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クルマのプロがレースゲームを斬る! ――その4「WRC 7」
「このコースはめちゃめちゃスベるんだよね。懐かしいな」(日下部)
2017年11月6日 12:00
クルマのプロにレースゲームをプレイしてもらい、そのインプレッションをお届けする企画の第4回は、オーイズミ・アミュージオから11月16日に発売されるプレイステーション 4用ラリーレーシング「WRC 7」だ。「FIA WRC(世界ラリー選手権)」が疑似体験できる「WRC」シリーズは人気も高く、ラリーファンであればプレイすべきゲームの1つだ。
本作は、今シーズンのWRCに参戦している公式ワールドラリーカーをすべて収録しており、トヨタ、シトロエン、フォード、ヒュンダイといったチームのラリーカーに乗ってプレイすることができる。中でも、今シーズンからWRCに本格参戦した「TOYOTA GAZOO Racing」のラリーカー「TOYOTA YARIS WRC」が収録されているのも特徴だ。
ゲームでは、13種類の公式イベントが各国で開催され、52のスペシャルステージに挑戦していく。コースやマシンは前作からブラッシュアップされているので、よりリアルなレースが体験できるようになった。そんな「WRC 7」を、今回は元ラリードライバーの日下部保雄さんにプレイしてもらった。
日下部さんは1979年のマレーシアで日本人初の海外ラリー優勝を果たしたほか、1984年にはAクラスチャンピオンも獲得するなど、国内外のラリー、レースで活躍した。現在は自動車評論家として、Car Watchのほか、自動車雑誌などに新車の試乗レポートやコラムを寄稿している。
【プロフィール】
日下部保雄
1949年12月28日東京都生まれの67歳。世界ラリー選手権ラリー・モンテカルロなど、国内外を問わずラリー、レースで活躍した経験を持つ。日本自動車ジャーナリスト協会会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
現役時代には、三菱ではA73ランサー、ランサー・ターボ、コルディア、スタリオン、ミラージュ、トヨタではレビン/トレノのTE27、TE71、AE86、日産では610ブルーバード、ダイハツではシャルマン、シャレード、フェローMAXなどに乗っていたそうだ。
「TOYOTA YARIS WRC」で「Chmielewo」を爆走!
今回はThrustmasterのハンドルコントローラー「T150 Force Feedback」でプレイしてもらった。走るコースはポーランドの「Chmielewo」。選んだマシンは「TOYOTA YARIS WRC」だ。
日下部さん自らの提案で、最近作り替えたスーツとヘルメットを持参してもらい、それを装着してプレイすることにした。ヘルメットの下にちゃんと耐火マスクを装着しているほどの力の入れようだ。
Chmielewoはグラベル(砂利道)とターマック(舗装道)の割合が8:2のコース。デフォルトのセッティングでは真っ直ぐ走ることができず、左右に蛇行してしまう。ほとんどゲームをプレイしたことがないということで、マシンコントロールに苦しんでいる様子だ。ただし、時々リアが大きくスライドするシーンでも、そこは元ラリードライバー。(本気の)カウンターを当ててクルマを立て直して進んでいく。
「セッティングを変えましょう」。
フロントとリアのサスペンションのショックアブソーバー(縮み側・伸び側)の値を変更していく。フロントは伸び側のみを、リアについては伸び側、縮み側両方の数値を上げてみることに。またステアリング感度を遊びがあるように100から70に落としてみた。するとだんだんと安定していく。
「クルマの姿勢としてはべたっとしてグリップしている感じですね。オフロードっぽくするんだったら、リアのスタビリティを落とした方がリアルかもしれないですね」。
1回のセッティングでかなり挙動は落ち着いてきたが、それでも納得いかないようで、スプリングの数値を上げてみる。アクセルワークもやりづらかったようで、遊びが多い設定に変更。ブレーキも感度を下げて、デッドゾーンについても少し柔らかめに設定した。
「車高を変えただけでも走りは変わりますね。コースによってはグリップするようになります」。
ところでラリーといえば、コ・ドライバーがいるのも特徴的だ。
「指示は結構リアルですね。ただ今は、声が(前方の)モニターから出てくるので聞きとりづらいかも。ヘッドフォンをするといいかもしれませんね。実際のレースでもヘッドセットからガンガン声が聞こえてくるので」。
ちなみにコ・ドライバーの指示を100%信用しているのかという問いには「してない。自分で路面も見てるから」とのこと。
グラベルについてはある程度安定して走ることができるようになったが、ターマックに入るとグリップが良くなるためか、逆にふらついてしまう。
「モニターからの情報とマシンの動きがうまく一致しないんですよね。アクセルやブレーキのタッチなど、なるべくリアルに近づけたいんです。マシンの動きは変わってるんだろうけど、スピード感がつかみづらいね」と、実車とゲームの違いに戸惑いを見せる。
「実車だと溝にタイヤを乗せて走ることもあるんだけどね」。
しかし、セッティングで数値をいじるとそれが反映されマシンの挙動が変わることについては、実車に近いとも。
「セッティングでダンパーの伸び圧も変えられるし、数値によってどういう挙動になるかは走っているとわかります。アブソーバーの比率を変えるだけでもマシンの動きが変わるから。訓練にはいいですね」。
実際に走ったことのある「HAFREN」を激走!
次はイギリスの「HAFREN」を選んだ。ここは、コ・ドライバーとして同乗したことがあるそうで、「めちゃくちゃスベるんですよこの道。懐かしいですね」。「昼 - 晴れ」を選ぼうとしたがその条件がなく、仕方なく「昼 - 曇天」を走ることになった。ちなみにグラベル100%のコースだ。
なお日下部さんは、1982年から1987年までの期間、イギリスのウェールズからスコットランドまでを転戦しており、その際にこのコースも経験したとのこと。当時はランサー・ターボやスタリオン、コルディアといったクルマに乗っていたそうだ。
「当時は『RACラリー』と言われていました。その後、名称は『グレートブリテンラリー』に変わり、さらにラリーのコンパクト化で『ウェールズラリー』に変化したんだと思います。距離も長く、英国全土を走るラリーでした。毎年変化してました」。
マシンとセッティングはChmielewoと同じなので、1回目の走行からある程度のコントロールが利く感じでコースを走行している。
「赤土みたいな道でつるつるスベるから、引っかけないようにするのが難しいんですよね。確かに雰囲気はこんな感じ。もっとスベりやすかったと思いますね。アンダーがでちゃって。基本的にハイスピードのコースなんです。4速や5速を使う感じで。落として3速くらいかな」。
「そうそう。こんな風に路面が光ってるんだよね」。
と言いつつ走り続けるが、思うようなタイムが出ない。
「もっとタイムは詰められるんじゃないかな。アクセルゲインも上げられるだろうし。もうちょっとシビアに設定してもいいかな。セッティングはコースに合わせて変えた方がいいでしょうね」。
残念ながらここでタイムアップ。一通りプレイを終えたところで感想を伺ってみた。
「コースを覚える練習になるかもしれませんね。ただモニターの映像に合わせてマシンを操作するので、ステアリングを切るタイミングが少し合わせにくいかな。ただ、ステアリングをはやめに切ることで、グリップしながら走行するのは本物に近い感じですね」。
「ターマックもあるし雪もあるし、いろいろと体験できるからいいですね。雪だとセッティングはもっと変えないといけないでしょうね。気分的にはラリードライバーになれるんじゃないでしょうか」。
ラリードライバーの気分を満喫できる王道ラリーゲーム
現役時代にはコルディアにも乗っていたという日下部さん。三菱のフルラインターボ時代のクルマだ。
「中にはギアレバーが2つ付いていて、通常のミッションのほか、ハイ・ローのギアがあって……腕がこんがらがるのは懐かしい思い出です」。
コースに合わせてマシンをセッティングしながらタイムを詰めていく様子は、さすがプロドライバーだと感じだ。コースの再現性についても満足したようで、HAFRENを走っている時は自然に体を動かしながらステアリングを切っていたのが印象的だった。
ステアリングコントローラーや、画面を見ながらのプレイとなるのが実車とは違うものの、ラリー自体の雰囲気は十分に感じられたという。ラリーゲームが好きな人はもちろん、レース前にコースを覚えたいラリードライバーも「WRC 7」をぜひプレイしてみてほしいものだ。
WRC 7 FIA WORLD RALLY CHAMPIONSHIP © 2017 published by Bigben Interactive S.A. and developed by Kylotonn Racing Games. All rights reserved. An official product of the FIA World Rally Championship, under licence of the WRC Promoter GmbH and the Federation Internationale de l’Automobile. Manufacturers, cars, names, brands and associated imagery featured in this game are trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. “WRC” and the WRC logo are registered trademarks of the Federation Internationale de l’Automobile. All rights reserved. Licensed and published in Japan by Oizumi Amuzio Inc.