【特別企画】

「餓狼伝説」誕生32周年! 斬新さに満ちたSNK格闘ゲームの原点を今振り返る

【餓狼伝説 〜宿命の闘い〜】

1991年11月25日 発売

 1991年にアーケードで稼動したSNKの人気格闘ゲーム「餓狼伝説」が、本日11月25日で32周年を迎える。

 今でこそSNKといえば「THE KING OF FIGHTERS(以下、KOF)」シリーズの印象が強いが、「餓狼伝説」は「KOF」以前のSNK格闘ゲームの原点ともいえる作品である。

 本稿では、格ゲー旋風を巻き起こしたカプコンの「ストリートファイターII(以下、スト2)」とも肩を並べていた「餓狼伝説」の魅力を届けたいと思う。「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL(スマブラSP)」でテリー・ボガードを見て「誰?」と言っていた若手ゲームファンにもぜひ読んでもらいたい。

【ACA NEOGEO FATAL FURY】

2ラインバトル、協力プレイ、本作ならではの型破りなシステムが満載!

 1991年に現行で活躍していたコンシューマハードといえば、「スーパーファミコン」と「メガドライブ」がメジャーなところだろう。その時代に登場した「餓狼伝説」は、SNK独自のMVS(Multi Video System)基板により、グラフィックスの迫力が当時のコンシューマゲームと比べて段違いであった。緻密に描き込まれ大きく表示されたキャラクターを初めて動かしたときは“これがゲームセンターでしか遊べない特別なゲームか!”と震えたのを今でも覚えている。

 しかし、本作がリリースされる数カ月前には「スト2」が稼働を開始しており、ゲームセンターの覇権を握っていた。アーケード2D格闘ゲームの双璧をなすカプコンとSNKのバチバチの戦いがここから始まる。

 両タイトルともアーケードで人気を博した格闘ゲームだが、同じジャンルながら互いのゲーム性は大きく違っていたりする。対人戦をメインとした作りでファンを獲得していた「スト2」に対して、「餓狼伝説」はどちらかというとCPU戦に重きを置いた作品となっていたのだ。

 プレイアブルキャラクターは、マーシャルアーツの使い手の「テリー・ボガード」、骨法の達人でありテリーの弟である「アンディ・ボガード」、若きムエタイチャンプの「ジョー・ヒガシ」の3人のみ。対戦相手にはCPU専用のキャラクターが用意されていたりなど、初代「ストリートファイター」を彷彿とさせるゲームデザインだ。

個性豊かな3人のファイターから1人を選び、大会を勝ち抜いていく

 独自の要素として、本作は手前と奥の2ラインを移動して戦う斬新なシステムを採用している。このシステムにより、他の格闘ゲームには無い奥深い駆け引きが生まれ――そうな予感をさせたが、この2ラインシステム実は“ラインを自由に行き来できるのはCPUのみ”で、プレーヤー側は相手を追いかける際にしかライン移動ができないという実験的な仕様だったりする。

斬新な2ラインシステム。手前や奥を向いているドット絵をしっかりと用意されている

 本作ならではの特徴は他にもあり、通常の格闘ゲームであればプレイ中に別のプレーヤーがコインを入れると乱入となって対人戦が始まるのだが、本作はなんと対戦ではなく2対1でCPUと戦う協力プレイに突入する。共闘してCPUを倒すと、ここでようやくプレーヤー同士の対戦となる。協力と対戦の両方を詰め込んだという、格闘ゲームの形がまだ定まっていない黎明期ならではの手探り感を感じさせる。

格闘ゲームではあまり見ない、協力プレイを実装している
一部の必殺技は味方にもヒットするので、仲間割れが勃発することもしばしば
共闘の後に対戦へ。勝った方がゲームを続行できる

 対戦相手はCPU専用キャラクターということもあり型にはまらない個性が炸裂していたのも印象深い。カポエラの達人であるリチャード・マイヤは、ステージ天井のパイプに掴まって戦ったり、八極聖拳の使い手の小柄な老人タン・フー・ルーは、ピンチになるとハルクさながらの大男に変身するなど、プレーヤーをワクワクさせる要素が満載だった。

ステージギミックを使って戦うリチャード・マイヤ
体力が減ると大男に姿を変えるタン・フー・ルー

 「GUILTY GEAR」シリーズや「BLAZBLUE」シリーズなどアークシステムワークス作品の存在により、今でこそ女性の格闘ゲームプレーヤーがいるのも普通の事だが、当時の格闘ゲームのプレーヤーは(体感)10割男性であった。そんな時代にSNK作品は数多くの女性ファンも獲得している。その理由はスタイリッシュなキャラクターデザインにある。

 当時の格闘ゲームの主人公といえば、道着を身にまとった、いかにも格闘家といった屈強な男といったイメージだったが、テリーやアンディ(ジョーは一旦置いておいて)を見ればわかる通り、筋肉ダルマとは対極の金髪イケメンファイターだ。

 「KOF」をはじめとするSNKの後の作品でも、スタイリッシュなキャラクターと格闘ゲームの域を超えた奥深いストーリー展開で男女問わずユーザーを魅了した。かくいう筆者も魅力的なキャラクターに惹かれた一人である。

ゲーム性だけじゃなく、キャラクターのカッコ良さでもファンの心を掴んだ

あのギース・ハワードが小物!? シリーズ原点の見所をチェック!!

 サウスタウンの支配者ギース・ハワードの手によって養父を殺されたテリーとアンディ。復讐を果たすため、ギースが主催する格闘大会「キング・オブ・ファイターズ」に出場する――というのが本作のメインストーリー。

 王道の格闘大会という舞台ながらも、ストーリーのバックボーンがしっかりしているのはさすがのSNK。“格闘大会なのに2対1の戦いがOKとかどんな大会だ”とか、そういう細かい話はとりあえず置いておこう。

格闘大会で優勝し、最強の座を手に入れる――というだけの“あってないような”ストーリーではないのもポイント

 使用するボタンはパンチ、キック、投げの3ボタン制という非常にシンプル。初期の格闘ゲームなだけあって大味な作りで、コンボなどのテクニカルな要素はないが、強力な“必殺技”の存在感はかなり大きく、当時少年だった筆者のハートを鷲掴みにされた。

 威力は非常に高いがいかんせん技が出にくいという点も初代「ストリートファイター」に通ずるものがあり、中でもテリーの必殺技である「クラックシュート」はコマンド通りに入力してもほとんど出せず、筆者の周りではこれを出せただけで一目置かれていた程だ。

必殺技は非常に出ずらいが、一撃必殺級の威力を持つ
嘘のコマンドじゃないかと疑いたくなるほど出ないクラックシュート

 今回、何十年振りにプレイしたが、改めてこの当時の格闘ゲームはCPU戦がとにかく高難易度だった。“プレイヤーの入力に合わせてCPUが対処してくる”といった反則じみたことを当たり前のようにやってきたりする。

 それぞれの相手によって異なる必勝パターンを見つけて的確に対処して攻略していくという、格闘ゲームと見るとアレなバランスだが、アクションゲームという見方をすれば今遊んでもかなり面白い。

近年の格闘ゲームと違い、パターンで戦わないと勝つのが厳しい

 7人のライバルと倒すと、キング・オブ・ファイターズ優勝の表彰式が行われる。表彰式に出るテリーの“当初の目的を完全に忘れているかのような優勝の喜びっぷり”が何とも微笑ましい。そんな喜びの表彰式の最中ギースの部下が突入し、そのままギースの元へと拉致されてしまう。

満面の笑みで長かった戦いが終わった言っちゃっていますが……
思い出したかのように復讐開始

 ここでラスボスのギース戦となるのだが、今作のギースはめちゃくちゃに強い。全ての打撃を受け止めてカウンターを繰り出す必殺技「当て身投げ」を超反応で重ねてくるので、ギース戦では通常の攻撃はほとんど機能しない。

ジャンプ攻撃だろうが下段攻撃だろうと、全打撃を取って来る

 弾の撃ち合いでも、テリーの「パワーウェイブ」と比べてギースの「烈風拳」は弾速、技後の硬直の少なさが段違いなので、飛び道具合戦も勝機はない。ラスボスのポジションに恥じないトンデモ性能である。

撃ち合いを続けていても烈風拳の弾速の速さに押し込まれてしまう

 今ちょうどギースに勝てなくて困っていた! というゲーマーもいると思うので(?)、一番簡単な勝ち方を紹介すると“ガン投げ戦術”がもっとも安定して勝つことができる。ポイントは、まずは敵の攻撃をガードして、その後に距離を詰めて投げるの繰り返し。焦って連続で投げようとすると痛い攻撃をもらうので注意が必要だ。ギース戦の動画を置いておくので参考にしてもらいたい。

【【餓狼伝説 〜宿命の闘い〜】ギース戦攻略法】

 ギース戦勝利後は、全力の飛び蹴りでギースを高層ビルから叩き落とすという衝撃なラストでエンディングを迎える。この幕引きの展開は後のシリーズでも使われ続け、「スマブラSP」のテリー参戦PVでもネタにされていたギースの鉄板ネタである。

復讐をテーマにしてるだけあり、悪党は容赦なく成敗
ギース戦で負けると、逆にビルから落とされるという特別な演出も

 本作のキャラクターは、後のシリーズ作品や「KOF」にも引き続き登場している。初期の作品だけあってキャラクター性がまだ確立しておらず、現在のものと見比べるとそのギャップの差が見られるのも味わい深い。

 例えば、ギースの側近で、クールなビジュアルと忠義に厚いキャラクター性で人気のビリー・カーン。棒術の使い手でシリーズを通して棍を武器に戦うのだが、初代「餓狼伝説」では攻撃を食らうと棍を落としたり、自ら投げて武器を失う場面がある。アンパンマンよろしく仲間が新しい武器を持ってくるのだが、武器が投げ込まれるまでの時間“戦意喪失のガクブル状態”の姿を晒したりする。今のビリーでは考えられない情けない姿は一見の価値あり。

ガクブルしながら武器を投下されるのを待つビリー
この状態のときはガード判定のため、必殺技で体力を削るのが吉

 さらに極めつけはサウスタウンを支配しているギースである。先のシリーズでは悪のカリスマといった覇者の風格を持っているのだが、大会でテリーたちが勝ち進んでくるたびに癇癪を起すという小物っぷりを見せる。ギースのリアクションがいちいち良く、どこから見てもただの厄介ワガママおじさんなのは笑いを誘う。

初めのうちは余裕な様子のギース
しかし、段々と焦りの表情が見えてくる
そして誤植でお馴染みの名ゼリフ(?)が炸裂。もはや駄々っ子のそれである

 シリーズ1作目ということもあってかなり粗削りな作りではあるものの、今見てもキャラクターのドット絵はカッコ良いし、何よりゲームとしての面白さは色褪せていない。

 当時はコンシューマのNEOGEOロムなんて高価過ぎて買えるハズもなく、クオリティを落として移植されたスーパーファミコン版を「何か違うんだよなぁ」と思いながらもそれはそれで夢中になってプレイしていた。

 しかし今は良い時代で、高品質なアーケード版が「アケアカNEOGEO」シリーズとして1,000円以下で配信されており、Nintendo Switchやプレイステーション 5などの現行ハードでプレイすることができる。今回筆者がプレイしたのもアケアカNEOGEO版だ。

 22年振りの「餓狼伝説」シリーズ最新作となる「餓狼伝説 City of the Wolves」も発表され、筆者をはじめとする格闘ゲームファンの中では餓狼熱が爆上がりのことだと思う。この記事を読んで気になった人、過去にプレイしていて懐かしいと感じた人は、ぜひ原点となる初代「餓狼伝説」を遊んでもらいたい。

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