インタビュー
日本からは撤退しない! Head of Microsoft Studios Matt Booty氏インタビュー
史上最大規模となったMicrosoft Studiosから今後どのようなXboxゲームが生まれるのか?
2018年6月12日 14:26
Xbox Briefing 2018において、18の独占タイトルを含めた50タイトルもの新作を発表し、定額サブスクリプションサービスXbox Game Passに「Forza Horizon 4」のような新作も含めることをアナウンス、さらに新たに5つのデベロッパーを傘下入りさせ、Xboxが“ベストなゲームプレイ環境”であることをアピールしたMicrosoft。日本ではPlayStation 4とNintendo Switchに押され影の薄いXboxだが、ソフトウェア界のジャイアントであるMicrosoftの全面サポートを受け、依然として大きな存在感を放っている。
今回は、Xboxのファーストパーティータイトルを手がけるMicrosoft StudiosのボスであるMatt Booty氏にインタビューする機会を得た。Booty氏は、今は亡き米国のゲームメーカーMidwayでキャリアを積み上げ、CEOまで上り詰めた後に、自身で会社の精算手続きを行なった苦労人である。
Microsoft入社後は、Microsoft Game Studiosでファーストパーティータイトルを担当し、直前まで「Minecraft」を手がけるMojangを担当し、2018年1月よりHead of Microsoft Studiosを務めている。必然的にインタビューの話題も、直前まで担当していた「Minecraft」に関することが多く、Microsoft Studiosのトップとして全スタジオの特性を理解し、マネジメントしていくのはまだこれからという印象を持ったが、逆に言えば「Minecraft」を通じて日本のゲームコミュニティの強さを理解している“知日派”でもある。彼独自の施策で、日本のXboxコミュニティがより活性化していくことを期待したいところだ。
Playground Gamesが手がける“New Project”の中身とは?
――まずは自己紹介を。
Matt Booty氏:Microsoftのコーポレートバイスプレジデントで、Microsoft Studiosのヘッドを務めている。Microsoft Studiosは、ファーストパーティータイトルを担当している部門で、「Halo」や「Gears of War」、「Forza」、「Minecraft」、「Sea of Theives」などを手がけている。
――今回、傘下デベロッパーが11になることが発表されたが、なぜこのタイミングだったのか?
Booty氏:今年1月にボスのPhil Spencerが、Microsoftのシニアリーダーシップチームに昇進した。彼はMicrosoftのリーダーたちに、XboxがWindowsやOffice、Azuleと共にMicrosoftの重要な一部門であることを伝え、どのようにすればMicrosoftと共にゲーミング部門が拡大成長していけるかを考えたときに、Microsoftとしてより多くのデベロッパーへのサポートが必要不可欠であるという結論に至った。デベロッパーとの交渉は数カ月前から行ない、デベロッパーの中にはPlayground GamesやUndead Labsのように、長年に渡って我々と深いパートナーシップを結んでいるところもあれば、Ninja Theoryのように最近になって密接になっているところもいるが、彼らは最終的にXboxと共に歩んでいくことを選択してくれた。そのアナウンスメントはこのE3が最適なタイミングだと考えたんだ。
――どれぐらいの投資規模なのか?
Booty氏:それは私も聞いてない。知っていても答えられないと思うよ(笑)。
――どのような選定基準でこの4社が選ばれたのか?
Booty氏:そのスタジオにクリエイティブリーダーが存在していること。それはどのようなタイプ、ジャンルでもいいが、コアゲーマーが求めるものを生み出せるリーダーであり、4社にはそれぞれ優れたリーダーがいる。それぞれのリーダーは、ゲームのアートを理解しており、ゲームの作り方も理解しており、そしてゲームの完成のさせ方も理解している。もちろん、ストーリーやキャラクター、そして世界観も、Xboxのカルチャーにフィットする形で生み出すことができる。
――今回の大型投資で、Microsoft Studiosはどのような規模になったのか?
Booty氏:ゲームに関わっているスタッフだけで世界中に数千人いる。「Halo」を手がける343 Industries、「Gears of War」を手がけるCoalition、「Sea of Theives」を手がけるUKのRare、「Minecraft」を手がけるスウェーデンとレドモンドのチーム。「Forza」を手がけているTurn 10とPlayground。それからGlobal Publishing Teamは、過去にはプラチナゲームズやRemedy Entertainmentと協力しながらファーストパーティータイトルを生み出してきた。
――プラットフォーマーとしては驚くべき規模だと思う。11の部門をBootyさんはどのようにコントロールしているのか?
Booty氏:コントロールなんてしてないよ、そもそもできるわけがない(笑)。我々にとって幸運なのは、それぞれのスタジオに信頼できるリーダーがいることだ。たとえば343 IndustriesのBonnie Rossのような、長年ゲーム業界で経験を積んできたリーダーが各スタジオを仕切ってくれている。
――今年のXbox Briefingでは多くのファーストパーティータイトルが発表されたが、もっとも期待しているタイトルは何か?
Booty氏:今回はファーストパーティーのみならず、サードパーティータイトルも含めて50タイトルを発表した。そのうち18がXboxエクスクルーシブで、15がワールドプレミアだった。そのどれも期待しているが、ファーストパーティータイトルで言えば、来春発売予定の新しい「Gears of War」、それから今秋リリース予定の「Forza Horizon 4」もそうだし、新たにMicrosoft Studios入りしたデベロッパーの新作にも期待している。どれかひとつを選べというのは酷な質問だが(笑)、発売が近いタイトルでいえば「Forza Horizon 4」だろうね。グラフィックスも素晴らしいし、ゲームプレイも素晴らしい。晩夏の発売が楽しみだよ。
――「Forza Horizon 4」は私も楽しみにしているタイトルだが、そのPlayground Gamesが手がけている“New Project”についてもう少し教えて欲しい。
Booty氏:現時点で確かなことは何も言えないが、Playground Gamesはオープンワールドに関するテクノロジーは素晴らしいものを持っており、その実力はTurn 10との共同開発で十分に示してくれた。Playground Gamesが「Forza Horizon」シリーズを生み出すことは簡単なことではなかったと思う。Turn 10と共同作業をしながら、Turn 10のテクノロジーと「Forza」というブランドを使って、独自のスタイルを生み出さなければならなかったからだ。それは困難を極める作業だったと思う。そのPlayground Gamesが「Forza Horizon」シリーズの開発を通して培ってきたオープンワールドテクノロジーを使って、Turn 10とアイデアを出し合いながら新たなプロジェクトに挑んでいるということだ。これ以上は何も言えない(笑)
――それはひょっとするとレーシングゲームではないかもしれない?
Booty氏:何も言えない。彼らと共に、新たなオープンワールドゲームの開発に着手できたことに興奮している。
――ところで個人的にBooty氏が気に入っているフランチャイズは何か? その理由を教えて欲しい。
Booty氏:それなら答えられる(笑)。「Halo」シリーズだ。343 Industriesの長年の取り組みによって今回ようやく最新作の「Halo Infinite」を発表することができた。「Halo」シリーズの世界がさらに拡張され、トレーラーにも描かれていたようにマスターチーフが再び帰ってくる。私自身非常に楽しみにしている。それ以外にもコミュニティ活動が活発な「Sea of Theives」も好きだし、グラフィックスが美しい「Forza」シリーズも好きだ。彼らと一緒に仕事をできることを本当にラッキーだと感じているよ。
――日本市場についていくつか質問したい。Microsoft Studiosのトップとして、日本市場をどのように見ているか?
Booty氏:極めて重要なマーケットだ。私は日本にコンソールゲームを好む多くのゲームファンが存在することを知っている。私がこの仕事に就く前は、「Minecraft」フランチャイズを担当していたが、「Minecraft」は日本で極めて大きな成功を収めているだけでなく、ニンテンドー3DSやNintendo Switch、PlayStation Vitaといった他のプラットフォームでも多くのファンを獲得している。「Minecraft」のスタジオは日本にもあるが、「Minecraft」を通じて日本のゲームファンの多くのことを学ぶことができた。
それからBriefingでも複数の日本の新作を紹介したように、多くの有力なデベロッパーがいる。Xbox 360の時のように多くの日本のデベロッパーのタイトルをXboxでリリースすることができればと考えている。
――私は日本のXboxユーザーのひとりとして、日本でXboxのローカライズタイトルがどんどん減っている状況に強く失望している。Microsoft Studiosのトップとしてどのように考えているのか?
Booty氏:我々にとって重要なのは、コミュニティに支持されるローカライズを届けるということだ。これは今も今後も変わらない。これも「Minecraft」で学んだことだが、コミュニティを広げる上で、日本語やポルトガル語など、現地語にローカライズすることは非常に重要だと言うことだ。ローカライズを進める上で彼らコミュニティにも助けられたし、ローカライズの重要性は理解している。
今後は、Microsoftのリソースを使って、真の意味でマーケットに必要なローカライズタイトルを提供したいし、「Minecraft」のローカライズでは、単なるローカライズだけでなくカルチャライズの必要性も学んだ。各地のゲームコミュニティにとって望まれる状況を提供することができればと考えている。
――私が一番恐れているのは、このままローカライズタイトルがゼロになり、Xboxが日本から撤退してしまうことだ。
Booty氏:我々はそのような計画はまったくない。我々はXboxゲーミングを世界で広げて行くことを目標にしている。それはコンソールもPCもモバイルも対象だし、我々はこの星の20億人のゲームファンすべてにゲームを届ける義務がある。それは日本の「Minecraft」チームやMicrosoft Studiosのチームも同じで、1人でも多くのユーザーを獲得すべく努力を続けている。
――日本市場向けに、何か新しいプランはあるか?
Booty氏:現時点で具体的なプランについてはお話しできない。
――では最後に日本のゲームファンに向けてメッセージを。
Booty氏:我々は皆さんがXbox OneやXbox One Xで引き続きゲームを楽しんでくれることを期待している。Xboxはすべてのデベロッパー、すべてのゲームファンにとって、ゲームをプレイするベストな場所だと信じているし、日本のゲームデベロッパーのタイトルをBriefingで紹介することができて光栄に思っている。これからもアメイジングなゲームを提供し、Xboxを注目して貰えるように努力していきたい。