【特別企画】

ハイレゾ、香川県綾川町に廃校を活用したGPUデータセンターを開設

廃校活用で地域交流の拠点にも。今後ウルトラハイエンドGPUを設置予定

【綾川町データセンター】
3月3日開所
ハイレゾ提供

 ハイレゾは2026年3月3日、香川県綾歌郡綾川町に設置したGPUデータセンター「綾川町データセンター」の開所式を執り行なった。

 GPUデータセンターは、AIの研究開発に欠かせない施設であり、国内でも相次いで設置が行なわれているが、綾川町データセンターは、廃校(旧綾上中学校)の建物を活用していることが特徴だ。廃校をGPUデータセンターに転用した事例は、2025年8月に同社が佐賀県東松浦郡玄海町に開所した「玄海町データセンター」に続いて、綾川町データセンターが日本で2例目となる。開所式と普段は公開していないGPUデータセンターの中を特別に見学させていただいたので、その様子をレポートする。

旧綾上中学校の外観。左に並んでいる建物が校舎、右の建物が体育館であり、体育館下をGPUデータセンターとして改装した。株式会社ハイレゾ提供

廃校を活用した成功例として、香川モデルを世界に広めたい

 綾川町データセンターの開所式は、旧綾上中学校の体育館で行なわれ、ハイレゾ代表取締役の志倉喜幸氏をはじめ、香川県知事の池田豊人氏、綾川町町長の前田武俊氏、綾川町議長の河野雅廣氏などの来賓を含め、約160名が出席した。

 最初にハイレゾ代表取締役の志倉喜幸氏が次のように挨拶を行なった。

 「このプロジェクトは、政治、行政、国、金融、学術、民間が本気で挑んだ挑戦です。私たちは、単なるデータセンターを作ったわけではありません。ここに新しい産業の形を作りました。地方のエネルギーを活かし、産学官民が連携し、AIと次世代産業を地方から立ち上げます。我々が戦う相手は他社ではなく、地方は衰退するという思い込み、そして不景気、経済は縮むという空気と戦います。香川から日本を変える、そして香川から世界へ。この香川モデルを必ず世界に広げます」

 次に、香川県知事の池田豊人氏が来賓として次のように祝辞を述べた。

 「このデータセンターが綾川町に本日誕生したということは、香川県にとっても、日本にとっても意義深いことだと思っております。大変多くの方のご協力によってデータセンターを立ち上げることができ、皆様に感謝を申し上げます。AIは、今やどの産業においても、また医療分野や防災分野、教育分野まで、あらゆる分野において不可欠なものであり、そのAIを支えているのが、このデータセンターです。このデータセンターは未来を支える拠点であり、この自然が豊かな綾川町にできたということが、香川県の新しい発展の象徴になってくると感じております。香川県は災害のリスクが比較的少なく、電力状況も通信状況も安定しているため、データセンターに適したところです。面積は小さいですが、逆にコンパクトであり、色々な産業を展開するにもスピーディーに展開できる、そういうメリットを持ったエリアだと思います。この綾川町から、新しいイノベーションを出していきたいと思います。引き続き、この綾川町データセンターへのご協力のお願いを申し上げます」

 さらに、綾川町町長の前田武俊氏や綾川町議長の河野雅廣氏、衆議院議員復興副大臣兼内閣府副大臣の瀬戸隆一氏、日本政策投資銀行常務執行役員の伊藤徹二氏、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の吉岡正嗣氏が祝辞を述べた後、開所式に出席した来賓や祝電が紹介され、開所を記念するテープカットが行なわれた。

【綾川町データセンターの開所式の様子】
綾川町データセンターの開所式は、旧綾上中学校の体育館で行なわれた。株式会社ハイレゾ提供
体育館の入口
入口には多くのお祝いの花が飾られていた
反対側にもお祝いの花が多数飾られていた
体育館の中の様子
体育館らしく、校訓や校歌が壁に掲示されている
開会時には用意された座席がすべて埋まった
ハイレゾ代表取締役の志倉喜幸氏
香川県知事の池田豊人氏
綾川町町長の前田武俊氏
綾川町議長の河野雅廣氏
衆議院議員復興副大臣兼内閣府副大臣の瀬戸隆一氏
日本政策投資銀行常務執行役員の伊藤徹二氏
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の吉岡正嗣氏
壇上に主催者や来賓が並んでテープカットを行なった
テープカットの瞬間

体育館下のスペースをデータセンターに改装

 開所式の後、綾川町データセンターの内覧会が実施された。通常、データセンターはセキュリティ確保のために見学などは一切許可されていないことが多い。綾川町データセンターについても、内部の見学は基本的に許可されていないが、今回、開所式にあたって特別に内部の見学が許可された。ただし、サーバールーム内や関連施設の撮影は禁じられたため、サーバールーム内の写真はハイレゾから提供されたものを使っている。GPUデータセンターの用途や、なぜ求められているのかということについては、以前の記事で解説しているので、そちらを見ていただきたい。

 綾川町データセンターは、廃校となった旧綾上中学校の体育館を改装して作られている。ただし、体育館の中にデータセンターを作ったのではなく、体育館の下のスペースをデータセンターとして改装したことが特徴だ。もともと体育館は階段を上がって入るようになっており、1階部分はいわゆるピロティとして、駐輪場や部活動の練習場として使われていた。そのため、もともとは壁がなく、自由に通り抜けられる空間となっていた。そこに鉄筋コンクリートで壁を作り、部屋を作ってデータセンターとしたのだ。ちなみに、ハイレゾによる廃校の建物のデータセンターへの転用は、佐賀県松浦郡玄海町の旧有徳小学校に続いて2つめの事例となるが、旧有徳小学校の場合は、校舎2階の教室の一部をデータセンターとして改装していた。

 今回、体育館の下を使った理由は、体育館の上を使うと床面の耐荷重が足りないためだ。データセンターのサーバールームは同じ広さのものが2つあり、それぞれ中央の空間を挟んで左右にラックが11台ずつ並ぶ設計となっている。中央にエアコンで冷却された冷たい空気(コールドエア)が送られ、左右のラックに搭載されたサーバーを冷やす。温められた空気(ホットエア)は、部屋の左右に排気される仕組みだ。このエアフローは、ハイレゾが高松市に設置したデータセンターとほぼ同じである。玄海町データセンターでは、エアコンを使わずに外気をそのまま導入する外気冷却方式を採用していたが、こちらはよりハイエンドのGPUを搭載する予定であり、外気冷却では冷却性能が足りないため、エアコンを使った完全循環方式を採用したとのことだ。

 サーバーの収納能力だが、サーバールーム1つでラックが22台あり、同じ規模のサーバールームがもう1部屋あるので、合計で44台となる。高松市データセンターの場合、サーバーラックの数は全部52台だが、ラックの高さが30Uと低めなのに対し、綾川町データセンターは42Uラックなので、搭載可能なサーバーの数は、綾川町データセンターのほうが多い。

 綾川町データセンターの投資額は約110億円で、延床面積は約1,008平方メートル。投資額は高松市データセンターの約100億円とほぼ同じだが、延床面積は高松市データセンターの約1.47倍となる(高松市データセンターの延床面積は687平方メートル)。

 また、見学はできなかったが、綾川町データセンターには執務室や会議室も用意されている。

【綾川町データセンターの様子】
開所式が行なわれた体育館の下にデータセンターがある。「目当てと実行」と書かれた部分の奥がデータセンターである
左に見えているのがデータセンターの入口
データセンターの入口。株式会社ハイレゾ提供
サーバールームは2つあり、こちらはサーバールーム1の入口ドア。株式会社ハイレゾ提供
サーバールーム内のラックの様子。ラックが11台並んだ列が左右に1つずつあるため、1つの部屋で22台のラックがあることになる。株式会社ハイレゾ提供
データセンター内にある執務室の入口。株式会社ハイレゾ提供
執務室の様子。株式会社ハイレゾ提供
データセンター内にある会議室の入口。株式会社ハイレゾ提供
会議室の様子。株式会社ハイレゾ提供

まずはH100やA4000から導入。今後はウルトラハイエンドGPUを設置予定

 ハイレゾは、2019年8月に石川県羽咋郡志賀町に、当時国内最大級のGPUデータセンターを開設後、積極的にGPUデータセンターを開設しており、今回開所した綾川町データセンターは、同社の5つめのGPUデータセンター(他には志賀町に2つ、高松市と玄海町に1つずつある)となる。ハイレゾのGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」は、競合のサービスに比べて、価格が大幅に安いことが魅力だが、それを支えているのが、同社が持つGPUデータセンターである。綾川町データセンターも、同社のこれまでのGPUデータセンターと同じく、UPS(無停電電源装置)や冗長化(複数のシステムを用意して、1つのシステムがダウンしても、他のシステムでタスクを続けられる仕組み)への投資を最小限にすることで、コストダウンを実現している。

 なお、現時点では綾川町データセンターは、まだラックへのGPUサーバーの設置を開始した段階であり、正式稼動は今年夏頃を予定している。また、最初に導入するGPUは、NVIDIA H100やNVIDIA A4000といったミドルレンジクラス製品が中心になるが、今後は、B200のようなウルトラハイエンドGPUを設置する予定だ。H100やA4000は、主に画像生成などの推論用に、B200はLLMなどの開発・学習用に使われることになり、ユーザーのニーズに応じてデータセンターとしての演算能力を拡充して行く。電源容量については最大2MWクラスを想定しており、今後想定されるAI処理の需要増加にも対応できるとのことだ。

 また、同社のこれまでのGPUデータセンターではなかった新たな試みとして、校舎内の教室をリフォームし、地域の人が自由に使えるコミュニティスペースとして整備したことが挙げられる。このコミュニティスペースでは、子どもを対象にしたプログラミング教室や工芸品の制作ワークショップなどが既に開催されており、今後も地域交流のために活用していきたいとのことだ。

【校舎内のコミュニティスペースの様子】
校舎内の教室の様子。コミュニティスペースとして活用予定である。株式会社ハイレゾ提供