【特別企画】
ついにロジもダイレクトドライブ採用! 「PRO Racing Wheel/Pedals」インプレッション
2022年9月22日 02:01
- 【PRO Racing Wheel】
- 9月29日発売予定
- 価格:119,900円
- 【PRO Racing Pedals】
- 9月29日発売予定
- 価格:49,940円
ロジクールのゲーミングブランド「ロジクールG」。その頂点に君臨するブランドが「PRO」だ。「ロジクールG」がカジュアルゲーマーからハイアマチュアを対象に、ワンランク上のプレイフィールを提供するブランドであるのに対して、「PRO」は明確にプロゲーマーとそれを目指すeスポーツアスリートをターゲットに、プロが求める機能を実現することにとことんこだわったプレミアムブランドだ。
たとえば、マウスなら軽さ。2018年に登場した「ロジクールG PRO X SUPERLIGHT」は、プロシーンでの使用に耐えつつ、わずか63gを実現。ゲーミングマウスに超軽量という新たな潮流をもたらした。ほかにもキーボードなら全キー入れ替え可能なスイッチや高耐久性、ヘッドセットならワイヤレスとクリアボイスといった具合で、いずれも際だった一芸を備える。
特徴的なのは「PRO」を手にしたからと言って勝てるわけではないことだ。eスポーツで求められる水準は“PLAY TO WIN”をスローガンに掲げる「ロジクールG」の時点ですでに満たしているというのがロジクールの考えだ。「PRO」は、プロやそれに準ずるeスポーツアスリートが「こういう機能ないの?」という一種の“ワガママ”に、ロジクールGが正面から答えるブランドと言っていい。
「PRO」シリーズは、2018年のマウスを皮切りにキーボード、ヘッドセットと、徐々に対象カテゴリを拡大。そして2022年、ついにレーシングホイール(以下、日本で一般的に呼称されるハンコンと呼ぶ)まで対象を広げることを明らかにした。その名も「PRO Racing Wheel」。ロジクールがロジクールGを立ち上げる前からこだわってきたハンコンを、「PRO」グレードとして再定義する野心的なプロダクトだ。今回は発表に先駆けて試遊する機会を得られたのでインプレッションをお届けしたい。
ロジのハンコンもダイレクトドライブ採用へ。価格はペダルとセットで約17万円!
ハンコンは、明確に2段階のグレードが存在する。ダイレクトドライブとそれ以外だ。これはハンコンの基本機能であるフォースフィードバックを実現するためのモーターのトルクを、ハンドルに伝えるためのユニットに何を採用しているかという話で、ダイレクトドライブは、文字通りダイレクトにハンドルにトルクを伝えることができるユニット。実車同様のガツンとした強烈なトルク感が味わえるのが最大の特徴で、デメリットとしてユニットは桁違いに重く、そしてぶっちぎりに高額だ。レースゲームを愛するゲーマーの最終到達地点がダイレクトドライブと言っても過言ではない。
ロジクールは、20世紀からハンコンをリリースしてきた名門としては意外なことにダイレクトドライブには手を出してこなかった。理由は明確にしていないが、やはり高額なためだろう。同社は、ロジクールGのブランド起ち上げ前後に、このままPCで勝負するか、コンソールにベッドすべきか迷っていた時期があり、余裕で10万円を超える製品はコンソール市場に相応しくないと判断したのかも知れない。いずれにしても、Gが冠されたG25(2006)、G27(2010)、G29(2015)、G923(2020)ではいずれもギアを噛ませてトルクをハンドルに伝えるギアドライブが採用されている。価格はペダルなしで300ドル、ペダルとセットで400ドル前後で、最初は高額だったものの、現在ではむしろリーズナブルなハンコンに位置づけられる。ちなみにダイレクトドライブの分野では先行する立場のFanatec、そして同じくライバルのThrustmasterでは、ベルトドライブが採用されている。
前置きが長くなったが、今回紹介する「PRO Racing Wheel」は、ロジクールとして初となるダイレクトドライブを採用したハンコンだ。価格はペダル別売で119,900円。後述するペダルユニット「PRO Racing Pedals」も、これ単体でペダル同梱のG923を上回る49,940円となっており、合わせて17万円のお買い物となる。大量生産できないため、ロジクールオンラインショップ限定販売となっており、定価販売のみとなる。まさに価値のわかるゲーマーだけが手を伸ばすべき製品だ。
なお、バリエーションとしては、PS5/PC版、Xbox/PC版の2製品が存在するが、日本でロジクールが取り扱うのは前者のみとなる。
「PRO Racing Wheel」の真価はダイレクトドライブ×TRUEFORCEにあり!
さて、「PRO Racing Wheel」が「PRO」シリーズとして追求しているのは、“レース体験を極限までリアルに伝えること”だ。レースゲームをプレイするだけならゲームコントローラーでいいし、ハンドル操作で楽しみたいならG29やG923でも十分だ。
そうした中で「PRO Racing Wheel」がこだわっているのは、G923で初搭載されたTRUEFORCEによって、過去最高レベルにまで引き上げられたレースシーンにおけるフォースフィードバック体験を、ダイレクトドライブによって、直に、よりリアルにドライバーに伝えることだ。
TRUEFORCEは、レースゲーム内のデータをより深く解析し、エンジン音レベルから細かくフォースフィードバックを定義し、両手にコースコンディションやコース上の細かい凹凸、タイヤの状況などを振動という形で克明に伝えてくれる。G923はこのTRUEFORCEによって、レース体験を一段上に引き上げてくれた。
その反面、G923ではTRUEFORCEによってフォースフィードバックの解像度が上がったことで、ギアドライブのノイズが目立つようになった印象がある。ころころ、からからといったギアの駆動音で、わずかなものだが不要なノイズだった。
「PRO Racing Wheel」では、ダイレクトドライブによって、ノイズが完全に消失しているだけでなく、ダイレクトドライブの本来の強みである、強烈なトルクによって、TRUEFORCEがもたらすフォースフィードバックがより深く、克明に味わえるようになっている。会場には、「PRO Racing Wheel」との比較用に、「G923」のデモ機も置かれ、触り比べることができたが、共にTRUEFORCE対応で、フォースフィードバックの解像度は同じだが、ハンドルから得られる体験は、まさに別次元だ。
トルクの強さについては、ロジクールがデータを公開している。「G29/G923」のトルクの強さが2.3N-m(ニュートンメートル、1重量キログラムメートルkgf・m=9.80665 N・m)なのに対して、「PRO Racing Wheel」は約5倍となる11N-m。市場には最大で20N-mのプロダクトも存在するということだが、11N-mでも、実車レベル、あるいはそれを上回るトルクを実現できるということで、最終的に11N-mに落ち着いたという。ともあれ、ダイレクトドライブ×TRUEFORCEによるレース体験は強烈だ。百聞は一体験に如かずで、これはぜひ自身の手で確かめて欲しい。
かゆいところまで手が届く様々な改良
ハンドル部分もプロ向けの様々な改良が加えられている。ハンドルの材質はスチールで、グリップ部分は合皮が使われているが、質感は向上。よりラグジュアリーな手触りとなっている。ボタン類もすべて再配置され、ほぼすべてのボタン・ダイヤル類が親指を動かすだけで操作できるようになっている。ほか目立った変化としては、左下の上下ボタンはダイヤルに変わったことと、パドルがシフトチェンジ用の標準パドルの下に、左右にもう1つずつコンパクトなパドルが新設され、自由にキーをアサインできるようになっている。
そのパドルについては、物理スイッチから磁石式スイッチに仕組みを変え、物理的な接点をなくしたことで、より高い耐久性を実現したという。耐久回数については、現在検証中、つまり、検証開始からまだ一度も壊れていないようで、耐久性を気にせずシフトチェンジしまくれるようだ。
そしてダイレクトドライブユニットを採用した副次的なメリットとして、ハンドル部分が取り外せるようになっている。着脱は接合部を手で押さえて引き抜くだけで工具いらず。実車レプリカのステアリングホイールを装着して、「アセットコルサ」で峠を攻める、みたいな通な遊び方もできるようだ。夢が広がる拡張要素といえる。
デスク/テーブル装着用のクランプも新設計となっており、着脱が可能。デスクに装着する際は中央下部にクランプを取り付けて固定し、レーシングコクピットやスタンドを使う場合はクランプを外してふたを嵌め込み、フラットな状態にしてネジ穴で固定していく。
ソフトウェア面では、まだドライバが未実装で、デモでもG923と認識されている状態だったため、Logicool G Hubでのカスタマイズ性能は未知数。ただ、現時点で判明している内容としては、プロファイルを本体側に保存できるようになったため、Logicool G Hubでカスタマイズした内容を本体側に保存し、PS5/PS4でそれを利用できるようになった。レースゲームごとに、多用するキーが微妙に異なるため、「GT7」のようなPSタイトルも含めてキーカスタマイズになったのは地味に嬉しいところだ。
プログレードのフットペダル「PRO Racing Pedals」
そして今回、ペダルが別売となる。別売になる理由は、単純にセットにすると高すぎるということもあるが、ブレーキという、レーシングにおけるもっとも重要な操作を行なうパーツを担う周辺機器として、単体で押し出せる自信作ができたという意味も込められている。
ペダルの素材はスチールで、それを支える筐体はG923同様プラスチックだが、ペカペカである程度使い込むと割れるような華奢な感じはなく、いくら踏み込んでもびくともしないような高い剛性を備えている。ペダルについては、ミリ単位で位置や向きを変更できるほか、最大の特徴は、3つのフットペダル(アクセル、ブレーキ、クラッチ)のスプリングとエストラマー(ゴム弾性を備えた高分子素材)を交換できることだ。これによりペダルを踏み込んだ際の反発力を軽くしたり、重くしたり、自分好みに調整することができる。いかにもロジクールGらしい機能だ。
この「PRO Racing Pedals」は、基本的に「PRO Racing Wheel」と組み合わせて使うことが想定されているが、基本的な接続方法は従来モデルから変わっていないため「PRO Racing Wheel」とG29/923のフットペダル、G29/923と「PRO Racing Pedals」というプレイスタイルも選べるという。ただし、対応しているのは発売時点ではPCのみで、PS5/PS4は2023年以降に対応見込み。このためG29/923ユーザーは、ちょっとずつ買い足していくというのも現実的な選択肢としてありうる。
なお、「PRO Racing Wheel」で唯一残念と言えるポイントはG29/923向けのシフターには対応していないことだ。ホイールとペダルがあるのにシフターだけないのは画竜点睛を欠く印象があるが、おそらく「PRO」シリーズのシフターも開発中だと思われる。レバーを手の裏で転がすと納得の手応えが得られる「PRO」グレードのシフターの登場に、今から期待したい。
レースシムライフを更に数段引き上げてくれる極上のゲーミングギア
発表会終了後に、PLAYSEATのハイエンドレーシングコクピット「TROPHY」に装着された「PRO Racing Wheel」および「PRO Racing Pedals」で、「アセットコルサ」をプレイしてみたが、エンジン音の振動に、路面のわずかな凹凸、縁石にハンドルを取られる感じや、カーブを曲がる際のググッと硬い抵抗、そしてアクセルやブレーキの心地よい反発感などなど、すべての体験が極上だった。PLAYSEATコクピットのクオリティも合わさり、業務用のレーシングシミュレータを体験しているような、そんな錯覚に陥った。
その後、「でも、G923もそれなりだよね?」と思いながら、G923もプレイしてみたが、自分でも驚くほどチープな体験に感じられてしまった。筆者が特に嫌っている、ころころ、からからとしたギアの駆動音が断続的に鳴る上、フォースフィードバック自体は、TRUEFORCE対応で高い解像度を誇るものの、肝心のトルクが軽く、表現力も限定的で、「PRO Racing Wheel」を体験した後は、どうにもチープ感がぬぐえない。
「PRO Racing Wheel」のガツンとしたトルク、表現力豊かなフォースフィードバックは、一度体験したら忘れられないものがあり、これが自宅で手軽に楽しめるのはまさに衝撃的だ。こう書くとロジクールに怒られるかもしれないが、「PRO Racing Wheel」と「G29/923」は、ビジュアル的には似通ったプロダクトながら、世代が違うというレベルではなく、体験として次元が違う。同列で比べられないギアだと思う。
余談だが、「PRO」がハンコンというゲーム専用ギアまで到達したことはすべてのゲーマーにとって朗報だ。今後、長らくアップデートされていないゲームコントローラーや、Saitek買収により獲得した豊富なフライトスティック/スロットルにも「PRO」が登場することをゲーマーとして大いに期待している。