【特別企画】

「イース6 オンライン」はどのくらい「イース」してる?原作ファンによるファーストインプレッション

「アドルと“あなた”の物語」へと原作をアレンジしたオンラインRPG

【先行体験版】

配信期間:3月5日12時~3月11日23時59分

 30年以上の歴史を持つ日本ファルコムのアクションRPG「イース」シリーズ。その中でもパソコン時代の名作として知られる「イースVI-ナピシュテムの匣-」を原作とする新作スマホゲームが昨年末に発表され、ファンの間でも話題となった。

 そして3月5日。いよいよ「イース6 オンライン~ナピシュテムの匣~」の先行体験版テストが始まり、開発中の段階ではあるが実際にゲームに触れる機会が設けられた。ゲームジャンルとしては、その名前の通りオンライン型のアクションRPGとなる。

 配信元のRestar Gamesは、スマートフォンゲームの企画・開発・運営等を手がける企業。同社の手により「イース」がどのように料理されたのか、シリーズファンの視点でファーストインプレッションをお届けしたい。

プレイヤーキャラクターはオリジナル。……では、アドルは?

 ゲームを開始すると、まずは戦士、魔導師、レンジャー、アサシンという4つから職業を選んで、プレイヤーの分身となるキャラクターを作成する。そう、少なくともプレイヤーキャラクターという意味において、本作の主人公は「イース」シリーズ原作の主人公「アドル・クリスティン」ではないのである。

まずは職業を選んでプレイヤーキャラクターを作成する。キャラクターのモデルはなかなか親しみやすいデザイン
将来的な転職後の姿もプレビュー可能

 そうなると原作ファンとして気になるのは、「アドルはどうなるの?」「プレイヤーキャラクターとの関係は?」という点だが、こちらはゲームを開始すればすぐに判明する。端的に言えば、「プレイヤーはアドルの仲間となって、アドルと一緒に冒険する」ことになるのだ。

「イース」シリーズ定番、漂流して新たな舞台の浜辺に流れ着くアドル……の隣にもう一人いる!?

 今回の先行体験版で確認できた限りでは、本作の舞台や登場キャラクターは基本的に原作と同様。ストーリーも色々とアレンジが入りつつも、おおまかな流れは原作を踏襲するようだ。長い耳と獣のような尻尾を持つ「レダ族」が住むカナン諸島を舞台に、精霊神の伝承をモチーフとした物語が展開していく。

 そしてメインクエストにおいては、原作ではアドルが一人で冒険していたような場面で、その仲間としてプレイヤーキャラクターが一緒に行動することになる。会話シーンなどにおいても、登場人物達がプレイヤーキャラクターを無視してアドルとだけ会話している(ゲームプレイとシナリオに齟齬がある)ということもなく、しっかり「二人組」として相手をしてくれる。

プレイヤーキャラクターはアドルの同行者として、原作の登場人物からもアドルと一緒に呼びかけられる
こちらが二人組であることを前提にしっかりと台詞がアレンジされている。画像はアドルのライバル「ガッシュ」との初遭遇のシーンだが、「二人まとめてでも構わないぜ」という台詞により強キャラ感が増しているのが面白い(とはいえ結局この後、「ここは任せて」とプレイヤーキャラクターとの1対1となる)
アドルとプレイヤーキャラクターが共同で解くギミックがあるなど、ゲームプレイの面でも一緒に冒険しているという実感を持てる。戦闘ではアドルがNPCとして一緒に戦ってくれる

 さらにはアドルとプレイヤーキャラクターの掛け合いまであり、アドルがプレイヤーキャラクターを「旅の仲間」として扱ってくれるのだ。昨今のシリーズ本編では台詞がないタイプの主人公として描かれているアドルがたくさん喋ってくれることも含め、これはファンとしてはなかなか嬉しいところ。台詞回しもお人好しで冒険心と正義感にあふれるというスタンダードなアドル像から外れておらず、違和感なく受け入れられた。

 しかも台詞はボイスありで、アドルのキャストは現時点で公表されていないものの、声を聴く限り昨今のシリーズ作品でアドルの声を担当している梶裕貴さんで間違いないだろう。そこをしっかり押さえてくるあたり、力の入れようが感じられるというもの。ちなみにヒロインのオルハの声は石川由依さん、その妹のイーシャの声は小倉唯さんが担当であることが、ゲーム内でキャラクターから受け取れる手紙のCV表記で明示されている。

頻度はそこまで高くないが、プレイヤーキャラクターもしっかり会話に参加する。アドルが旅の仲間として気安く接してくれるのは結構嬉しい

 そのほかBGMは原作曲のアレンジで、シリーズおなじみであるアイテム入手時のジングルも踏襲。これだけでも「イースっぽさ」がぐっと増してしまうのはちょっとずるいところかもしれない。マップデザインも原作をベースにしており、原作プレイヤーなら懐かしく感じるだろう。

 一部テキストの口調に齟齬を感じる場面などはあるが、テキストはまだ調整中とされており、今後の改善に期待してよいだろう。総じて、原作シリーズへの理解とリスペクトを感じられ、元を活かしつつ「アドルの物語」を「アドルと“あなた”の物語」へと上手くアレンジしていると感じられた。先行体験版テストのメインクエストはミトス参道を抜けて港町リモージュに到達するまでとなるが、この後カナン諸島でどのような冒険が展開するのか、原作の名シーンがどのようにアレンジされるのか楽しみだ。

カットシーンやスチルなども用意され、物語を盛り上げていく

スマホ向けアクションRPGとしての手触りはまずまず良好

 ここからは、本作のシステム面を見ていこう。基本的な操作・戦闘システムはスマホ用のアクションRPGとして標準的なもので、バーチャルパッドで移動しつつ、通常攻撃や各種スキルをボタンのタップで繰り出していく。スキルを撃つ方向をスワイプで調整できたり、ダッシュやジャンプも可能。操作のレスポンスも含め、アクションゲームとしての手触りはなかなか悪くない。

職業ごとのさまざまなスキルを駆使しして戦っていく。手軽な操作で爽快感もなかなか

 メインクエストを進めて「エメラス剣」を入手すると、ゲージを溜めることで剣に込められた魔法を使えるようになるという、原作設定を活かしたシステムも。また、「ソウルカード」という装備品にセットしてさまざまな効果を得られるカードで使えるようになるスキルの中には、巨大なピッカード(シリーズおなじみのマスコット的な動物)に変身してバリアを張りつつ大暴れするものがあるなど、シリーズファンならニヤリとする要素も仕込まれている。

巨大なピッカードに変身して体当たりしつつ、バリアを張れるスキル。クールタイムが長いがピンチの際の切り札になる。ちなみに画像の通り、ボスも原作同様の敵が登場するようだ

 ただし全般的には、システム面において「イースならでは」という要素はとくに見受けられない。標準的なスマホ向けオンラインRPGのゲームデザインに、イースというIPが乗っかっている、という印象だ。とはいえ前述の通りアクションの手触りなどは十分楽しめる水準に達しており、原作ファンとして「これでイースの名を冠するのはちょっと……」となってしまうことはなかった。

 オンラインRPGとしては、スマホ向けらしくクエスト開始時には関連マップにワープといったサクサク遊べるような仕組みも完備。また少なくとも現時点では、メインストーリーを進めるクエストにはオンライン要素は絡まず、自分のペースでじっくり進められそうだ。

画面左上から次に進めるクエストを選択すると、当該クエストのマップまでテレポートする。スマホ向けらしくサクサク進行できる作りだ

 一方、港町リモージュに到達すると、通りは多数のプレイヤーで賑わい、家を購入できる土地があるなど、一気にMMORPGめいた様相を呈してくる。装備品や経験値を入手できる「装備試練」などマルチプレイ限定のクエストも用意されており、オンラインRPGとしてはここからが本格的なスタートといった形になりそうだ。

港町リモージュは多数のプレイヤーで賑わっている
マップからのオート移動も可能。さらに港町リモージュでは施設や会いたいNPCを選んで移動先に指定できる

「イース」シリーズ再始動の礎となった名作を、スマホで手軽に追体験できるのが魅力

 以上、「イース6 オンライン~ナピシュテムの匣~」先行体験版テストのファーストインプレッションをお届けした。個人的には舞台設定やキャラクター、ストーリーなどの面において、思っていた以上に原作を尊重し、スマホ向けのオンラインRPGへとうまく落とし込んでいる印象だ。

 システム面で「イースらしさ」を感じる面はこれといってなく、そういった意味では「イースの新作」と言うには語弊があるが(それを作れるのはやはり、日本ファルコム自身だけだろう)一種のコラボレーション作品としてはシリーズファンも十分楽しむことができるだろう。

 また、スマホでオンラインRPGを楽しんでいる層が「イース」シリーズの世界観に触れるのにも良さそうだ。原作にあたる「イースVI-ナピシュテムの匣-」はそれまでの作品の設定を整理、再構成して以後の作品の礎となったような作品なのだが、現行ハードには移植されていないなどプレイのハードルは高い。スマートフォンで気軽に楽しめる本作で、その物語に触れられるのは嬉しいところだ。

 “プレイヤー自身がアドル・クリスティンの仲間として一緒に冒険する”という、シリーズ本編とは一味違った形で原作の追体験ができる本作。これから訪れることになるであろう多彩なダンジョンがどのように表現されるかなど、正式サービス開始やその後の展開も楽しみな作品だ。

この先物語が進めば、「有翼人」などシリーズを通しての世界観に触れていくことにもなるだろう。それをアドル自身が語ってくれそうなのは本作ならではの楽しみだ