インタビュー
「FANTASIAN Neo Dimension」坂口博信氏×吉田直樹氏インタビュー
高画質化&ボイス付きで“新たな次元”に進化を遂げたゲームの魅力とは?
2024年11月1日 16:00
- 【FANTASIAN Neo Dimension】
- 12月5日 発売予定
- (Steam版は12月6日発売予定)
- 価格:6,500円
スクウェア・エニックスより、12月5日に発売されるRPG「FANTASIAN Neo Dimension(ファンタジアン ネオ ディメンジョン)」。本作は「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親としても知られる坂口博信氏率いるミストウォーカーが企画・開発し、2021年にApple Arcade向けにリリースした「FANTASIAN」を、コンシューマー向けに展開した作品だ。
今回のインタビューでは、本作のプロデューサーでもある坂口氏に加えて、パブリッシャーとして販売を担当するスクウェア・エニックスの吉田直樹氏も交えて様々なお話をお伺いしてきた。
「FF14」ファンだったことをきっかけにスクエニからコンシューマー版のリリースが決定
――本作のオリジナルはApple Arcade用にリリースされていた「FANTASIAN」ですが、そちらをコンシューマー向けに展開しようと思った経緯を教えていただけますか?
坂口氏:元々Appleとの話が、時限付きの配信権でした。いわゆるマルシー(著作権)はうちにあるんですよ。せっかく作ったものなので、なるべく多くの人に手に取っていただきたいということで、どうしようかと悩んでいました。
選択肢としては、自分たちだけでSteamで配信するということも可能でしたが、僕が「ファイナルファンタジーXIV」(以下、FF14)のファンで(笑)。
――そうだったんですか!
坂口氏:話を遡ると、3年ほど前に吉田さんと対談する機会がありました。元々MMORPGは好きなので、遊ぶとハマるのはわかっていたんですが、対談する相手が作ったものを遊んでないのは失礼になります。実際にプレイするときっとはハマるだろうな~と思っていたら、案の定ハマったっていう(笑)。
しかも「FFテーマパーク」的にもすこく良くできているので。僕からしたらその楽しみもありました。上に行ったら天野さん(天野喜孝氏)のゴブリンがいて、もう楽しくなっちゃって。「FF14」の聖地に「とんつう」という焼き肉屋があるんですが、その流れでファン的に「吉田くんと行ってごはんが食べたいな~!」ということをいちユーザーとしてお願いしていた中で、たまたま機会に恵まれ、ちょっと相談したのがきっかけですね。
――じゃあAppleの独占期間が終わる直前ぐらいに吉田さんにお話をされたんですね。
坂口氏:そうですね、たまたまそこでお話をしました。たぶん、吉田さんがいなくて「FF14」をやっていなかったら、スクエニにはお願いしなかったと思うんですよね。自分の中では1度辞めているので。
――古巣ではありますからね。
坂口氏:昔の仲間と飲んだりはしますが、対会社としての付き合いはありませんでした。ちょっと微妙なところもあるじゃないですか。それが、単純に「FF14」ユーザーだったのが縁でこういう形になりましたね。その結果、やりましょうと言ってくれたので。
――吉田さんは、坂口さんから今回のお話しを聞いたときはどう思われましたか?
吉田氏:単純にありがたいと思いました。ある意味、ご指名をいただいたということでもありますし、僕ら自身はクリエイティブスタジオ3ですが、坂口さんが作られてきた作品のファンボーイばかりが集まっているような部署です。大変光栄であると同時に、あらためてApple Arcadeでリリースされているものが、きちんとビジネスになるのか。単に光栄だからやりましょうというだけで、数字的にマイナスなものを出しても意味がありません。
どこまで広がる可能性があるのか。そこは、たとえばプロモーションにかけられる費用も変わってきます。そちらを明確にしたうえで、会社からゴーサインが出る準備をしてからじゃないと「やりましょう!」と、口だけいうのは僕の性格的にできなかったのです。
ですので、お話をいただいた瞬間は、嬉しさはもちろんあった上で、「大変ありがたいお話ですが、まずはきっちり検討させてください、できるだけ早く回答させていただきます」とお話しして、大急ぎで社長の了承を取ってスタッフと共にプレイさせていただきました。メタスコアも参照させていただきましたし、市場調査を実施してどの程度のマーケットサイズを取っていくことができるか。そのためには、どれぐらいのプラットフォームに対応しなければいけないのかというところをある程度揃えて、「この条件でやらせていただきたいです」と提案しました。
了承をいただいてからは、かなりのスピードでご対応していただいたので、相当うまくやれたんじゃないかなと思います。
――では、決まってからは大きなラグも発生することなく、各種のプラットフォーム展開の作業も進められていったということなんですね。
吉田氏:それはすさまじかったです。プラットフォーマーとの交渉や開発機材は、パブリッシングさせていただく上で我々の方で準備しましたが、そこは我々の強みが出たところかなと思います。いろいろなパブリッシャーとのパイプラインもありますし、プラットフォームならではの特徴や条件があるので、そこは我々のプロジェクトマネージメントチームがフルサポートしました。それから開発機材をお渡ししてからのプログラム的な作業は、もう、ものすごいスピードで(笑)。
――すべてのプラットフォームでリリースされるんですよね?
坂口氏:その移植もプログラミング的には大変でした。ディレクターでメインプログラマーの中村(中村拓人氏)というのがいるのですが、すごく頑張ってくれました。バグもなく、順調に全プラットフォームに移植できましたね。
――1年ぐらいで移植されたそうですね。
坂口氏:そうですね、1年から1年半ぐらいですね。ボイス撮りの期間もありましたので。
――吉田さんは本作ではどのような立場になるのでしょうか?
吉田氏:僕はどちらかというと、「FANTASIAN Neo Dimension」という作品を改めて全世界に全プラットフォームで展開していく計画全体を見ています。「ここまでのプラットフォームには対応すべきだよね、なぜなら」という部分、論理建てをするために、データ調査の指示をしたり、どういったものをアドオンすることで商品性が担保できるかといった部分の、初期設計をやっていたりしました。
指示をして提案してゴーサインが出たら、あとは日々上がってくる内容に対して、意見を行うというのが主な役割でした。
若い人にも手に取ってもらうためにボイスを追加で収録
――コンシューマー版で展開するにあたり、追加されたところや変更された部分はございますか?
坂口氏:ボイスを追加しました。僕は意外とボイスなし派なんですが、そこは吉田さんがボイスを入れた方がいいよということで。「東京ゲームショウ」のステージに登壇した後、なんとなく思い立って正式発売前の「FANTASIAN Neo Dimension」を遊んでいたのですが、あらためてボイスを聞いてみると、主人公と女の子ふたりの掛け合いが微笑ましい感じになっていました。
当然作った側なので知っているのですが、ニヤッとできます。やはりボイスの力は大きいなと。そこが最大の変更点です。あと、オリジナルがアプリだったのでサイズ制限があり、それ以上のものはストアで配信することができませんでした。
そのため、元々4Kの画像だったものを圧縮して、収まるような形で最初の「FANTASIAN」はできています。ただ、4Kの素材としてはもともと撮影していたものですから、今回は画質がかなりアップしています。大画面で遊んでくれるでしょうし、その中で高精細な絵でジオラマをじっくりと楽しんでもらえるのも大きいところですね。
細かい部分でいうと、やはりiOSのときはタッチパネルで遊んでいましたが、今回はほとんどの人がコントローラーで操作します。細かいのですが、プログラム的には面倒くさくて(笑)。移動スピードを1.2倍ぐらいにしたり、回転半径を小さくしていたりします。コントローラーでくりくりやったときに、より小気味よく動くことができるように。あと、PCでプレイしたときのキーボード操作対応など、細々したこともやっています。
――吉田さんがボイスを追加しようと考えた理由を教えていただけますか?
吉田氏:1度Apple Arcadeでリリースされているタイトルという事実は変わらないので、それをどうこうするというよりも、コンシューマー上やPC上で、作品の良さをそのまま伝えることを大切に考えました。ですので、コンシューマーやPCのRPGとして、不足ない状態にしてできるだけ早くリリースする、というのが方針です。ただし、Apple Arcade版を遊んだ人たちにも、もう1度遊んでみようと思っていただきたい。
最近のRPGとなるとボイスが収録されているものが非常に多いので、多くの世代の人たちに手に取ってもらうためにも、Apple Arcade版とのわかりやすい違いとしても、ボイス対応は是が非でもやらせてほしいですと提案しました。
――各国語のボイスが収録されているのでしょうか?
吉田氏:対応言語は日英です。もちろん対応言語を増やすことは、技術的に可能です。ただ、我々「FF14」と「ファイナルファンタジーXVI」(以下、FF16)で相当な言語対応をやっているので、だいたい文字数から費用がいくらかかるのかというのがすぐ出てくるため、ビジネスの観点から今回まずは日英の2言語とさせていただきました。
――なるほど(笑)。
吉田氏:それに対応する期間も、当然のことながら見えてきます。せっかく2言語でもこれだけの評価が取れているのであれば、まずは早く遊んでもらうことを考えました。今可能性を検討しているわけではありませんが、ご好評の声が更に増えていけば、今の時代パッチで言語を増やすことも可能です。それであれば、これだけ良い作品なのであれば、早く届けようというところにフォーカスしています。
――それで年末商戦に間に合うタイミングでリリースが決まったんですね!
吉田氏:ものすごいスピードでご対応していただいたので、あとはスクエニ側でいつリリースするかを調整と。なかなかこういう機会は珍しく……(笑)。
――ボイスのキャスティングはどのように決められたのでしょうか?
吉田氏:キャスティングも含めて、こちらにお任せしていただき、こうした声優陣でいかがですか? と坂口さんに確認していただく流れになりました。我々も特に「FF16」に関しては、東北新社さんと二人三脚といっていいぐらいの関係を作っていただけましたので、我々から内容を提示すると香盤表(様々な情報がまとめられたリスト)をすぐに送っていただけます。それをあらためてチーム内で確認しています。
そういう意味では、我々がスタジオとしてやってきた信頼関係が活かせた最新作が、「FANTASIAN Neo Dimension」に全部注がれています。主人公のレオアを演じている内田雄馬くんは、いつか「ファイナルファンタジー」の主人公の声を演じたい! と声優を目指した方です。
「ファイナルファンタジーXI」プレーヤーでもあるし、「FF14」プレーヤーでもあります。「FF14」では、超人気キャラのグ・ラハ・ティアを担当してもらっています。また、「FF16」では主人公クライヴの幼少期を担当しています。
ですので、ウチとしては主人公がいけるんだったら、まずは雄馬くんだよねというのは、すぐにイメージしやすいのです。本人も、それこそ坂口さんの作品に参加できるのは、ある意味ひとつ夢が叶うことなので、まずは打診させていただこう、と。「本当にいいんですか!? 死んでもやりたいです!」とお返事を頂いて、ありがたかったですね。
坂口氏:「FF14」ファンだから、僕も会いたいなと思ったのですが、向こうも固くなって僕も固くなって一緒に記念写真を撮りました。
吉田氏:初日の収録時に、坂口さんが陣中見舞いに訪れてくださって(笑)
「FF6」の延長線上にあるようなものを作ろうと思ったのが始まり
――タイトルに「Neo Dimension」と付けられた理由を教えていただけますか?
坂口氏:これも吉田さんのほうからサブタイトルを付けることで、もう1度生まれ変わったということを出した方がいいと言われて。スペルは違いますが、ゲーム内にも「ディメンジョン」という要素があります。そちらはダンジョンのジョン(DIMENGEON)なのですが、言葉としては掛かっています。それと、“新しい次元に”という意味で、「FANTASIAN」のディレクターズカット版というか、もう一度生まれ変わったようなニュアンスが出るということから付けています。
吉田氏:サブタイトルに「Neo」という言葉が入ることで、新しくも感じられます。次のステージに向かう。次の次元みたいな意味もあるので、サブタイトルを付けたいですということで、いくつか候補を出してもらいました。
――ちなみにサブタイトル案にどんなものがあったか覚えてらっしゃいますか?
吉田氏:どうだったかな……ディメンジョンは最初から候補でしたよね?
坂口氏:そうですね。アイデアとしてはみんなで出しましたが、初期段階で絞り込んでいましたね。他のアイデアって覚えてないですね、逆に(笑)。
吉田氏:確か、途中でひとつ商標的なものでダメだったのがありましたが、それがなんだったのか……もう覚えてないですね。グローバルリリースになりますので、欧米にもサブタイトルの響きをどう感じるかについて、意見も集めました。それもお伝えしたうえで、最後に残ったのは「ディメンション」なのか「ディメンジョン」なのか読みはどちらにしましょうか? という議論だったはずです(笑)
――今回はたまたまスクエニからリリースされるということもありますが、どうしても「ファイナルファンタジー」と比較されてしまう部分もあると思います。そちらとの違いや、どんなものを目指したといったこだわりはございますか?
坂口氏:「ファイナルファンタジーVI」(以下、FF6)が「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」に収録されていました。それが出た時に、当時「FF6」を作ったメンバーを次々に呼んでプレイするという配信番組があったんです。
なかなか自分が作ったゲームは遊ばないことが多いのですが、そのときにじっくりと遊ぶ機会がありました。そろそろ引退しようかなということも考えていたのですが、改めて自分が過去に作ったものと向き合って、原点だなという感覚がありました。その頃の気持ちに戻って、「FF6」の延長線上にあるようなものを作ろうと思ったのが最初でした。比較されてどうというよりも、僕としては「FF6」の頃に戻って作ったという感覚の作品ですね。
――たしかに、今作は王道ファンタジーRPGですね!
坂口氏:ああいうスタイルが好きなので(笑)。ストーリーもあたたかみがあってあたたかい気持ちになってくれるようなものを目指していました。今回も路線は同じですね。
ジオラマの中をじっくりと探索できるように「ディメンジョンシステム」を導入
――Apple Arcadeでは前半と後半に分かれていましたね。
坂口氏:あ、そうですね。あとダウンロードコンテンツもありました。全部インクルードされています。
――結構なボリュームですよね(笑)。トータルだとかなりの時間遊べそうです。
坂口氏:そうですね。2週目も入っていますし、全部終わった後に強敵も出てきます。かなりのボリュームですね。
――「TGS」の試遊で実際に「ディメンジョンシステム」を体験させていただきましたが、かなりのインパクトでした。あちらは30体まで敵と戦わずに貯めておくことができましたが、その数はどのように決められたのでしょうか?
坂口氏:実はゲーム内で数も増やせていけますが、初期が30体です。あれは体感で決めています。毎ターンだいたい3~4匹ずつ登場するので、10回いくかいかなかというところが、一番気持ちいいと感じるところですね。
――「ディメンジョンシステム」自体は、どのような使い方を想定されて導入されたものでしょうか?
坂口氏:ジオラマの上をテストプレイしているときに、いちいちエンカウントするのがうざいという話しになって。なんとかならないの? というところからスタートしたものです(笑)。せっかくのジオラマなので……じゃ、バトルを取ってしまうというのは乱暴すぎるので入れています。やはり、じっくり手作りの空間を歩いてほしいのと、探索要素も大事だと思っています。あちらこちらに宝箱的なものを仕込んでおいて、探索することで、「あ、これジオラマなんだ」と、再発見できるようにしています。そのために作ったシステムです。
――「ディメンジョンシステム」で30体溢れちゃったときのインパクトもすごかったですね。敵がどんどん出てきて。
坂口氏:そうですね。ただ、プレーヤーに有利になるアイテムが落ちているので、素で戦うより楽になっています。ある程度爽快感ががあったほうがいいですからね。あと、スキル軌道とも相性がいいので、工夫しながら1匹でも多く倒そうとするあの感覚が面白いと思います。
――今お話に出た軌道システムもバトルの特徴のひとつとなっていますが、こちらを思いついたきっかけはなんだったのでしょうか?
坂口氏:あれも試行錯誤して作りました。最初はボールみたいなものを直に飛ばしていました。しかし、いろいろ試したもののうまくいかず、そのときにバトルを担当しているプログラマーが軌道システムを提案してきたんです。実装してみたらなかなか面白い形になったので。
――「ディメンジョンシステム」と合わせて、あまり他にはないシステムですね。
坂口氏:それぞれ別に生まれましたが、なかなか相性が良くて。開発途中には、そうしたラッキーが起きることが意外とあります。それが起きた方が楽しいゲームになりますね。今回はふたつのものが組み合わさって、さらに魅力が増した感じです。
――マップがジオラマで作られているところも、本作の特徴となっています。こちらは最初にPCで作ったものをジオラマ化して、それをさらに取り込んだのでしょうか?
坂口氏:PC上ではグレーボックスでおおよその位置関係を決めているだけで、コンセプトアートと扉が1枚欲しいなどの要望をしているだけです。もちろんコンセプトアートにも描いてありますが、実際に細かいオブジェクトなどを置いている部分は、ジオラマ作家さんが作ったものです。
――このジオラマはどれぐらいの制作期間が掛かるのでしょうか?
坂口氏:長いものは制作期間が6カ月ぐらいです。船長室のようなものだと、1カ月ぐらいですね。
――ジオラマはマップによってサイズがバラバラですか?
坂口氏:違いますね。城だとマップがでかくなるので、男4人ぐらいじゃないと運べなくなりますね。
――ジオラマはどこで保管されているんですか?
坂口氏:基本的に保管は難しいんです。経年劣化はどうしても避けられないものなので。基本はダメになっていくので、ユーザープレゼントなどもしました。なので、小物だけ保管しやすいので残っています。
――無くしてしまうのは、資料的にもったいないですね。
坂口氏:とはいっても、素材的に難しいものが多いんですよね。
吉田氏:加水分解してしまうので、基本的に保管しようと思ったら、完全な湿度管理と温度管理をガラスケースでやらなきゃいけないので、ゲームで得た利益で保管しなければいけなくなります。
――美術館が必要ですね。
坂口氏:美術館が常駐展示してくれればいいのに。ルーブルとかに送りつけちゃおうか(笑)。
吉田氏:ある意味、そうした儚さも含めてすごいアイデアでしたね。
――ジオラマも作られていたということは、制作期間はもっと前ということになりますか?
坂口氏:実制作期間は3年ぐらいですが、その期間でジオラマも作っています。
――制作開始は2018年ぐらいからですかね?
坂口氏:そうですね。最後の1年がコロナ渦になりました。2年間みんなでデスクを突き合わせてジオラマもそこに放り込まれてきて、写真を撮ったりしつつ、後半は意外と他のことの量産体制に入っていたので、在宅になっても大丈夫でした。
――「FANTASIAN」では植松伸夫さんが音楽を担当されていましたが、企画の当初から坂口さんのなかに構想としてあったのでしょうか?
坂口氏:僕は植松さんにしか曲を書いてもらってないです。
――あ~、そうだったんですか!
坂口氏:FFからずっと植松さんですし、独立してからも「ロストオデッセイ」、「ブルードラゴン」、「ラストストーリー」、「テラバトル」と、全部植松さんですね。
――たしかに言われてみればそうでした! むしろ御用達といったところでしょうか!?
坂口氏:御用達といったら失礼ですが(笑)。ツー・カーでやれるし、彼のメロディも好きで、それが僕のストーリーに乗ったときの効果も十分わかっています。やっぱり植松さんを信頼していますね。
――「ファイナルファンタジー」とのコラボレーションBGMも収録されていますが、こちらはどのように決まったものなのでしょうか?
坂口氏:あれは先ほども説明したように、僕は「FF14」ファンなので普通に「極バルバリシア」がカッコいいなと思って、「FANTASIAN」のBGMボリュームを絞ってそれを流していました。それでプレイしていたら、これは楽しいなと思って。これがくっつかないかなーと思ったところがスタートです。
植松メロディなので、当たり前ですが親和性があるので、まったく違和感もありません。僕としては「FF14」だけもらえれば良かったんですけど。
――まじですか(笑)。
坂口氏:でも、せっかくやるならとふと思い立ち、そうだ、北瀬(北瀬佳範氏)に話せば「FF7」も可能なのかな? とか……もちろん「FF16」もある……できればいろいろ選びたいなと考え出して……そうこうしているうちに「FF14」拡張パッケージの「黄金のレガシー」も出て、そりゃもちろんこれもほしいでしょ……とか(笑)。
――欲が出てきたんですね!
坂口氏:はい。思い切り欲がでてしまいました。そうなるともちろんオリジナルFFな「ファイナルファンタジー ピクセルリマスター」もほしい! となり、かなりの量になってしまいました(笑)
――変更できるのはバトル曲だけですか?
坂口氏:バトルだけ入れ替わります。演出されているところは入れ替えられないですね。
吉田氏:作品性に関わる部分ですからね。バトルはオリジナルの曲が一番フィットしていますが、今回は「ディメンジョンシステム」もあるので、バトルに集中するときはバトルの曲を変えることができるのは、すごくいいアイデアだと思いました。ですので、バトル曲のみ変更可能になっており、コラボレーションさせていただいている曲も、すべて坂口さんが指定されたバトル曲です。
坂口氏:「ディメンジョンシステム」のバトルを「ビッグブリッヂの死闘」をかけてやりたいって、思うじゃないですか!
――ファンとしてはやってみたいですね(笑)。
吉田氏:やっぱりそこは植松さんのメロディですからね。
坂口氏:もちろん、植松さんにも相談しました。あの人も面白いことが大好きなので、「面白いじゃん!」といってくれました。それで実現した感じですね。
吉田氏:セットしておいてバトル中に流れるということではなくて、バトル中にいつでもどの曲にでも変更することができます。
――リアルタイムに変更できるんですか?
吉田氏:可能です。このあたりは、ミストウォーカーさんの技術力の高さだと思います。
――たしか、ランダムに設定しておくこともできるんでしたっけ?
坂口氏:ランダムにしておくと、飽きないという言い方はおかしいですが、違う曲でバトルが楽しめます。
――本日はありがとうございました!
幅広いプラットフォームで遊べるようになる「FANTASIAN Neo Dimension」。作り込まれたジオラマの世界を大画面かつ高画質で遊べるようになるだけでなく、声優陣によるボイスが王道ファンタジーRPGのストーリーを彩る。坂口氏と吉田氏の関係性によってこの度のリリースが決定した本作は12月5日に発売となる(Steam版のみ、12月6日発売)。
(C) MISTWALKER/SQUARE ENIX