【特別企画】
「零~紅い蝶~」発売20周年。双子の姉妹が村からの脱出を試みる名作和風ホラーアクションゲームを振り返る
2023年11月27日 00:00
- 【零~紅い蝶~】
- 2003年11月27日 発売
テクモ(現:コーエーテクモゲームス)のプレイステーション 2用タイトル「零~紅い蝶~」が発売されてから、本日で20年が経過する。
「零」シリーズに関して説明すると、幽霊のような人の目では見えないモノを写し撮る事ができるカメラ「射影機(しゃえいき)」を用いて、襲いくる怨霊を退けつつ、生きて脱出を試みるというホラーアドベンチャーゲームである。
普段は3人称視点で進めるゲームなのだが、「見えないモノを写し撮る」ときは主人公が構えたカメラレンズを覗き込んだ1人称視点になる。客観的な3人称視点で怨霊と戦闘ができれば多少恐怖も紛れるだろうが、そうは問屋が卸さないのがこのゲームの恐ろしいところだ。
さて、「零」シリーズは外伝・リメイク作品を除いた場合、正史作品は5作品発売されている。「零~紅い蝶~」はシリーズとしては2作目にあたる。
「零」シリーズは、基本的にどの作品からプレイしてもある程度ストーリーはわかるので基本問題ない。ただ、複数の作品をプレイしていれば、過去作からの登場人物がその後どうなったかなどが考察できるという楽しみ方が出来るため、複数作品をプレイしておくとよりこの「零」ワールドを楽しむことが出来るだろう。
実際、筆者はゲーム性には興味を持っていたが、発売当初はプレイしておらず、発売数年後に動画サイトでこのゲームの魅力を知り、まずはキャラクターが好みだった「零~紅い蝶~」の続編「零~刺青の聲~」を最初にクリアした。その後で、ストーリーの衝撃的展開が有名かつ、PS2で発売された3作品(零、紅い蝶、刺青の聲)の中で最もカジュアルな難易度だと聞いたので「零~紅い蝶~」をプレイした。だが、筆者は難易度がカジュアル=ストーリーも気軽であるというとんでもない思い込みをしており、そのコトを後悔することになった。
なお、本稿ではネタバレを多分に含んでいる。まだプレイしたことがない方は注意してほしい。また、本稿の画像は「零~紅い蝶~」がリニューアルされた、Wii「零~眞紅の蝶〜」を使用している。
主人公は双子の姉妹。足が不自由な姉を守らないとゲームオーバーの高難易度ゲームのハズが……?
今作の主人公は双子の姉妹、姉・天倉繭(あまくらまゆ)、妹・天倉澪(あまくらみお)。
2人は幼少期を過ごした村が望める渓谷を訪れていた。この村はまもなくダム建設に伴い廃村となるのであった。
この場所は思い出の地ではあるが、幼少期、姉の繭が山道で負傷したことで足に後遺症を負った苦い場所でもあった。ふと澪が繭の方を見やると、繭の姿がない。繭を探す澪。繭はどこかへ導かれるように先へ先へと向かってしまう。繭を追っていると気がつけば日は暮れ、鳥居を抜けると謎の村へと入り込んでしまう。繭と澪は、この謎の村へ閉じ込められてしまう……というのが本作の序章となる。
今作で主に操作するのは妹の澪で、戦闘も澪が担当する。姉の繭は霊感が高く、一般人なら察知できない霊的なものを探知できるようだが、一切戦闘能力を持たないので基本護衛対象だ。しかも、「零~紅い蝶~」ではゲームオーバーの条件に「霊に攻撃を受け澪の体力が尽きる」だけでなく、「霊に襲われ、繭の体力が尽きる」というのもある。基本「零」シリーズは1人で戦闘を行うのだが、誰かを守りながら闘うというのは当時の「零」シリーズでは本作が唯一であった。
前述の通り、繭は澪より霊感に優れている。そのため、繭の視線を追えば、悪霊がどの方向から迫っているかある程度予測を立てることができ、そうすることで密着される前に迎撃の態勢を整えることも可能だ。ほかにも、音の方位から敵の位置を探ることも出来るし、カメラのフィラメントで敵の位置を探ることができる。
また、ゲームの難易度を調整する意図もあるのだろう、繭はストーリーを進めていくとやたら何処かへ勝手に移動して行方知れずとなってしまう。ストーリー的にも重要な要素ではあるのだが、ストーリーの全貌を掴めていない初期プレイでは、何が何やらわからないと言うか、危機感がないのか? と思ってしまってシュールな笑いがこみ上げる人も居ただろう。実際、このゲームの実況プレイ動画を観ると、繭の自由っぷりとかけて「アネーダム」というコメントがよく見られたものだ。
簡単だから怖くないわけではない。恐怖の白黒イベント
ある程度ストーリーを進めると、部屋に入った途端に画面がモノクロになり、敵に追いかけ回されるイベントが発生する。「零」の恒例行事である、被弾すれば即ゲームオーバーのイベントである。この状態で出てくる怨霊は原則完全無敵。こちらの攻撃は一切通用しない。なのでここは逃げの一手となる。
迫りくる怨霊から逃げつつ特定のエリアにまでたどり着けば、画面が色を取り戻し、通常のゲームに戻る。これが成功したときの安堵感はとてつもなく大きい。
問題はストーリー中盤から終盤へと進む七の刻(第7章)である。
なんと第7章は、澪が射影機を落としてしまったところからゲームがスタートする。射影機がないので、繭と同じで完全に怨霊への対抗手段を失ってしまうのだ。その状態で進むと画面がモノクロに変化、初プレイのときはこの時点でコントローラーが汗で濡れた。なまじ「零~刺青の聲~」でも同様のシーンはあったが、今回は射影機を持っていないのだ。
そして現れる謎の着物の女。この女との壮絶な鬼ごっこが始まる。このステージでの追跡は非常にしつこい上、間違ったルートに行くと行き止まりとなってしまうことが多々ある。もちろん追いつかれるとゲームオーバーだ。
無事に怨霊を振り切り、その後射影機も回収。このときは本当に安堵したものだ。戦えるからこそある程度心理的余裕があったんだなと痛感したシーンである。
物語は佳境へ。するとまた見慣れた背景の色が……
謎の着物の女の襲撃を振り切ったのちは戦闘を行なったり、謎を解いたりすることで物語の真相が見えてくる。消えたはずの村、タイムスリップした村で何があったのか、この村で行われていた忌まわしい儀式の内容など。
そしてとうとう現れるラスボス戦なのだが、画面の色がおかしい。しろ……くろ?
なんと「零~紅い蝶~」の最終戦は、画面がモノクロの状態で繰り広げられるのだ。画面がモノクロになるということは、被弾は一切許されない。幸い、今までとは違いラスボスに対して特定の攻撃は通るのだが、接触すら許されないので、索敵を誤ったらお終いである。
そんなとんでもない最終戦を生き残れば、とうとうエンディングである。内容は一応今は伏せておくが、初回プレイでは分岐は一切存在しない。違う結末を望むならば、再度プレイを行う必要がある。2周目からは難化したハードモードに挑戦することができ、こちらでは新たな強敵との戦いがあり、それにより明らかになる真相もある。また、この難易度でクリアすれば、初回プレイとは違う結末を観ることが出来る。
複数回プレイにより腕前が上達。結果として消えたはずの村で撮影会が始まる?
ハードモードをクリアすると、新たなエンディングだけでなく、さらに新たな難易度が解禁される。「零」シリーズではおなじみの最高難易度「NIGHTMARE」(ナイトメア)である。
悪夢の名を冠するだけあり、「零」をやり込んだプレイヤーへの挑戦状である。敵の体力が劇的に増加しているだけでなく、攻撃力も2回攻撃をまともに受けたらゲームオーバーになるほど凶悪となっている。
この難易度を攻略するには、こちらも高火力で対抗するしかない。そこで必要となるのが「シャッターチャンス」と「FATAL FRAME」(以下、フェイタルフレーム)である。
「シャッターチャンス」は怨霊が近い時や、攻撃を空振った後の隙、特定のポーズを取った時などにシャッターを切ると大ダメージを与えられるシステムだ。
さらに今作からの要素として「フェイタルフレーム」がある。これは怨霊の特定の攻撃が当たる直前にシャッターを切ると発生し、ダメージが1.2倍に上がる。さらに、のけぞった相手に追撃が可能。これにより少ないフイルム数でまとまったダメージが期待できるため、撮影に必要なフイルム(銃で言う弾薬)の節約に繋がるため、高難易度をプレイする際には必須のテクニックとなる。
ただし、怨霊の攻撃が当たる寸前にシャッターを切るという仕様上、タイミングを誤ればまず被弾は免れないハイリスク・ハイリターンなテクニックだ。
このようにシャッターチャンス、フェイタルフレームはプレイヤースキルが問われるシステムのため、やり込みが面白いゲーム性である。特に高難易度ではミスをしたときのリスクも高いので大変ヒリついた戦闘が楽しめる。はずなのだが、筆者は「相手がどうくるかタイミングが計れないから怖いのであって、自分からタイミングを作ってやればいいのでは?」と考えてしまった。
こう考えた筆者はナイトメアモードでは怨霊に積極的に近寄る。結果として怨霊が攻撃を仕掛けてくる割合は増える。が、こちらから接近しているため、ある程度攻撃のタイミングはコントロールできてしまうのだ。結果、ナイトメアモードにて連続でフェイタルフレームを決める筆者と写真家、天倉澪が居たのだった……。
Xbox版は超プレミアソフト、Wiiではさらに美しくリメイクされた
今作は後にXboxでも発売された。特に大きな変更点としてはさらにエンディングが1種類追加されたことだ。また、その後Wiiでリメイクされた「零~眞紅の蝶〜」では、さらにエンディングが追加されている。
また、余談ではあるが「零~刺青の聲~」をプレイする場合は、「零~紅の蝶〜」の通常エンディングを観ておくことを強く推奨する。そうするとよりこのシリーズの面白さが引き立つはずだ。
普段格闘ゲームしかしない筆者が、どっぷりハマった和風ホラーゲーム「零~紅の蝶〜」。その理由はストーリーとゲーム性にある。ゲーム内にある資料は、攻略という面ではコンプリートする必要はないが、物語の全貌を理解するためについつい集めて読み込んでしまう。そして本作から追加されたFATAL FRAMEの攻撃的、積極的なプレイで自身の上達を感じられる所にゲーマー心をくすぐられたのだ。是非とも「零~紅い蝶~」に対する皆さんの感想もお聞きしたい。
(C)TECMO.LTD.2003