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ハクスラの打撃感をVRで! VR専門デベロッパーよむネコの最新作「GARGANTUA」を体験してきた
2018年3月21日 17:07
GDCにはゲームデベロッパーのみならず、メディアやパブリッシャーが世界中から訪れるため、ここぞとばかりに様々なゲームデベロッパーによる新作タイトルのデモが行なわれる。本稿ではそのひとつとして、昨年gumiに傘下入りし、VRゲームの開発を本格化させたよむネコの最新作となる「GARGANTUA」をご紹介する。
「GARGANTUA」は、gumiがグループ化した2017年3月から開発がスタートしたタイトル。2018年1月に日本で限定公開され、GDCが海外初お披露目となる。今回は1月に出展していたビルドをブラッシュアップしたバージョンを体験することができた。
なお、弊誌ではちょうどその3月にVRMMORPG構想についてgumi代表取締役社長の國光宏尚氏とよむネコCEOの新清士をインタビューした(参考記事が、そこで語られているVRMMORPGとはまた別のプロジェクトで、「GARGANTUA」の次がそのタイトルになるという。
「GARGANTUA」は、1人称視点のバトルに特化したVRアクションゲームだ。現時点ではシングルプレイのみの実装となっているが、リリース時には最大4人によるCO-OPバトルを実現し、タイトルの由来となっている巨人とのレイドバトルを実現する。
世界観は、巨人が人間達を支配するファンタジー世界。巨人からの解放を目指してプレーヤーら人間達が力を合わせて巨人の拠点に攻め込んでいく。プレーヤーの武器は、剣や斧といった近接武器と盾のみ。魔法もあるということだが、あえて近接戦闘にこだわった作りとなっている。
新氏の説明もそこそこに早速体験させて貰った。頭にOculus Riftを装着し、両手にはOculus Touchを握る。「エニグマスフィア」と同じスタイルだ。操作方法は手の動きで剣や盾を操作し、ボタンでアイテムを拾ったり捨てたりする。左右のトリガーで、前後左右への移動を行なう。
武器を手に取ったり、剣の振り方を学ぶチュートリアルを一通り終えると、いざ戦いの舞台に乗り込んでいく。チュートリアルの最後に、わざわざ鏡が置かれているところがおもしろい。フルアーマーに剣を携えた自分の姿が映っており、剣を振ると当然のことながら鏡の中の自分も剣を振る。1人称の視点では自分が見えないため、あえて鏡を置くことで現実感を持たせているのだという。
ちなみに木人を叩くとしっかりとした打撃感が得られる。といってもOculus Touchの振動は最小限で、それでごまかされているわけではなく、確かな打撃感がある。この表現をどのように生み出しているのか尋ねてみると、「正確な当たり判定の処理」、「その後のヒットバック処理」、「エフェクト」、「振動」の4点を挙げてくれた。
最大のポイントとなるのが「正確な当たり判定の処理」で、このこだわりがゲームにリアリティをもたらすことに成功している。VRのアクションゲームは、大きく振りかぶろうが適当に当てようが同じように処理されるため、最終的にはチョンチョンと小手先の動きだけで済ますようになり、「燃えろ!!プロ野球」のバントホームランのような、いい加減な操作のゲームになり、飽きに繋がってしまう。
この点、「GARGANTUA」では、加速度と位置の計測を正確に行ない、加速度やヒットした位置に合わせてダメージ判定やその後の処理を変えているという。どれぐらい正確かというと、新氏は「ゲーム内でけん玉ができるぐらいの正確さ」という独特の表現で、そのこだわりを語ってくれた。
操作を覚えるまでが若干戸惑うが、覚えてからは没入感を存分に楽しむことができた。ゲームの舞台は、“天空の城”で、空に浮かんでおり、上部から滝が流れている。滝の流れに剣先をあてると抵抗が感じられ、細かい遊びがおもしろい。
メインコンテンツであるバトルは円形の闘技場で行なわれた。バトルのスタートと同時にステージ内にいくつかの柱が出現し、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」の「力の試練」を彷彿とさせる。ステージの奥にはGARGANTUAと思しき凄まじい巨人が、巨大なイスに座ってこちらを睨んでおり、独特の緊張感をたたえている。
バトルは3つのウェーブに分かれ、剣を装備したフルアーマーのナイトが一直線に襲いかかってくる。最初は1体だが、第二波以降は複数を同時に相手にしなければならない。タイミングを合わせて剣を振ることで、相手にダメージを与えることができる。ザシュッという斬撃感が心地よい。ここまでリアルだとOculus Touch側の軽さが逆に気になるほどだ。
ちなみに敵との接触にもあたり判定があり、乱戦の感じが楽しい。動きはかなり激しいため当初は酔うかと思われたが、不思議なことにまったく酔わなかった。新氏によれば、「エニグマスフィア」の開発経験も含めて、VR酔いを防ぐテクニックを随所に盛り込んでいるためだという。
敵の攻撃は剣か盾で顔を隠すようにすることでガードでき、敵の剣戟を凌ぐことができる。単に剣を振り回すゲームにならないように、スタミナの概念が導入され、攻撃と防御を組み合わせて戦わなければならない。
また、武器や盾には耐久度が導入され、使い続けていると壊れてしまう。壊れたら、その辺に落ちている武器や盾を拾うことで戦いを継続できる。操作が複雑になるため、今回は試さなかったが、実際にはボクシングのように頭を動かして前後左右に避けるスウェイのギミックも用意されており、スッスッと避けながらスマートに戦うことも可能なようだ。
第3波まで凌ぎきるとカットシーンとなり、目の前で見ていた巨人が立ち上がり、剣を手に横薙ぎを繰り出してくる、というところでデモは終了となった。
ゲームのボリュームは、1ステージ15分ほどで、6時間以上は遊べるステージを用意する予定。その前後にはイベントシーンもあるという。「エニグマスフィア」のように1回プレイして終わりではなく、マナを集める要素があり、周回プレイすることでマナを貯めて、バトルが有利になるスキルと引き換えることができるという。
個人的には、「GARGANTUA」が目指しているのは、1人称かつVRで没入できる「ダークソウル」であり「仁王」だと感じた。つまり、和製ハックアンドスラッシュのVR版だ。VRならではの没入感と打撃感、正確な当たり判定によるこだわったアクション性と駆け引き、こういった要素が綺麗に組み合わされば、爆発的に面白くなると思う。
そして「ダークソウル」や「仁王」との最大の差別化要素は、オンラインCO-OPで4人で共闘できるところだ。2015年の東京ゲームショウでスクウェア・エニックスが参考出展した「FFXIV」のタイタン討滅戦のようなVRならではの迫力とMMOらしいゲーム性が実現できれば、世界に衝撃をもたらし、VRアクションの分野に金字塔を打ち立てることができると思う。
発売時期は2018年秋を予定。Oculus RiftとHTC Vive向けに開発が進められており、もし可能になればMicrosoftのMRデバイスや、PlayStation VRにも対応予定。ただ、MicrosoftのMRデバイスやPS VRは、モーションコントローラーの問題があり、ゲームデザイン的にOculus Touchのような両手にそれぞれ持てるモーションコントローラーが必要不可欠のため、対応しない可能性もあるという。価格は未定だが、いわゆるフルプライスではなく30ドル程度になる見込み。
筆者は、遊び込めるVRゲームの少なさにガッカリしてノンVRの世界にすごすごと戻っていったコアゲーマーのひとりだ。「GARGANTUA」が、VR再ブームのきっかけになってくれることを強く願っている。