インタビュー
「オーバーウォッチ」Principal Designerインタビュー
ヒーロー制作の秘密が明かされる! 新ヒーロー&マップにも言及
(2016/5/22 13:43)
5月24日に発売を控えたBlizzard Entertainment開発の「オーバーウォッチ」。コンソール版、PC版もひっくるめて世界同時にゲーム開始となり、日本での開始時刻が5月24日8時と発表され、期待はいよいよ最高潮を迎えている。
現在韓国の釜山では発売前夜イベント「オーバーウォッチフェスティバル」が開催中となっているが、ここで本作のPrincipal Designerを務めるScott Mercer氏にインタビューすることができた。
Mercer氏は1997年にBlizzard入社後、「StarCraft」の拡張版「Brood War」のレベルデザイン、「Warcraft III」拡張版「Reign of Chaos and The Frozen Throne」のゲームデザイン、「World of Warcraft」のリードデザイナーなどを務めており、「オーバーウォッチ」ではキャラクターデザインを含む様々なゲームデザインの制作を率いている。インタビューでは、「オーバーウォッチ」制作の裏側やベータテストの反応などを伺っていった。
デザイン部門トップが「オーバーウォッチ」デザインを語る!
――「オーバーウォッチフェスティバル」はいかがですか?
Mercer氏:素晴らしいです。みんなが「オーバーウォッチ」を体験したり、イベントに参加していたりして、一緒にいてすごく嬉しい気持ちになります。
――OBTでのフィードバックを受けての調整内容で、大きなものはありますか?
Mercer氏:大きなものとしては、オブザベーションツール(いわゆる観戦モード)を入れます。そのほかのものとして、バランスや戦略部分の調整も行ないます。
――「オーバーウォッチ」は、Blizzard初のFPSで、しかも対戦型のマルチプレイ作品です。このゲームデザインに行き着いた理由は?
Mercer氏:私自身FPSが大好きで、Blizzardに入る前から個人的にFPSをプレイしていました。そこで素晴らしいキャラクターやヒーローがいる、「Blizzard版のFPS」は実現しがいがあると思い、制作に入りました。
――21名ものキャラクターを作り出すのは大変だったと思いますが、その能力やパーソナリティはどのようにしてデザインしていったのですか?
Mercer氏:いくつかは能力のアイディアの後にキャラクターが作られ、いくつかは素晴らしいコンセプトアートがきっかけで能力が作られています。
例えば「ファラ」は、ロケットランチャーを撃つ、空を飛べるという能力のキャラクターを作りたいと思っていて、ビジュアルなどはコンセプトアーティストに依頼してできあがったものです。
また「ゼニヤッタ」は、アーティストが描いた「ロボティック僧侶」というコンセプトを見て、能力を作っていきました。
――Mercerさんはどのキャラクターを使っているのですか?
Mercer氏:「ロードホッグ」も好きですし、「ウィンストン」や「ゼニヤッタ」もよく使います。「ゼニヤッタ」は能力のプログラムを自分で組んだので、思い入れがあるというのもあります。
――その「ゼニヤッタ」なんですが、イギリスのロックバンド「ポリス」に「ゼニヤッタ・モンダッタ」というアルバムがあります。もしかしてそこから来ていますか?
Mercer氏:(強くうなずいて)そうです。
――それはなぜ?
Mercer氏:「ポリス」のアルバムがカッコいいからです(笑)。キャラクター作りに際しては、様々な音楽や映画から影響を受けています。昔のゲームからインスピレーションを得ることもありますし、それらが合わさってまったく新しいアイディアが生まれることもあります。21人がそれぞれ、生まれた経緯が異なるんです。
――キャラクターたちについては、バックストーリーにも力を入れていますね。ゲームへのストーリーモードやキャンペーンなどの導入は考えていますか?
Mercer氏:ゲームデザイン上、ストーリーを入れるのは難しいのですが、その代わりにショートアニメやコミックスを展開することで補填しています。機会があれば挑戦したいですが、いろいろ考える余地があります。
――そのショートアニメですが、毎回評判になりますね。長編を制作する可能性はあるのでしょうか?
Mercer氏:まずBlizzardはゲームカンパニーですからね(笑)。ディレクターとしてやりたいと思いますが、特に決まってはいません。
ただそうしたファンがたくさんいるので考えてはいますし、そのようなフィードバックはシネマティック部門(Blizzard社内の部署。すべてのアニメーション制作を担当している)のアニメーターも喜んでいます。
――ちなみにFPS初心者が本作をプレイするときに、オススメのヒーローは?
Mercer氏:「ソルジャー76」はオーソドックスなFPSスタイルなので、わかりやすいですし、自分で体力を回復できるのでオススメです。FPSに慣れた人も扱いやすいヒーローです。
また「マーシー」は、味方を助けるというわかりやすく簡単な役回りでこちらもオススメです。ヒーローそれぞれに☆1つから3つで示された難易度がゲーム内で確認できるので、そちらを参考にしても良いと思います。
――本作のゲームデザインですが、マップとゲームルールが紐付いていますよね。これは当初から計画されていたのですか?
Mercer氏:ゲームモードとマップは、すべてのヒーローが活躍することを考えながら作っていきました。
会社にはレベルデザインの哲学を書いたポスターが貼ってあるのですが、そこには「すべてはヒーローのために」とあります。ヒーロー=プレーヤーなので、すべてのヒーローのためにマップとルールが存在する、という考え方です。
――バランス調整に苦労したヒーローは誰でしょうか?
Mercer氏:「トールビョーン」と「バスティオン」ですね。トッププレーヤーだけでなく、ビギナーにとっても扱いやすいようにカジュアルに作るなど、バランスをあわせるのが大変でした。すべてのヒーローにパワーを与えたいですが、バランスも保たないといけませんから。
――本作は世界同時にスタートします。リージョンを少しずつ広げていくという方針もあり得たと思うのですが、あえて世界同時を選択した理由は?
Mercer氏:そのほうが良いからです。誰かを待たせる必要なんてありませんよね?
ただ、どこかで開発が遅れたりしてもダメですし、PC版とPS4版に足並みを揃えるのは大変でした。それを可能にしてくれたスタッフにはとても感謝しています。またこうした「オーバーウォッチフェスティバル」が釜山だけでなく、ロサンゼルス、パリと世界で開かれていることも喜ばしいです。
――発売後ですが、追加キャラクターや追加マップのペースについてはいかがでしょうか?
Mercer氏:これはローンチから1年間でいくつか出していきます。ヒーローとマップは、すべてのプレーヤーに無料で提供される予定です。
――ありがとうございました。