【特別企画】
これが「龍」の伝説の15年だ!初代「龍が如く」から「龍が如く7」を振り返る配信を濃密レポート
今だからこそ言えるぶっちゃけトークも満載。名越氏「次の作品も進行しています」
2020年12月11日 00:00
- 12月8日 配信
2020年12月8日に第1作「龍が如く(2005年12月8日発売)」の発売から15年を迎えた、セガを代表するIPの1つとしてゲームファンに親しまれている「龍が如く」シリーズ。日本一の歓楽街神室町を舞台に、伝説の元極道桐生一馬、そして新たに誕生したもう1人の主人公春日一番の物語が描かれる作品だ。「龍が如く」以来15年、今や正式ナンバリングタイトルあり、驚きのスピンオフタイトルありと、「龍が如く」シリーズはその作品集も非常に濃厚な物語となっている。
本シリーズの15周年を記念して、12月8日にはシリーズを一挙に振り返る「龍が如く15周年 記念特番」が配信された。桐生一馬を演じる黒田崇矢さん、そして春日一番を演じる中谷一博さん、そしてシリーズのファンである鬼越トマホークのお2人。また「龍が如く」シリーズ総合監督の名越稔洋氏、龍が如くスタジオ代表の佐藤大輔氏、龍が如くシリーズチーフプロデューサーの横山昌義氏、そして橘ゆりかさんがMCを務める豪華な配信だ。
本稿ではその配信で触れられた「龍が如く」シリーズ15年の歴史についてレポートをお届けしたい。意外な裏話が登場するのでシリーズファンはもちろん、まだ未プレイの方にもこれらのエピソードをきっかけにシリーズ作品に触れてもらえると幸いだ。
「龍が如く」シリーズの15年の伝説に刮目せよ!
配信では時系列順に作品を振り返っていった。まずは第1作目の「龍が如く」からだ。
桐生一馬を演じている黒田さんは、1作目の「龍が如く」のオファーがあった時は「元々舞台やテレビの仕事をやっていて、声の仕事を始めてナレーションの仕事などをやり始めたくらいの時期でした。ゲームに声を入れるという意味がわからないような状態でした」と最初はかなり戸惑いもあったという。「しかも台本が段ボール箱に入れて送られてきて、収録を進めても進めても台本の残りページが減っていかなかった記憶がありますね(笑)」とセリフの収録量に驚いたエピソードも明かされた。
また名越氏からは、本作のプロモーションについて「異色作ながらもテレビCMなどのど真ん中な宣伝をやって、大作として売り出すことにこだわったので逆に違和感を感じられた方もいるかもしれません。ただそれも計算の上でした」と振り返り、本作の魅力が口コミで広がっていったことに感謝していると話した。
続いて話題は2006年12月に発売された「龍が如く2」の話題に移る。
横山氏は「『龍が如く』発売から『龍が如く2』発売までの間が一番大変だったかもしれません。ただこの1年で龍が如くシリーズの歴史が決まったとも言えます」と話した。というのも「龍が如く」シリーズは、これまでほぼ毎年新作を発売している。その流れを作ったのが「龍が如く2」だからだ。
ただ名越氏は当時はこのハイペースな展開に反対の姿勢だったのだという。というのも1年で発売しようとすると開発に当てられる期間は実質8カ月ほどしかないからだ。「ただ多少の無理はしたものの結果的には良かったと思いますね」と当時を振り返りながら話す。
ちなみに「龍が如く」の開発中に「龍が如く2」の開発を検討していたのか、という問いに対し名越氏、横山氏は「一切考えてなかった」と口を揃えた。横山氏は「クリスマスくらいにプロットを書き始めて、1月1日に当時のプロデューサーに『時間が足りなくて厳しいです』という電話をしたことを覚えています」と、タイトなスケジュールで進行していた事が印象に残っていると話した。
そもそも続編に繋がったのは「龍が如く」の売上が好調だったからなのだが、名越氏からは「実はプロットを書き始めたのは見切り発車で……『龍が如く』の出荷本数の数字は良かったんですね。最後にお客さんのところまで届く数字が良くなかったんです。なので『やっぱりダメだ』ってなくなってしまう可能性もありました」と驚きのエピソードを語った。
そこからじわじわと口コミでゲームが広がっていき、それが売上増、そして大ヒット、そして「龍が如く2」へと繋がっていったのだという。
続いて「龍が如く 見参!」のエピソードに移る。シリーズ初のスピンオフ作品だが、制作のきっかけについて名越氏は「もちろん『龍が如く3』をPS3で発売するという案もありました。ただPS2で作った『神室町』をPS3で大きく進歩させたかったんです。そのノウハウを身につけるためにもう少し時間が欲しい、でも何かを世に出したい。色んな選択肢がある中で新しいハードでチャレンジするなら目先の違うものはどうだろうと考えました」と初のスピンオフ作品の誕生の秘密について明かす。また横山氏が歴史モノに造詣が深いということもそのきっかけの1つだったという。
本作は宮本武蔵の話なのだが、当初横山氏が提案した当初は「祗園」の話だったのだという。「『神室町』のように狭くて密な空間がないか、というのを探していた時に『祇園』という街が出てきました。祗園を作り込むことで今後の開発にも役に立つものが得られるのではないかなど色んな狙いがありましたね」と振り返る。その提案に対し名越氏から「歴史的な有名人を出すのはどうか」という提案があり宮本武蔵がそこに追加されたのだという。
黒田さんはスピンオフ作品として登場したことに対し「当然次は『3』かなと思っていました。でもいつも『龍が如く』ファミリーには裏切られるんですよ(笑)。出演者も予想してるんですけど当たったことがなくて。しかも『次こういう感じの作品になると思います』と話を聞いて、蓋を開けてみたら全然違う作品が出てきたりとか(笑)」とファンと同様に出演陣もサプライズとして受け止めていることを話した。
その後PS3で発売されたのが「龍が如く3」だ。
横山氏は「すすきの・沖縄論争というのがあって(笑)。僕がすすきの派、名越さんが沖縄派で。ただ色々あった後に沖縄を調べてみると面白いなと思い沖縄に決まりました」と意外なエピソードが飛び出した。
ちなみに横山氏が一番大変だったのは「風間のおやっさんをもう一度出してくれないか」という名越氏からのリクエストだったという。「龍が如く」シリーズのナンバリング作品は時系列が繋がっており、その時系列の中で既に死んでいるキャラクターを再度登場させるのは非常に難しいのだ。
また「龍が如く3」をプレイした中谷さんは「スピンオフではないナンバリング作品であることと、桐生一馬のその後がまた語られるのが嬉しくて夢中でプレイしましたね」と振り返る。
黒田さんも印象に残った出来事があるという。「基本的に作っている人の『こう演じてほしい』と言われるのを演じるのが仕事だと思っているのですが、本作では横山さんとぶつかり合って収録したのを覚えています。力也が死ぬシーンで『そこまで乱れないでください』という感じのオーダーでした。ただ自分の感情はもっと乱れる、桐生もそこまで行くという話をしました。そこで落ち着いているパターンと乱れているパターンの2パターン録ったんですね。それで『どちらを使うかは信じてるからね』って帰りました。しつこいくらい『信じてるからね』って(笑)。そうしたら乱れているパターン使ってくれましたね」と話した。
横山氏は「黒田さんのおっしゃることはわかるし、演技としても素晴らしかったです。ただ頬の動きや涙の表現など技術的な面の兼ね合いもあるので保険で2パターン録らせていただきました。結果的に演出チームもそちらの声がいいですと言って作ってくれたので使いました」とゲームならではの難しさもあった上で選択したと話した。そして「こういう積み重ねが『龍が如く7』の春日一番の演技にも繋がっていると思いますね」とコメントした。
続いて「龍が如く4 伝説を継ぐもの」。初の複数主人公となる作品だが横山氏によると実は最初はナンバリング作品ではなかったのだという。「スピンオフ作品として別の切り口の作品を作ろうという話をしていて、その1つの案が舞台を増やさずに神室町で深い話をするために複数主人公を登場させようという話でした」と話す。「そのため最初はタイトル未定で作り始めたのですが、そこに『龍が如く4』というタイトルを付けても良いと名越さんが話し、ナンバリング作品になりました。またこの作品からサブタイトルがついてるのですが、それも名越さんが付けました」とエピソードについて話す。
佐藤さんから「この『伝説を継ぐもの』というサブタイトルは主人公の交代を考えていたのかなと思ったのですが……?」という質問に対し、名越氏は「桐生一馬は伝説の龍で、登場する主人公たちもその伝説を継げるくらいの人物、という想いがこもってます」と話す。
そしてPSPで発売された「クロヒョウ 龍が如く新章」。
名越氏は「『携帯機どうなのよ』という話があって、PS3よりスペック的には落ちてしまうのですが、ニーズがあるならなんとかしたいと思っていました。ただ、PSP版の『龍が如く』を作るなら据え置き機で新作を作りたい。でも興味もあった。そこで新しいタイトルをここで出してみました」と話す。
「『あしたのジョー』とか昔のスポ根とか好きで、のし上がっていくドラマであったりとか、対戦相手との戦いから何かを学んでいくというのが好き。10回勝ち残った人間はいなくて一戦一戦にテーマがあって、かつとは友達とはなんだっていう学校で教わらないキーワードを学んでいって、人間として成長していく。そのトレーナーが実は生き別れた親父さんという話にしましたね」と名越氏は本作を振り返る。
ゾンビが出てくるスピンオフとしてファンにインパクトを与えた作品が「龍が如くOF THE END」だ。
ただ名越氏も横山氏も「敵をゾンビにすることはノータッチなんですよね」と口を揃える。名越氏は「神室町が閉鎖されてる状態で何かを作るというのを考えていて、僕の最初の案は宇宙人だったんですね。ただ当時のプロデューサーが『絶対にゾンビだ』という話になって。どちらにしてもSFなんですけど、最終的にゾンビで良かったなって思いますね。『龍が如く』らしいバイオレンスさは宇宙人じゃ出せなかったと思うので。ただ桐生に『人の星に土足で踏み込みやがって』というセリフを言わせたかった(笑)」
横山氏からも「開発スタッフ的にも、銃で敵を撃つというのはゲーム的にはこれまでのシリーズ作品とは全然違うので、一度こういうチャレンジをやっておくと、未来が広がるんですね。我々は技術がベースにあるので、そういうのを踏んでいかないと行けないと思っていて、いいチャレンジしてるなと思ってました」と振り返る。
続いてが「クロヒョウ2 龍が如く 阿修羅編」。名越氏は「『1』が好評でしたし、ドラマも好評で、斎藤 工さんもここきっかけでブレイクしてキャスティングしたのは覚えてますね」と振り返りつつ、「勝手にやると本が膨らんでしまう人間なので苦労をおかけしました」とお茶目な発言も。
そして「龍が如く5 夢、叶えし者」。横山氏は「集大成に近い作品ですね」と振り返る。名越氏も「ここでこの路線のやり方は限界だなと思いました、やりきった感と言いますか。セールスもすごく良かったのですが、心の中でこの作品か次の作品で終わりだなと思っていました」と話す。
ちなみに今作では桐生一馬がタクシードライバーの職に就いているシーンがあるのだが、黒田さんは「遥が芸能界に出ていく時に邪魔になってはいけない、自分の姿を消そうというのは桐生らしくてスッと入ってきた設定ですね」と振り返った。
続いてはスピンオフ作品「龍が如く 維新!」。幕末を舞台にした歴史モノだ。横山氏によると「PS4のローンチタイトルで、名越さんのところに3つ案を持っていって、1つが三国志、1つがこっち。本命がもう一個あったのですが、最初は三国志を手にとったんですね。そこで『提案しておいて申し訳ないのですが、開発費ヤバいですよ』と話したら、こちらになりました」と驚きのエピソードを語った。
あまり歴史モノに造詣がないと話す名越氏だが、「完成してみてお話として面白いなと。途中途中でテレビドラマや映画で見たことある展開があってなるほど、と思いました。逆に言うとどこまでがフィクションかあまりわかってなかった(笑)」というエピソードも飛び出した。
そして「龍が如く0 誓いの場所」。シリーズの人気キャラクターの真島吾朗がもうひとりの主人公なのだが、それを決断した理由について聞かれた名越氏は「要望は多かったですよね。単体で作るチャレンジもありなんじゃないかなという議論があったくらい多かった」とその人気の高さを話す。
鬼越トマホークの坂井さんは「史上最高傑作だと思っています。もう最高でしたね。オチは決まってるわけですよ、スーツの色だけであんな話を作るのかと。びっくりしました」と大絶賛だ。
横山氏からは「スピンオフと思われる方が多くて初動の売上もあまり良くなかったんです。タイトルも悩みました。スピンオフっぽく見えるというのは色んな所から言われていて、シリーズもののスピンオフはあんまり売れないんです。ただゲームが発売されてからドンドン評価が上がっていって売れてくれたという嬉しいタイトルです」と悩みも明かされた。
佐藤氏は「海外でもシリーズ作品が売れるようになっていったタイミングがこの作品からなんです。ナンバリングで来ちゃうと入りづらいので、ゼロだと1より前の話なのでスッと入れる。アメリカ、ヨーロッパでもここから売れるようになってきました」と世界展開への影響も語られた。
続いてがリメイク作の「龍が如く 極」。横山氏によると「配信でも名越さんが話したのですが、『龍が如く6 命の詩。』の開発が遅れていて、なんとかしろと言われ(笑)、やるなら怒りのフルリメイクをしてやるぜという思いで、本当は『極』じゃなくて『怒りのフルリメイク』というサブタイトルになりそうでした。これはマジです。ただ踏みとどまって『極』になった」というぶっちゃけトークが飛び出した
本作ではボイスも収録され直していて、黒田さんは「舞台、テレビ、声優と37年やってるけど、あのシーンこうやりたかったなみたいなことがあります。もう一度あのシーンを演じ直したいなというのができたのが『龍が如く 極』と『龍が如く 極2』。同じ尺の中で演じるのが面白くも難しかったですね」と振り返る。
また「龍が如く 極」での錦山の追加シーンについて中谷さんは「収録まで時間があったのですが、一度台本に目を通してから2回目を読む気になれないくらい辛いシーンでしたね」と振り返る。さらに「龍が如く」の錦山を改めて演じることについて「ぶっちゃけて言うと怖かったんですよね。全てにおいて1の錦山を上回っていないと皆さんに顔向けできないと思ってました。それで2日か3日くらい寝れなかったのを覚えているのですが、逆にそれくらい追い込まれないと『1』の錦山を演じられないと思っています」と極限の状況下にあったことを明かした。
そして桐生一馬の最後の物語となる「龍が如く6 命の詩。」。「龍が如く3」以来の単独主人公作品だ。
本作のサブタイトル「命の詩。」について名越氏は「かなり悩んだ最後の着地点がこれです。シナリオありきのサブタイトルなので、今作は1つの命のバトンタッチの話だからこういうサブタイトルになりました。『命』と書くのか『生命』と書くのか悩みましたね。最後に句読点を打ったのは最後という意味を込めています」明かす。
横山氏は「重かったですよね。15周年記念の配信でエンディング見たとき泣いてしまいました。もちろん自分の思い入れとかも重なるところもあるんですけど、純粋に誰かが作ったお話として桐生一馬伝はこれでベストだったと改めて思いました」と振り返る。
黒田さんも「桐生と遥や周りの人間達の今後の人生を考え、あの選択肢を選んでいくというときに、ラストシーンでは変な芝居ちっくな感情や変な覚悟を入れたくなかったんですね。桐生一馬はそういう小さい人間じゃないので。それを伝えるためにはこの芝居かなというのを演じたところ、収録もOKをだしてくれたので想いは一緒だったんだなって覚えてますね」と印象的なラストシーンについて語った。
「龍が如く 極2」。制作のきっかけについて佐藤氏は「『龍が如く極』が好評だったのと、『龍が如く 極2』もPS2の世代の作品なので、今からやり直すのも辛いかなというところで、『2』までは”極化”しようという話をしました」と明かした。
そしてスマートフォンなどでもプレイできる「龍が如くオンライン」。シリーズ初のオンラインゲームだ。
本作について横山氏からは「新しい主人公『春日一番』が先に登場し、同一主人公同一設定だけど別のゲームに登場するというトライをしている作品です。またゲーム性から過去キャラクターをカード化することでキャラクターエピソードなどを足すことができて、ファンの方に『龍が如く』シリーズの15年の歴史を楽しんでいただけると思います。語られなかった設定や裏話を補強できているので個人的にすごく楽しいですし、今後も長くやっていきたいですね」と話した。
最後が最新作「龍が如く7 光と闇の行方」だ。
なぜRPG化という思い切った挑戦をしたかを聞かれた名越氏は「当然アクションも考えていたのですが、次にアクションをやるならこういうシステムにして欲しいというような期待があったと思うんですね。それを超える提案をやりきれるのか、というのを自問自答した時にそこは難しそうかなと考えたことが1つ。また主人公が変わる、舞台が変わる、チャレンジできるいい機会なので、思い切った考え方はどうだろうという発想ですね」と話す。ただその道は順風満帆だったわけではないそうで「最初は問題だらけで(笑)かったるいだの、テンポ悪いだの。ゲームとしては成立しているけど、テンポの良いゲーム感には程遠いところで……。開発メンバーも龍が如くのクリエイターとしてのキャリアは長いけど、みんな手探りでゲーム作ってる感じはありましたね」。
また主人公の春日一番を演じた中谷さんは「最初は肩に力入ってたのですが、この『龍が如く7』がどういう風になっていくのか、春日一番がどういう風に進んでいけばよいのかというのを自分なりに出せば大丈夫と横山さんに言ってもらえました」と話す。そんな中谷さんは「最後のシーンは横山さんを泣かせないと『7』は評価してもらえないとという意気込みで行きました」と話し、横山氏からも「ボロ泣きしましたね。エンジニアもみんな泣いちゃって。ただそのテイクはNGになりました。2テイク目がさらにすごくなって、それが実際にゲームに収録されています」
裏話に次ぐ裏話でファンも大いに盛り上がる密度の濃い配信だった。そして配信の最後には名越氏から「次の作品も進行しています」というファンにとっては嬉しい報告もあった。詳細はまだ明かされていないが、15年を迎えてもシリーズの勢いは衰えることはなさそうだ。
配信の内容はアーカイブで見られるので、気になった方はぜひチェックしてみて欲しい。