【特別企画】
「PSP」生誕20周年! UMDを採用し、21世紀のウォークマンを目指したSCE初の携帯ゲーム機
2024年12月12日 00:00
- 【PlayStation Portable】
- 2004年12月12日 発売
ソニー・コンピュータエンタテイメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が2004年12月12日に発売した携帯型ゲーム機「PlayStation Portable」(以下PSP)が、本日2024年12月12日で生誕20周年を迎えた。
PSPは、SCEが初めて開発した携帯型ゲーム機であり、2000年3月4日に発売された「プレイステーション 2」に迫る、当時の携帯型ゲーム機としては破格の3D描画性能を誇っていた。ライバルはもちろん、2004年12月2日に任天堂から発売された「ニンテンドーDS」である。PSPとニンテンドーDSはかなり性格の異なる携帯型ゲーム機であり、初代プレイステーションとプレイステーション 2でゲーム業界に確固たる地位を確保したSCEが、携帯型ゲーム機の王者である任天堂に挑んだ意欲的な製品だ。
本稿では、PSPを発売日に購入して移動中などに愛用していた筆者が、PSPの魅力や当時のゲームファンに与えた衝撃、筆者が熱中したゲームソフトなどを紹介していく。
当初は21世紀のウォークマンとして位置づけられていたPSP
ソニーの最大のヒット商品は何か?と聞かれたら、「ウォークマン」と答える人が多いだろう。SCEは当初、PSPを「21世紀のウォークマン」として位置付け、単なる携帯型ゲーム機を超えたマルチメディアプレイヤーとしてアピールしていた。あくまで携帯型ゲーム機として登場したニンテンドーDSとは、目指す地点が違っていたのだ。
PSPの最大の特徴は、ソニーが開発したUMD(Univesal Media Disc)と呼ばれる光ディスクをソフトの媒体として採用したことだ。UMDは、その名前の通り、さまざまなメディアを格納するための光ディスクとして規格化され、「UMD Audio」や「UMD Video」といった音楽や映像のためのプロファイルも規定されている。ディスクの直径は60mmで、記憶容量は1.8GBである。ディスクがカートリッジに収められているため、記録面面に傷などが付きにくく、気軽に扱える。ただし、コストダウンのためMDやMOのような保護シャッターはない。
ソニーはUMDをライセンスし、他社もUMD対応機器を製造できるようにする予定であったが、フラッシュメモリの大容量化・低価格化によって、UMDの容量やコスト面での優位性がなくなり、記録可能なメディアも登場しなかったことから、結局PSP専用メディアとしてその歴史を終えることになった。
PSPで再生できる映像や音楽のUMDコンテンツも数社から発売されたが、PSPの出荷台数が当初伸び悩んだこともあり、21世紀のウォークマンを目指すというSCEの目論見は結局失敗に終わったといえるだろう。
しかし、携帯型ゲーム機としては後述する「モンスターハンターポータブル」シリーズの大ヒットなどもあり、一時代を築いた名機といってよい。
初代プレイステーションの10倍以上の3D描画性能を実現
PSPは、当時の携帯型ゲーム機としては非常に高い性能を実現していた。MIPS R4000コアと曲面サーフェスに対応したグラフィックスコアを搭載したソニー独自のCPUを搭載し、初代プレイステーションの10倍以上、プレイステーション 2の約25~50%もの3D描画性能を誇る。
液晶にもこだわっており、4.3型ASV液晶を採用している。解像度は480×272ドットで、アスペクト比は16:9のワイド仕様だ。ニンテンドーDSの液晶は3型で、解像度は256×192ドットであるが、ニンテンドーDSは折りたたみ式で上下に同じサイズの液晶があるため、2枚合わせた合計の解像度は256×384ドットとなる。それでもPSPのほうがドット数は多い。また、初代PSP(PSP-1000)のサイズは約170×74×23mmで、重量は約280g(バッテリー込み)であり、重量はニンテンドーDSの約275g(バッテリー込み)とほぼ変わらない。
操作系はプレイステーションに似ており、左に上下左右ボタンとアナログスティック、右に△○×□ボタン、上にLRボタンを備えている。また、HOMEボタンや音量調節ボタン、バックライト調節ボタン、サウンドボタン、SELECTボタン、STARTボタンも用意されており、当時の子ども達には多少ややこしく感じられたかもしれない。筆者は当時34歳のいい大人であったが、初代PSP(PSP-1000)のデザインは洗練されていてカッコイイと思っていた。
バッテリーはリチウムイオン電池を採用しており、交換が可能になっている。標準バッテリーは3.6V/1,800mAhだが、3.6V/2,200mAhの大容量バッテリーも用意されている。標準バッテリーでの持続時間は約4~6時間(ゲーム利用時)であり、携帯型ゲーム機としてはやや短めだが(ちなみにニンテンドーDSの電池持続時間は、約6~10時間)、性能とのトレードオフになったのであろう。なお、今回の企画のために数年ぶりにPSPを起動してみたが、さすがにバッテリーがダメになっていたので、Amazonで互換バッテリーを購入したところ、問題なく動作した。液晶周辺部の色味が黄色くなっていたが、20年前の製品がちゃんと動くのは素晴らしい。
ユーザーインターフェースとしては、クロスメディアバー(XMB)が採用されている。XMBは、元々PSX向けに開発されたもので、プレイステーション 3にも採用されている。横軸がカテゴリ、縦軸が各メディアや項目に分かれており、直感的に操作できる。
入出力端子が豊富で、カメラやGPSなどの周辺機器も登場
PSPは、さまざまな入出力端子を備えており、拡張性が高いことも特徴だ。本体上部にUSB Mini-Bコネクタと赤外線通信ポート、下部にステレオ音声出力端子と独自端子を備えている。メモリースティックPRO Duoスロットも用意されており、別売りのメモリースティックDuo/PRO Duoにゲームのセーブデータや音楽、映像などを記録することが可能だ。また、IEEE 802.11b準拠の無線LAN機能も備えており、PSP同士での近距離通信を行なうアドホック・モードと、アクセスポイントを経由してインターネットに接続できるインフラストラクチャー・モードを利用できる。
周辺機器として、本体上部に取り付けられるカメラやGPSレシーバー、ワンセグチューナー(初代PSP-1000は非対応)なども登場しており、21世紀のウォークマンを目指したPSPらしさが感じられる。
初代PSP(PSP-1000)は、OPENスイッチをスライドさせることで、UMDドライブが開く構造になっているが、この開き方もなかなかメカっぽくていい。ストラップホールがあることも特徴であり、純正ストラップも用意されていた。
2007年9月20日にはマイナーチェンジモデルのPSP-2000が登場し、テレビ出力も可能になったが、赤外線通信ポートは廃止された。また、薄型化のために、UMDドライブの開閉が手動式になり、OPENスイッチもなくなっている。さらに2008年10月16日には、PSP-3000が登場。液晶のコントラスト比が従来の400:1から2000:1に改善され、応答速度も30msから8msに高速化され、さらに液晶の表示品位が向上したほか、マイクも内蔵された。
ローンチタイトルの目玉「リッジレーサーズ」
PSPのローンチタイトルは、「ヴァンパイア クロニクル ザ カオス タワー」や「みんなのGOLF ポータブル」など6タイトルであったが、中でも人気があったのがナムコの「リッジレーサーズ」だ。
「リッジレーサー」は、プレイステーションのローンチタイトルかつキラータイトルとして人気を集めたレースゲームであるが、それまで携帯型ゲーム機で遊ぶことはできなかった。PSPの「リッジレーサーズ」は、リッジレーサーの同窓会というコンセプトで、過去のリッジレーサー」シリーズに収録されたコースや人気のマシンが収録されている(もちろん新コースや新マシンも登場する)。PSPの特徴であるワイド画面を活かしたタイトルでもあり、いつでもどこでも気軽に派手なドリフト走行を楽しめるので、レースゲームがあまり得意ではない筆者もかなり遊んだ覚えがある。
マルチプレイヤーで協力して遊ぶという文化を根付かせた「モンスターハンターポータブル」
PSPのヒットタイトルはいくつかあるが、印象に残っているのはやはりカプコンの「モンスターハンターポータブル」シリーズだ。
初代「モンスターハンターポータブル」は2005年12月1日に発売された。今作は「モンスターハンター」シリーズ初の携帯型ゲーム機用ソフトで、プレイステーション 2用ソフトとして発売された「モンスターハンターG」をリメイクしたものとなっている。「モンスターハンター」といえば、複数人数での協力プレイが大きな魅力だが、PS2版でマルチプレイを実現するには、オンラインゲーム用のネットワークサービス「マルチマッチングBB」の契約が必要であり、友人と一緒に遊ぶにはハードルが高かった。
しかし、無線LAN機能を搭載し、アドホック・モードに対応したPSPなら、PSP本体とソフトさえ持ち寄れば簡単にマルチプレイが実現できる。PSP用の「モンスターハンターポータブル」シリーズは、その後「モンスターハンターポータブル 2nd」、「モンスターハンターポータブル 2nd G」、「モンスターハンターポータブル 3rd」と続編が発売されたが、特に2007年2月22日に登場した「モンスターハンターポータブル 2nd」は、PSP用ソフト初のミリオンセラーを達成し、累計売上本数は約172万本を記録した。「モンスターハンターポータブル」シリーズの最後となった「モンスターハンターポータブル 3rd」は、累計売上本数が約450万本を突破した。
PSPでの「モンスターハンターポータブル」人気をさらに加速したのが、「モンスターハンターポータブル 2nd G」のCMで使われた有名なフレーズ「ひと狩りいこうぜ」である。当時、「ひと狩りいこうぜ」を合い言葉に、中高校生達がさまざまな場所に集まって、「モンスターハンターポータブル」をプレイしている姿をよく見掛けた。
個人的にハマったパズルゲーム「もじぴったん大辞典」
筆者がPSPで遊んだゲームの中でもよく覚えているのが、ナムコの「ことばのパズル もじぴったん大辞典」だ。「もじぴったん」はさまざまな機種に移植されているので、ご存知の方も多いだろうが、2001年12月に登場したアーケードゲームが元祖である。
「もじぴったん」は、ステージごとに決められた文字の集まりから1文字ずつ選び、マスに置いて「ことば」を作っていくパズルゲームだ。ルールは簡単だが、ステージによって使える文字やクリア条件などが異なり、ステージが移動したり回転したりするギミックもあるので、かなり頭を使うパズルゲームの良作だ。PSP版の「ことばのパズル もじぴったん大辞典」は、UMDの大容量を活かし、収録単語数がそれまでの7万6,500語以上から10万語以上に強化、ステージも一新され、さらにやり応えのあるパズルになっていた。
個人的にはナムコゲームの魅力のひとつは、BGMの素晴らしさだと思っている。「ことばのパズル もじぴったん大辞典」では、歌詞付きのBGMのアレンジバージョンや新曲も追加されており、全部で25曲が収録されており、プレイしながら思わずBGMを口ずさんでしまいたくなる。
一時代を築いたPSP、SIEの携帯型ゲーム機市場への再参入はあるのか?
PSPが初出となり、その後他の機種に移植されたゲームとしては、「ダンガンロンパ」シリーズも有名だ。「ダンガンロンパ」は、娘が気に入ってPSPでプレイしており、最近またSwitch版で3作全部プレイしていた。
また、PSPは最初に説明したように21世紀のウォークマンを目指した製品ということもあり、動画や音楽再生、インターネットブラウザ、インターネットラジオなどの機能を標準で備えていたことも、ニンテンドーDSなどと大きく異なる点だ。筆者も、フリーソフトの「携帯動画変換君」などを使って、お気に入り動画をPSP用に変換してPSPで再生したりしていた。懐かしくなって、ブラウザを立ち上げてみたが、最近のWebサイトのセキュリティ仕様には対応していないようで、まともにWebサイトの表示はできなかった。しかし、インターネットラジオは動作し、ちゃんとインターネットラジオ番組を聴くことができたことには、驚かされた。
PSPはその後、2009年11月1日にUMDを廃止した姉妹製品の「PlayStation Portable go」が発売され、2011年12月17日には後継機の「PlayStation Vita」(以下PS Vita)が発売されたが、PS Vitaはプレイステーション 3とほぼ同等の描画性能を持ちながら、スマートフォン人気におされ、販売面では奮わない結果に。PSPは全世界合計で8,200万台を売り上げたが、PS Vitaは1200万台に留まった。その後、2025年11月13日には、プレイステーション 5をリモートプレイすることができる専用デバイス「PlayStation Portal リモートプレーヤー」が発売された。
SCE(現:SIE)は、PS Vitaの生産終了以降、携帯型ゲーム機市場から撤退してしまったが、任天堂もSwitchに一本化してしまった現在、より携帯性に特化した携帯型ゲーム機があってもいいんじゃないかと思っている。最近、海外でSIEが新しい携帯型ゲーム機の展開を検討しているというニュースが報道されたが、PSPの思想を継承する新型の携帯型ゲーム機の登場に期待したい。