インタビュー
「タワー オブ アイオン クラシックサービス」プロデューサー 坂本康弘氏インタビュー
坂本氏「原点にして至高の存在。それが『クラシックサービス』」
2021年7月9日 12:00
- 【クラシックサービス】
- 7月14日 サービス開始
- プレイ料金:無料(アイテム課金制)
エヌシージャパンは、PC用MMORPG「タワー オブ アイオン」において「クラシックサービス」を7月14日より開始する。
「クラシックサービス」は2009年サービス開始当初の「タワー オブ アイオン」バージョン1.2をベースとして、現行のライブサービスとは別のサービスとして展開されるものだ。その名が表す通り、当時の手ごたえや遊びごたえ、そして基本仕様は当時のまま、その環境をより楽しめるよう以降のアップデートでゲーム内に追加された要素などが盛り込まれている。
本サービスに関する情報は特設ページや配信番組等で少しずつ明らかにされてきたが、そもそも令和の今、サービス当初に立ち返る意図はなんなのか。当時は存在しなかった要素を導入するにあたり、その判断基準となったのはなんだったのか。新たなマネタイズ要素「シエルの機運」とは。
今回はサービスを前に次々に浮かぶ疑問をエヌシージャパンで「タワー オブ アイオン」のプロデューサーを務める坂本康弘氏に聞いてみたので、その内容をご紹介する。
「どこか面倒だけど面白い、楽しい」。クラシックサービスで「タワー オブ アイオン」の楽しみ方を再発見
――坂本さまは今年から「タワー オブ アイオン」のプロデューサーに就任されたそうですね。まず自己紹介をお願いできますか。
坂本氏:エヌシージャパンには2006年入社、社歴は15年になります。タイトル歴として明確な区分けでの業務経験はなく、PC全タイトルのマーチャンダイジングやアライアンス、その他BtoB関連業務を行なってきておりまして、2006年以降のパッケージや書籍、MD(グッズ系)ビジネスにほぼ関わっておりました。
ゲーム歴というかゲーム業界歴は長く、新卒でゲーム会社に入社以後、現在まで25年ずっとゲーム業界で仕事をしてきました。コンシューマー、アーケードいずれの業態でも業務経験があります。また、「タワー オブ アイオン」単体ではサービス開始後に販売したすべてのパッケージ商品の企画、販売に関わっております。
――ありがとうございます。早速ですが、「クラシックサービス」とはどんなものですか?
坂本氏:2009年「タワー オブ アイオン」サービス初期のゲーム環境を、忠実に再現した復刻サーバーです。最も人気が高く、ゲームバランスも最も評価が高かった時期の環境を再現することを目指したサービスとなります。
――現行の「アイオン」は当時からアップデートを重ねて大きく変化しています。当時のゲーム性とはどんなところが変わっていますか?
坂本氏:現ライブサービスと比較した場合の大きな違いは、キャラクター強化や活動エリアに最も大きな違いがあると感じています。現在は「変身契約書」と呼ばれる変身システムがキャラクター性能を大きく左右するシステムとなっており、武器の強さや強化値だけで強さが決まらないのが大きな特徴です。また、サービス初期に天族、魔族の両種族がPvPを行う主戦場は、相手種族エリアへの潜入か、もしくは“アビス”と呼ばれる共闘エリアの2択しかありませんでした。
一方で現ライブサービスでの主戦場は龍界フィールドと言われる地上エリアが主体となっています。それら内容を含めクラシックのゲーム性は、原点に立ち返り、相手種族エリアへの潜入とアビスでの戦いがメインとなり、相手種族との遭遇戦などが発生しやすく、常に緊張感をもってゲームプレイが楽しめると考えます。
――そもそも「アイオン」の面白さはどんなところにありますか。
坂本氏:世界設定上、天族と魔族に分かれ対立する構図が作られていますが、それぞれの種族に正義があり絶対悪がない世界での対人プレイが楽しめる点だと思います。同種族の結束感と対立種族との抗争の必然性と正義により、他ゲームでは味わえないロールプレイの醍醐味が体感できると思います。
――「クラシックサービス」でバージョン1.2がベースとなる理由を教えて下さい。
坂本氏:「タワー オブ アイオン」はアップデートを重ねるごとに大きな変化を生み出してきました。アトレイアの世界に大きな影響を与える「龍帝」とよばれる絶対的な存在により、以前の大陸が消えて新しい大陸が出現したり、さまざまなコンテンツやシステムも時代によって大きな変化を重ねてきました。
ただ、その歴史の流れの中で特に高い評価を受けてきたのがサービス初期のコンテンツやシステム、ゲームバランスであり、その当時の環境を望む声が非常に大きかったことが、今回のクラシックサービス誕生に繋がりました。原点回帰という言葉に集約される通り、まさにアイオンの原点である正式サービス開始時のバージョン1.2を選択したことが要因と考えます。
――そこから未来のバージョンの要素を入れた理由と、導入を決定した要素の選定理由を教えて下さい。
坂本氏:原点回帰という命題でありながらも、サービス初期のゲームバランスや要塞戦スケジュールなど、当時のプレーヤーに改善要望を頂いていた事項もいくつかありました。それらはその後のアップデートで改善され評価をいただいており、それらの内容については先行して導入するよう準備されたと認識しています。
――中でも「両手武器合成」や「リムーブショック」の導入は特にPvPとクラス間バランスにおいて大きな影響があると思います。あえて実装を決めた目的や理由を教えて下さい。
坂本氏:クラス間のバランス調整において、これらシステム導入は大きな影響があったと記憶しています。その観点から、よりクラス間の実力が伯仲するよう調整されたと考えられます。
――スティグマがNPCより購入可能になったのは非常に嬉しい反面、マーケットでの取引を通じた金策に影響が出る気もしますが、これはどういったバランスになっているのでしょうか?
坂本氏:NPC販売されるスティグマは一部のみとなっていますのでご安心ください。またこれらスティグマは多くの方が取得できるようにすることで、PvP戦闘での攻撃手段の多様さを生み出せるので、対人戦での攻防もより楽しめると考えています。
――当時のプレーヤーとして「アビス」の復活が非常に嬉しいです。時空の亀裂の時間も増やすという発表がありましたが、「クラシックサービス」でも対人推奨というか、2+1勢力の激しい争いが楽しめるのでしょうか。
坂本氏:やはりアイオンの醍醐味は対人戦にあると思います。またクエストやミッションなどを通じて、必然的に相手と戦う機会が誰にでも訪れます。ディーヴァに転生してアビスの地に到達したら、もうそこには相手種族との抗争に否応なく巻き込まれていきますので、そこで自種族との高い結束感と、敵対種族との罪悪感の少ない戦闘体験により、他ゲームでは味わえない楽しさが得られると思います。
――先日「炎の神殿」や「ドラウプニル洞窟」を見せていただきました。これらは当時のプレーヤーにとって特に思い出深いものだと思いますが、ライブサービスのものとはどういった違いがあるのでしょうか。
坂本氏:まず「ドラウプニル洞窟」は現ライブサービスでは存在しません。「炎の神殿」は存在しますが、現ライブサービスでは多くのプレーヤーがレベル上限80に到達しており、「炎の神殿」はレベリングの通過点で訪れるダンジョンです。一方、クラシックサービスの「炎の神殿」は1.2バージョン時代を代表するIDでゲーム中盤で何十回(人によっては何百回)も通うダンジョンです。
特にクロメデからドロップする「クロメデ武器」シリーズは、ゲーム初の“伸びる武器”という特徴から、多くのプレーヤーが憧れ、必死で獲得を試みた装備です。このゲーム中盤での装備ながら伸びる特徴も加え、バージョン1.2環境で主軸となる装備です。ドラウプニル洞窟でも「第47レガトゥス武器」シリーズが獲得できることから、現ライブサービスでのポジショニングとは大きく異なり、これら2種のIDはクラシックサービスにおける花形ダンジョンといえる存在であると考えております。
――新たなマネタイズ要素として「シエルの機運」、「ディーヴァ パス」が導入されますが、これらはそれぞれどういったもので、どういった意図のもと実装されたのでしょうか。
坂本氏:まず「シエルの機運」は従来型の定額サービスではない、新たな利用権としての意図で導入されています。従来の定額サービスモデルでは、利用料金を支払うことでゲームがプレイできるようになりますが、それではクラシックサービスを体験したい方への間口を狭めてしまう要因になると考えられました。
その観点から、毎日1時間だけでもゲーム体験ができるよう「シエルの機運」が全プレーヤーに適用され、それ以上に濃密に遊ぶ場合は、利用権を購入いただきプレイを続けていただきたいとの思いがあると考えます。また、「ディーヴァ パス」においては、毎日のプレイする動機や目的を明確化し、プレイを飽きさせないことと、キャラクターの育成支援が目的になっていると考えます。
――タイトルを通じて、個人的に思い出深いエピソードなどはありますか。
坂本氏:IDではやはり「炎の神殿」が思い出深いですね。当時在籍したレギオンに連れまわされて何度もチャレンジしたんですが、結局自分には「クロメデ武器」がドロップすることはありませんでした。他のメンバーが全員入手できていたので、本当に悲しかったです。また、クラスは「シャドウ ウイング」で遊んでおり、時空の亀裂から敵対種族エリアに侵入し、「シャドウ ウォーク」でいろいろなエリアを巡っていたことを覚えています。
採集&製作も好きで、敵対種族エリアでも採集に走り回っていて、できるだけ人がいない時間帯に動きたかったので、そのために朝4~5時ぐらいに起きてプレイしてました。そんなことが続いたので、寝不足で何度も寝坊して遅刻しそうになったことも良い思い出です。
――「クラシックサービス」は、どんなプレーヤーに、どんなふうに遊んでほしいですか?
坂本氏:やはり当時の楽しさを思い出しながらプレイしてもらえるのが一番ですね。採集や製作を行ない、製作物を販売して金策しつつ、敵対種族との偶発戦や要塞戦で戦果をあげる。日常は生産活動し、有事には戦闘に駆け付ける「傭兵」のような楽しみ方ですかね。準備段階での細々としたことが面倒くさいと感じる方には向かないと思いますが、我々が育ってきた往年のロールプレイングゲームでは日常の生産活動も含んだ楽しみ方があると思います。「どこか面倒だけど面白い、楽しい」そんな楽しみ方を再発見してもらえると嬉しいです。
――最後に、実装を楽しみにしているファンに向け、コメントをお願いいたします。
坂本氏:アビスがあり、採集があり製作もある。クラスは8種のみ。原点にして至高の存在。それが「クラシックサービス」だと考えています。12年前のコンテンツでありながら、秀逸なシステムと世界感、ゲームバランスは最先端の他ゲームサービスに全く引けを取りません。当時を懐かしんで体験いただきつつ、時代を超えても「やっぱり面白いものは面白い」そんな印象を持ってもらえたらうれしいです。皆様の期待を裏切らないサービスを目指しますので、ご支援よろしくお願いします。
――ありがとうございました。
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