【特別企画】
「VALORANT」、ZETA DIVISION対Leviatanの試合をハイライトと共にレポート【VCT LOCK//IN SAO PAULO】
健闘するもあと一歩で南米の雄の実力には及ばず、世界のレベルを思い知らされた
2023年2月23日 22:27
- 【VCT LOCK//IN SAO PAULO:LEVIATAN ESPORTS VS ZETA DIVISION戦】
- 2月23日 開催
- 会場:サンパウロ Ginasio do Ibirapuera
2月13日からブラジルはサンパウロにて開催されている「VCT LOCK//IN」は、人気FPSタイトル「VALORANT」の世界大会だ。世界各地からVCTリーグに参加する計30のプロチームと、中国で活躍を見せる2つのチーム、総勢32チームが招待されており、日々熾烈な戦いを繰り広げている。日本から参戦しているのはDetonatioN FocusMeとZETA DIVISIONの2チームだ。Esports Chartsによれば同大会はすでに最高同時視聴者数85万人越えを記録しており、まさに全世界的な盛り上がりを見せている。
本大会はBO3のシングルエリミネーション形式を採用しており、一度負けたらすぐ敗退という過酷なルールとなっている。13日に1回戦を戦ったDetonatioNはスペインを拠点にするチームGiantsと対戦し2-0で敗退してしまった。この時点で、大会に残された日本勢はZETA DIVISIONのみとなり、彼らは日本のファンたちの期待を一身に背負って23日の1回戦に臨むこととなった。
日本のFPSチームはこれまで、国際大会で中々良い成績を残せないという印象があったが、ZETA DIVISIONは昨年の「VCT 2022: Stage 1 Masters」という世界大会で3位という成績を残し、一気にその名を世界に知らしめた。日本を代表するに余りある実力を有する彼らだが、果たして今回の大会ではどこまで勝ち抜くことができるのか。初戦の相手はアルゼンチンを拠点にするLeviatan、南米シーンをけん引する強豪チームだ。
本稿では、ZETA DIVISION対LEVIATAN ESPORTSの試合をハイライトと共に振り返っていく。
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第1ゲーム、アセントでLeviatanの攻めが光る
第1ゲームのマップはLeviatanピックのアセントとなり、ZETA DIVISIONは防衛側のスタートとなった。南米のチームはアセントを得意としているチームが多いが、大事な第1ゲームを落とさないためにも、ZETA DIVISIONとしては何としても凌ぎたいところだ。両チームのエージェント構成は同じで、どちらもキルジョイ、ジェット、ソーヴァ、オーメン、KAY/Oという、いわゆるメタ構成といわれるものになっている。
Leviatanの強みはその撃ち合いの強さと、思い切りのいいセットアップの展開によるエリアの制圧力にある。試合が始まるとすぐに、卓越した連携力から繰り出される素早いセットアップが繰り出され、ZETA DIVISIONは後手に回る展開となった。第1、第2ラウンドともにLeviatanはAサイトへなだれ込むような攻撃を展開し、アビリティを温存していたZETA DIVISIONの虚をつくようにしてたちまちエリアを制圧し、一気に試合の流れを我が物にした。
Leviatanの攻撃は作戦自体はシンプルなもので、オーメンのスモークやKAY/Oのゼロ/ポイントを駆使してクリアリングを行い、素早くスパイクを設置するというものだ。ZETA DIVISIONはこれに対応するため、中盤からサイト内で相手を待ち構える作戦に出るが、ここで発揮されたのがLeviatanの撃ち合いの強さだ。特に目立っていたのがオーメンを操るMazino選手の活躍で、体半分出しただけでもすぐさま撃ち抜くほどの反射神経と、オフアングルからでも狙いを定める正確なフリックによってキルを量産していた。
Leviatanの攻撃の中でも特に印象的だったのは第7ラウンドだ。このラウンドではまずZETA DEVISIONのDep選手とLaz選手がBメインにプレッシャーをかけようと前に出るが、そこを待ち構えていたLeviatanのShyy選手がダブルキルでこれを処理し、一気に人数有利を作った。その後ZETA Divisionも相手のジェットをキルし人数差は4-3となるが、ここでLeviatanがAメインからAサイトへのエントリーをしかける。ZETA DIVISIONはSugarZ3ro選手とCrow選手がヘブンでこの攻撃を待ち構えていたのだが、メインに気を取られているうちにMazino選手が箱の上にシュラウドステップでテレポートしており、意表を突いてこの二人をキルし、一気にラウンドを終わらせてしまった。こうした大胆さもLeviatanの強みだろう。
攻守交代前最後の第12ラウンドにおいても、やはりLeviatanの撃ち合いの強さが発揮されていた。このラウンドではAワインに潜伏していたSugarZ3ro選手がAメインから来た攻撃チームの意表を突きダブルキルを獲得し、まずはZETA DIVISIONが有利な展開を作った。ZETA DIVISIONが徐々に相手チームの攻撃に対応してきたためか、その後のLeviatanのエントリーも概ね封じ込められ、残されたのはMazino選手ただ一人。ZETA DIVISIONはDep選手とCrow選手の二名でこれを迎え撃つかたちとなった。
防衛側の圧倒的有利な展開かと思われたが、ここで諦めないのがMazino選手のすごいところだ。スモークで身を隠しながらヘブン下にテレポートを決めると、敵影を見失ったDep選手を背後から仕留め1on1に持ち込む。残されたCrow選手との一騎打ちは持ち前の撃ち合い能力で制し、このラウンドもLeviatanの勝利となった。攻守交替時点での点差は10−2、第1ゲームはLeviatanが圧倒したといったよいだろう。攻守交代後はZETA DIVISIONも2ラウンドほど勝利して健闘したが、やはりアセントにおけるLeviatanの盤石さには及ばず、最終的な点差は13−4でLeviatanが勝利した。
後がないZETA DIVISION、得意マップパールで挽回なるか
第2ゲームのマップはZETA DIVISION選択のパール、攻撃サイドからのスタートとなった。トーナメント敗退まで後がなくなってしまったZETA DIVISIONにとっては、なんとしても負けられない一戦だ。試合前のインタビューでZETA DIVISIONのXQQコーチは、自分たちの攻めを押し付けて勝ちたいと述べていたが、このマップによって彼らの用意してきたものが発揮されるのかどうかが見どころとなった。ZETA DIVISIONは先ほどのエージェント構成からオーメンをアストラに変更した編成、対するLeviatanは編成を大きく変え、キルジョイ、ジェット、スカイ、ヴァイパー、アストラという構成になった。
パールは縦に長いBロングが特徴的なマップで、ここを制圧できたチームが有利に試合を進めることができるようになっている。ZETA DIVISIONは序盤からBロングを丁寧に制圧し、そのままBサイトにセットプレイを決める作戦を積極的に仕掛けており、これがまずまずの成功率を見せていた。序盤こそ4−2とLeviatanにリードを許してしまったものの、ここからZETA DIVISIONが執念の攻めを展開し、じわじわと点差を巻き返していく。
特に印象的だったのは第9ラウンド、この時点での点差は4−4だったので、ここでZETA DIVISIONが勝てばリードを奪える重要なラウンドだ。ZETA DIVISIONは序盤でAメインにプレッシャーをかけると、キルジョイのロックダウンをAメインに設置することで相手チームのヘイトを集めつつ、Bロングで待機していたDep選手のもとに合流し、フェイクからのエントリーを決めて見せた。反応が一瞬遅れたLeviatanも持ち前の撃ち合い力でなんとかこれを迎え撃つが、ZETA DIVISIONが上手く各ポイントをカバーし、なんとかスパイクを守り切った。計算されたポジショニングが光る、ZETA DIVISIONらしい攻撃といえよう。
前半戦の戦いは非常に拮抗していて、攻守交替時点での点差は6−6のイーブンだったものの、ここからLeviatanが勢いをつけてくる。ZETA DIVISIONがマップ後方に構えてどっしりと相手の攻めを受けようとするのに対し、Leviatanはあくまでもスピード感のあるセットアップで試合の主導権を握ろうとしてくる。ダブルコントローラーの強みを生かして相手の射線を遮り、強引にBロングの突破を図るような攻撃がZETA DIVISIONに有効に機能していた印象で、対応に追われる格好となったZETA DIVISIONは徐々に陣形が崩れていってしまっていた。
また、ZETA DIVISIONがこれに対応するかたちで、Crow選手とLaz選手の2名でBロングを手厚く見た第15ラウンドでは、Leviatanはこれを逆手にとってAサイトになだれこみ、近距離の撃ち合いに持ち込んでエリアを制圧した。その後、孤立させられたLaz選手とCrow選手の両名も挟み込むようなかたちで討ち取られ、ここでもLeviatanの連携力の高さが光った。
勝負を決したのは第24ラウンドだった。この時点での点差は12−11と、Leviatanが僅かにリードしているものの、ZETA DIVISIONが勝てばオーバータイムに持ち込める一戦だ。その前のラウンドでZETA DIVISIONは苦しい盤面からBサイトのリテイクをうまく決めて相手チームを全員キルし非常に良いかたちで勝利していたため、クレジット的にかなり有利な状況、まだまだ反撃が狙えるような場面だった。
しかしこの状況でLeviatanが選択したのはAメインへの速攻だった。少し顔を出してしまったDep選手がキルされると、スティンガーを装備していたMazino選手がすかさず落ちたヴァンダルを拾い、その勢いでLaz選手とTENNN選手をダブルキルで撃破、さらにはオーブを回収してコズミックディバイドが使用可能になり、一気に攻撃側有利の状況を作った。そこからLeviatanは一気にBサイトに攻撃を仕掛け、待ち構えていたCrow選手の抵抗も空しくエリアを制圧、見事このラウンドを勝利してみせた。ZETA DIVISIONも惜しいところまでいったものの、最終的なスコアは13−11で、第2ゲームもLeviatanの勝利となった。
これにより「LOCK//IN」トーナメント1回戦Leviatan対ZETA DIVISIONの試合は2−0でLeviatanの勝利となった。試合後のインタビューで自分たちの戦いぶりを振り返ったLaz選手は「相手チームの個々の強さを感じた。練習してきたことはうまく出せていたが細かい撃ち合いで負けていて、最後の詰めでいつもズレが生じてしまった」と回想した。
惜しくもトーナメント敗退となってしまったZETA DIVISIONだが、彼らは今後VCT PACIFICリーグに参戦予定であり、6月に日本で開催される予定のMasters Tokyoに向けて邁進していくとのことなので、日本のFPSシーンをけん引する彼らの戦いぶりには今後も要注目だ。なお、「LOCK//IN」もまだまだ序盤で、これからトーナメントを勝ち抜いた強豪どうしの熱い試合が繰り広げられていくはずなので、こちらも是非チェックしていただきたい。
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