インタビュー
ポイソフト 開発チーム ロングインタビュー
任天堂を選んだきっかけ
(2013/3/6 00:00)
任天堂を選んだきっかけ
――どのようなきっかけで任天堂さんと組もうと思われたのでしょうか?
石川氏:1つはいろいろハードを触っていて、任天堂のハードが1番かわいかった。いい印象を持ったんです。そして、僕らが作る訳のわからないタイトルが1番輝くのは任天堂のハードに違いないと思っていたこともあります。いまいちゲームになっているような、なっていないようなものは、任天堂の方々は出せないでしょうけど、やるかどうかは別として僕らは出せますから(笑)。
中川氏:もう1つは僕らが会社を辞めた頃に、任天堂がWiiウェアを始めるというニュースが流れたんです。僕らのような小規模開発だとダウンロードタイトルだろうなと漠然と考えていた所でしたし、リリースにも小規模デベロッパー向けでもあると書いてあったんです。
石川氏:パッケージは出せる訳がないと思っていたので。
――パッケージのゲームを作った経験からいろいろと必要になるものをご存知ですものね。
中川氏:コネもツテも規模も金もないんです(笑)。小規模でも進められるダウンロードタイトルはベストなプランかなと。
石川氏:損益分岐点が大分下がるんですね。パッケージだと5,000本では大赤字であるところが、ダウンロードタイトルならなんとかなったりする。
中川氏:僕らのお給金を下げてというレベルの話ですが(笑)。そこで任天堂のWiiウェアでやってみようかと。
石川氏:最初はお客様相談室からのスタートでした(笑)。企画書を送り、しばらくして連絡があり、担当の方が会ってくれることになったんです。その場でライセンス契約を結ばせてもらいました。送った企画書は「王だぁ!」でしたね。
中川氏:企画書はかなり気合を入れて作りました。デザイナーに絵を描いてもらって、ゲーム雑誌の記事風にしたんです。他にも年間の損益分岐といったビジネス文書もしっかり用意しました。ただ、そのビジネス文書は使わなかったそうですけど(笑)。
石川氏:僕はそれを持って、ただ行ってきたみたいなものです。緊張しましたけどね。
中川氏:できたばかりの、たった4人の会社なのにちゃんと扱ってくれたので奮起できましたね。
――もし、任天堂がダメだったら……?
石川氏:他社の扉も叩いていたと思います。
――任天堂以外のハードでもリリースする可能性もありえた訳ですね。今後、任天堂以外のハードでゲームをリリースする可能性は有り得るのでしょうか?
中川氏:ゼロではないです。ただ、お世話になっているし、不義理はできないです。
石川氏:僕らは「関わる人を全員笑顔に」を軸に活動していますから。
中川氏:今の所、笑顔にできているかな?
石川氏:半笑いくらいかな(笑)。
中川氏:もうちょっとがんばらないとだね。
会話の中から生まれるゲームのアイディア。「ベルトコンベアー」から「タケヤリマン」!?
――「王だぁ!」の“王様プレイでやりたい放題!”といった個性的なアイディアはどういうきっかけで生まれるのでしょうか。
中川氏:会話の中で出てくることが多いです。例えば、北郷に無茶振りをすると面白いことを言うんです。「今何が気になるのかな?」と聞くと「マンションの隣の部屋がうるさくて文句言いたいけど……」から転がってできたのが「マンションパーカッション」です。「タケヤリマン」の時は「面白い単語を言ってみて」と頼んだら「ベルトコンベアー」って返ってきたんです。「それは面白い!」となり、ベルトコンベアーから始めることにしました。
――どういう流れで「ベルトコンベアー」が「タケヤリマン」になるんですか!?
石川氏:迫ってくるものにしようと。3DSには立体視もあるので。
中川氏:書割が迫ってきたら面白いんじゃないか、というところから始まりましたね。
石川氏:「王だぁ!」の時は、僕が夜中に、限られたフィールドで絶対的な権力を振るえそうな、裁判のゲームがいいかな?と思いたち、急に中川に電話して「裁判長になってめちゃくちゃにしたい!」と伝えたんです。そうしたら彼が「だったら俺は王様の方がいいや」と。「おお、それだ!」となって生まれました。
――話し合いの中から広がって出てくるんですね。
中川氏:その後、形にするのは大変ですけどね。そういえば、最近北郷はディレクターをやりたがらないね。
石川氏:彼はゲームのデザインデータを1人で制作・管理しているんです。デザインデータを見なきゃいけないから、人を管理する暇はないと(笑)。
――ゲームのアイディアもそうですが、出てくるセリフも特徴的ですよね。
中川氏:セリフは僕が担当しています。何故かわからないですがテキストデータは全て僕が担当です。
――ストーリーを含めということですね。
中川氏:そうです。「ボクも世界を救いたい」の時は手が足りなかったので、ランダムイベントや一部のセリフは智之が書いています。なので「ボクも世界を救いたい」の時、彼はライターなんです。
スピードリリースの秘訣とは!?
――4人(実質3人)ながらも半年に1本のペースでリリースされていますが、早く開発する秘訣があったりするのでしょうか?
石川氏:腕でしょうねぇ(笑)。
――ですよねぇ(一同笑)。
石川氏:冗談はさておき、単純にプログラムという点で言うなら、他の企業のプログラマーでも同じようにできることだと思いますよ。
中川氏:会社としての経営方針というか、半年に1本出さないと忘れられてしまうという気持ちがあります。特に社長はその気持ちが強いです。「王だぁ!」の後も本当はすぐに出したかったんですが、いろいろありまして。
石川氏:没プロジェクトもあったりしましたから。
中川氏:3DSになり、コンパクトになり、開発が楽になってからはポンポンポンと出せるようになったイメージはあります。
――Wiiだと物量的に多くなる感じですか。
中川氏:慣れてないこともあったのですが、3DSはやりやすいんですよね。
石川氏:プログラマーから見て任天堂の携帯機はかわいいんです。ここでそれをやらないのがたまらんみたいな(笑)。
――どの辺りにかわいさを感じるんですか?
石川氏:初めて触ったのがゲームボーイアドバンスだったのですが、「こういう風にしたらエレガントだろう?」という作った人の思いを感じて、それに対して全くその通りだなと僕も思ったんです。ほぼスーパーファミコンと変わらない設計だったと思うんですけどね。