インタビュー

「十三機兵防衛圏」は音楽にも物語に没入するための様々な仕掛けがあった

オリジナルサウンドトラック発売に当たって

――2月27日にいよいよ「十三機兵防衛圏」のオリジナルサウンドトラックが発売されるということで、凄いたくさんの曲がありますけれど、崎元さんと金子さんのそれぞれの一番推しの一曲などをお伺いできればと思うんですけれども。

「十三機兵防衛圏」オリジナルサウンドトラック

崎元氏:「渚のバカンス」のフルバージョンが入りますので、やはりそちらでしょうか。サントラでは「Seaside Vacation」という曲名です。

――「渚のバカンス」のフルバージョンとは、バトルでかかっていたアレではないのですか?

崎元氏:バトルのものよりも長くなっています。あれは1ループだけなんで。

――あれがフルバージョンだと、ずっと思っていました(笑)。ちなみに「渚のバカンス」のフルバージョンっていうのは、新たに録音されたんですか?

崎元氏:割合最近、録りました。構想は最初からあったんですけど、時間がなかったんですよ(笑)。とにかくできる時にやろうという風に言ってたんですけど、結果から言うと発売した後に録音しなおしたという。

 神谷さんからも色々あったんですが……そこはあんまり言わないでおきますので、サントラを聴いてのお楽しみということで(笑)。

――金子さんは、推しの一曲とかありますか?

金子氏:やはりタイトル曲ですね。ちなみに、タイトル画面で曲が変わるあの演出、どうでした?(笑)

――え?(笑) 良かったと思いますよ。ラジオみたいな感じありますよね。そして「LOAD GAME」とかの選択肢を選ぶと、スイッチがはいったみたいに大きくなるのいいですよね。

金子氏:そのスイッチが入ったみたいに切り替わるのが、なんで唐突に変わったの、みたいにユーザーさんに思われていないか、心配で……(笑)。

――確かに切り替わると「お?」とは思うんですけれども、おかしいという気持ちになるのは多分ないかと思いますよ。個人的な感想ではありますけれど。

金子氏:普通、タイトル画面は最初からちゃんとしたバージョンの曲が流れていて、選択肢を選ぶとちょっと音楽が変わるというパターンが主流なんですけれど、「十三機兵防衛圏」の場合は、その逆のことをしているので……ある意味で結構、斬新なんですが。

――そうですね。なので私は毎回、「LOAD GAME」を選択した状態のまま放置して聴いていました。音楽を聴くためにわざと放置することは様々な場面で多々ありますが、タイトル画面でああいう形で放置したのは、多分初めてです。

金子氏:あれには一応意図があって、タイトル画面で奥のほうに第二世代の機兵が立ってるじゃないですか。最初、曲はあそこから鳴っているっていう設定なんですよ。コントローラのボタンを押すのが機兵のスイッチをONにするような感じで、ONにしたら自分の耳に直接聞こえてきたという演出をやれるといいなと思って。

タイトル画面をそのままにしておくと音楽はうっすら聴こえるくらいで、メニューを選ぶと音楽が大きくなる

――なるほど、それはなかなか気づいたファンはいないかもしれませんね。ちなみにサントラに収録される音源は、ゲームと同じものになるんですか?

崎元氏:基本的には同じなんですけれど、どの曲も、楽曲として聴きやすくしていますね。

金子氏:ゲーム内の、特にアドベンチャーパート用の曲は、ボイスが鳴るうえにボリュームをある程度下げて再生される前提で調整していたのですが、サントラでは曲が単体として成立するように調整をしています。バトル曲についても、ボイスや効果音が派手に鳴りまくる前提の調整をしていたので、それを解除しています。全体として、曲の印象はかなり違ったものになっていると思いますよ。

 ちなみに、バトル曲は展開が何段階かあるのですが、それらはすべて収録しています。プレイ時には気づかなかった展開があるかもしれませんので、どうぞお楽しみください。

――バトル音楽も、放置で聴こうとして「さっき聴いた音楽と同じものにならないぞ」と思っていました。そのあと、操作すれば変わるんだと気付いたんですが。

金子氏:そうなんですよ。プレーヤーが能動的に動かないとそういう風になりますし、でも実際のバトル中では弾幕が行き交うバトルなので効果音がガンガン鳴っているし、リアルタイムに戦況が動くバトルですから、曲だけに集中できないじゃないですか。なので、音源は同じであっても改めてじっくり聴いてみてほしいです。

――戦闘曲はバトル中インタラクティブに変わっていくというお話を先程しましたが、サントラにはこれが一曲として入る感じになるんでしょうか?

金子氏:いい感じのタイミングで次のフェーズに切り替わるような状態で一本の曲という感じになっていますね。

崎元氏:曲数が多かったので詰め込み感があるんですけれど、何とかCD4枚に収めました……。

――サントラの発売が本当に楽しみですね。それでは最後に「十三機兵防衛圏」のファンの方に一言頂ければと思います。

金子氏:このゲームを楽しんでいただけたのであれば、それだけで嬉しいですし、個人的には、とにかく丁寧に作ったつもりなので、音がいい感じに話を補完しているように感じていただけたのであれば飛び上がって喜んじゃう気持ちです。サントラを聴くとそのシーンが思い浮かぶ、なんてことがあれば最高ですね。

崎元氏:ヴァニラウェアさんの作品はファンタジーというイメージが強いと思うんですけれど、彼らはあまりそういうことにはこだわっていなくて、「十三機兵防衛圏」も舞台が現代になっただけだというくらいの意識で作ってるんだと思うんですよね。

 なので僕たちも、舞台や表現方法がちょっと変わっただけだという意識でやってるんですよ。もちろんファンタジーとはだいぶ雰囲気が違う作品にはなりましたが、やってきたことは変わっていないと思います。

 さっき金子も言いましたけど、あのゲームの中に入り込めるように打てる手は全て打ったつもりなので、それがちゃんと皆さんに届いて、ゲームに深く入り込めていると嬉しいです。

 あとサウンドトラックなんですけど、音楽としてちゃんと作ってあるので、ゲームの中では音楽だけが突出するものではないですが、サウンドトラックでは細かい部分も聴けますので、僕たちが色々やっていた仕掛けであったりとか、手間は掛けたもののどれくらい効果があるんだかよく分からないこととかも含めて(笑)、細かく聴いて頂ければ嬉しいです。

――ありがとうございました。