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VRの旗手Oculusが目指す、VRゲーム次の一手とは何か?

Oculus GO、そしてSanta Cruzが実現するモバイルVRの世界

3月19日~24日開催

会場:Moscone Center

 米国時間の3月21日、GDC 2018の通常セッションがスタートした。MicrosoftやGoogle、Intel、Epic Gamesといったプラチナスポンサーは、自社専用のセッションルームを持っており、通常セッション初日の1コマ目は、各社ともキーノートに相当する発表を行なうため、デベロッパーやメディアは“踏み絵”を迫られる。本稿ではGDCに欠かせないプレーヤーとなったOculusのセッション「Inside Oculus 2018」の模様をお届けしたい。

Oculusもリリースから2周年を迎える
オープニングスピーチを行なうOculus VP of ContentのJason Rubin氏

 VR界のオピニオンリーダーであるOculusは、ちょうど1年前に、創業者のパルマー・ラッキー氏が退社し、ビジョナリーを失うという大きな試練を迎えた。親会社であるFacebookの関与が強くなることで、ソーシャル寄りにシフトし、ゲームから手を引くという観測もあったが、実際にはゲームをコアとしたVRエンターテインメントのプラットフォーマーとして存在感を維持し続けている。

 本日よりGDC Expoも開催されたが、VRブームの反動からロケーションビジネスを除いてはほとんどVRが姿を消していた昨年と比較すると、今年はVR関連の出展も増えており、新しい世代のVRの芽が息吹はじめているのを実感することができた。そうした中で、OculusはVRに何を見ているのか、またゲームデベロッパーに何を求めているのか。「Inside Oculus 2018」では、そうした未来のビジョンがわかりやすくまとめられていたので簡潔にまとめておきたい。

 発表内容そのものは、昨年の段階で個々に発表されているものばかりで、期待される次世代VRシステム「Oculus Rift 2.0」に相当する情報はなく、今回紹介されたのは、現在開発中のOS「Rift Core 2.0」で実装が予定されている「Oculus Home」のアップデートの内容や、単体で動作可能なモバイルVRヘッドセット「Oculus GO」、「Santa Cruz」の紹介に留まった。

 Oculusの2018年のストラテジーは、CESでよりハイスペックなVRヘッドセット「HTC Vive Pro」を発表し、リッチなPC向けVRコンテンツにこだわり続けるHTCとは対照的だ。Oculusは、Oculus RiftをハイエンドVRヘッドセットとする位置づけはそのままに、「Rift Core 2.0」をリリースして機能の拡充を図りつつ、GEAR VR以上、Oculus Rift未満のモバイルVRに戦線を拡大していく。

 まず、リリースから2周年を迎えたOculus Riftについては、パフォーマンスの最適化を継続して行なっていく。Oculusの調査によれば、Oculus Riftのオーナーのうち26%がGeForce GTX 1080/1080Tiユーザーである一方で、推奨スペックに満たないPCを使っているユーザーも一定数おり、それらのユーザーに快適なVR体験を提供するためにも、より一層の最適化が望まれている。

【Oculus Riftの課題は低スペックユーザーへの対応】
Oculus Riftのユーザーは、ハイエンドPCオーナーばかりではない

 そしてOSの大規模アップデートとなる「Rift Core 2.0」。ここでもパフォーマンスの最適化が行なわれるだけでなく、ホーム画面である「Oculus Home」にもアップデートが実施される。これは文字通りVR世界の家を導入するというもので、UGCに対応し、自身やコミュニティが作ったオブジェクトで自宅を飾ったり、ホームにフレンドを招いてVRチャットを楽しんだり、Oculus Platform SDKで製作されたコンテンツを遊んだりすることができるという。

 余談だが、「Oculus Home」は、SDKによる開発が可能で、UGCにも対応しているということで、どうしてもプレイステーション 3で提供された「PlayStation Home」を思い出してしまう。SDKを提供してコンテンツ制作をデベロッパーに委ねるだけでなく、Oculus側も遊びのビジョンを示さないと「PlayStation Home」の二の舞になるのではないかと思う。

【Oculus Home】
VR世界の家となる
コミュニティが作ったオブジェクトをおける
ソーシャル要素もある

 Oculusのダッシュボード機能である「Oculus Dash」についても未来のビジョンが示された。GDCの講演と言うことで、ゲームの実機映像に、ビジュアルツールをポップアップ表示させ仕上がりを見ながら調整したり、VR空間で置物を見ながら、手前のパレットに絵を描いたり、実際のレベルを歩き回りながらビューアで別の情報を確認するなど、ゲーム映像と現実が溶け込んだ世界だ。これを実現するためには、まだPCのスペックも、VRヘッドセットの解像度も足りないが、確実に訪れる未来といっていい。この明るい未来がある限り、VRがなくなることはなさそうだ。

【Oculus Dashの未来】
ゲームクリエイターにとってわかりやすい未来が示された

 次にモバイルについては、Oculus GOとSanta Cruzが紹介された。Oculus GOは、現在SamusungのGALAXYシリーズ向けに提供しているモバイルVRヘッドセットGEAR VR相当のコンテンツが単体で楽しめるVRヘッドセット。199ドルということで、ポジショントラッキング機能はなく、スペック的にも低めに設定されており、簡易的なシステムとなる。ただし、低スペックでも、3DのVRコンテンツが楽しめるように、正面中央以外のレンダリング解像度を下げることでレンダリングコストを一気に下げるなど、独自の最適化技法が取り入れることで、GEAR VRよりも高い72FPSを実現する。

 セッションでは、このOculus GOで動作する3つのVRコンテンツが紹介されたが、グラフィックスクオリティは、まさにGEAR VR以上、Oculus Rift以下という感じだが、わずか199ドルのデバイスで、ここまで手軽にリッチな3D表現を駆使したVRコンテンツが楽しめることに驚かされた。VRがマスまでリーチしなかったのは、価格が問題だとされていたが、まずはその問題を解決したいというOculusの強い意志が感じられる。

【Oculus GO】
わずか199ドルだが、単体で駆動可能なモバイルVRヘッドセット
独自のパフォーマンス最適化技術。かなり寄らないと解像度が下がっていることがわからない
72fpsを確保し、アクションゲームも可能
【VRが199ドルで遊べる時代に】

 そして本命となるSanta Cruz。解像度は非公表ながらOculus GOと同じ72Hz駆動を実現し、表面の4つのカメラでポジショントラッキングが可能で、簡易版のモーションコントローラーも使えるなど、まさにOculus Riftに準ずる性能を持つ。それでいながらPCやスマートフォンといった母艦を必要とせず、ケーブルを気にする必要もない。VRファンが夢見ていたポジトラ可能な(ほぼ)フルスペックのモバイルVRヘッドセットだ。

 今回はデモは行なわれず、Oculus Touchから一部機能を省いた新たなモーションコントローラーのモックが紹介され、VRヘッドセットとしてほぼ完成状態にあることがアピールされた。2018年発売予定で、価格は未定。Santa CruzはOculusブースでもデモが行なわれており、後日体験レポートをお届けしたい。

 というわけで、Oculus 2018は縦方向の進化はなく、PC/モバイルの両方で横にググッと広がっていく模様だ。価格の高さや取り回しの課題を解決したことで、どのようなキラーコンテンツが生まれるのか楽しみだ。

【Santa Cruz】
ポジショントラッキングを可能とする4つのカメラが特徴的な本体デザイン
4つのカメラはかなりの視野角をカバーするため。ダイナミックな動きもカバーしてくれる
モーションコントローラーはSanta Cruz向けに最適化されたものが用意される