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【後編】「スプラトゥーン2」が提示する新しい遊び
2年を経て繋がる、「1」と「2」の世界
2018年3月22日 21:16
GDCの3日目に「"Splatoon"and"Splatoon 2":How to invent a stylish Franchise with Global Appeal」と題した、野上 恒氏による「スプラトゥーン」、「スプラトゥーン2」のセッションが行なわれた。前編では主に「スプラトゥーン」についてをご紹介したが、後編となる本稿ではさらに「スプラトゥーン2」や、続編シリーズについての話題をご紹介していきたい。
「スプラトゥーン2」の開発は「スプラトゥーン」のアップデートを開発している最中に始まった。この時点ではNintendo Switchは発売されていなかったが、いつでもどこでも多様なスタイルで遊べるNintendo Switchには「スプラトゥーン2」のマルチプレイとの相性の良さがあり、新しい体験になると感じたのだという。
しかし、新たなプラットフォームに移行するにあたって課題もあった。まず1つはプラットフォーム自体が異なるので、画面のレイアウトを考え直す必要があった。これは試行錯誤によって乗り越えたのだという。
もう1つはプレーヤー人口。当時はNintendo Switchがどれだけ売れるかはわからず、本体が普及するまではプレイ人口が少なくなってしまうという懸念もあった。
また、「スプラトゥーン2」は続編という形にはなるが、新規プレーヤーにも前作をプレイしたプレーヤーと同じ体験をして欲しかったのだという。コンテンツの成長を楽しむ経験も「スプラトゥーン」の価値の1つだと捉えているため、コンテンツに関しては前作と同じく、プレーヤーやコミュニティの成長に合わせて順次開放していくという形式をとった。
また、新規参入のプレーヤーが多いと予想された「スプラトゥーン2」でもシングルプレイ用の「ヒーローモード」を用意することで、いきなり対戦からではなく徐々に操作に慣れていけるようにしたほか、キャラクターを掘り下げることで愛着を持ってもらえるようにした。
さらに、「スプラトゥーン2」のもう1つの目玉となる新しい遊びを盛り込みたいという想いから、“協力”をテーマとした「サーモンラン」も用意した。比較的シンプルな構成でありながら、プレーヤーの動作や武器のバリエーションを駆使して、「繰り返し遊び続けられるように作りこんだ」のだという。
「ヒーローモード」や「サーモンラン」は独立したモードだが、ここで得た装備や技術はマルチでも生きてくる。つまり、それぞれのゲームモードが1つのゲームサイクルとして繋がるように設計されているのだ。また、これらはゲームサイクルとしての繋がりはもとより、「ナワバリバトル」の傍らアルバイトに精を出し、人知れずヒーローとして世界を救う、というプレーヤーの分身たるイカの若者の生活をも演出している。
「スプラトゥーン」は既存のコンテンツを遊びつくしたら終わりというゲームではなく、コンテンツが成長し、変化することで得られるダイナミックな体験もゲームの価値であり、野上氏は「“『スプラトゥーン』という体験”をプレーヤーに提供している」のだと自負した。
2年という時を経て繋がる、「スプラトゥーン」の世界
「スプラトゥーン」と「スプラトゥーン2」は独立した個別のタイトルだが、シリーズを通して両方を遊んでいるプレーヤーにはひとつに繋がった体験だと感じて欲しかったのだという。
そのため、「スプラトゥーン2」は「スプラトゥーン」から現実世界と同じだけの時間、つまり2年の時が流れた時間軸に設定した。そうした2年時の流れが感じられるよう、街の様子やファッション、音楽を新たに作り出したのだという。
この流れは先日発表された「オクト・エキスパンション(以下、オクト)」にも生きている。「オクト」は本編で描ききれなかったキャラクター達のバックボーンを描くものとなっており、イカの社会に新しい種族であるタコ=オクトリングが融合することで、「スプラトゥーン」は次の時間に移り変わっていく。
「オクト」の開発にあたり、野上氏は数多くの武器やプレーヤー性能を生かしたギミックなど、「スプラトゥーン2」を遊びつくすために「開発者としてやりたいことがまだ残っていた」と語った。
なお、「オクト」は有料となるが、武器やステージなど、全てのプレーヤーに公平にマルチプレイを楽しんでもらうために必要な要素は今後も無料で提供していくとしている。
ゲームと現実を繋げる試み「フェス」、そしてリアルライブ
コンテンツが成長していく流れは、全て初めから想定していたものではなかった、と野上氏は振り返る。ファンの反応に合わせて変更を加えたり、新たに創ったものもあるのだと続けた。
プレーヤーのナビゲートをする「シオカラーズ」などはこの世界の人気ボーカルデュオという設定ではあったが、当初の想定以上にファンからの支持を得た。沢山のファンアートが生み出されたほか、彼女たちのバックボーンについて空想するファンもでてきており、そうしたファンの声に応えるべく新曲を追加したり、現実世界でライブも行なった。
ライブには「シオカラーズ」と、「スプラトゥーン2」におけるナビゲート役の「テンタクルズ」がジョイントしたユニットとして登場した。映像は開発スタッフが細かな部分まで監修を行ない、ゲームと現実世界が繋がった体験となるよう努めたという。結果として会場は大いに盛り上がり、ライブは成功を収めた。野上氏はここまでキャラクターを愛してもらえることは「開発者冥利に尽きる」と語る。
「スプラトゥーン」の最後のフェスでは「シオカラーズ」を対決させ、その結果を「スプラトゥーン2」のコンテンツに反映させた。野上氏は「スプラトゥーン」の世界が現実の世界と並行して変化し、プレーヤーの反応を吸収して広がっていくことを感じて欲しかったとその想いを語った。
大会をはじめ、現実世界でも楽しめるゲームへ
続けて野上氏は、「ゲームの中だけではなく、現実で起こることもゲーム世界の一部だと思っている」と話し、ゲームの話で友達と盛り上がったという自身の子供のころの記憶を語った。同じようにファンアートを描いたり、イベントに足を運んだりするのも、ゲームを楽しんでいることに変わりはないとした。
先に行なわれた「スプラトゥーン甲子園」の参加チームは870を超え、3,500人以上が参加して非常に規模の大きな大会となった。子供のチームや家族で参加するチームも多数見られ、幅広い年齢の人が様々な社会的な繋がりで参加し、多くの人が熱心に応援してくれるのが「とても嬉しかった」と素直な感想を述べた。
アメリカにおいても「Nintendo World Championships」の種目に「スプラトゥーン」が使われたり、2017年のE3ではアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの4地域の代表を集めた世界大会なども開催された。ヨーロッパでも9つの国で大会を行ない、その統一王者を決める「Splatoon European Championship」も開催中だ。年齢や性別、国籍を超えて、様々なプレーヤーが自分の手掛けたゲームを遊んでいるのを観るのは「開発者としてこの上ない喜び」だと表現した。
一方、「スプラトゥーン」シリーズを競技性の高いタイトルだと評価されるのは「とても光栄」だとしながらも、目指しているところは「世界中のできるだけ多くのプレーヤーに『スプラトゥーン』を楽しんでもらうこと」だという。大会は日ごろの練習の成果を披露する場であるとともに、プレーヤー同士の交流が生まれる場所でもある。そうした機会を持てるように今後もサポートしていきたいと語った。
野上氏は最後に「私自身ゲームに文化に育てられた人間」だと語った。「ゲームから数多くのよい思い出を貰って、開発者としてここに立っている。ゲームっていいな。やっぱり面白いな。そう心から感じていただいて、ゲームの中だけではなく、ゲームの外の体験も含めてよい思い出が残るものをこれからも作っていきたい」と語り、セッションを締めくくった。