【特別企画】
発売26周年! はやすぎたVRゲーム機「バーチャルボーイ」をいま振り返る
VR界の切り込み隊長を2021年の“目”で遊ぶとどう評価できるか?
2021年7月21日 00:00
- 【バーチャルボーイ】
- 7月21日 発売26周年
本日7月21日は、任天堂ハード「バーチャルボーイ」の発売26周年だ。PlayStation VR、Oculus、HTC Viveなど、今でこそVR(バーチャルリアリティ)ゲームを楽しむハードは一般にも普及しているが、発売当時の1995年は“VRをテーマにしたゲーム機”自体が珍しいものであった。
任天堂ハードの発売順で言えば、スーパーファミコンの後で、NINTENDO64の前。「スーパーマリオ64」以降のいわゆる“3Dマリオ”登場前にマリオが3Dになっていたという意味でも、そんなに前にVRにチャレンジしてたの?! という意味でも、「はやすぎたVRゲーム機」として今も語り継がれる伝説のゲームハードである。
分類的にはクラシックゲーム機に入るバーチャルボーイであるが、時を前後して、GAME Watch編集部が使用している倉庫にてほぼ新品の本機が他の古いハードとともに発掘されるという“事件”が起きた。これは、26周年にかこつけてバーチャルボーイを再評価するチャンスなのでは!
……といっても、筆者自体、バーチャルボーイの記憶はそんなに濃くない。幼少期の遠い記憶として、どこかのゲームショップかデパートのゲームコーナーで試遊したなぁ、確かに立体に見えるけど赤と黒の画面だったなぁ、くらいのものである。
であるならば、そもそもVRをテーマとしたバーチャルボーイとはどんなハードだったのかをしっかり見ていきたい。セットアップからプレイの感触まで、2021年の今の視点で振り返ることで、本機にリスペクトを捧げる企画になれば幸いだ。
バーチャルボーイはスタンドアローン型VRゲーム機!
ハードとしてのバーチャルボーイは、ゴーグル部分、脚立、そしてコントローラーと大きく3つのパーツに分かれている。
特に深い赤色のデザインが特徴的なゴーグルは、本機の象徴であり心臓にあたる部分だ。このゴーグルを覗き込むことで、ゲーム画面が見られる。感覚的には、現在のVRゲーム機とほぼ遜色ない。
脚立はそのまま脚立で、重めのゴーグル部分をがっしり支えてくれる。プレーヤーの環境や姿勢に合わせて、固定ネジを回して角度の調整も可能だ。
そしてコントローラーは、ゴーグル本体からケーブルで接続する。本機はコンセント接続ではなく、単3電池で動作する設計。コントローラーの裏には単3電池6本(6本も!)を入れるケースが付いている。電池6本の重量が加わるので、コントローラーを持つとずっしりとした重みを感じる。
面白いなと思うのは、ゴーグルの調整方法が今のVRゲーム機とほぼ変わらないことだ。ゴーグルにはIPD(瞳孔間距離)とFOCUS(ピント調整)の調整用のツマミがついていて、アナログだがむしろ直感的なデザインになっている。
底面にはコントローラー用の接続端子のほか、音量調節のツマミ、3.5mmイヤホンジャックなどがある。音はステレオだし、機能的には必要十分といった感じだ。
組み立ててみると、もともと電源ケーブルが付いてないこともあって、配線自体はシンプルにまとまっている。意外にとてもスッキリしているスタンドアローン型VRゲーム機、それがバーチャルボーイだ。
※記事初出時、組み立てた際の脚立の向きが前後逆になっておりました。お詫びして訂正いたします。
バーチャルボーイのゲームを体験!
さて、では肝心のゲーム内容を見ていきたい。今回プレイできたのは、本体と同時に発掘された「ギャラクティックピンボール」と「マリオズテニス」だ。どちらも1995年7月21日発売のローンチタイトルとなっている。
「ギャラクティックピンボール」は、宇宙をテーマにしたピンボールゲーム。4つのステージからひとつを選び、ハイスコアを目指してボールを弾いていく。
また「マリオズテニス」は、マリオやルイージなど「スーパーマリオ」のキャラクターを操作して対戦するテニスゲーム。シングル戦やCPUと組むダブルス戦などがプレイできる。
バーチャルボーイといえば赤色のLEDで表現された赤と黒のゲーム画面。改めて体験してみると、単色なのにしっかり奥行きを感じられるし、調整さえ合えば画面端まで一切のブレなしにクッキリ映る。立体視表現として、ベストに近いほど精緻なのが印象的だ。
バーチャルボーイ発売当時は、プレイステーションやセガサターンがすでに発売されていた時代である(プレイステーションは1994年12月4日、セガサターンは1994年11月22日発売)。単色のゲームはある意味一世代前に戻ったような感じもあるが、その代わりにゲーム内の奥行きが脳にダイレクトに伝わってくるような、立体視のインパクトは唯一無二の体験となっている。当時のゲームハードのなかでは明らかに異彩だ。
ただし、どちらかというとVRの「立体視の奥行きがすごい」というインパクトのみに全振りしているようなところもバーチャルボーイには感じる。奥行きを感じることで表現がよりダイナミックになっていると実感できるが、精緻な立体視がゲームシステムと画期的なシナジーを生み出しているかというと、正直そこまでは踏み込めていないかな、と思う。
今でこそVRは解像度やリフレッシュレートが向上し、トラッキングの精度が上がり、一方でゴーグルは軽量化してスタンドアローンでも没入度抜群のゲーム体験が可能になった。そこまでして、ようやく新たな時代に突入した感覚がある。
これを踏まえると、技術や諸々の制約が信じられないほどあるなかで、VRというお題に対して当時できることを最大限やりきったのが、バーチャルボーイなのかもしれないなと想像する。とするならば、その切り込み隊長ぶりは偉大すぎて眩しいくらいだし、だからこその愛されハードということがよく理解できる。まったく、無茶しやがって……。
改めて、バーチャルボーイ発売26周年、おめでとうございます!