【特別企画】
根強い人気作が当時よりも遊びやすく進化!! 移植版「モンスターファーム2」ファーストインプレッション
思い出も新しい経験もひっくるめて、モンスターと一緒に名人を目指す!!
2020年9月17日 00:00
- 9月17日 発売
- 価格:2,820円(税込)
プレイステーション版「モンスターファーム」が発売されてから、1年ほどたった1998年の暮れか1999年の年明けだったと思う。当時読んでいたマンガ雑誌に「モンスターファーム2」が発売されるという広告を見かけた。「モンスターファーム」をずいぶんやり込んでいた筆者は、そのころ心暗かったこともあり、広告をみて胸が躍ったのを憶えている。「モンスターファーム2」をプレイしたいがために、いろんなことが頑張れた。
そして前作「モンスターファーム」の発売から1年半経った1999年2月25日、プレイステーション用育成シミュレーションゲーム「モンスターファーム2」が発売された。購入してからは前作以上にのめり込んでプレイしたのは言うまでもない。
そして、本日9月17日に移植版「モンスターファーム2」がNintendo Switch/Android/iOS用に発売される。今回は、発売に先駆けてAndroid/iOS版の先行プレイをすることができた。当時は中学2年生の終わり頃であった筆者の思い出とともにレポートしていきたい。
バラエティ豊かなモンスターを再生して名人を目指せ
本作は、円盤石からモンスターを再生(=召喚)し、そのモンスターを育成しながら大会で戦わせていくことが主だった流れとなる育成シミュレーションゲームだ。
プレーヤーはモンスターを育成するブリーダーとなり、調教助手の「コルト」こと「コルティア」とともにモンスターを育成し、ブリーダーランク「名人」を目指す。
PS版での最も大きな特徴は、ゲーム機でCDを直接再生しモンスターを再生することだった。しかし、Nintendo SwitchやスマートフォンではプレイステーションのようにCDを読み込むことができない。
そこで本作では、CDの情報をデータベース上で検索してモンスターを再生するという仕組みになっている。当時のプレイ体験だけでなく、このCDからはどんなモンスターが再生されるんだろうというワクワク感も残している。必要な情報はタイトル名とアーティスト名だけ。どちらかだけでも検索することは可能だ。
また、モンスター再生には移植版独自のアイテムである「円盤石」が必要となる。「円盤石」は、先行プレイ時には初期から100枚が手元にあり、ログインボーナスのような形で追加の配布が行なわれていた。この「円盤石」が再生数の制限のような形となっている。
本作からは、初期から育成できる基本種16種と条件をクリアしないと育成できない特別種22種のモンスターが存在している。それぞれのモンスターには、前作と同様に「MAIN血統」と「SUB血統」の組み合わせもあり、モンスターの種類は前作全215種から、今作は400種超えと大幅に増加している。
なお、MAIN血統が育成可能な基本種であっても、SUB血統が育成不可の特別種だと、円盤石から再生できない仕様だ。当時はなんともやっかいな仕様だと心の底から思った。
前述の通り、PS版ではCDを直接本体に入れてモンスターを呼び出していた。しかし、当時はCDを貸してくれる人はいないどころか、地元が田舎すぎて車で30分走らないとTSUTAYAがなかった。そのため、当時中学生だった筆者が唯一CDが借りられたのは町立図書館のみ。学校の同級生たちが勉強しに来ていることも多く行きづらかったが、それでも開館直後や閉館直前に誰にも会わないように借りに行った思い出がある。というのも、筆者が持っていたCDがことごとく呼び出せないモンスターばかりだったのだ。
なお、再生したモンスターはファームに連れて行く以外にも、神殿で引き取ってもらうことやマーケットで引き取ってもらう、モンスター工房で10体まで冷凍保存しておくこともできる。マーケットでは育成不十分だと0円で引き取られていく。
さらに本作では、前作データからモンスターを呼び出す「石盤再生」も可能となっている。移植版「モンスターファーム」の引き継ぎIDとパスワードを入力して石盤再生を行なえば、前作のセーブデータにあるモンスターを再生できる。
ほかにも、円盤石再生や石盤再生だけでなく、マーケットでモンスターを入手することも可能だ。マーケットでは、今作から登場した「モッチー」と「ロードランナー」、そして、季節替わりの1体から選び、無料で連れていくことができる。
これだけ種類が多いと、今回は何を育てようか悩む。筆者は「ガリ」が好きだったが、「ガリ」は特別種のため最初からは育成できない。いろいろモンスターを再生してみたが、どうにも「これだ!」というモンスターに当たらなかった。そこで、ものすごく悩んだ結果、「モンスターファーム2」のマスコット的存在である「モッチー」をマーケットからファームに連れていくことにした。「モッチー」はカモノハシと桜餅をミックスしたようなかわいらしい容姿で、当時から初心者でも育てやすいモンスターという印象だ。
本作ではモンスターごとにたくさんのデータが詰め込まれている。「ライフ」や「ちから」など各種パラメーターや技の種類などの対戦に必要な情報から、育成方針、体型、好きなもの、嫌いなもの、ヨイワルまで。ヨイワルは、そのモンスターがヨイモンかワルモンかという性格傾向のようなものだが、育成していくうちに徐々に変化させていくこともできる。しかし、ヨイ傾向で覚える「ヨイ技」やワル傾向で覚える「ワル技」があるので一概にワルがいけないというわけではない。
いざ、育成! 目指せ名人! でも実際はモンスターに翻弄されててんてこ舞い
モンスターをファームに連れて帰ると、いよいよ本格的な育成が始まる。ファーム内では日々のモンスターのトレーニング、休養、大会への出場、アイテム管理のほか、技習得のために修行地へ行かせることもできる。
トレーニングでは、用意されたトレーニング方法を選ぶことで、モンスターの好きな能力値を上げられる。ただ、前作と違い“仕事”ではなくなったので、能力値を上げつつお金を稼ぐことはできない。また、前作ではトレーニングの様子はドット絵で表示されていたが、本作では3Dポリゴンのアニメーションになっている。育成モンスターがどのように頑張っているのかとてもわかりやすい。
トレーニングの結果は、大成功と成功、成功?、失敗、サボリと分かれており、もちろんそれぞれで上がる数値も異なる。また、モンスターによって得意なトレーニングがあり、その場合は能力値が+1される仕様だ。ちなみに、「モッチー」は特に苦手なものもなければ、得意なものもなく、何でもこなせるオールラウンダータイプと言える。伸ばしたい能力を程よく伸ばせるので、筆者のプレイスタイルに合う「命中」と「回避」に重きを置いて育てていった。かしわは失敗こそするが、あまりズルやサボりもせず比較的いい子だ。
筆者が育てていたほかのモンスター達もそれぞれ個性的で、まじめにトレーニングするモンスターもいれば、ズルやサボりばかりをして筆者の頭を悩ませるモンスターもいた。
修行は、1つの修行場所につき4つのステージが用意されており、続けざまに4週間かけて修行を行なう。修行地ごとに上がる能力や覚える技に違いがあるため、大ダメージ技がほしければ「マンディー砂漠」、命中重視であれば「トーブル海岸」といった使い分けが可能だ。
さらに、修行地もトレーニングと同じく3Dポリゴンのアニメーションになっているので、1つ1つの修行場で修行する様子を見ているだけも十分楽しむことができる。ちなみに筆者は当時も今も変わらず、どのモンスターでもパパス雪山には必ず行く。対戦で重要になる「回避」が大きく上がるというのもあるが、修行中に出てくるシロクマがかわいくて、もう一回見たいというのが大きな理由だ。当時はシロクマを見るために頑張って修行料を貯めていたこともある。
また、修行場では時折「ノラモン」と呼ばれるモンスターに出くわすことがある。この「ノラモン」を倒すと賞金を貰うことができる。ただし、「ノラモン」との対戦はプレーヤーが指示を出すことができないので、ひたすら自分のモンスターを信じて見守ることしかできない。
しかし、トレーニングでお金が稼げないうえ、修行地までいって「ノラモン」にも会えないと、とにかく金欠になる。何か他の方法で稼がなくてはいけない。そこで今回は「アルバイト」をしてみることにした。PS版での「アルバイト」は、PSに接続できたポケットステーション(以下ポケステ)に受注した仕事のデータを書き込み、外出時にポケステでミニゲームをしてお金を稼ぐというものだ。当時はポケステを持っていなければ遊べなかった「アルバイト」だが、今作ではソフトを買うだけで遊ぶことができるようになっているのだ!
本作ではゲーム内で受注した後、タイトル画面まで戻ると「アルバイト」ができる仕様になっている。「アルバイト」の内容自体はとてもシンプルで、表示される2つの数字のうちどちらが大きいか、もしくは2つの数字の和が10であるかを瞬時に判断して、それに応じたボタンをタップするというルールだ、制限時間内で多くの数字を仕分けしてスコアを伸ばすとお金がもらえる。しかし、時の流れは残酷なもので、当時はあれほど得意だった「アルバイト」でいいスコアを出すことができなくなっていた。一定のスコアまで伸ばせれば、ゲーム内で仕事の報告をしたときに報酬が貰えるのだが、何度も何度も失敗してしまい、「アルバイト」でお金を稼ぐのは今の筆者には厳しいことがわかった。ただ、「アルバイト」では報酬としてアイテムを手に入れることもできるので、反射神経を鍛え直して再チャレンジしたい。
モンスターを育成していくと「大会」に出してみないかとコルトから打診される。「大会」はE〜Sランク、そして本作から登場したF(フリー)ランクがある。また、E〜Aランクはランクアップを目指す公式戦とアイテムがもらえる大会がある。Sランクでは公式戦と四大大会に出場できる。
「大会」ではプレーヤーが試合中モンスターに指示を出して戦うこともできるし、モンスターに任せて戦いを見守ることもできる。モンスターに指示を出す際には育成中に培った「忠誠度」が重要となり、「忠誠度」が低いと試合中に「意味不明」となり少しだけ行動不能になることもある。指示を聞いてくれないとなかなかヤキモキするが、やっと指示を聞いてくれるようになった時に掴んだ大会で優勝したときには、思わずガッツポーズをしてしまった。
また、モンスターの特性として「根性」、「底力」、「逆上」など状態変化をすることがある。状態変化の種類によっては、敵モンスターに与えるダメージが2倍になったり、戦闘不能からライフ1の状態で復活したりといったメリットをもたらすが、必ず発動するわけではない。戦略の一部として、こうなればいいな程度で考えておくといいだろう。「モッチー」種のかしわは「底力」をよく見せてくれ、何度も逆転勝利をしてくれた。
モンスターを育てていると時折おねだりをしてくることがあった。「〇〇が欲しい」、「一緒に遊びたい」といったバラエティに富んだおねだりをしてくるが、特に困ったのは「来週大会に出たい」だった。月の第4週目にこのわがままを言われて、「いいよ」と簡単に約束してしまったが、翌月の第1週目には大会がなく、結果的に約束を破るとことなり、モンスターにストレスを与えてしまった。
ここまで育ててきて、ふとデータを見ると、かしわに嫌われていることに気が付いた。そういえば、育てていた「モッチー」があまりにも試合に勝てず、なんとか勝てるようにとかなり厳しく育て続けた結果、ヨイモンである「モッチー」に嫌われたという経験が当時もあったことを思い出した。今の筆者であればそんなに傷つくこともないが、当時ボロボロメンタルだった筆者には、ヨイモンであるモンスターに対して、頑張って育成した結果嫌われるということがどうにも耐えられなかった。昔とよく似た育成方法だったのか、偶然出たデータだったのか定かではないが、当時を鮮明に思い出すことができた。
かしわはこのデータを見た後に死んでしまった。そのあっけない幕切れに一瞬言葉を失った。コルトさんからの引退勧告もあったが、1回だけだったのでまだまだ長生きすると思っていたからだ。それだけに、突然すぎてまったくリアクションが取れなかった。
本作では、モンスターが死ぬと魂が天に昇っていく姿が描かれており、前作と比べてファンタジーな描写となっている。当時、1番お気に入りだった「ガリ」が死んだときはボロボロ泣きながら次のモンスターを再生していたこともある。今回は泣かなかったが、大人になってちょっと心が強くなったのか鈍くなったのか……どちらかはわからない。
残念ながら今回の育成期間では最上位の大会である四大大会や2大陸交流戦に出場することは叶わなかった。しかし、プレイしながら次の目標に向かっていくモンスターとともに過ごしていくと、もっと上を目指していきたいという気持ちを駆り立ててくれた。子どものころに感じたあの欲望がまだ自分の中にあったのかとちょっとびっくりした。
本作で残念だと思った点は、PS版から多くのバグ修正が加わったことだろうか。それが良い点でもあるが、当時の辛かった思い出も楽しかった思い出もPS版の「モンスターファーム2」とともにあったことを考えれば、「こんなバグあったなぁ」と懐かしむことができないのは少し残念だ。
とはいえ、この修正のおかげで本作が格段に遊びやすくなっただけでなく、モンスターの新たな育成方法も見出だせるようになっていることはうれしいポイントだ。新要素まで加わっているので、当時にはなかった本作の新たな魅力も生まれている。
PS版「モンスターファーム2」が発売された当時は、学校内で孤立していた時期だったため、前作の時のようにゲームの話で盛り上がる相手もいなかった。それでも家にはゲームがあり、1人でも遊ぶことができた。その中でも、1つ下の弟が買ってもらった「モンスターファーム2」を一際遊んだことを憶えている。
当時のしょっぱい思い出も含めて、一生懸命モンスターたちと向き合っていた「モンスターファーム2」の思い出は良いものだ。学校がどんなに辛くても、帰ったら遊べるしぐらいには思えるようになっていた。そして、大人になった今でも、こうしてモンスターと向き合って成長していくさまを見るのはとても楽しかった。
筆者にとって「モンスターファーム2」は人生で最初に辛い時期を支えてくれたゲームだったため、かなり思い入れのあるゲームだ。今回の移植版では当時の面影をしっかり残しつつ、さらに遊びやすくなっていた。「モンスターファーム2」を遊んだことがあるプレーヤーはその当時の思い出とともに、遊んだことのないプレーヤーは新しい体験としてぜひ本作を遊んでみてほしいと思う。そして、ぜひモンスターたちと切磋琢磨して頂点を目指してほしい。