インタビュー

プレーヤーによる斬新なヒーロー像……「Marvel's Avengers」開発者インタビュー

ヴィランのモードックの掘り下げ、自由度など各担当者のこだわりを聞く

発売日:9月4日予定

価格:
通常版 8,778円(税込)
デラックス版 10,978円(税込)
リアッセンブル版 27,478円(税込)
PS Store版 9,878円(税込)

 スクウェア・エニックスはプレイステーション 4/Xbox One/PC向けアクションアドベンチャーゲーム「Marvel's Avengerss(アベンジャーズ)」の最新情報配信番組「Marvel's Avengers War Table」が公開された。

 この「Marvel's Avengers War Table」ではCrystal Dynamicsの開発者により本作のディテールが詳しく語られた。本稿はこの公開に先がけた開発者インタビューをしていきたい。

 「Marvel's Avengers」は、アイアンマンやハルク、ソー、ブラックウィドウといったアベンジャーズのヒーロー達が活躍する。プレーヤーはヒーローを操作し様々なステージへと挑む。本作の大きな特徴は"自分だけのヒーローを追求できる"というところ。各ヒーローをカスタマイズ、「遠距離攻撃が得意なハルク」、「現代風なファッションでキめたソー」……など、外見を含めた様々なポイントでプレーヤーのこだわりが活かせる。そしてシングルプレイだけでなく、マルチプレイで様々なプレーヤーのヒーローと共闘できるのだ。

 「Marvel's Avengers War Table」ではこれらの各要素が明らかになった。こちらのレポートは別稿で掲載しているので、ぜひ合わせて楽しんで欲しい。

【「Marvel's Avengers WAR TABLE」】

 インタビューでは「Marvel's Avengers War Table」で明らかになった様々な要素に対して、開発者の思い入れを掘り下げてみた。アクションゲーム開発メーカーであるCrystal Dynamicsは「アベンジャーズ」という世界的にメジャーなテーマにどう挑んだか? 今回明らかになった新ヒーロー「ミズ・マーベル」ことカマラ・カーン、そして敵となるヴィラン「モードック」への開発者の想いは? そして「メインミッション」と並び立つゲームモード「ウォーゾーン」とはどんなものか? これらの要素が明らかになった。

Crystal Dynamicsだから提示できる新しい「アベンジャーズ」

 今回のインタビューに登壇したのはCrystal Dynamicsのスタッフは4人。開発リーダーであるHead of StudioのScot Amos氏と、クリエイティブディレクターのShaun Escayg氏、コンバットディレクターのVince Naoili氏、ウォーゾーンディレクターのPhilipe Therien氏だ。メディアからの質問にそれぞれが担当分野でコメントしてくれた。

 「Marvel's Avengerss(アベンジャーズ)」の最大の魅力はCrystal Dynamicsによる新しいアベンジャーズの"創造"だ。80年以上の歴史を持つマーベルコミックスから、映画とは異なる全く新しい「アベンジャーズ」の物語を紡いでいくこととなる。

 Crystal Dynamicsは「トゥームレイダー」でアクションへの評価の高い開発メーカーである。その手腕でどう「アベンジャーズ」を描くのか? 「Marvel's Avengerss(アベンジャーズ)」はヒーローのアクションに注力したアクションアドベンチャーだ基本はストーリーに沿った形でステージをクリアしていく。ステージに現われる様々な敵をヒーローならではのアクションとスキルで、撃破していく。

 アイアンマンならば全身武器のパワーアーマーで。ソーならば凄まじい雷で、ハルクならばその怪力で。プレーヤーが憧れるヒーローをどのようにアクションゲームで表現するか。コンバットディレクターのNaoili氏は、ヒーローのアクションは多様性を強く気をつけたと語った。それぞれのヒーローならではの動き、能力を生かしたアクションを心がけたとのこと。

 例えばハルクは体躯が大きいので他のキャラクターにはない「掴みアクション」がある。アイアンマンは360度どの敵にも注意が向けられる。これらを考え、1つ、1つ作って行くのは大変だがやりがいがあったという。

ヒーローミッションはシングルプレイでのキャンペーンに盛り込まれている要素で、各ヒーロー各々にフォーカスを当てたものになる。アイアンマンはA-dayで墜落したヘリキャリアを修理するミッションがある。ヒーローミッションにはそれをクリアしないとメインミッションが進められないものだけでなく、メインミッションの進行には影響しないが、クリアするとそのヒーローを強化させるギアが手に入るものなどもある。

シングルミッションはメインのキャンペーンを進めて行くのが大きな目的となる。しかしそのストーリーを補完したり、ヒーローのキャラクターを掘り下げる良うなミッションも用意されているとのことだ。

各ヒーローへのCrystal Dynamicsならではの解釈、アクションやキャラクター性をどのように描写されるかが楽しみだ

 一方Therien氏は、マルチプレイが可能なウォーゾーン・ミッションはメインミッションでは触れられなかったヒーローの意外な一面が見えるようにもなっていると補足した。本作ではハルクはかなり深く悩むシーンがある。自分がバナーなのか、ハルクなのか、アイディンティティーで悩みを抱える。この彼の悩みに直面するミッションなど、メインストーリーでは触れられないヒーローの内面に踏み込むようなミッションも用意されてるとのことだ。

 Naoili氏は戦闘でのアクションに話を戻し、ヒーロー達のカスタマイズに対して語った。ヒーロー達はギアを装備して能力をカスタマイズしていく。ギアの中には敵を縮めて攻撃力や防御力を下げる「縮小」といった強力な「パーク」を持つものもある。巨大な敵も縮めてしまえば"掴みアクション"ができるようになる。それはボスキャラクターにすら有効だ。本来巨大な身体を持つ敵を縮めてしまえば、敵を投げ飛ばしピンボールの球のように跳ね回らせることもできる。ギアには驚くべき効果のあるものもあり、ゲームの大きな楽しみの1つだという。

 ローンチ後の追加要素も本作の大きな魅力だとAmos氏は語った。新たなヒーロー、新たなヴィラン、新しい物語に、新しいステージ。これらは無料でアップグレードされ、様々な要素が追加されていくという。

ヒーロー編成画面

 そしてやはりヒーロー達が戦うこととなるストーリーも気になるところ。Amos氏は「今回のキャンペーンはあくまで序章です。私達が構想している全体の始まりに過ぎない。今回のキャンペーンで語られる要素はあくまでこの世界はどんな世界か、キャラクター達はヒーローとして、ヴィランとしてこの世界でどういうスタンスでいるか、そういったことを示すところだと思って欲しい」と言葉を重ねた。

 「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」はコミックの様々な要素を盛り込んでいく。マーベルには膨大な歴史があり、作品作りのインスピレーションとなる素材の宝庫だ。世界観はSF要素まで含み広がっていく。今は明かせないが、今後も壮大な構想を持っているという。

 マーベルコミックスは80年以上の歴史がある。映画化もされ、多次元宇宙の概念など1人のヒーローを例にとっても様々な解釈、アレンジがある。そして「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」は、Crystal Dynamicsが提示する独自のマーベル世界だ。オリジナルの設定や新しい解釈も盛り込んでいる。例えばプロローグで活躍するキャプテンアメリカの立てに描かれている星のバランスは、従来のキャプテンアメリカの盾のデザインと異なる。Crystal Dynamicsならではの要素も大いに楽しんでもらいたいとAmos氏は語った。

ヒーロー、カマラ・カーンとヴィラン、モードックの物語となるメインミッション

 「Marvel's Avengerss(アベンジャーズ)」で大きな魅力がストーリーである。映画ともコミックとも異なる新しいストーリー。どんなヒーローが登場するか。そしてどんなヴィラン(悪役)が登場するか気になるところだろう。今回、これまで隠されていたメインミッションで中心となるヒーローの「ミズ・マーベル」とヴィランの「モードック」の存在が明らかになった。

 今回紹介されたモードックはあまり知名度が高いヴィランではないかも知れない。しかしこのキャラクターは1967年のコミックに登場したキャラクターであるとクリエイティブディレクターのShaun Escayg氏は語った。今作では変異した人々「インヒューマン」を狩り立てる組織「AIM」のボスとしてヒーロー達の前に立ちはだかる。彼の本名は「ジョージ・タールトン」。彼自身も「A-day」での事故に巻き込まれた1人だった。

ジョージ・タールトン、彼はAIMのリーダーであるがその思いは暴走していく

 Escayg氏は、モードックは初期から構想されていたが、開発を進めて行く上で変化して行ったキャラクターだと語った。ヒーローとヴィランは似て非なる存在だ。ヒーローは称賛されている一方、恐れられている存在でもある。

本作のオープニングはヒーローたちを称える「A-day」から始まるが、大きな災厄が起こり、それはアベンジャーズのせいだと言われてしまう。モードックはその中で災厄に巻き込まれる。この過程は他のヒーローと重なるものだ。彼は事件をきっかけに起きた人々の変異現象を、科学の力で制御しようとする。その気持ちは善意で行なわれており、新しいヒーローともいえる行動だった。

しかしその行動は暴走し、歪み始め人々への支配につながって行く。それはヒーローが一歩間違えれば進んでしまう道でもあるという。彼らとヒーローがどうなっていくかは、興味が惹かれるところだ。

「Marvel's Avengers War Table」でフォーカスされたカマラ・カーン。彼女は「ミズ・マーベル」として活躍する

 「Marvel's Avengers War Table」では「ミズ・マーベル」である「カマラ・カーン」にフォーカスされている。カマラはA-dayをきっかけに力に目覚めたインヒューマンのひとりで「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」のメインストーリーで重要な役割を果たす人物だが、モードックも彼女と同じくらい重要な人物であり、メインミッションはカマラの物語であると同時に、モードックの物語でもあるとEscayg氏は語った。

 A-dayにより大きな災厄が起きただけでなく、人々がインヒューマン化する現象が起きる中、事件の引き金となったアベンジャーズは解散、キャプテンアメリカは行方不明となる。そういった混乱を収束しようと台頭したのがモードックが設立したAIMだ。科学の力、そして調整した力で世界の治安を守ろうとするAIMは、人々に圧迫を与える存在となってしまっていた。

 カマラはそんな状況に疑問を抱き、そしてAIMの秘密を知る。秘密の鍵を握る人物としてカマラはAIMに追われ、その中で今や活動を止めていたアベンジャーズの心に火をつけていくのだ。Escayg氏は「しかし、このメインストーリーは『Marvel's Avengers(アベンジャーズ)』のほんの一部です」と語った。ちょっとだけ情報を出すと、「この世のものではない強力なヴィラン」なども登場を控えているとのこと。物語はこのメインミッションの後も大きく膨らみ、続いていくのだ。

 話が広がっていく、というところではウォーゾーン・ミッションだとTherien氏は語った。自分の育てたヒーローと他のプレーヤーと協力してミッションを進めるウォーゾーン・ミッションは冒険の舞台も豊富だ。砂漠、宇宙ステーション、深海、ジャングル、ヒーローは世界中で活躍するという。メインミッションで語られる物語だけでなく、この世界では様々な場所で物語が進行しており、ウォーゾーン・ミッションはこれらを体験できるミッションがたくさん盛り込まれるという。

ヴィランであるモードック。1967年のコミックから登場しているキャラクターだ

様々な遊び方が可能なオンライン要素

 そしてやはり気になるのが、メインミッションと並び立つ大きな目玉のウォーゾーンである。このウォーゾーンは最大4人でのオンラインの協力プレイが可能。ウォーゾーン・ミッションは言わば"オンラインゲーム"ともいえる要素だ。オンラインゲームはバランスやコミュニティへのケアなどシングルプレイとは異なる"哲学"が要求される。これまでアクションゲームを多く手がけてきたCrystal Dynamicsにとって、初挑戦となるオンライン要素の開発、運営に対してどのようなことを気をつけているだろうか?

 Head of StudioのAmos氏は「弊社では『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』のDLCなど、オンラインの協力要素などはやっているが、確かにここまでオンライン要素を強く出すタイトルは初めてだ」と語った。この初めての挑戦に対し、新たにCrystal Northwestというスタジオを立ち上げるなど今回のオンライン要素に対して力を入れているという。

スキルや外見をカスタマイズしていく。プレーヤー達それぞれのヒーローに出会えるのも大きな楽しみ

 世界中のプレーヤーがそれぞれ自分だけのヒーローを育て、そして皆で協力して行くという。ウォーゾーン・ミッションの要素は、これまでとは異なるノウハウを求められる。だからこそ様々なチームを結集し、ユーザーに楽しんでもらえるゲームを作っているという。

 オンライン要素であるウォーゾーンディレクターのTherien氏は、「ウォーゾーン・ミッションはマルチプレイを楽しめますが、実はソロプレイも可能です」と語った。ウォーゾーンは複数のプレーヤーがパーティーを組み、協力してミッションに挑戦していくが、メンバーが足りない場合AKキャラクターとしてヒーローを入れたり、自分以外はAIキャラクターにする「ソロプレイ」もできる仕様としているという。

 このようにしたのは「皆に楽しんで欲しいから」とTherien氏は語った。マルチプレイが余り好きでない人にも楽しんでもらえる様に、ソロプレイ要素は入れたかったという。ウォーゾーンは決してマルチ専用のゲームではないとのことだ。

 さらにAmos氏は補足として"自由度の高さ"を強調した。友達とがっつりヒーローチームを組んで様々なミッションに挑戦するのもいいし、フリープレイで他のプレーヤーと協力しても、ひたすらソロにこだわるのもいい。どのようなプレイスタイルでも楽しめるゲームを目指していると語った。

接近戦が得意、遠距離が強いなど戦い方も追求できる
描かれる物語も大きく期待したい

 もっともっとゲーム要素のディテールや、システムとしての革新性なども質問したかったが、これらは今後の機会にしていきたいと思う。特にマルチプレイでは、「遠距離攻撃に秀でたハルク」、「接近戦に特化したソー」など各プレーヤーの驚くべきヒーロー像など従来のマーベルコミックスを題材にしたゲーム以上に楽しいビジョンを見せてくれそうだ。本作がスタートした後、どのような世界を見せてくれるか、本当に楽しみだ。