インタビュー
ハローキティ×マジンガーZ×超合金インタビュー
2016年5月26日 00:00
バンダイコレクターズ事業部は、「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」を5月27日に、「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」を6月に発売する。
「超合金ハローキティ」はバンダイの“超合金”とサンリオのキャラクター“ハローキティ”が共に40周年を迎える2014年に発売され、大きな話題を呼んだ。「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」はそのバリエーションであり、「超合金ハローキティコンテスト」のアンケート投票を受けて商品化が決定した。
そして……「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」である。厳ついスーパーロボットであるマジンガーZがふんわりしたハローキティカラーで登場する。ハローキティそのままの黄色いシャツにオーバーオールを思わせるカラーリング、胸にはリボン……そして両者は握手まで交わしてしまうのである。
この“奇跡のコラボレーション”はいかにして生まれたのか? 今回はこのコラボの中心となったスタッフに話を聞いた。サンリオライセンス事業本部の久保輝幸氏、ダイナミック企画企画開発部部長の永井一巨氏、係長の内藤賢一氏、塩田隼斗氏、バンダイコレクターズ事業部の寺野彰氏の5人に、企画の経緯や、こだわりの部分を語っていただいた。
ハローキティとマジンガーZの“魂”が入れ替わる!? 皆で考えたネタ満載のショートアニメ
バンダイとダイナミック企画の繋がりはそれこそ最初の超合金「超合金マジンガーZ」からだ。その後もダイナミック企画の様々なキャラクターが立体化されており、コレクターズ事業部でも超合金関連の商品が多い。バンダイとサンリオはガールズトイで提携しているが、コレクターズ事業部との繋がりは、「超合金ハローキティ」が始まりだったという。
「バンダイのコレクターズ事業部さんから『ハローキティのコラボレーションをしたい』という提案があったとき、社内では『何で?』という反応でしたね。どんな提案が来るかも想像もつきませんでした。そして『超合金ハローキティ』のアイディアを提示していただいたとき喜んで進めさせていただくことにしました」と久保氏は語った。
ハローキティには「キティロボット」というデザインもある。寺野氏はまずキティロボットの超合金化を提示したのだが、サンリオ側から「ぜひノーマルのハローキティで」という話になり、ハローキティを超合金にするという驚きの企画が誕生した。
実はすでに最初の「超合金ハローキティ」で“マジンガーZ”の意匠は組み込まれている。寺野氏は“超合金らしさ”を抽出し商品に組み込んだが、“ロケットパンチ”、“背中に装着する紅の翼”、“頭部のコクピット”と、マジンガーZの特徴が盛り込まれているのだ。ショートアニメでもハローキティが願いの泉に超合金のマジンガーZを落としてしまったのが「超合金ハローキティ」の誕生となっており、このころからきちんとダイナミック企画へも話を通していたという。「うちとしてもこの企画は喜んで、という感じでした」と永井氏は語った。
そして「超合金ハローキティ」はヒットとなった。蓋を開けてみると“女性ユーザー”というこれまでの超合金では少なかったユーザーを取り込むことができた。ほぼ半分が女性で、サンリオショップでは“超合金”を知らない女性も「カワイイ」と手に取ってくれた。この反応は久保氏は手応えを感じた。そして今後の方向性も幅が広がったという。
ヒットを受けてバリエーション商品の展開がスタートし、アンケート投票で次のハローキティの商品が決まることとなった。そこでユーザーが選んだのがマジンガーZをイメージさせる「ボーイズコレクション」というデザインだった。ここで面白いのは「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」に留まらず、“逆”の商品とも言える「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」が生まれたことだ。マジンガーZが“ハローキティ風”になるのは、バンダイの寺野氏だけでなく、サンリオの久保氏もほとんど同じアイディアを持っており、企画が正式スタートしたという。
久保氏と、寺野氏は同時にほぼ同じデザイン、オーバーオールを着て、リボンをつけたマジンガーZを提示した。他にもいくつかアイディアはあったのだが、両者がほとんど同じデザインの「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」アイディアを出したことがスタートの原動力になった。
「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」のアイディアはダイナミック企画側にも強い衝撃を与えた。ダイナミック企画の永井氏は「ハローキティカラーのアイディアスケッチを出されたとき、『こうなったらとことんまでいこう』と思いました。これまでの企画でもサンリオさんは全く“ブレーキ”を踏まないんです。それならばこちらが踏んではいかんと。こっちが踏んだら負けだと、そう思って企画を進めていきましたね」と語った。
その“ブレーキを踏まない”企画者達の1つの頂点ともいえるのが、2016年頭に公開された。「マジンガーZ×ハローキティ×超合金 オリジナルショートアニメ」だ。ここではマジンガーZと超合金ハローキティがぶつかったことで、“2人の魂が入れ替わった”事が説明され、マジンガーZの敵幹部とサンリオキャラクターがコラボレーションした敵と戦うという内容になっている。ツッコミどころ満載の楽しいアニメだ。
このショートアニメを作るため、今回のインタビューに登壇したスタッフが集結し、アイディアを出し合ったという。いくつかの案の中、2人がぶつかって魂が入れ替わるという方向性が決まった。寺野氏は「正直ぶつかって魂が入れ替わるというのは、ベタすぎてハードルが高いと思ってたんですが、即答でしたね」と語った。
笑いの絶えない、ノリノリの会議だったという。細かいことはあえて触れない、ネタ満載のムービーとなった。久保氏は「あの会議はとにかく面白いことを言うことを求められる、大喜利合戦でしたね」と当時を振り返った。ショートアニメではマイメロとゲッターロボがぶつかるシーンも挿入されているが、これは内藤氏のアイディアとのことだ。
大きく盛り上がったのは敵幹部のコラボレーション。マジンガーZの幹部達をいかにサンリオキャラクターに当てはめていくか。なかでも「ブロッケン伯爵」と「ぐでたま」を組み合わせるのと、「KIRIMIちゃん・」と「ゴーゴン大公」を組み合わせたのが大変だったという。
このショートアニメに関しては寺野氏にとって「商品開発より苦労しました」とのこと。ショートアニメの発注の時もデザイナーに「本当にやるんですか?」と聞き返されたという。「映像を見ると、『ああ僕らは会議の時悪ノリしてたんだな』と思いますね」と永井氏がしみじみ語ると、参加者全員が声を上げて笑った。
「兜甲児カラーのハローキティ付属!」。女性ユーザーの反応が楽しみな商品
次に商品を前にして思い入れを語ってもらった。やはり最大の注目は「握手パーツ」だ。マジンガーZはグレートマジンガーとの握手が“定番”となっている。ロボットが握手するというのは強いインパクトをもたらす構図だが、今回の「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」にも握手パーツが同梱され、「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」と握手することができるのだ。
原作のハローキティ同様、「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」も通常の手は丸いかわいらしいものだが、握手の時だけ親指がにゅっと出ているのが楽しい。対するマジンガーZはがっしりとキティの手を握る。頭身も全然違うのだが、「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」の幅広い可動範囲で膝立ちもしっかり決まるので、キティと目の高さを合わせた握手ポーズ後決まるのが楽しい。
「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」、「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」で共通しているのが“メッキの美しさ”だ。特にハローキティは金属の部分が多いので、鏡のように周りを映してしまうほどにピカピカしたメッキとなっている。これは“電解メッキ”という金属に蒸着させるメッキで、コストがかなりかかるという。この美しいメッキは、“コラボレーションにバンダイがどれだけ力をかけているか”を強いインパクトで訴えかけるために力をかけたと寺野氏は語った。
寺野氏はこの金属質を前面に出すメッキを「超合金ハローキティ」でもやりたかったのだが、第1弾であることを考えて、ハローキティらしい白の塗装にした。こちらもつるりとした金属の雰囲気が出て満足は得られたが、今回のメッキを実現できたことに達成感があるとのことだ。
もちろん「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」の手足と頭もこの電解メッキが施されており、他のマジンガーの商品とは異なる、存在感をもたらしている。マジンガーZに関しては“イヤーモデル(アジア地域限定販売)”等の幅広い展開を考えている。今回のメッキの経験がその後の商品に活かされていくとのことだ。
久保氏は「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」にあえて“剣”は持たせないようにしたところは注意した部分だったという。厳ついスーパーロボットの部分は盛り込みながらもいきすぎないようには注意をしたと語った。またバンダイ案のマジンガーZのお腹部分にキティの顔を入れるという部分も議論されていたが、最終的にジェットスクランダーのエンブレムとしてキティの顔を入れるという形となった。
久保氏のお気に入りは「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」のコクピットに座るハローキティが兜甲児そのままのコスチュームをまとっているところ。「このネタで喜ぶのは誰なんだ、と思うけど……うれしいですよね(笑)」と久保氏は語った。また台座についている「超合金」のプレートもコラボ感が強くて好きだという。
内藤氏は「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」のジェットスクランダーのベルトに付いたキティエンブレムが気に入っている。カラーリングを変えたものの、「ハローキティらしさ」をぱっと見て理解してもらえる様にする点には苦労した。そこでキティの顔そのもののエンブレムがくっつくことで、改めてキティそのもののカラーリングが活きてくる。
塩田氏は「ダイナミック企画としては、こういったかわいらしいキャラクターを監修させてもらえるだけでうれしかったですね。うちはあまりないですから(笑)」と語った。このコラボレーション企画で、みんなが意見を出し合っている“カオスな空間”に同席できただけでも楽しかったという。内藤氏は「かわいらしさを考えるというのは、本当に僕らの仕事ではあまりないところなので、ちょっと不思議な気持でしたね」と語った。
ダイナミック企画では、本商品の情報が公開されたときの海外の反応の早さと大きさがとても楽しかったという。マジンガーはアジアだけでなく世界中で人気がある。試作品を見てまず「Oh, My God!」と一声あげてから、試作品をまじまじと見るそういう海外ユーザーも多かったという。「俺のマジンガーになんていうことをしてくれたんだ!」という声まで寄せられた。特にラテン系の人が反応が大きくて面白かったとのことだ。
一方、久保氏はサンリオショップで「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」を置くのが楽しみだという。「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」はまだキャラクターとしてサンリオの雰囲気にマッチするが、「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」はカラーリングこそかわいらしいモノの、両手を上に上げポーズをとった姿はスーパーロボットそのままで、ファンシーな商品が並ぶ店の中では異質すぎる存在だ。この商品をどんな女性が買い、どう部屋に飾るのかとても楽しみで、できれば話も聞いてみたいと語った。
「これを考えた人達は天才ではないか?」、スタッフを喜ばせたユーザーの反応
「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」と「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」は、ショートアニメを出したところでユーザーの反応がかなり良かった。商品もかなり受けるという手応えを寺野氏は感じているという。
久保氏は商品を発表後、サンリオファンのTwitterの反応を追いかけていく中、「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」に関しては、「キティは仕事を選ばない」といった今までの延長線上の反応だったのだが、「超合金 マジンガーZ(ハローキティカラー)」に関しては、「これを考えた人達は天才ではないか?」といった反応もあり、思わずガッツポーズをしてしまったとのこと。こういったユニークな試みは今後もしたいとのことだ。
それを受けて永井氏は「でも今回以上に受けるコラボを考えないといけないから、すごく大変だよね」とコメント。「それは確かに大変だ」と参加者から次々と声が上がった。その中で久保氏は、「だからこそがんばりたい。自分との戦いですね」と力を入れて応えた。「超合金 ハローキティ」が今回の企画を実現したように、今回の展開がどのような商品に繋がっていくのか、とても楽しみだ。
実はダイナミック企画側は、2014年の段階で「マジンガーZ」、「デビルマン」の40周年を記念したコラボレーションをサンリオに打診するべく動いていたが、タイミングを逃してしまったことがあったという。今回のコラボレーションは、改めてバンダイ、サンリオ、ダイナミック企画を繋げることができた。だからこそ永井氏にとっては感慨深く、今後も何かするべく考えていきたいと語った。
ユーザーへのメッセージとして永井氏は「みんなで“フルにボケたネタ”ともいえますが、まじめに、真剣に面白くしようとして考えた商品です。ぜひ手にとって下さい。絶対に面白いと思いますよ」とコメントした。
内藤氏は「サンリオさんとコラボさせていただいて、女性ユーザーも視野に入れた企画ができたところが面白かった。この経験はとてもありがたかったです。ショートアニメで世界観を構築し、総合的な企画ができたところも良かった。これからの商品企画に活かしていきたいです。楽しみにして下さい」と語った。
塩田氏は「今回のコラボは、昔から愛されていたキャラクターだからできた、と思っています。だからこそこんなにユニークな企画が実現できた。自分は話し合いに立ち会って『これもOKなんだ』、『これもOKにしちゃうんだ』と、サンリオさんとダイナミック企画の懐の広さを改めて実感して驚いてばっかり、というところがありました(笑)。私の驚きが、ユーザーさんの驚きだったろうと思っています。本当に楽しんでいただけると思います」と語った。
久保氏は「ハローキティは色々なコラボレーションをしていますが、マジンガーZという歴史のあるキャラクターとコラボできたのは、男性へのアピールも含め、1つ上のステージへ行くことができ、新しい世界が開けたと思っています。そしてバンダイさんの素晴らしい商品は自信を持ってオススメできるものです。この繋がりはこれで終わりません、必ず続けますので、ご期待下さい」とユーザーに語りかけた。
最後に寺野氏は「思いつきは“ボケ”ともいえる面白さを考えたものでしたが、ショートアニメ、商品、サンリオさんとダイナミック企画さんによって、ものすごい“まじめなボケ”になりました。商品もショートアニメもスタッフの“本気”が詰まっています。これはショートアニメを見ていただき、商品を手にとっていただければしっかり伝わると思います」と語り、インタビューを締めくくった。
(C)ダイナミック企画 (C)1976, 2016 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO.S570894
※画像は試作品のため実際の商品とは異なります。