インタビュー

【特別企画】「超合金マイメロディ(あか)」レポート&インタビュー

今度は宇宙だ! 男の子のこだわりで、女性向けキャラクターを描く面白さ

2016年1月18日発売予定



価格:5,400円(税別)

 「超合金マイメロディ(あか)」は、「超合金ハローキティ」に続く、サンリオとバンダイのコラボレーション商品であり、マイメロディ生誕40周年を記念するアイテムだ。マイメロディは赤いずきんに頭と耳を包んだウサギをモチーフとしたキャラクターで、アニメにもなった人気の高いキャラクターである。

 今回の超合金化では、かわいらしいマイメロディのデザインにふんだんに“ロボの記号”を盛り込み、腹部にはコクピット、そして首を上に向けると顔の部分にバイザーが現われ、“宇宙巡航モード”へ変形するという非常にユニークなアレンジでの立体化を行なっている。

 今回はこの超合金へ込めた想いをプロデューサーを務めるバンダイコレクターズ事業部の寺野彰氏に聞いた。寺野氏は「超合金ハローキティ」や、「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」なども手がけ、これまで男性向けのみといえた超合金の“幅”を広げるチャレンジを繰り返している人物でもある。そのユニークな試みにもフォーカスしたい。

【「超合金 マイメロディ」プロモーションムービー】

パンチギミック、バイザー開閉、コロ走行! おもちゃとしてのギミックたっぷり

マイメロディを超合金に! おなかにコクピットなど、「ロボの記号」をふんだんに盛り込んでいる
“宇宙巡航モード”への変形。顔がバイザーで覆われ、イチゴ型コクピットが頭の上に

 「超合金マイメロディ(あか)」は、“マイメロディが乗り込むロボット”というコンセプトだ。おなかにコクピットがあり、マイメロディのフィギュアが座っている。足には車輪がついていて、目の下にも合わせ目風のライン、耳にも斜めに分割線が入っていて、「ロボットとしての記号」を盛り込んでいる。

 「超合金ハローキティ」は頭もまるまる金属パーツが使われていたが、「超合金マイメロディ(あか)」は赤いずきん部分はABS樹脂で、金属部分は主にフレームと胴体に使われている。「超合金ハローキティ」ほどの重量感はないものの、と「超合金」としての金属ならではのしっかりしたした重さも感じられるバランスになっている。

 コクピット部分は実は赤に黒いつぶつぶが描かれた“イチゴ型カプセル”となっている。中には手を前に合わせた“おねがいポーズ”をとっているマイメロディフィギュアがいる。もちろんコクピットの透明な“キャノピー”は開き、中のフィギュアは取り出せる。コクピット内部もちょっとしたメカ風のデザインが描かれている。

 キャノピー部分はしっぽを回すことで白いカバーが出てきて、コクピットを隠すことが可能だ。コクピットが隠れることでよりマイメロディっぽくなるが、ロボットファンの筆者はコクピットのキャノピーが隠れるのが「バルキリー(VF-1)」を思い出させ、ニヤリとさせられた。

 耳部分は斜めに回転することで折れ曲がり、ハート型の「おねがいパンチ」を発射できる。耳から出すのに“パンチ”というところは、“ツッコミ待ち”のネーミングだ。「マジンガーZのおなかのミサイルは『ミサイルパンチ』ですし、発射できればそれはパンチということで!」と寺野氏は力強く語った。

 サンリオのキャラクターのマイメロディはずきんに包まれた耳が折れ曲がるところがチャームポイントの1つ。超合金ではこの耳の折れ曲がりをギミックで再現しているところが面白いし、パンチ(ミサイル)がハート型なところもいい。2つの耳を折り曲げミサイルを同時発射する「フルバースト」ももちろん可能だ。

 そして最大の特徴が“宇宙巡航モード”への変形だ。まず「超合金マイメロディ(あか)」の耳を動かしてバーニアのように後ろへ折り曲げる。そして首を上に向かせると、その動きに連動して顔をバイザーが覆う。さらに頭の後方からイチゴ型カプセルのコクピットがせり上がる。「超合金ハローキティ」は走行・飛行・水中の3モードがあったが、「超合金マイメロディ(あか)」はハローキティではカバーできなかった宇宙で活躍できるのだ!

 寺野氏の「超合金マイメロディ(あか)」でのこだわりは車輪による“コロ走行”にある。本商品は足裏の4つの車輪でコロ走行がたのしめる。さらに“宇宙巡航モード”では、あご部分の車輪とつま先の車輪でも転がして遊べるのだ。スムーズなコロ走行は、「超合金マイメロディ(あか)」の大きな楽しみで、安定した走行を楽しめるように頭と体の重量バランスを調整しているという。押すことできちんと走る、「おもちゃとしての楽しさ」を追求した商品となっているのだ。

【超合金マイメロディ(あか)】
しっぽを回すとコクピットにカバーが
首を上に向かせると連動してバイザーが降りてくる
耳を折り曲げて「おねがいパンチ」を発射! 2発動時で、フルバーストだ

「超合金を知らない女性にも!」、世の中に仕掛け続ける寺野氏の挑戦

プロデューサーを務めるバンダイコレクターズ事業部の寺野彰氏
かわいらしいマイメロディに、重厚さ、多彩なギミックと、「男の子の想い」を盛り込んだデザイン
前作にあたる「超合金ハローキティ」。ハローキティをロボとしてデザインし、大きな話題となった
こだわりのコロ走行。宇宙巡航モードはもちろん、直立していてもスムーズに走らせられる
しっぽを回すとコクピットにカバーが覆われる
バイザー、コクピットギミックなど、「超合金ハローキティ」以上に多彩な仕掛けを盛り込んでいる

 寺野氏には「超合金マイメロディ(あか)」と、ユニークな商品を手がける「ユーザーの幅を広げるアプローチ」について話を聞いた。「超合金マイメロディ(あか)」は、「超合金ハローキティ」が好評を得たからだ。ハローキティでは“女性ファン”が予想より多くて驚いたという。スタッフの感覚では50%以上のユーザーが女性ではないか、ということだ。

 「これだけ金属の重さとおもちゃ感を前面に出した商品が女性に受け入れられるのは、自分でもちょっとびっくりでした」と寺野氏は語った。「超合金マイメロディ(あか)」は「超合金ハローキティ」同様、“かわいらしいキャラクターをロボット化する”というコンセプトでデザインされている。

 今回は前作の製作の経験を踏まえ引き継ぎ、発展させた設計となった。目指したのが「ハローキティ以上の変形した感じ」だ。そこで思いついたのが、ずきんの顔部分をバイザーで覆うアイディアだ。このギミックを実現するための仕掛けもかなり苦労したという。メカニズム的にもより凝ったものを取り入れているのだ。

 企画段階ではさらに複雑だった部分をあえて簡素化した部分もある。初期アイディアではイチゴ型のコクピットブロックを頭部に差し込んでから体の中を通って腹部に移動するという「UFOロボ グレンダイザー」を思わせるギミックを考えていたが、首が回転できなくなる上に、ギミックが複雑になりすぎてしまうためボツとなった。

 現在の“宇宙巡航モード”で現われるコクピットと、腹部のコクピットは実は別パーツなのである。逆に別パーツだからこそ“宇宙巡航モード”でのコクピットに座るマイメロディミニフィギュアは超合金同様にバイザーをつけているという違いを出すこともできているのだ。“空想の中”では、コクピットの移動を実現しているのである。

 話を聞いているだけで筆者のような「ロボット好き」には笑みが浮かんでしまうこだわりの要素満載の「超合金マイメロディ(あか)」だが、一方で違和感も感じた。本商品は“女性”をターゲットとしているはずである。それなのに、ロボットという“男の子の好み”を全面に押し出して、本当に女性に受けるのだろうか? なぜここまで男の子のこだわりを追求するのだろうか?

 寺野氏は筆者の問いに「それが超合金だからです」と答えた。巨大ロボットへのあこがれ、金属のおもちゃとしての手法……、マイメロディというキャラクターを“超合金”で表現するとどのような形になるか、女性向けのキャラクターに男の子のこだわりを詰め込む、男の子のおもちゃとして求められている方法論を活かしたのが「超合金マイメロディ(あか)」だというのだ。

 おもちゃとしてのこだわりが、コロ走行である。「超合金ハローキティ」は頭がまるごと金属と言うこともあり、コロ走行ができる「走行モード」でも、押すとバランスが崩れやすかった。「超合金マイメロディ(あか)」は重心の低い宇宙巡航モードではもちろん、通常モードでもきちんとコロ走行が楽しめるようになっている。おもちゃとしてのコロ走行というきわめて原初的な楽しさを追求しているところも、「超合金だから」というコンセプトを追求した結果だ。

 現在の「超合金」は様々な方向性がある。「DX 超合金マクロスシリーズ」は関節などに超合金を使うことで劇中同様の複雑な変形を実現しているし、「METAL BUILD」シリーズは内部フレームを金属にしてABS樹脂のアーマーをかぶせてロボットの質感とポージングの多彩さを追求している。

 「超合金」というブランドが多彩な方向性を見せる中、寺野氏が「超合金マイメロディ(あか)」では“おもちゃ”としての超合金を追求していきたいという。モチーフとは少し違ったおもちゃとしてのシンプルなデザイン、超合金ならではの耐久性など、こういったアプローチは寺野氏が超合金の歴史を振り返るイベント「TAMASHII NATION 2013」(2013年10月開催)を手がけた経験が大きいという。

 その上で「単純に世の中をびっくりさせたい、ざわざわしてくれればいい」という想いで、寺野氏は「超合金マイメロディ(あか)」のような商品を世に出しているとのことだ。「大まじめにふざける」というコンセプトで、ビジネスとしての視点、面白さ、歴史と最先端の技術を結晶化させて、あくまで真剣におもちゃとして追求していくという。

 その上で、「マイメロディはより若い女性に人気がある」というところが大きなチャレンジとなっている。「超合金らしさ」を追求しつつも、ハローキティ以上に超合金に思い入れがない、「超合金を知らない」世代に向けてどうアプローチするかを求めたと寺野氏は語った。「超合金マイメロディ(あか)」は、前作以上に時間をかけて試作を重ね、積極的に女性の意見を取り入れて完成させた。色々なバランスを考えてデザインされているとのことだ。

 最後に寺野氏は、「『超合金マイメロディ(あか)』は、玩具が好きな人はもちろんですが、これまで以上に超合金になじみがない、男の子のおもちゃを知らない人にも、魅力を感じてもらえるようにデザインしました。もちろん『超合金ハローキティ』を買っていただいた人にも楽しめる商品にもなっています。ぜひ、手にとってみてください」とメッセージを語った。

【超合金マイメロディ(あか)】
「大まじめにふざける」というコンセプトで、アイディアが詰め込まれている