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クルマのプロがレースゲームを斬る! ――その2「Project CARS 2」
「少しセッティングをいじるだけで挙動が変わるのは本物と同じだね」(松田秀士)
2017年10月19日 12:00
- 【PS4版】
- 9月21日 発売予定
- 価格:
- 7,200円(税別)
- 6,480円(税別、DL版期間限定価格)
- 9,720円(税別、デラックスエディション)
- 【PC版(Steam版)】
- 9月22日 発売予定
- 価格:6,480円(税別)
- CEROレーティング:A(全年齢対象)
今回クルマのプロに体験してもらうのは、バンダイナムコエンターテインメントから発売されている「Project CARS 2」だ。本作は実車の設計図を元にして車を作り上げるなど、「リアルさ」を追求しているのがポイントとなっている。コースによっては、ドローンを飛ばしてデータを読み取って制作するなど、その再現度は高い。そのため「Project CARS 2」を使ってシミュレーションし、実際のレースに臨むプロドライバーもいるとか。
今回のコメンテーターは松田秀士さん。1996年には「インディ500」で8位という好成績を残したこともあるプロのドライバーだ。松田さんが「Project CARS 2」をプレイすると、いったいどんな印象を持つのだろうか。
なおこの企画は、通常のゲームレビューと異なり、いわゆる“自動車界のプロ”にレースゲームをプレイしてもらい、その感想を読者の皆さんに届けるもの。実際のクルマに数多く触れてきた人たちにとって、レースゲームはどのように映るのか。そのあたりのインプレッションを中心にお届けする。
【プロフィール】
松田秀士
高知県に生まれて大阪で育つ。ビートたけしの義弟で、クルマ好きのたけしの援助を受けてレース活動を開始。1980年代後半から1990年代初めにかけて多くのレースに参戦して好成績を残し、その実績から「インディ500」に出場。「SUPER GT」に100戦以上出場したグレーテッド・ドライバーの称号を持つ。
62歳にして現役レーサー。世界・カー・オブ・ザ・イヤー日本代表審査員を務めるほか、自動車評論家としても活動中。「Car Watch」にも寄稿している。
※編注:ゲームではタイヤやサスペンションなど細部にわたり数値を微調整できるが、今回はプレイ時間の都合上、ウイング等、変化がわかりやすい項目の数値を変更するだけにとどめている。ご了承いただきたい
初見でもスムーズに走行
松田さんは「インディ500」に出場した実績のあるドライバーなので、アメリカの「Indianapolis Motor Speedway(オーバルコース)」を走ってもらうことにした。ホンダの「IR-12 Honda Oval」を選び、まずはテスト走行だ。
ちなみに今回は、Logitech(開発)のコントローラー「G29 Driving Force」を使ってテスト走行している。フォースフィードバック対応なので実車に近い感覚でマシンを操作できる。ただし、繊細なステアリング操作が求められるインディーカーレースの経験者らしく、「実車だとステアリングは普通に握るんだけど、ゲームだとどうしても強く握っちゃうな」と、ステアリングからフィードバックされる感覚の違いについて言及した。
「(実車と)全然雰囲気が違うな。オーバルはストレートだと右にハンドルを切らないといけないんだけどね。タイヤが左右でセッティングが違うから(※1)。こんな感じじゃないんだけどなあ」とやりにくそうな感じ。コーナーにさしかかると「そうなっちゃうの? そんなに(ハンドル)切らないよ」。いきなり辛口の評論だ。
でもさすが松田さん、初見なのに1回もスピンしない。スタッフがテストプレイをしたときは、ちょっとリアが滑るだけであっという間にスピンしてしまい、レースにならなかったのだ。
プロの要望に応える細かい調整が可能!
「まあ(ステアリングコントローラーが)電動だからしょうがないんだろうなぁ。これでフィーリングを出すのは難しいんだろうな」と、ステアリングについてはゲームとリアルマシンの違いに納得していただいた感じ。そこでセッティングをいじってみることにする。「(路面は)天候によって自動調整だからタイヤじゃないな(※1)」と、リアウイングのダウンフォース値を-7.0から-3.0に変更。ハンドルロックについてもセッティングを変更する。
再びテスト走行へ。「さっきよりは安定したね」。安全第一でタイヤを温めながらスピードを上げていく。ちなみに「Project CARS 2」では、タイヤの温度も車の挙動に関係してくるので、そのあたりの違いも感じることができるのだ。
「このゲームで頑張って練習したら、またインディに出られるかな(笑)」と順調に走らせていく。調子は上がってきたが、ラップタイムが48秒とちょっと遅めなのに不満気な様子。「40秒切りたいよね。実際は38秒くらいだから」と、ラップタイムを縮めるべくさらにテンションが上がる。
セッティングはステアリングにもおよび、「ステアリングのあそび」を0に、「ステアリング感度」を50から70へ変更。「コーナーの出口で遅れるんだよね。ステアリングの戻しが。内側に行くとダウンフォースがなくなるんで危ないんですよ」。
コースの再現度はどうかと聞いてみると、「すごく(リアルに)近いね、ターンに入っていくときの感覚が似ている。第1ターンは下っていて、第3ターンは登っているとか、全体の景色やドライバー視点の雰囲気は似てるね」。サーキットのリアルさに満足な様子だ。
その後順調に周回を重ね、ようやく46秒台までタイムが上がってきた。だんだんと刻んでいき、ついに45秒台に。このタイミングで再びセッティングを調整する。「ちょっとアンダーステアなんですよ。リアが利いちゃってる」と、リアウイングのダウンフォースを-7.0に戻す。
「ラインがだいぶ変わってるでしょ。ウイングをいじっただけでこんな感じだから。実車に近いね。リアウイングは抵抗が大きいんで、戻すだけでストレートが速くなった。(エンジンが)10,000(回転)ちょい回ってるから320km越えてるでしょ。5速入るかな」。
しかし、あと5秒がなかなか削れない。「今度はフロントのダウンフォースを下げましょう」と、-0.5に変更する。さらに「ステアリングギア比」を16:1から12:1に調整。このように細かなセッティングを繰り返しながらの本気の走りが続く。
それにしてもウイングやステアリングの数値を調整するだけで、こうもマシンの挙動が変わるのかと思わされた。一般人がプレイしたとして、こんなに変化を感じることができるのだろうか。
マシンの挙動については「最初はアンダー(ステア)だなとわかったんだけど。『そういうフィーリングがゲームだよね、これ』という感じ。オーバルでは『プッシュ』って言うんだけど、それがちゃんと再現されているね。ドライバー視点でやってると昔を思い出すね」とも。
そして、もう1度ウイングの数値を微調整。「ちょっと待ってくれる?」とセッティング画面を前にしてしばし考え込む。この間2分くらいだろうか。「フロントを-0.5に、リアを-6.5にしよう」とダウンフォースの設定を変える。
「セッティングでルース(オーバーステア)が出たりプッシュが出たり、そのあたりの雰囲気がリアルなんですよ。ルースが出たときのリアの流れかたが実車に近い感じがしますね」と話しながら、今回のセッティングでついに43秒台を叩き出す。「結構面白い、これ。変化がリアルで」。
決勝レースでライバルマシンとバトル!
セッティングも落ち着いてきたところで、いよいよ決勝レースに挑む。決勝では30台のライバルマシンと一緒に走る設定にした。まずはフォーメーションラップから。リアが流れて滑るシーンもあったが、ステアリングコントロールだけで体勢を整える。さすがだ。
いよいよレーススタート。「スタートした瞬間の(タイヤが)冷えてる状態がはっきりしているね。初めて第2ターンを思い通りに走れたよ」。レースは順調に進むものの、どうしても実車と違うのか少しやりづらそうだ。
「ステアリングを切るタイミングが遅れると、もう完全にインにつけない。ビューの問題もあるね。目線がもうちょっと高くて、コースがわかりやすいといいんだけど。第2ターンを立ち上がったときに、もうちょっと見えていてほしかった」
そのあたり、正面しか見えないゲームではやりづらいところもあるようだ。「幅広いテレビがあればいいのかな(笑)」。
と、ここでタイムアップ。全体的な感想を聞いてみる。
「インディアナポリスは(一般に開放していないので)誰でも走れるわけじゃないし、知らない人もいる。そういう意味では実車感はびっくりするくらい近いよね」
「『380kmオーバーで走るとこんな感じですよ』というのは感じるね。……40秒を切りたかった。もう少し時間があればなぁ。まだ5速に入れてないから。5速に入るまでセッティングを仕上げて、クセがつかめれば、1秒とかタイムを縮められると思うんですけどね。そういうところは実車に近いところがあるよね。ギヤとエンジンの回転数と、スピードが上がっていく感じは実車感がある」
「オーバルなんて外から見るとぐるぐる回ってるだけじゃんと思うだろうけど、このゲームを体験すると実際のレースで何が大変なのかわかってもらえるね。佐藤琢磨が優勝したことで注目されてるけど、こんな世界で走っているのかと思ってもらえるとうれしいね。4つあるターンは全部違うし、風の向きでも挙動が変わる。それがフィードバックされているというか、研究されているね。見ていたらいじりたいところはいっぱいあるんだけど……そういうインディのすごさ、大変さみたいなものがプレイしてもらえるとわかるんじゃないかな。このゲームでテスト走行しておくと、実車に乗ったときもっと速く走れるかもね。俺買おうかな(笑)。練習になるもん」。
「俺がインディでいきなり速かったのは、セットがうまいからだと言われた。オーバルの難しさはピンホールのセットアップをしなければいけないこと。(他車との)スピードがあまり変わらないから。感じるものが正確だから、それをちゃんとフィードバックすれば、マシンも仕上がってくる。ゲームなのにそのあたりは実車に近かったね。データがしっかりしているんだろうなと感心しました」
プロドライバーも納得のリアル・シミュレーター
2時間という短いプレイ時間ながらも、ウイングとステアリングの微調整だけで43秒台までラップタイムを削った松田氏。セッティング1つでクルマの挙動が変わるリアルさに自身も驚いたようで、そのあたりから「リアルだね」というコメントが増えてきた。
しかし何といってもスピンさせずにマシンを操る様子、コンマ5秒でもラップタイムを縮めるべく真剣に走り込む姿は、本当にプロのドライバーなんだと感動させられた。走り方もゲーマーとはまったく異なるところも興味深かった。
プロドライバーも欲しいと思った「Project CARS 2」。そのリアルさをぜひ体験してみてはいかがだろうか。
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