【特別企画】
原寸大「狐刀カカルクモナキ」が大迫力! 「モンスターハンター×堺 -いにしえの技にせまる-」内覧会レポート
制作期間3年。3人の職人の技が結集!
2022年7月8日 21:49
- 【モンスターハンター×堺 -いにしえの技にせまる-】
- 日程:7月9日~9月4日
- 開館時間:9:00~18:00(最終入館17:30)
- 会場:さかい利晶の杜(大阪府堺市宿院町西2丁1-1)
- 特別展入場料:大人800円、高校生600円、中学生以下300円(すべて税込)
- 休館日:7月19日、8月16日
カプコンは7月9日より、「モンスターハンター」シリーズのコラボイベント、「モンスターハンター×堺 -いにしえの技にせまる-」を大阪府堺市の「さかい利晶の杜」とその周辺地域にて開催する。
このイベントでは、原寸大サイズで再現されたゲームに登場する太刀「狐刀カカルクモナキ」の展示をメインとし、シリーズに登場する武器や防具、最新作「モンスターハンターライズ:サンブレイク」の設定原画資料などが展示される。
また同じ会場では「堺のいにしえの技」として、刀剣や鎧、火縄銃など、堺の金属加工業の歴史や技術にまつわる展示も実施。このほいあ、会場周辺の堺のまち巡りを楽しむフォトラリーなども行なわれる。イベントの開始にに先立ち、プレス向けの発表会及び特別展の内覧会が行なわれたので、その模様をレポートしていく。
最新塗料と伝統の技が融合! 太刀「狐刀カカルクモナキ」再現
発表会には堺市市長の永藤英機氏、「モンスターハンター」シリーズのプロデューサー辻本良三氏、太刀制作に携わった水野鍛錬所の水野淳氏、木彫前田工房の前田暁彦氏、プロモデラーの山口雅和氏が登壇した。
今回のコラボイベントは、堺市が同じ大阪に拠点を置き、ゲームコンテンツを活用した地域活性化の実績があるカプコンに依頼をして実現した。カプコン監修のもと、堺市の職人によってゲーム内設定と同じ全長約3.1mにも及ぶ太刀「狐刀カカルクモナキ」が制作され、このイベントで披露されることとなった。
キービジュアルでは、イベント会場となるさかい利晶の杜や、世界遺産となった堺市の「百舌鳥・古市古墳群」が背景となっている。「『モンスターハンター』と堺市のコラボレーションによる新たな世界観を多くの方に楽しんでいただきたい」と永藤市長はコメントした。
一方辻本氏は、堺市からの打診に「面白そう」とコラボ企画を快諾。ゲーム中ではハンターが軽々と振り回しているが、実物大の太刀を実際に見てみることで「こんな大きな武器を振り回しているのか!?」という驚きを感じてもらえるはずだと述べる。「これから夏休みも始まりますので、ぜひご家族などで見ていただいて、実際にゲーム中に使わている武器が再現された様子を実感して、『モンスターハンター』の世界と堺市の素晴らしさを感じ取っていただきたい」と続けた。
今回の展示の目玉となる狐刀カカルクモナキは、モンスターの中でも人気の高い泡狐竜タマミツネの素材から作れる武器で、職人によって作られた再現太刀は全長3.1m/刃渡り2.2m/総重量150kgにも及ぶ巨大なものだ。刃は付けられておらず、銃刀法の「刀剣類」に該当しない「造形物」として作られている。
刀身の部分を手がけた刀工の水野氏は、設定上のその大きさを見て「すごく悩み抜いた」と語る。刀身だけでなく、刀に取り付ける鍔や柄、鞘などの刀装具や、その色彩の再現を一体どうするかと悩み、旧知の仲である前田氏と山口氏に声をかけ、3名の共同製作により完成に至った。水野氏は「『モンスターハンター』の世界観を損なうことなく、ファンの方に喜んでいただける作品にすることを意気込んでがんばりました」と語っている。
その制作は実に3年が費やされたとのこと。この大きさなので、実物の刀剣と同じように打って作ることはできないため、まず最初に設定に合わせた木型を作り、その形と大きさを検証したと水野氏。それに合わせて素材となる黒軟鉄を鉄工所に持ち込んで大まかな形にカットし、それを自身の工房に持ち帰って、滑車のクレーンで持ち上げた状態で、手作業で形を整えていったとのだとか。水野氏は刀鍛冶の一方で包丁鍛冶も行っているそうで、自身の持つ金属加工の技術を生かすことができたそうだ。
前田氏は、だんじり祭で使われるだんじりに施す彫刻の技術を持つ木彫の職人で、刀装具はだんじりと同じケヤキを素材とした木彫りで製作している。鞘にある鱗の表現は特に苦労したのだとか。鞘はなんと無垢の素材から彫ったもので、貼り合わせなどはしていないとのこと。ただし太刀本体を収めることはできないそうである。ちなみに展示されている太刀は触ることはできないのだが、柄の部分はゲームと同様に伸縮するように細工されている。ここも前田氏の技術を生かしたこだわりのポイントだそうだ。
山口氏は大学の講師を務めながら、プロモデラーとして映画などに使われる小道具なども手がけていて、このカカルクモナキの製作では全体の塗装を担当している。山口氏は実際のゲームの映像を100時間以上見てその質感を確認し、見る角度によって色が変わることをどう表現するかを考えたという。薄いLEDを使うことなども考えたが、技術的に難しいかったため、光の加減で色が変わる特殊な塗料を採用している。
また刀身が重いため、一般的な塗料を使うと、完全に乾燥していてもこすれて剥がれてしまうことがあるため、とにかく塗膜が強い塗料を使ったそうだ。さらにタマミツネのイメージから、水に濡れたぬめり感のある仕上げにしたかったが、そこにこだわりすぎると塗膜が弱くなってしまうため、そのバランスに気をつけて作業をしたとのこと。
伝統職人の2人に混ざった山口氏は、自分が場違いだという気持ちもあったが、現代の科学による最新の塗料を使った塗装技術が伝統の技術と融合することで、よりいいものを作れるのではないかという考えを持ったことが、この太刀の完成に繋がったと語った。
完成したカカルクモナキは本当に巨大で、目の当たりにするとその大きさに驚かされると思うが、それだけではなく、要所に堺の職人のこだわりが詰まっている。木彫とは思えないような刀装具の質感や、見る角度によって色が変わる刀身の塗装など、細かなところまで仕事が施されているので、ぜひ会場で実物を見てみてほしい。