【特別企画】

「電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001」先行プレイレポート

アーケード3部作の移植具合は?「TANITA ツインスティック」も試す

11月27日 発売予定

価格:4,500円(税別)

 「電脳戦機バーチャロン」のアーケード3部作を収録した「電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001」が、プレイステーション 4向けに11月27日に発売される。

 本作は「電脳戦機バーチャロン」、「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム Ver.5.66」、「電脳戦機バーチャロン フォース」の3作を収録したもの。パッケージ版は用意されず、PlayStation Storeからのダウンロード専売となる。

 「電脳戦機バーチャロン」は、1995年にアーケード版が登場した3Dロボットアクションゲーム。ツインスティックと呼ばれる、2本の操縦桿(スティック)のついたコントローラーだけで、ロボットが3D空間を高速かつ自在に動き回るというアクション性が人気となった。アーケード版の作品としては、2001年の「電脳戦機バーチャロン フォース」が最後となっているが、一部のアミューズメント施設では今も稼働しているなど人気は根強い。

 さらに今回は、健康計測機器メーカーのタニタがクラウドファンディングで製品化を実現させたツインスティック「VCD-18-c 18式コントロールデバイス『ツインスティック』」、通称「TANITA ツインスティック」に対応することでも注目されている。1台44,600円(税込・送料込)という高額な出資枠が、発表から丸1日経たずに1,000枠埋まるというのは、伝説と呼ぶべき出来事だ(その後、さらに2,000台近くの追加生産も決まった)。

 筆者も最初の1,000枠に出資したくらいに本作を愛しているプレーヤーの1人。アーケードで散々遊んできた上、PCやドリームキャスト、Xbox 360でもソフトとツインスティックを購入しており、我ながら「また買うのかよ」と思うのだが、今度こそソフトもハードも決定版となることを期待している。

 そのソフト・ハードの両方を発売前に体験する機会が得られたのでレポートしたい。

「TANITA ツインスティック」でオンライン対戦を体験

新たなオンライン対戦モードを追加。ローカル対戦は不可に

3作品が並ぶメニュー画面

 いまさらゲーム内容についてあれこれ語るべき作品でもないと思うので、早速PS4版について見ていこう。最も大きな変更点は、3作全てにおいて新たなオンライン対戦機能が追加されたこと。対戦ルームにおいて、トーナメント戦モード「ミニ トーナメント」、リーグ戦モード「リーグバトル」、チーム対戦モード「チームバトル」が選べるようになっている。このほかルームを作らずに遊ぶ「ランクマッチ」も可能だ。

 ただし過去の移植作品にあった画面分割による対戦や、ローカルネットワークでの対戦といった仕組みは省かれており、オンライン経由でのみ対戦可能となっている。友達同士で集まって対戦するにしても、必ずインターネット接続したPS4でプレイすることになる。またオンライン対戦には、別途有料のPlayStation Plusの契約が必要になる。

 オンラインプレイに関しては、事前に借り受けたテスト版ではプレイできなかったので(仮にできても、発売前なので対戦相手が見つからない)、後日セガで対戦と「TANITA ツインスティック」の体験もさせていただいた。これについては後述するとして、まずはスタンドアローンで遊べる範囲から3作品の内容を見ていきたい。

 ゲームをスタートすると、3作品が並ぶメニュー画面が表示される。遊びたいゲームを選べば、それぞれのゲームがスタートする。別のゲームに移る時は、いったんこのメニューへ戻って選び直すことになる。

 3作品ともシングルプレイで遊べる部分については一通り体験できたが、いかんせん筆者にとっては不慣れなゲームパッドでの操作で、アーケード版との比較検証をするほどの時間はなかったため、ゲームバランス等の細かい話まで言及できない点はご理解いただきたい。

「電脳戦機バーチャロン」

 1作目の「電脳戦機バーチャロン」では、アーケード版の内容でプレイできる「ARCADE」に加えて、オンライン対戦用の「ONLINE BATTLE」、練習用の「TRAINING」という3つのモードが用意されている。

 映像の縦横比は、他の2作ではハイビジョンに合わせた16:9になっているが、本作は4:3のまま(映像を横に引き伸ばして16:9にする画面モードは用意されている)。もちろん解像度はアーケード版より上がり、高精細にはなっている。

 コントローラー設定は、左アナログスティックで移動、右アナログスティックで旋回する「スタンダード Aタイプ」、右アナログスティックでジャンプとジャンプキャンセルも行なう「スタンダード Bタイプ」、アナログスティックをツインスティックに見立てて動かす「ツインスティック タイプA」、アナログスティックに加えて方向ボタンと〇×△□ボタンもツインスティックとして扱う「ツインスティック Bタイプ」がある。

 これに加えて、「TANITA ツインスティック」用の設定が用意されている。これらをベースに、ボタン1つごとに機能変更ができる。

 ゲーム内容としてはアーケード版の移植そのもので、3D描画の解像度は上がっているが、UIやフォントはそのまま。エンディングのスタッフロールで、ドットがはっきり見える文字と、とても精細になった背景CGの格差が大きくてちょっと笑ってしまう。フォントくらいは改善してもいい気はするが、当時のままの雰囲気が残っているのだとポジティブにとらえるべきか。

 普通のゲームなら、24年も前のものは少々リメイクしてもらいたいものだが、本作は「バーチャロン」シリーズの原点であり、下手に触らないで忠実に移植して欲しいという思いはプレーヤーの中にも強いように思う。特に対戦ゲームとしては、アーケード版と同じ感覚で遊びたいもの。少なくともゲームパッドで遊ぶ限りでは、手触りに違和感はなかった。

メニュー画面
画面の比率は4:3のまま
コントローラー設定はボタンを自由にカスタマイズ可能
「TANITA ツインスティック」用の設定もある
画面の解像度は上がっているが、UIやフォントは当時のまま。文字とCGの精細さにかなりの差がある

「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム Ver.5.66」

 2作目の「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム Ver.5.66」は、2度のメジャーバージョンアップを経て登場した「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム」の最終版。以前のバージョンは未収録なのが少々残念だが(筆者はVer.5.2が好きだ)、変にバージョンが分かれて対戦相手に困るよりはいい、と納得してはいる。

 映像は先述のとおり縦横比が16:9に拡張され、HD画質に向上しているが、3Dモデルとしてはそのまま。光や影の表現をアレンジしたグラフィックアレンジ設定が用意されているが、見た目が劇的に変わるほどではないので、切り替えてみて好みの方を選ぶといい。

 ゲームモードは「ARCADE」、「ONLINE BATTLE」、「TRAINING」の3つで「電脳戦機バーチャロン」と同じだが、本作にはバーチャロイドをオリジナルのカラーリングにする「CUSTOMIZE」モードが用意されている。これはアーケード版ではドリームキャスト版との連動機能として用意され、ビジュアルメモリを使って実現していた。ただ機体に貼り付けるエンブレムの機能は省かれている。

 コントローラー設定は「電脳戦機バーチャロン」と同じく、5つのプリセットからカスタマイズ可能。本作は操作のバリエーションがかなり増えているので、ゲームパッドで遊ぶなら自分なりのカスタマイズは必須と言える。またコントローラーの振動機能もオン・オフできる。

 ゲームの中身を見ると、フォントの一部がHD画質に対応しているものの、UIのほとんどはアーケード版相当のまま。当然ながら3Dモデルやエフェクトにも変更がないので、良くも悪くもアーケード版の雰囲気をそのまま残した形だ。

 筆者がプレイする際にはコントローラー設定を「ツインスティック タイプA」にしているが、本作の新要素であるバーティカルターンや、ダッシュ中のしゃがみショットといった操作はかなり難しい。過去のコンシューマー機への移植でも同様の悩みがあったので、今更言うことでもないかもしれないが……。

 昨年発売された「電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機」でゲームパッドによる操作に慣れた人は、本作でも「スタンダード タイプA」をベースにした設定で遊んだほうがいいかもしれない。

 とはいえゲーム内容自体に違和感はなく、慣れないゲームパッドなりには違和感なくプレイできた。3作品の中では最も操作が複雑なだけに、やはり慣れ親しんだツインスティックが欲しくなる。

グラフィックアレンジオフ
グラフィックアレンジオン
メニュー画面
「CUSTOMIZE」モードでカラーリングを変更できる
画面が16:9になり、解像度もアップ。一部のフォントがHD化されているが、3Dモデルなどは当時のままだ

「電脳戦機バーチャロン フォース」

 3作目の「電脳戦機バーチャロン フォース」は、シリーズ初の2on2を採用した作品。カードに機体情報を持たせて、プレイ筐体とは別に用意されたターミナルで機体支給を受けることで、多数の派生機体を使えるという、アーケードゲームにしては珍しい仕様だった。

 となると気になるのはPS4版における機体の仕様だが、ありがたいことに全てのバーチャロイドが最初から使用できる。指揮官機や特殊カラーも選択できるので、例えば「Tetsuo/c」のシャドウカラーといった、アーケード版では極めて入手困難な機体でもすぐにプレイできる。機体支給のワクワク感も本作の大事な要素ではあったが、いま移植するなら妥当な判断だろう。

 映像は16:9で、HD化されている。これまでの作品に比べて、元々のテクスチャやエフェクトが精細になっているので、HD化が最も映える作品でもある。また本作にもグラフィックアレンジ設定が用意されているが、やはり劇的な変化はない。

 ゲームモードは「ARCADE」、「ONLINE」、「TRAINING」の3つ。ほかに「TERMINAL」があり、僚機となるAIの機体選択や、ポイント配分による特性設定ができる。自機と同じく、AI用の機体も最初から全て選択可能。さらにXbox 360版ではプレイして貯めていたAIポイントも、最初から最大値の50まで割り振れる。Xbox 360版で言えば、機体支給やAI育成などアンロック要素が全て終わった状態からスタートできるという形だ。

 コントローラー設定は先の2作品と同様の5種プリセットとボタンカスタマイズ機能。本作の独自要素である味方への指示が、ゲームパッド用の設定だと標準でR3ボタン(右スティック押し込み)となっている。スティック操作に少し力が入っただけで味方に思わぬ指示が行ってしまうので、これだけは他のボタンに変えた方がいい。

 コンフィグでは他に、ゲームのインターフェイスも調整が可能で、各種データ表示の有無や、レーダー位置の変更ができる。ちなみに筆者はロックオン警告とレーダーを同時に見られるよう、レーダー位置を右上にするのが好み。

 「ARCADE」をプレイしていくと、自機には「Sync Ratio」、AIの僚機には「Partnership」のポイントが与えられる。機体支給やAIポイントの概念がなくなっているので、やり込みのバロメーターとなるだけだと思われる。

 Xbox 360版では、アーケード版より機体が支給されやすくなったが、それでもまだ辛かった時間不足な社会人ゲーマーとしては、支給のための作業プレイが不要なだけでも大変ありがたい。アーケード版で触れなかった機体が多い人には(むしろ大半の人がそうだろう)、いろんな機体で対戦してみるだけでもしばらく楽しめそうだ。

 率直に言うと、3作品ともXbox 360版からの変更点はあまり見られない。ゲーム内のバージョン表記も特に違うものはないので、「従来通りに移植しました」という感触だ。ゲーム内のバランスを調整しろとは言わないが、オンライン対戦のモード追加以外に目新しいものが見当たらないのは少々残念ではある。

 それでもPS4という最新のプラットフォームに、3作品が一斉に投入されることは喜ばしい。「バーチャロン」のコミュニティが一斉に活気づくはずだし、次世代機であるPS5でもPS4用ソフトの互換性を持たせる意向とのことなので、この先も安心できる。さらに「TANITA ツインスティック」があればプレイ環境としても過去最高……であって欲しい。

グラフィックアレンジオフ
グラフィックアレンジオン
メニュー画面
機体は最初から全て使える
「TERMINAL」で僚機のAIをカスタマイズできる
プレイすると「Sync Ratio」などの値が増えていく
3作品の中では最後に出た作品だけあって、元の映像の質が高く、HD化されても見栄えがする

オンライン対戦と「TANITA ツインスティック」の出来は?

 ここからはセガにお邪魔して体験した、対戦プレイと「TANITA ツインスティック」についてお伝えする。

 先述の通り、本作にはローカルでの対戦機能がなく、常にオンライン経由での対戦となる。であれば、通信ラグがどうなのかという点は確認しておきたい。まだ発売前で調整中の部分もあるということで、「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム Ver.5.66」のランクマッチのみのプレイとなった。

 結論から言えば、通信ラグを感じるような状況はなかった。セガ社内でのプレイ、かつ発売前ということでネットワークの状況も異なるはずだが、アーケードで遊びこんだ筆者でも通信ラグによる違和感を覚えることなく、快適にプレイできた。

 とはいえ通信対戦となれば、自分と相手のネットワーク環境によって通信状況は大いに変化する。「電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機」でオンライン対戦した時にも、対戦相手によってはゲームが何度も止まってしまうようなことがあった。本作に限らずオンライン対戦ゲームを遊ぶ際には、自宅のネットワーク回線や環境に問題がないかのチェックをお忘れなく。

 新たに追加されたオンライン対戦機能についても実機で確認できた。オンライン対戦のメニューは3作品共通で、ランキングに影響するランクマッチ、影響がないプレーヤーマッチに加えて、スペシャルマッチがある。ミニ トーナメント、リーグバトル、チームバトルは、このスペシャルマッチに含まれている。

 スペシャルマッチでは、ルールやパスワードを設定してセッション(対戦ルーム)を作成する。セッションには「電脳戦機バーチャロン」では最大6人、他の2作品では8人まで入れる。ミニ トーナメントは文字通りのトーナメント戦、リーグバトルはセッション全員のリーグ戦、チームバトルは参加者が2つのチームに分かれて戦い、先に10勝したチームが勝利となる。

 単純に友達と集まって遊ぶにしても、勝ち抜きルールでだらだらと遊ぶよりは、リーグバトルやチームバトルなどにした方が楽しめそうだ。もちろんプレーヤーのコミュニティで大会を開く時にも重宝するだろう。

オンライン対戦はランクマッチ、プレーヤーマッチ、スペシャルマッチの3つ
スペシャルマッチでは、最大8人が参加できるセッションを作成する
セッションのルールやパスワードを設定
ミニ トーナメント
リーグバトル
チームバトル
【ランクマッチ - GAME Watch】
ランクマッチのプレイ動画。シビアな対戦ではないにしても、ラグを感じるような場面はなく快適に遊べた
「TANITA ツインスティック」

 続いては「TANITA ツインスティック」のチェック。アーケード筐体のコントロールボックスを思わせる巨大なボディは、見た目通りにかなり重い。さらに裏面には吸盤が用意されており、安定性を高められる。

 吸盤での設置のため机の素材によってはあまり密着度が⾼くなく、いわゆる“レバガチャ”や“漕ぎ”などの激しい操作を快適にしたいなら、テーブルなど設置場所を含めてきっちり固定する工夫をした方がいい。もっともこれは、机の振動を感じるほどには重量や密着度があるという証拠でもある。ボディの裏面にはいくつかの穴があり、吸盤以外の固定方法も試せそうだ。

 ツインスティックの手ごたえとしては、アーケード版のものに相当近い。掴んだ時の感触や2本のスティックの間隔などが、アーケード版とほぼ同じにできているようで、長年のプレーヤーとしては慣れ親しんだ感覚がある。唯一違うのは、ターボボタンの左右に追加されたボタン。「とある魔術の電脳戦機」のトランジション用として追加されたものだが、これを使わないアーケード3作品でも何ら邪魔にならない。

 僅かに違いを感じるのは、スティックを倒した時の接触感と、ニュートラルに戻る時の反動。スティックを限界まで倒した時の当たりが、アーケード版に比べて硬いように感じられる。ガツンと当たる感触は、衝撃を吸収できているのか不安にもなるが、入力自体はメリハリがあって快適に感じる。

 スティックがニュートラルに戻る時の反動は、アーケード版よりも強いように思う。動かすのが重いという感じではなく、反発力はしっかりあるのに、ニュートラルでブレずにピタッと止まるという印象だ。プレーヤーの好みもあるとは思うが、筆者はこちらの方が入力ミスがなく快適にプレイできるように思う。

 家庭用のツインスティックは本品を含め「いかにアーケード版に近づけるか」が至上命題になっていたと思うが、スティック部分に関しては、もはやアーケード版の品質を超えているように思う。重量級の筐体に直付けされたアーケード版に比べれば、土台部分の安定感はどうしても劣るものの、きっちり固定できれば最高に快適だろう。

 ただ本機に関わらず、ツインスティックはどうしてもガチャガチャと大きめの音がする。周囲の騒音が激しいアミューズメント施設だと気にならないが、自宅だとかなり大きな音に感じるはずなので、家族からの苦情がないようご注意を(音より大きさについての苦情が先に来そうだが)。

 高い完成度で仕上がった「TANITA ツインスティック」だが、タニタのクラウドファンディングは既に締め切られており、追加発注はできない。出資した方は、しっかりした机に固定する方法を考えながら楽しみにお待ちいただきたい。

「TANITA ツインスティック」はかなり高価で、なおかつ他に流用が難しい専用デバイスだが、完成度はとても高い。筆者もこれで末永く本シリーズを楽しみたいと思う
【ツインスティック - GAME Watch】
ツインスティックによるプレイ動画。激しい操作は控えてプレイしたが、アーケード版に勝るとも劣らない操作感だった