ニュース
FGO塩川氏はなぜ「ディレクター」から「プロデューサー」になったのか
FGO PROJECT全体を振り返ってこれからを考える
2018年5月15日 19:02
ノーツ、アニプレックス、ディライトワークス3社による「Fate/Grand Order」を中心としたプロジェクト「FGO PROJECT」で、これまでクリエイティブディレクターを勤めてきた塩川洋介氏がクリエイティブプロデューサーに就任する件についての説明会が行なわれた。
2016年より「FGO PROJECT クリエイティブディレクター」としてスマートフォン向けRPG「Fate/Grand Order」(以下、FGO)をはじめ、さまざまなプロジェクトに関わってきた塩川洋介氏。この4月からは新たに「クリエイティブプロデューサー」という立場で、FGO PROJECTに関わっていくのだという。この日、プレゼンテーションを行なったのは塩川氏本人だ。
「FGO」自体は2015年7月にサービスを開始。そこから3年近くの運営の中で、1,200万ダウンロードを記録したという。日本だけでなく、中国、香港、マカオ、北米、オーストラリアで展開を開始。こちらも合わせると累計で3,000万ダウンロードを突破した大ヒットタイトルとなった。
タイトル自体が大きくなるにつれて、スマートフォンゲーム以外での展開も開始。4月1日にはARゲームを配信したり、5月にはリアル脱出ゲームが行なわれたほか、7月にはアーケード版「Fate/Grand Order Arcade」も登場予定。そして8月にはボードゲームである「Fate/Grand Order Duel-collection figure-」の発売も予定されている。
こうした流れの中、これまで塩川氏は「FGO」の開発・運営に携わり、開発チームの現場指揮と、ゲームプロデューサーとしての意思決定をになってきた。しかし今後については、FGO PROJECT全体のゲーム展開が役割の対象となり、新規プロジェクトの企画立案と、各プロジェクトのゲームとしての意思決定が仕事になるのだという。
なぜこのタイミングで変わることになったのかというと、この3年間の間で「ゲーム外を制するものがゲームを制する」ということを知ったからだと塩川氏は語る。それぞれの年度ごとにプロジェクトの目標を掲げて進めてきた。しかしこの4月から開始された第2部については長期のスパンとなっていくことが想定され、「これまでと同じことをやっていても、昨年以上の飛躍ができない。もう1歩、2歩、3歩先に発展させるため、自分自身の役割を開発から、プロジェクト全体のクリエイティブを見る方向に変更させて欲しい」と塩川氏自身が訴え、担当を変わったとのこと。
「これまでを振り返ったときに、『FGO』はゲームから派生した部分に助けられて育ててもらった」と塩川氏。第1部のエンディングである終局特異点の中に仕込んだ仕掛けがTwitterで話題になり、それを見た人が年明けから流入して多くの人がゲームをスタートすることになったり、「ゲームの外側で起きることも含めて、ゲームの話題としていく中で、成長してきた」と塩川氏は振り返る。
そして、スマートフォンゲームについても「単体としてのクオリティは大事だ」としながら、「どのゲームも面白いゲームになってきたとき、ゲーム以外のことを含めて付加価値を提供できるかがこれからのゲームに求められることと考えている。『FGO』でも2年間を通じて(そういった現象を)目の当たりにしてきた中で、その延長線上にできることはないかということで、プロデューサーとして極めようという意図があった」と語る塩川氏。
そしてFGO PROJECTの未来について、そのコンセプトは「“FGOのある生活”をデザインする」ことなのだという。今回のリアル脱出ゲームについても、リアルイベントのほかにゲーム内イベントを実施したり、Webで真犯人を推理するキャンペーンを行なった。これらはすべて、ゲームの外側でも楽しめるものを作るということ。そして、その中心にいるのはプレーヤーである「マスター」だ。
「普段ゲームを遊んでいるマスターの体験が、現実の世界でマスターごっこをできたり、マスターとして真犯人を想像しようと考えてみたり。目指すことは、スマホの中のマスターになるという体験を、よりリッチなもの、感情移入ができる物にすること。それを含めてさまざまな展開を設計しているという。メディアミックスやIP展開をしたいわけではない。マスターになるということをいかに多面的に体験してもらえるか、生活の一部になれるかを設計している」と説明した。
こうした中で、「Fate/Grand Order」の第2部のフィナーレに向け、より一層充実したものを提供し、さまざまな形で楽しめる「Fate/Grand Order」の未来を提供していくとのこと。これを実現するための施策として、FGO PROJECT総合プロデュースチームを始動させることも発表された。これはよりクオリティの高いもの、より多くのものを実現できるように立ち上げられた新規のチーム。本日よりメンバー募集も開始される。採用にあたってはキャリアの相談会も開催されるとのこと。
塩川氏は最後に「この世の中にTwitterが存在しなかったら、『FGO』はこんな状態になっていなかった。遊んでくれた人たちみんなが育ててくれたタイトル。プレスの皆さんにも、中継をしていないところに参加してもらって、それをユーザーの皆さんに投げてくれることが話題となって、ユーザーの『FGO』のある生活の一部になっている。私たちだけが作るものではなく、ユーザー、メディア、これから一緒にやろうとする会社など、みんなで使ってみんなで育てていくのが必要だと考えている」と語り締めくくった。
©TYPE-MOON / FGO PROJECT