インタビュー
「バイオハザード RE:3」&「バイオハザード レジスタンス」開発陣インタビュー
これまで培ったノウハウと新たなチャレンジから生まれた"古く新しい"最新作!
2020年2月26日 01:00
- 4月3日 発売
- 【PS4パッケージ版】
- 価格:7,800円(税別)
- 【COLLECTOR'S EDITION】
- 価格:24,800円(税別、PS4のみ)
- 【DL版】
- 7,091円(税別、PS4/Xbox One/PC)
カプコンは、4月3日発売予定のプレイステーション 4/Xbox One/PC用サバイバルホラー「バイオハザード RE:3(以下、バイオ RE:3)」及び「バイオハザード レジスタンス」において、メディアツアーを開催した。
メディアツアーでは丸2日間に渡る「バイオ RE:3」の初試遊や「バイオハザード レジスタンス」の新マップ・新キャラクターの体験に加え、本作のプロデューサーを務める川田将央氏、同じくプロデューサーのピーター・ファビアノ氏、ディレクターのレッドワークス代表坂田聖彦氏のお三方にインタビューを行なうこともできた。
試遊の手触りを踏まえて、色々と気になることを聞いてきたので、こちらの内容をご紹介したい。
メディアツアー記事一覧
・ 「バイオハザード RE:3」試遊レポート
https://game.watch.impress.co.jp/docs/kikaku/1236551.html
・「バイオハザード レジスタンス」試遊レポート
https://game.watch.impress.co.jp/docs/kikaku/1236571.html
・「バイオ RE:3」&「レジスタンス」開発陣インタビュー (本稿)
https://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/1236590.html
――本日はよろしくお願いします。まず、12月に「バイオ RE:3」が発表になりました。なぜ今回「バイオ RE:3」を作ることになったのでしょうか?
川田氏:まず初期の「バイオハザード」は3作品で⼀区切りと考えていて、「バイオハザード2」と「バイオハザード3」の現代風アレンジもいつか行ないたいと考えていました。そこでまずは「バイオハザード RE:2(以下、バイオ RE:2)」を実際に開発してみて、そこで得られるものを「バイオ RE:3」のフィードバックしながら開発を行う方針としました。
ピーター氏:今回「バイオ RE:3」に関しては過去にオリジナル版の「3」の開発を担当されていた方に実際に入っていただきました。我々が感じる以上の「オリジナル愛」を出してもらえないかなと思ったからです。また、オンライン技術に長けた、我々にはないノウハウを持った開発会社さんにも入っていただいて、お互いに良い開発を行なっていくことをコンセプトとして開発を続けておりました。
――今回の「RE:3」は少し原作と違うなと感じたのですが、具体的に原作と変わっているところと変わっていないところを教えてください。
川田氏:ゲームのコンセプトは変わっていませんが、ディティールや進行に関して様々なアレンジを加えています。やはりホラーゲームであるということと、そもそもエンターテインメントとしてゲームを考えた時に「バイオ RE:2」は比較的原作に忠実なリメイクを目指していたと思います。今回の「バイオ RE:3」はそういった意味では"冒険している"リメイクになっているのかなと思います。
――アクション性もかなり強いですね。
坂田氏:それも元々の「3」の立ち位置と同じと思っていただいていいかなと思っています。オリジナルの「バイオハザード」や「バイオ2」の発売後、遊びやすさや所謂ラジコン操作のプレイスタイルから、「もっと遊びやすくしてほしい」、「もうちょっとアクション寄りの『バイオハザード』が遊びたい」という声を貰っていました。なので、ちょっと遊びやすく、ちょっとアクション寄りの「バイオハザード」を作ろう、と言うところからオリジナル「バイオ3」の開発は始まったんです。
今回の「バイオ RE:3」も密室の中での恐怖体験を描いた「バイオハザード7」や「バイオ RE:2」に続く作品として、外の世界に出て行って、アクション要素を強めた作品にしようと言うところで、当時の「バイオ3」と同じところを目指して作っています。
――そういった経緯があったんですね。アクション性が強いせいか、ネメシスの動きがものすごく速く感じました。
川田氏:最初にあったイメージやポスターのイメージからはあのスピードが出るとは思わないですよね。ネットなどではまだ「アイツ(ネメシス)走らないんじゃないか」といった書き込みがあったりするんですけれど、いやいやいや………(笑)。その辺りは「バイオ RE:2」のタイラントをライバルとしています。
坂田氏:結局「バイオ RE:2」のタイラントとの対比というか、「バイオ RE:2」のタイラントが、原作の「3」のネメシスと同じような立ち位置で動いていたんです。正直我々としては「俺たちはネメシスを作らないといけないのに」という気持ちがありました。「なんてことをしてくれてるんだよ(笑)」と。
もちろん実際にタイラントを怖くするために「バイオ RE:2」であのような立ち位置にしたというのは、納得ができるところでした。なので「バイオ RE:2」を遊んだプレイヤーがネメシスと対峙したときに、より怖い思いをしてもらうため、タイラントを超えるのを目標に作ったのが今のネメシスです。「タイラントを超える」というハードルが、作品のクオリティアップにつながったと感じています。
――なるほど。ちなみに気になったのですが、今回のネメシスには鼻がありますね……。
坂田氏:今回ネメシスの鼻を気にされる方は多いですね。
ピーター氏:僕も初めて見たとき、同じことを思いました。
坂田氏:今回のデザインはアートディレクターのこだわりですね。鼻のあるなしは僕自身はこだわってなかったので、いいデザインだと思って採用しました。原作の時からそうですが、ネメシスは試作品のB.O.W.、いわばプロトタイプで未完成品なんです。
なので、いろいろなところが歪だったり、怪しげな機械が剥き出しになったりしてます。コスチュームも「製品」であるタイラントはちゃんとした制服を着てきますが、ネメシスは取ってつけたような拘束具を巻いているようなデザインになっています。異形のおぞましさみたいなのを纏ったような状態のデザインがすごくイケてるなと思って採用しました。
川田氏:タイラントベースなので鼻があるってことですね。
坂田氏:そうですね。
川田氏:僕もアートディレクターに「鼻ちょっと違和感ない?」っていう話をしたんですよ。そうしたら今回はディティールにこだわりたいという話でした。出来るだけ設定に沿ったネメシスにしたいので、タイラントをベースに寄生生物を植え付けた上位互換、さらに未完成の試作品としてのデザインワークだ、ということで僕も納得しました。
ピーター氏:憶測ですけれど、オリジナル版のネメシスは当時のハードスペックで表現できるディティールの範囲内でデザインされたのではないかと思います。デザインの優先順位の中で鼻はあまり重要でないという風に考えられたデザインかなと思いました。
坂田氏:ハードスペックによる制約が大きかった昔は、表現できる範囲でのデザイン性が求められていたんです。
川田氏:ドット絵の時代からゲームはいかにわかりやすい表現ができるかということが求められていましたので、細部(ディティール)に関してはオミット(除外)していて、パッと見た目だけでそれとわかるようなデザインが求められていました。
坂田氏:今の眼で「3」のゾンビとか見たらカクカクですからね。「2」までは1体あたり180ポリゴンくらいだったですが、「3」ではもっとたくさんゾンビを出したいって言って1体あたり120ポリゴンくらいまで削ったんです。ゾンビが段ボールかと思うくらいでした(笑)。当時はそんな苦労をしてましたね。
――今回登場したほかのクリーチャーのドレインディモスやハンターγもかなり気持ち悪かったです。
川田氏:ハンターγ、かわいくなかったですか?(笑)
――……かわいい……ですか?
川田氏:丸いフォルムで(笑)。あれもB.O.W.の特徴からディティールアップした結果、あのフォルムに行き着きました。
坂田氏:基本はハンターがベースなんですが、ちょっと飼育の仕方を間違ったんです(笑)。本当は水陸両用の兵器として開発していたんですけれど、開発が中止になった失敗作という設定です。
ピーター氏:打ち棄てられて、あそこにいる個体だけ残ってるんです。きっとあの可愛さに抗えなくて、餌をあげている人がいたんです。
――今回体験したシーンは夜のラクーンシティでした。ネオンがたくさんついていてとてもきれいだと思う反面、とても孤独感を煽られました。原作をプレイしたときは気が付かなかったのですが、夜だったんですね。
坂田氏:「バイオ 3」の天気は曇天でしたから、昼と夜の違いがよく出せていなかったんです。本当は昼明るくて街を探検して気が付いたら夜になって、さっきまで明るくて見えていた道が見えなくなっている……というのを表現したかったんです。しかし、いろいろ限界があって、当時はなかなか難しかったですね。当時昼夜があることに気づいているユーザーは少なかったと思います。
――私も気づきませんでした。
川田氏:今回「バイオ RE:2」ではあまりできなかった街中探索というところでも、「バイオ RE:2」よりも少し前の時間だということで、ネオンがまだ光っていたり、人の気配があったりとかというのを描いています。
――今回も影や音などの演出が細かいですね。
坂田氏:そうですね。「バイオ RE:2」や「7」のころからすでにそうですが、「バイオハザード」はホラーなので音と光と影の表現というのはすごくこだわっていています。「バイオ RE:3」に関してももちろんそうですね。それを表現できるだけの「RE ENGINE」によって、「バイオ RE:2」と同じクオリティーで表現できてるなと思っています。
――今回主人公のジルもそうですが、特にカルロスの容姿がガラッと変わりました。これはどういった経緯があるのでしょうか。
坂田氏:カルロスは単純に物語で描きたかったものに合わせてリデザインさせてもらいました。ジルという1人の女性が未曽有のゾンビ災害から脱出するという物語、孤立無援の状態の中で唯⼀頼れる存在、パートナーとしてカルロスを描きたかったんです。もともとカルロスっていうのは、ちょっと若くて、ちょっと軟弱というような立ち位置だったんです。今回我々の表現したかったものが違っていたので、強い男にデザインを変えました。もともと設定上カルロスは南米出身なんですが、南米出身に見えなかったというのも大きいです。
川田氏:⼀応クラシックコスチュームでは、もともとのイメージに近い形に合わせています。
――今回のパートではカルロスとは無線越しで会話するくらいだったのでちょっと残念でした……。
坂田氏:完成版ではカルロスをプレイするモードもありますので、楽しみにしていてください。
――今回の「バイオ RE:3」の最大のポイントはどこでしょうか?
坂田氏:オリジナルと、今回の「バイオ RE:3」の立ち位置というのは変わっていません。そのうえで見た目はもちろんクオリティも上がって良くなっていますし、ストーリーも、原作のストーリーをちゃんとなぞりながらも、様々なアレンジを施しています。オリジナル「3」と同じ感覚で遊んでもらえるけれど、遊んだことのあるプレイヤーにも新鮮な気持ちでいろんなものを体験してもらえるように作っています。
おそらく多くの方は「バイオ RE:2」をプレイされて、「バイオ RE:3」に興味を持っていただいて購入する、という流れになると思うんです。「バイオ RE:2」の操作性などはちゃんと踏襲していて、スっと入れるようになっていますし、「バイオ RE:3」の味付けとしてアクション性が強めてあったり、閉鎖空間ではない屋外のホラー、ちょっと違った雰囲気のホラーというものを楽しんでもらえるようになっています。最近のバイオハザードのファンの方は「バイオ 7」や「バイオRE:2」からはじめたという方も多いと思います。そういう方にも密室ではないホラーというものをちゃんと体験できるようになっているのが1番大きなポイントかなと思います。
ピーター氏:今回は「バイオ RE:3」と⼀緒に「バイオハザード レジスタンス」を収録して、2つのタイトルで1パッケージを提供しています。リプレイアビリティの部分を担う、といいますか、オンラインに関しても今回は開発でチャレンジしながら制作していました。コンピレーションされた「バイオ RE:3」と「バイオハザード レジスタンス」の2つのタイトルでオンラインもオフラインも楽しんでもらえるようになっています。
――なるほど。ではその「バイオハザード レジスタンス」についてお聞きしたいのですが、今回の「バイオ RE:3」と「バイオハザード レジスタンス」はなぜ同時収録なのでしょうか?
川田氏:もともとそういうコンセプトで開発が始まりました。
ピーター氏:そうですね。
川田氏:コンセプトとして「ラクーンシティ」と「脱出」というところを同⼀にしています。「バイオ RE:3」のキャンペーンのボリュームだけでは「バイオ RE:2」と比較したときに少々寂しいのでは?という懸念がありました。そういったところから、連続でどんどん楽しめるオンラインゲームという物も作るべきではないか?というのは「バイオ RE:3」開発初期のころから議論されていました。
実は「レジスタンス」的な内容に落ち着く前には、キャンペーンと同じようなプレイ感覚のオンラインゲームを作ろうともしたんですが、やはり「バイオ RE:3」と似たようなゲームが並んでしまうのではなく、しっかりゲームを長く、何度も楽しんでもらえる形のオンラインゲームを目指そう、と言う事で始まった企画が非対称対戦サバイバルホラーゲームという形になり、完成まで漕ぎつけることができました。
川田氏:なので、もともと東京ゲームショウで「レジスタンス」を発表した時点ですでにゲームは2つあって、僕は都度「オフラインのキャンペーンもあるから期待しておいてね」と言っていたと思います。あれは「バイオハザード レジスタンス」を発表したとき「あ、『バイオ RE:3』じゃないんだ。」とあまりにもファンの人ががっかりしている感じが感じられたので、少しでも興味や期待感を持ってもらいたいなと思って言いました。近いうちにキャンペーンモードもしっかり発表するから待っててねとコミコンでも言っていましたね。
――てっきり「バイオハザード レジスタンス」のキャンペーンモードがあると思っていました。
川田氏:そこはわざとミスリードしてもらえるように言いました(笑)。すみません。
――確かに東京ゲームショウのときの「PROJECT RESISTANCE」の時のREが赤くなっていて、なんで赤いんだろうとは思っていました。
ピーター氏:海外だと「Resident Evil」なのでREが赤くてもすんなりと受け入れてもらえましたね。日本だと「バイオハザード」なのでちょっとわかりにくいかもしれないですね。
――今回体験させていただいたマスターマインドは全部で4人でした。東京ゲームショウで発表された「ダニエル・ファブロン」と12月に発表された「アネット・バーキン」。そして今回の体験で「アレックス・ウェスカー」、「オズウェル・E・スペンサー」が登場しました。このアレックスとスペンサー2人がマスターマインドに選ばれた経緯を教えてください。
川田氏:アレックスは「バイオ RE:2」に登場したときのまま、マッドサイエンティストの典型のような感じで登場するのですが、マスターマインドのイメージに1番近いのかなと思っています。もともとマスターマインドのベースで考えていたのが確かアレックスだと思います。
ピーター氏:アレックスは社内でマスターマインド(支配者)と呼ばれていましたね。
川田氏:スペンサーはもうシリーズの諸悪の根源みたいなキャラクターです。彼が指示を出したら、我々はすぐに動かなくてはいけないみたいな感じですね。でも悲哀を感じるキャラクターにもなっていると思います。この2人はマスターの中のマスターですね。
川田氏:実は1番最後に作ったのが1番初めに公開した「ダニエル」だったんです。
ピーター氏:そうですね。
川田氏:オリジナルキャラクターも誰か出したいと思って「ダニエル」が誕生しました。やたら設定が細かいんですけれど、実はマスターマインドの中で1番下っ端が「ダニエル」という設定があります。
――マスターマインドに階級があるんですね。
川田氏:階級というか、マスターマインドの経験具合によって出せるカードの効力なども逐⼀設定した気がします。
坂田氏:マッドサイエンティスト歴みたいなものですね。
川田氏:「アレックス」は「スペンサー」にも寵愛されていたという裏設定があったりしますので、格上なのかなという感じです。ほかにも実はマスターマインドごとにホームステージがあるなんて言う裏設定もありますね。
――最後に、ファンに向けてコメントをお願いいたします。
坂田氏:今回は当時の「3」と同じ立ち位置を目指して「バイオ RE:3」を作りました。ただ、立ち位置は同じでもやはり「バイオ RE:2」を超えなければならないというハードルがあって、ビジュアル面などはすごく力を尽くしたと思っています。今回よかったなと思っているところが、技術の粋が詰まった「RE ENGINE」を使って作れたというところですね。
「バイオ RE:2」が発売されてから「バイオ RE:3」発売までの期間が短いとよく言われるんですけれど、その⼀因としてやはりRE ENGINEと、⼀緒に制作したケーツーさんの存在が大きかったですね。そのおかげで僕はゲーム作りの中で、作業的な部分にリソースを割くことなく、ゲーム部分を作り込むことに集中できたんです。僕がこれまで作ってきたタイトルの中でも最もしんどくなかったですね。クリエイティブな部分に集中して作りきれたので、これまで僕が作ったタイトルの中でも1番クオリティの高い出来栄えだという実感があります。なので自信をもって皆さんへおススメします。
川田氏:今回いろいろな会社さんと⼀緒に仕事をさせてもらっているんですが、過去に我々と⼀緒に仕事をしてたり、そもそも同じ会社にいた人たちだったりしたので懐かしさもありました。コアな部分ではゲームの作り方というのはそんなに変わってなかったりしました。⼀緒に仕事をしてすごくよかったかなと思います。
我々自身もカプコンサイドの、決して少なくない人間がこの開発には携わっているなかで協力していい作品を作れたかなという感じがしています。本当に作ってよかったと思っています。その結果「バイオ RE:2」とは違った趣でリメイクした「バイオ RE:3」ができました。
ピーター氏:「バイオ RE:3」だけでも十分満足のいく作品になっていると思いますが、リプレイアビリティや新しいチャレンジがあったりして「バイオハザード レジスタンス」もオンラインゲームとして新しい体験ができあがったと思います。どちらもぜひ皆さんにプレイしていただきたいです。予約特典も用意しているので、ぜひご予約お願いします︕
――ありがとうございました。
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