Game Developers Conference 2009現地レポート

「DEAD SPACE: How We Launched the Scariest New IP」
EAにおける新IP、2008年を席巻したホラーアクション

3月23~27日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center

 

 北米で2008年10月に発売されたプレイステーション 3/Xbox 360/PC用アクションホラー「DEAD SPACE」は、2008年のホラーゲームの中では群を抜いた恐怖感と臨場感を味わえる作品だ。現地時間3月28日に行われたGDC 2009の通常セッション「DEAD SPACE: How We Launched the Scariest New IP」では、Electronic Arts Redwood Shoresスタジオのシニアプロデューサー Chuck Beaver氏が登壇し、「DEAD SPACE」の制作経緯を語った。

 Beaver氏によると「DEAD SPACE」は2006年1月に企画がスタート。当時のEAは新しいIPの獲得を熱望していたため、エグゼクティブプロデューサーのGlen Schofield氏が「DEAD SPACE」の企画を立案したが、上層部からの返事は決して良いものではなく、結果として経験豊富な開発者を中心とする小規模なチームのみでの制作、かつ3か月分の予算で作らなければクビという条件の元、制作に打ち込んだという。


与えられた予算は3カ月分、できなければクビという過酷な条件で本作の開発はスタートした



■ 昨日の革新は今日の基準をモットーに制作

 とはいえ、この無茶な予算組みとプロジェクトの中、新しいものをゼロから作りだすことは難しく、チームはカプコンの「バイオハザード4」をヒントにしたホラーアクションを考え付いたという。また、ユーザーにとってポピュラーであり、親しみやすさを与えるような要素を重視したほか、本作の開発の観点を「昨日の革新は、今日の基準」と語っていた。講演ではこの一連の流れをPCのインターフェイスに見立て、テキストベースのOSから、MacintoshでのGUI登場による革新、今日におけるWindowsの標準化といった時代の変化を例にあげて説明。

 操作方法においても、「バイオハザード4」のタイプのものを踏襲するわけではなく、あくまで親しみやすさということからFPSに準拠したタイプを選択。ゲームシステムには他のゲームの標準的な要素を踏襲し、体力ゲージをはじめ、敵やオブジェクトを破壊して手に入れる弾丸、武器野強化などを実装したという。


ゲームジャンルを今日におけるWindowsの標準化といった時代の変化を例にあげ、操作方法は北米のプレーヤーにはなじみの深いFPSに準拠してデザイン



■ 作品のオリジナル要素を実装 プロトタイプで度重なるブラッシュアップを実施

 基本的な部分が固まったあとは、本作の特徴を実装。まず「DEAD SPACE」は舞台を宇宙に設定したというところからSF作品にありがちな「ホログラム機能」、射撃以外にも様々な用途で使用できる「武器」、ヘッドショット対する「新しい概念」を実装。制作されたプロトタイプ(アルファバージョン)のゲームエンジンのチューンナップ、トライアンドエラーを繰り返し、恐怖体験に焦点を当てたフォーカステストを経て作成していったとのことだ。

 ゲーム仕様が固まり、プロトタイプもある程度できたところで、設定やゲーム内容などをブラッシュアップしていくこととなる。最初に説明が行なわれたのは、主人公アイザック・クラークの設定。彼は一般的なエンジニアであり、身体的な特徴も一般的な人、あるいはそれよりも弱い設定になっている。Beaver氏は、アイザックの特徴をXbox 360のFPS「Gears of War2」の主人公マーカス・フェニックスの特徴と比べて、あっけなく死ぬのが当たり前であるような設定だということを語った。


本作の特徴を紹介。ホログラフによるインターフェイス。ヘッドショットから部位攻撃へと既存の価値観を変更した

プロトタイプでは、本作の特徴を短いながらもすべて実装し、ここから何度もブラッシュアップを重ねていったという

ホラー作品であり、何度も死ぬことを前提にしているため、主人公は超人キャラクターではなく、一般的なエンジニアとして設定した



 次の説明では、恐怖という演出を作成するための3つのセグメントとして、ちょっとしたサプライズなどを含めた「Boo」、不安要素を煽る「Dread」、日本語で言うところの“殺られる前に殺れ”を演出する「White-Knukle survival」を説明。これらのセグメントを元にゲーム中の演出に組み入れられた。これらの演出をゲーム中の例であげると、天井から落ちてくる死体は「Boo」、重圧的な機械音は「Dread」、触手に足を掴まれ引きずられるシーンは「White-Knukle survival」に位置することになる。これらのセグメントを元に、恐怖感を演出していき、ゲーム中には没入感(IMMERSION)、信用性(BELIEVABILITY)、恐怖(SCARY)の3つをコンセプトにすすめてきたいう。

 またより深くゲームの世界に没入できるようインターフェイスデザインをはじめ、インベントリなどを開いてもポーズのかからない仕様などが加えられたほか、ライティングによりより暗い世界を演出していた。さらにグラフィックスやインターフェイスとバランスを伴なうように、サウンドの演出も非常に力を入れており、重圧的な機械音などをはじめ、ドアを開けてから部屋の音が徐々に聞こえてくるような演出なども取り入れたとのことだ。ちなみに発売の前後にはComic、Movie、CoceptBook、Suit(おそらくコスプレ)などをゲリラ的に展開したという。


臨場感を高め、より一層作品に没入できるよう、アイザックの背中にあるライフゲージをはじめ、光源などを設定、サウンドにも力を入れたほか、発売の前後にはゲリラ的にプロモーションを行なったという

 こうして発売された「DEAD SPACE」は非常にシビアな条件の中、世界的には成功を収め、2009年に入ってからはWii版の発売も決定している。プレゼンテーションが終了した際、多数の聴講者からBeaver氏へと拍手が贈られていたのが印象的だった。しかしながら、本作は日本では発売されていないため、多くのユーザーが本ゲームの魅力である恐怖を体験できないのが残念でならない。



(2009年 3月 29日)

[Reported by 鬼頭世浪 ]