【特別企画】
ローランド初のゲーミング製品、オーディオミキサー「BRIDGE CAST」をゲーマー目線でチェック
本格的なゲーム配信への挑戦にうってつけ。ハウリングなどボイスチャットのお悩みも劇的に解消
2023年2月17日 00:00
- 【BRIDGE CAST】
- 開発・発売元:ローランド
- 発売日:1月28日
- 価格:オープン
- 実売価格:33,000円前後
ゲームにおける「ボイスコミュニケーション」の幅は劇的に広がった。ゲームの実況配信ではYouTubeやTwitchで幅広いユーザーに向けることも、DiscordやSteamでフレンドなど仲間内に見せるための配信も手軽にできるようになっている。また、「Apex Legends」などチームプレイが重要なゲームではボイスチャットによるコミュケーションが重要なのは、この20年以上不変だ(筆者は22年程前はTeamSpeakサーバーを立てて、夜な夜なクランの仲間とボイスチャットしながら「Ghost Recon」をプレイしていた)。
その一方で、幅が広がったことによって起こる問題もある。配信であれば、実況の音声とゲーム音のバランス、ボイスチャットであれば、相手によってコミュニケーションアプリが違ったり、スマホだったりとデバイスが異なることもあり、ゲームをプレイしながら快適にやりとりするのが難しいということもしばしば起きる。また、ヘッドセットではなく、スピーカーとマイクという組み合わせでは、ハウリングやゲームの音をマイクが拾ってしまうというトラブルも。
そんな問題をまるっと解決してくれるのがローランドから発売された「BRIDGE CAST」だ。ゲーム配信に便利なゲーミングオーディオミキサーという位置付けだが、ボイスチャットにも便利な機能が充実しており、PCゲームに限らずPS5などの家庭用ゲーム機を絡めた環境でボイスコミュニケーション環境を大幅に強化してくれる。本稿では、「BRIDGE CAST」の実力を見ていくとともに、上記で紹介したようなトラブルを回避するための具体的な設定・使用方法を紹介していこう。
老舗電子楽器メーカーのローランドがゲーミングに初参入。デュアル・オーディオミキサー搭載の「BRIDGE CAST」
ご存じの人も多いとは思うが、ゲーミング製品に初参入ということで“ローランド”について説明しておこう。PC好きのおっさんにとっては、圧倒的にMIDI音源モジュールのメーカー(筆者はSC-55mkⅡを愛用していた)という印象が強いと思うが、シンセサイザーや電子ピアノ/オルガン、電子ドラム、ミキサーなどなど電子楽器全般を手がけるメーカーだ。近年では動画配信用のAVミキサーのメーカーとしても存在感を放っている。“音”と“配信”についてはかなりの実績を持っている企業なのである。
そのローランドが発売したゲーミングオーディオミキサーが「BRIDGE CAST」というわけだ。Type-C経由でPC(Windows、Mac両対応)やゲーム機と接続することで、USBサウンドデバイスとして動作する。MIC/AUX/CHAT/GAMEと四つのチャンネルを持ち、それぞれに割り当てた入力ソース(マイクやゲーム、ボイスチャットなど)の音量をツマミでサッと調整できるのが便利なデバイスだ。最大の特徴は、YouTubeなどへの配信時に、配信者がモニタリングする(自分で聞く)音と配信先(視聴者側)で再生する音を別々に調整できる「デュアル・オーディオミキサー機能」を備えていること。その使い勝手については後述する。
音声入力はヘッドセット用の3.5mm4極ステレオミニプラグ、スマホなどの別デバイス用の3.5mm4極ステレオミニプラグ、ファンタム電源の供給にも対応するXLR(キャノン)タイプのマイク入力の3系統だ。マイクはダイナミック、コンデンサーの両方に対応し、ボタンの組み合わせまたは専用アプリで切り換えられる。
便利なボイチェン機能やゲーム別のイコライザーも搭載
「BRIDGE CAST」本体にはボイスチェンジャーやゲームタイトルにマッチした音質に変更できるイコライザー機能も備えている。
ボイスチェンジャーの「MIC Effect」は本体左上の「ON」ボタンで押すだけで有効化。プリセットとして5種類を用意。YouTubeでは歌枠などの動画でおなじみ、声に響きを付ける「Reverb」とそれをより強める「Maximum Reverb」をはじめ、高い声にする「Hi Voice」、太くする「Fat Voice」、低くする「Super Lo Voice」があり、「SELECT」ボタンで切り換えられる。このほか、声の高さを変える「PITCH」と性質を変える「FORMANT」のつまみもあり、好みのボイスに細かく調整も可能。地声で配信やボイスチャットをしたくない人にはよいだろう。個人的には配信とか関係なく、Reverbを効かせて歌うだけでもYouTuberやVTuber気分で楽しいものだが。
また、GAMEのチャンネルにはゲーム別のイコライザーを用意。デフォルトでは「Apex Legends」、「VALORANT」、「フォートナイト」、「Call of Duty」のほか、FPSで汎用的に使える「FPS General」の5種類がある。銃声や足音などゲーム内で重要な音を際立たせる調整が行われているが、好みもあるので、とりあえず使ってみて判断するのがよいだろう。
また、WindowsとmacOSに対応した専用アプリの「BRIDGE CAST App」を使えば、MIC Effectもゲームのイコライザーも自分で細かく調整が可能で、それを既存のプリセットと入れ替えが可能。アプリでは、本体と同じくチャンネルごとのボリューム調整やミュートといった処理を行なえるのに加えて、本体にある4チャンネルに割り当てるソースやLEDのカラーの変更、マイクのゲインを調整できたり、さらに細かなセッティングを行なえる。
「BRIDGE CAST」でPCやPS5の音声をミキシング。ヘッドホンやスピーカーを用いた実用例
「BRIDGE CAST」をPCゲーム配信で使用する
まずは、Windows 11環境で「BRIDGE CAST」を使ってみたい。PCとはType-Cケーブルで接続する。本体には、両端がType-Cと片方がType-Aとなる2種類のケーブルが付属しているので、PCの環境に合わせて選ぶとよいだろう。ただし、Type-AにUSB 2.0以下の端子を接続する場合、機能面に変わりはないが、供給電力の関係でBRIDGE CAST Appで輝度を上げても一定以上の明るさにならないという制限ができる。なお、電源用のType-C端子にUSBケーブル(5V/1.0A以上)を接続して給電しながら使用すれば制限を解除可能だ。
「BRIDGE CAST」はPCと接続すると、MIC/CHAT/GAME/SYSTEMと四つのUSBオーディオデバイスとして認識される。使用するにあたりWindows 11の設定→システム→サウンドで出力を「SYSTEM(BRIDGE CAST)」に設定。これでマイク、ゲームなどすべての音が「BRIDGE CAST」から出力されるようになる。入力は「MIC(BRIDGE CAST)」にすると、本体に接続したマイクの音が入力される仕組みだ。
「BRIDGE CAST」が本領を発揮するのは配信だ。ここでは、1台のPCを使ってPCゲームを配信アプリの定番「OBS Studio」で、ゲーミングヘッドセットを使ってYouTubeに実況しながら配信するという、ゲーム配信としてはオーソドックスなスタイルを試したい。まずは、配信するゲームを起動して、音量ミキサーでそのゲームの出力を「GAME(BRIDGE CAST)」に設定。次はOBS Studioの「マイク音声」を「STREAM(BRIDGE CAST)」にすれば準備は完了だ。あとは、普通にOBS Studioで配信すればよい。
配信における「BRIDGE CAST」の強みは、自分(配信者)がモニタリングしている音と配信している音を別々に調整できること。例えば、FPSをプレイする場合、銃撃音や足音を見逃さないために自分(配信者)としてはゲームの音は大きくしたい。しかし、視聴者としてはゲームの音が大きすぎると実況が聞こえにくい。といった場合には、本体右下のボタンを押してランプが点灯すると配信先の音量だけを調整できるので、GAMEチャンネルの音量をちょっと絞ればOKだ。または、もう一度押してランプが消えた状態では配信者側だけの調整になるとGAMEチャンネルの音量を大きくすればよい。
ちなみに、「MIX LINK」ボタンを押せば配信者側と配信先のコントロールを統一できる。状況やニーズに合わせて、調整方法が選べるのが強みと言える。これらは配信だけではなく録画でも同じことができる。編集に凝りたい人にも便利だ。
ちょっとこだわった配信も非常にやりやすい。「Minecraft」など落ち着き目のBGMが淡々と流れるタイトルでは、ゲーム側は効果音だけにして、別途BGMをかけて、まったり実況しながら配信するなんてパターンがよく見られる。音楽プレイヤーに「BRIDGE CAST」のMUSICチャンネルを割り当てれば、好きなタイミングで再生したりミュートしたり、音量調整も簡単に行なうことが可能だ。筆者は本格的な配信者ではないが、YouTuberやVTuberっぽいゲーム実況が手軽にできるのは正直楽しい。それだけでテンションが上がるというものだ。
「BRIDGE CAST」×PS5/スマホの接続例。背面の切替スイッチがポイント
「BRIDGE CAST」は、ゲーム機との接続にも対応する。ここではPS5での接続をやってみた。本体の背面にあるスイッチを「CONSOLE/MOBILE」に切り換え、USB端子とPS5のUSB端子(Type-AでもType-CでもOK)をUSBケーブルで接続する。PS5からはUSBヘッドセット(BRIDGE CAST)と認識されるので、それぞれマイク、音声出力を「BRIDGE CAST」に設定すれば準備は完了だ。マイクはMICチャンネル、ゲームの音はCHATチャンネルに割り当てられる。マイクとゲームの音を手元でサッと調整できるのは、ボイスチャットをしながらのプレイ時では非常に便利。ワンタッチでマイクをオフにできるのもありがたい。
また、PC、PS5問わず、長時間のヘッドセット装着は耳を圧迫して疲れるから、ゲームプレイのボイスチャットはスピーカーとマイクの組み合わせで使いたいという人もいるだろう。しかし、ここでありがちなのが、スピーカーとマイクがハウリングを起こす、スピーカーのゲーム音をマイクが拾って相手にゲーム音が二重に聞こえてしまう、といったトラブルだ。
基本的にはマイクの設置場所で解決できる問題だが、「BRIDGE CAST」ならそれを効果的に行なえるのが強み。「BRIDGE CAST」に接続しているマイクが音を拾えばMICチャンネルのLEDが光るので、声以外に反応してしまっているか確認しながらマイクを設置できる。
また、一般的によく使われるダイナミックマイクは感度が低いので、かなり口に近付けないと満足のゆく音量を得られないことがある。対策として配信ソフト側で音量を上げるとノイズが目立つ……といった経験をした方も少なくないのでは。
しかし、「BRIDGE CAST」はダイナミックマイクでも音量を大きく取れるので、多少離れた位置に設置しても問題なく声を拾ってくれる。MICチャンネルのツマミやBRIDGE CASTアプリでゲインを上げて、音量を稼ぐことも可能。今回の機材では、ゲインを上げた際のノイズ感も十分実用レベルという印象だ。マイクをハウリングもせず、スピーカーの音も拾わず、かといって口に近すぎてゲームプレイや配信用カメラの画角の邪魔にならない場所を探しやすく設置しやすいのがナイス過ぎる。
LINEやDiscordなど、コミュニケーション系のアプリはスマホに集約しているという人もいるだろう。実際筆者も友人とLINEでのメッセージやりとりで、お互い持っているゲームの話題になって、そのままLINE通話でボイスチャットしながらそのゲームでオンライン対戦するなんてこともある。そんな場合にも「BRIDGE CAST」は便利だ。3.5mm4極ステレオミニプラグケーブルでスマホと「BRIDGE CAST」のAUX端子を接続すれば、スマホの音声もミックスされる。スマホの音声を「BRIDGE CAST」に接続したヘッドホンやスピーカーで聞けるし、接続しているマイクの音声もスマホにそのまま流れる。スマホで通話しながら、スムーズにゲームもプレイできるわけだ。
逆にスマホのゲームをプレイしながら、PC側でボイスチャットをしたい、という場合にも便利と言える。音の出力にしても、マイクの入力にしても「BRIDGE CAST」に集約できる、というのが一番の強みだ。
マイク性能を検証。強力な内蔵アンプがダイナミックマイクの性能を十二分に引き出す
ここからは、一般的なゲーミングヘッドセットと「BRIDGE CAST」に接続したダイナミックマイク、コンデンサーマイクでの音質を比べてみたいと思う。用意したのは、ゲーミングヘッドセットがCorsairの「HS70 BLUETOOTH」(実売価格20,000円前後)。ダイナミックマイクがAUDIXの「OM6」(実売価格27,000円前後)とSHUREの「SM7B」(実売価格52,000円前後)、コンデンサーマイクがオーディオテクニカの「AT4040」(実売価格35,000円前後)だ。
一般的にダイナミックマイクは口に近付けないと音を拾いにくいのだが、それゆえにライブなど周りが騒がしい場所でも使いやすいのが強み。実況においても洗濯機やエアコンなどの環境音が入りにくいのがメリットだ。コンデンサーマイクのほうが感度が圧倒的に高く、繊細で解像感のある音になるが、それゆえにエアコンの動作音などちょっとした音まで拾ってしまう。壁の反響音も拾いやすいのでルームエコーの目立つ音にもなりやすい。静かで、ある程度反響にも配慮した環境ではないと使いにくいのが難点と言える。
音質の違いは実際に動画で確認してほしいが、ゲーミングヘッドセットのマイクに比べて、どれも高音質なのが分かるだろう。筆者は職業がらゲーミングヘッドセットを多数使ったことがあるが、その中でも「HS70」のマイク音質は悪くないほうだと思っている。しかし、明らかな違いを感じ取ることができた。
これがXLR接続が使える強みだ。ダイナミックマイク同士では、より高価な「SM7B」のほうが高音質、さらにコンデンサーマイクの「AT4040」が音の解像度が高く、クリアな音質を実現しているのがわかると思う。ただし、これは静かなスタジオで録音しているため。静かな環境を作れるならコンデンサーマイクが最高だが、一般的な家ではダイナミックマイクのほうが雑音が入りにくく使い勝手はよい。また、ダイナミックマイクの線の太い音が好みという方もいるだろう。これほどわかりやすい違いがあれば、多くの配信者がマイク沼にハマるのも無理はない。
また、「BRIDGE CAST」でダイナミックマイクを使うのがオススメな理由として、入力信号を増幅するゲインが高いことにある。簡単に言えば、ダイナミックマイクでも音を拾いやすくなるわけだ。実際にダイナミックマイクのAUDIX「OM6」を使って、ヤマハの定番オーディオミキサー「AG06」と同じように録音しても、「BRIDGE CAST」のほうがよりハッキリと聞こえる。音を拾いやすいといってもコンデンサーマイクのように遠くで鳴っている洗濯機のモーター音まで入ってしまうような感度にはさすがにならない。ダイナミックマイクのよさを活かしつつ、設置場所に自由度が増すのが非常によい部分だ。
また、ゲーミングサウンドデバイスとしては再生音のクオリティが高く感じられたことについても触れておきたい。今回はV-MODAの「XFBT3」という3.3万円クラスのヘッドホンを使ってみたが、ゲームはもちろん、音楽再生、動画視聴もかなり楽しめるレベルだった。
こだわりのマイク、そしてヘッドホンを自由に組み合わせることができることも大きなメリットだろう。
会議ツールのZoomやDiscord(+ゲーム)を用いて通話時に本機を使用して使い勝手を検証する
ビジネスシーンでも役に立つ。ZoomやMeetなどビデオ会議系のアプリでは、会議中に咳払いや飲み物を飲むなど、雑音が入りそうなときもワンタッチでマイクをオフにできるのは便利で、先述したようにスマホとも接続できるので、電話などの通話も「BRIDGE CAST」にまとめておける。ハウリングしない環境を構築しやすいので、ビデオ会議にスピーカー+マイクという構成を用いることも可能で、高い通話音質を持ちつつ長時間の会議にも疲れにくいというメリットを享受することができる。
スピーカーとヘッドセットを両方接続しておけるので、音楽を聞いたり、動画を見るときはスピーカー、ビデオ会議の時は会話に集中したいのでヘッドセットという切り換えもしやすい。スピーカーの出力は「BRIDGE CAST」のLINE OUTのツマミを絞ればゼロにできるので、状況に合わせた対応もしやすい。BRIDGE CASTアプリを使えば、LINE OUTをワンクリックでミュートにすることも可能だ。
ボイスチャット環境が劇的に向上。高級デバイスへのステップアップにも対応できる配信者・ゲーマーにオススメのオーディオミキサー
マイク、Discordなどコミュニケーション系アプリ、ゲーム、ヘッドホン、スピーカーそれぞれの音量を手元でサッと操作できるようになるため、ボイスチャットの環境が劇的に向上する。もちろん、最大の特徴である、自分(配信者)と配信先(視聴者)の音量と別々に調整できるので本格的なゲーム配信にチャレンジしやすく、XLR接続に対応しているのでヘッドセットから高音質なマイクへの乗り換えも可能。
ボイスチェンジャーやゲームタイトル別のイコライザーなど、手軽にその効果を体験できる機能もある。ゲーム配信を行なっている人はもちろん、ボイスコミュニケーションをPC、スマホ、PS5など複数のデバイスで行なっている人にもオススメのデバイスだ。
© 2023 Roland Corporation