルも、発売と同時に「Xbox Game Pass」に対応する。つまり、「Xbox Game Pass」に加入していれば、フルプライスのパッケージ料金を払わなくても「Forza」や「Gears」の最新作が遊び放題になるのだ。

 先日Electronic Artsが新たなPC向けサブスクリプションサービス「ORIGIN ACCESS PREMIER」を発表し、「Battlefield V」、「Anthem」、「FIFA 19」といった新作タイトルが含まれることが発表された。「Xbox Game Pass」は逆にXbox Oneコンソールのみのサービスとなっているが、北米市場ではゲームのサブスクリプションサービスがトレンドとなっており、Xboxにおいてもパッケージを購入してゲームをプレイすることは徐々に無くなっていきそうだ。

【Xbox Game Pass】

 もうひとつのアナウンスはFastStartで、これは3つ目の着眼点となるXboxプラットフォームの未来に直結する話題だ。Xbox Briefingにおいて都合3回登場したHead of XboxのPhil Spencer氏は、Microsoft本体との密接なリレーションを繰り返し強調した。Xboxフランチャイズは、創業者のビル・ゲイツ氏が直接関わった初代Xbox以降は、Microsoft本体とはやや距離を置き、独立した存在として活動を続けてきた。その独立性がゆえにXbox事業の身売りが幾度となく噂に上がってきたほどだが、新たにXbox事業のトップとなったSpencer氏は、そこを大胆に変革し、Microsoftの一部として同社の総力を結集することで、ゲームプラットフォーム戦争の最終的な勝者になろうとしている。

 具体的な成果のひとつが先ほど紹介したFastStartだ。Microsoft Machine Learning Teamの協力で、「Xbox Game Pass」において、これからダウンロードして遊ぼうというタイトルを、従来の2倍以上のスピードで遊び始められるというユニークなサービスだ。ゲームの起動、プレイに必要なファイルを特定し、優先的にダウンロードすることで、いち早く起動でき、残りをダウンロードしながらゲームプレイを継続できるという。ストリーミングを開始するとすぐに遊び始められるストリーミングサービスと比較すると、「Xbox Game Pass」が提供するダウンロードサービスはダウンロードという一手間があり、ややハードルが高いが、FastStartはそのハードルを飛躍的に下げてくれるサービスと言える。

【FastStart】

 もう1つがMicrosoft Researchが開発しているMicrosoft AIのゲームへの適用だ。よりリッチで、没入感の高いゲームAIを目指す。さらにMicrosoft Gaming Cloud Teamとは、あらゆるスマートデバイスにコンソールクオリティのゲームを提供すべく開発を進めているという。クラウドベースのストリーミングサービスで、近い将来、スマートフォン上でXbox Oneタイトルが遊べる日がやってくるようだ。

【Xboxがあらゆるデバイスに】
近い将来スマートフォンにXboxがやってくる

 ここまで来るとXboxは完全なソフトウェアプラットフォームとなり、ゲームコンソールとしてのXbox Oneは、Xbox One Xで打ち止めになってしまうのではないかと心配してしまうが、Spencer氏はその不安を打ち消すかのように、Xbox One Xを手がけたハードウェアチームが新たなゲームコンソールの設計を行なっていることを明らかにした。スクリーンには黒いシルエットで、物理的な“何か”が映し出されたが、それ以上の情報は不明。発売まではもうしばらく時間が掛かりそうだ。

 最後にSpencer氏は、強力なファーストパーティーチーム、優れたサードパーティー、そして膨大なユーザーコミュニティと共に、今後も引き続き、あらゆる点でベストなゲーム体験を提供していくことを約束。この圧倒的なパワー、勢いが日本にもダイレクトに届くことを期待したいところだ。

【Xboxは今後も拡大していく】
ソフトウェア界のジャイアントであるMicrosoftの全面的な後ろ盾を得て、ゲームプラットフォームとしてのXboxは今後も成長していく