【特別企画】

「Apex」競技シーン、盛り上がりは4年目にして最高潮!! ドリームチーム結成などファンが熱狂する理由は?

公式大会「ALGS」で白熱のプロリーグ スプリット1が開幕!

【ALGS Year4 APAC North プロリーグ スプリット1】

開催日程
Week 1:1月21日~
Week 2:1月28日~
Week 3:2月4日~
Week 4:2月10日~
Week 5:3月2日~
Regional Finals:3月9日~

 エレクトロニック・アーツのバトルロイヤルシューティング「Apex Legends」にて、世界のトッププレーヤーたちがしのぎを削る公式eスポーツ大会「Apex Legends Global Series」(ALGS)が今年も開催される。1月21日には、日本を含むAPAC North(北アジア太平洋)地域からオフライン大会進出チームを選抜するプロリーグ スプリット1がついに幕を開けた。

 まだ始まったばかりのプロリーグだが、はやくもファンたちは大きな盛り上がりを見せている。というのも今シーズンの競技シーンでは、“ドリームチーム”の結成やAPAC North地域初の女性プロ誕生など、さまざまな見どころが生まれているからだ。

 そこで本稿では、「ALGS」のことをよく知らない読者にも伝わるように、日本の競技シーンを取り巻く熱気について紹介していきたい。

【「ALGS Year 4 Pro League」オフィシャルトレーラー】

「ALGS」プロリーグとは何か?

 「ALGS」は、ElectronicArtsとRespawnEntertainmentが運営する公式の世界大会。今年が4年目の開催となり、その賞金総額は年間で約500万ドル(約7億4千万円)に及ぶ。年間スケジュールとしては、スプリット1とスプリット2、そして年間王者を決めるチャンピオンシップの3つに分かれており、現在はスプリット1が開幕したところだ。

 そして各スプリットは、プレシーズン予選・プロリーグ・プレイオフという流れで進行していく。このうちプレイオフのみがオフラインの大会であり、世界の強豪たちが集まる“世界大会”にあたる。その前に行なわれるプロリーグは、簡単に言うと各地域から世界大会に挑む“地域代表チーム”を決めるための戦いということになる。

日本や韓国の強豪プレーヤーたちがA・B・Cの3グループに分かれ、総当たりで激突

 プロリーグにはプレシーズン予選で好成績を残したチームと、前年度までの実績などによって運営に招待を受けたチームが参加し、総当たり戦を実施。その総合順位が20位以内となったチームが、リージョンファイナルへの進出を果たす。そしてリージョンファイナルの優勝者と、総合順位7位以内のチームを合わせた計8チームに、プレイオフに進出する権利が与えられる。すなわちプロリーグを観戦する際には、選手たちが“上位8チーム入り”を目指して戦っていることを意識すると、状況が分かりやすくなるはずだ。

 なお日本を含む北アジア太平洋地域のプロリーグ開催日程は、Week 1が1月21日、Week 2が1月28日、Week 3が2月4日、Week 4が2月10日、Week 5が3月2日、そして最後は3月9日にリージョンファイナルの試合が実施される予定。各試合はそれぞれYouTubeやTwitchの「esports_RAGE」公式チャンネルにて、実況・解説付きの配信が行なわれる。

「esports_RAGE」のYouTubeチャンネル

Week 1は1位「REJECT WINNITY」、2位「RIDDLE ORDER」、3位「Crazy Raccoon」という結果に

今年こそ優勝に期待! “日本最強”ドリームチームの数々が誕生

 そんなプロリーグの開幕にあたって、何より期待が高まっているのは、日本チームのさらなる躍進だ。これまでの「ALGS」を振り返ると、Year2のスプリット2 プレイオフで「Team UNITE」が世界3位に入り、同年のチャンピオンシップでは「Fnatic」が世界4位の成績を残していた。たんに戦績ばかりではなく、Ftyan選手による試合後の“マッスルポーズ”が公式配信で大きく取り上げられるなど、選手たちの知名度も着々と上がっている。

Year 2 スプリット2 プレイオフの決勝でチャンピオンを獲得した際のFtyan選手のマッスルポーズ

 今では海外選手が日本チームの活躍に言及する光景も増えており、eスポーツファンのあいだでは「次こそは優勝を狙えるのではないか」という期待感が膨らんでいる状況だ。

 さらに日本の競技シーンでは、有名チームに所属する選手の大規模な入れ替わりが起こったことで、いわゆる“ドリームチーム”が多数生まれている。

 国内トップクラスの人気を誇るYukaF選手が所属する「Fnatic」では、世界大会出場経験がある元「NORTHEPTION」のsatuki選手、Lykq選手が新たに加入。YukaF選手が華麗にキャラクターを操作する技術に長けている一方、satuki選手とLykq選手は敵にダメージを与える能力が高い選手。さらには全員が試合運びを考えるIGL(司令塔)の能力をもっており、隙がないメンバーが揃っているため、最注目チームの一角としてよく名前を挙げられている。

YukaF選手は世界4位の実績をもち、海外での知名度も高い(左からLykq選手、YukaF選手、satuki選手)

 また、人気チーム「RIDDLE ORDER」の編成にも大きな変化があった。ストリーマーとしての知名度の高さから「ジャパニーズCEO」とも呼ばれるYUKIO選手のもとに、元「Fnatic」のMeltstera選手、元「PULVEREX」のsaku選手が加わり、全員が“世界大会決勝進出”の実績をもつ豪華メンバーとなっている。

PAD(コントローラー)が浸透した現在の競技シーンでは珍しく、全員がキーボード&マウスのプレーヤー(左からYUKIO選手、saku選手、Meltstera選手)

 世界3位の実績があり海外ファンも多いFtyan選手を擁する「PULVEREX」には、元「Fnatic」のUmichanLoveti選手と、元「FC Destroy」のHammerDrill選手が加入した。こうして見ると、有名チームのあいだで選手が入れ替わる形となっており、かつてチームを組んでいた仲間が今後は“ライバル”として激突する……というドラマも大きな見どころとなるだろう。

新生「PULVEREX」メンバーのキャラクターデザイン(左からHammerDrill選手、Ftyan選手、UmichanLoveti選手)

 そのほか、今シーズンは「TEAM_わっしょい」がプロリーグ参加資格を獲得したことも話題を呼んだ。その後「REALIZE」APEX部門とプロ契約を結び、チーム名が「REALIZE わっしょい」となったのだが、同チームに所属するあおはる選手は女性プレーヤーであるため、APAC-North地域のプロリーグで初となる女性プロの誕生となった。

あおはる選手だけでなく、ランパート使いのともろう選手にも注目(左からともろう選手、あおはる選手、カボチャの王セナ選手)

 大会本番はもちろんのこと、連日のようにプロチームによるスクリム(練習試合)が行なわれており、自らの視点を配信している選手も多い。あれる氏やshomaru7氏、Dizzy氏など、元プロ選手による解説付きのミラー配信も行なわれているため、予備知識がなくとも試合の流れを理解しながら観戦することができる。

 さらに観戦を続けることで、各選手のプレイスタイルやキャラクター性、チーム内の関係性などが分かっていくため、より見どころが増えていくだろう。

あれる氏のYouTubeチャンネル

shomaru7氏のYouTubeチャンネル

Dizzy氏のTwitchチャンネル

 そもそもの前提として、「Apex Legends」は巨大なマップに20チームが降下し、時間の経過と共に縮小していくリング(エリア)に移動しながら戦闘を行なっていくゲームだ。競技シーンでもその点は変わらないが、各チームが「ランドマーク」として最初に降下する場所を決めているため、序盤で脱落するチームが生まれにくく、戦略が物をいう“バトルロイヤル”としてのゲーム性が高くなっている。

 そのため試合を観戦する際には、「いかにしてエリア内に移動するか」という点が1つの見どころとなる。基本的には先にリング内に入った方が有利なので、「貧弱な物資でも移動を優先して有利なポジションを確保する」(中入りムーブ)という戦略が取られることが多いが、逆に「物資を整えることを優先して後からリングに入る」(外入りムーブ)という戦い方もあり、そうした戦略の違いもそれぞれのチームの個性となっている。

 今回紹介したチームでいえば、saku選手が司令塔を務める「RIDDLE ORDER」は中入りを強く意識したスタイルで、エリアの収縮に合わせて有利なポジションを取りながら移動していくことに長けている。その一方、Mia.K選手、1tappy選手、4rufa選手による「KINOTROPE gaming」は外入りムーブの採用で有名なチームで、試合展開が嚙み合った際に爆発的にキルを量産することが強みとなっている。

Mia.K選手、1tappy選手は元YUKIO選手のチームメイトで今はライバルに(左からコーチの機械学習氏、4rufa選手、Mia.K選手、1tappy選手)

 また最近行なわれたアップデートの影響によって、戦術面での変化が起きることも予想される。以前まではエイムアシストがあるPAD(コントローラー)のプレーヤーが圧倒的なダメージ量によって相手プレーヤーを1人ダウンさせ、人数差を作り出したところで畳みかけるという戦術が多く見られた。Mia.K選手やHammerDrill選手などは、その代表格と言えるプレーヤーだ。

 しかしアップデートによって「R99」と「CAR SMG」という武器の与えるダメージ量が下がり、瞬間的にダメージを与えることが若干難しくなったため、今シーズンは立ち回りの変化が求められるかもしれない。逆にキャラクターを繊細にコントロールすることに長けたキーボード&マウスのプレーヤーは、撃ち合いにおいて活躍しやすくなったとも言える。たとえば“忍者”と評されるほどキャラクターコントロールが巧みなYukaF選手は、ますます注目を集めそうだ。

 「Apex Legends」の戦いには、こうした撃ち合いにおける戦術と、エリアの移動という戦略の両面が存在する。徐々に知識を身に付けていけば、試合を観戦することがより楽しくなるだろう。

競技シーンが盛り上がる要素はほかにも! 世界王者「TSM」も来日

 そのほかにも日本では、競技シーンを盛り上げようとする動きがいくつも起こっている。

 昨年12月には、eスポーツキャスターの平岩康佑氏と大和周平氏が「Apex Legends」のプロゲーマーに密着したYouTubeチャンネル「APEX MASTERS」を始動。日本の注目チームについての解説動画や、ユーチューバー「Fischer's-フィッシャーズ」が出演するコーチング動画などを投稿している。

【「【APEX】一旦、日本最強のIGLを決めようか【IGL MASTERS】」】

 その一方で1月19日には、世界の競技シーンで長年活躍していたプレーヤー・rpr氏が、日本のプロゲーミングチーム「KINOTROPE gaming」を運営するキノトロープに入社することが明らかに。rpr氏は「ALGS」でヨーロッパ王者の座に君臨したこともあるスター選手だが、今年4月からは日本でストリーマー兼正社員としての道を歩み始めるという。

IGLとしてヨーロッパの強豪「SCARZ EU」を導いたrpr氏

 同日には、「100Thieves」所属の海外ストリーマー・NiceWigg氏が、日本の視聴者向けに「NiceWiggJapan」というYouTubeチャンネルを立ち上げて活動していくことも発表された。NiceWigg氏はハイテンションかつユーモアあふれる実況によって競技シーンを盛り上げてきた立役者で、APAC North地域のプレーヤーたちと深い親交があり、日本でも「名物キャスター」として多くのファンが存在する。同チャンネルではそんな彼の実況を日本語字幕付きで楽しめる動画が、定期的に投稿されていく模様だ。

【「NiceWiggから日本のファンへ向けてメッセージ」】

 また2月24日、25日には、幕張メッセにて大規模オフラインイベント「Apex Legends Asia Festival 2024 Winter」が開催される予定だ。本イベントには海外から「TSM」や「Alliance」といったチームが招待されており、日中韓のプロチームと勝負を繰り広げる。

 「TSM」は世界最高峰の司令塔・ImperialHal氏が率いる北米のチームで、世界大会で3度の優勝を成し遂げたことで有名。一方の「Alliance」はヨーロッパ王者であり、世界大会で最多キルの記録を残したEffect選手が所属している。いずれも“世界の頂点”と言える強豪なので、ハイレベルな試合が繰り広げられることは間違いないだろう。

「ALGS」Year 3で活躍した中国の強豪「Dream Fire」や「MDY White」も参戦

 日本の有名プレーヤーたちがあらためて新生チームを組み、世界大会で大きな実績を残すことが期待されている一方、競技シーンを分かりやすく解説するコンテンツなども充実。日本における「ALGS」の盛り上がりは4年目にして最高潮に達しつつある。

 ただし、どれだけ競技シーンが熱狂したとしても、スプリット1でAPAC North地域からプレイオフに進出できるのはたった8チームのみだ。限られた枠を勝ち取るのはどのチームなのか、ぜひ“推し”チームを探しながら観戦を楽しんでみてほしい。