インタビュー

「棋士・藤井聡太の将棋トレーニング」発表記念 藤井聡太七段インタビュー

「こういったゲーム機は今まであまり触れたことないので……」

2020年3月5日 発売予定

価格:4,500円(税別)

 史上5人目かつ史上最年少記録を更新した中学生プロ棋士として2016年10月にデビューした藤井棋士は、デビュー戦から公式戦29連勝という破竹の勢いで勝ち進み、お茶の間の大きな話題となった。対局の際の昼ご飯、いわゆる「勝負飯」に何を選ぶかでも大騒ぎとなった、藤井フィーバーはまだ記憶に新しい。

 2020年3月5日にゲームスタジオから発売予定の「棋士・藤井聡太の将棋トレーニング」は、その名の通り、監修および音声、映像の提供、詰将棋問題の作成など、藤井棋士が全面的に協力して作られた将棋ソフトである。発表会の様子はすでにレポート済みだが、発表会終了後、報道陣のために囲み取材の時間が与えられた。また、特別に単独インタビューをする時間もいただけたので、囲み取材とインタビューの様子をレポートする。

 筆者が藤井棋士とお会いするのは今回が初めてだったが、質問に対して、言葉を選びながら、真摯に答えてくれる姿勢に感銘を受け、すっかり藤井棋士のファンになってしまった。藤井棋士の今後の活躍に期待したい。

各社からの囲み取材を受けている藤井棋士

藤井七段はゲーム機に触れた経験がない!? 「音声の収録は対局よりも緊張した」

――35社もの報道陣が集まっていたそうですが、いかがでしたか?

藤井棋士: 会場に入った途端、本当に多くの方に来ていただいているとわかり、本当にありがたいと思いました。

――音声の収録はいかがでした?

藤井棋士: 初めての経験でしたので、対局よりも緊張しました。

囲み取材はかなり緊張したとのことだ

――藤井七段は、以前から研究にコンピューター将棋を取り入れているとききますが、初めてコンピューター将棋と対戦したのはいつ頃で、どんなソフトと対戦したのでしょうか?

藤井棋士: そうですね。自分が将棋を始めた頃はあまりソフトは活用していなくて、初めて本格的に使い出したのは奨励会三段の頃だったと思います。当時は、2015年とか2016年とかだったので、ソフトは「Apery」とかでした。

――何か好きなコンピューターゲームとかはありますか?

藤井棋士: こういったゲーム機は今まであまり触れたことないので……

――今回発表された「棋士・藤井聡太の将棋トレーニング」の開発において、藤井七段は具体的にどのようなお仕事をされたのでしょうか?

藤井棋士: 詰将棋の作成や音声、映像の他、開発中のソフトでプレイをして、こちらが気になった点などを開発にフィードバックをしました。ストーリーの構成などもアドバイスしています。

――将棋ソフトの監修は、谷川浩二九段や羽生善治九段など歴史に残る名棋士がこれまで手がけてきましたが、今回の将トレは、監修としても史上最年少だと思いますが、いかがでしょうか?

藤井棋士: 自分を選んでいただいたのは、非常に嬉しく思っていますが、過去にソフトを監修されてきた先生と比べるとまだまだです。実績を積む必要があると思いますので、今後も精進していきます。

聡太レッスンのメニュー。多くの問題が用意されており、やり応えがある

詰将棋は解くのも作るのも楽しい

――藤井七段は、詰将棋の達人としても有名ですが、普通、詰将棋は解く人と作る人が別で、解くのが得意な人でも、自分で問題を作る人はあまりいないとききます。藤井七段は、詰将棋を解くのも作るのも得意という、プロ棋士の中でも希有な存在だと思います。藤井七段は、他人が作った詰将棋を解くのと、自分で詰将棋を作るのではどちらが好きなのですか?

藤井棋士: どちらも違った楽しさがありまして、一概に比べるのは難しいです。

――詰将棋を解くのにかかる時間と、自分で詰将棋を作るのにかかる時間ではどちらが長いのでしょうか?

藤井棋士: 基本的に詰将棋を作るというのは、当然、なかなかすぐにできるということはないので、ひとつ作るのに数カ月かかる場合もあります。

――今回のソフトでは、藤井七段が作成された問題が12問入っているそうですが、一番時間がかかった問題はどれくらいかかったのでしょうか?

藤井棋士: なんていうか、なかなか、アイデアをまとめるのに、今回の問題だと数日かかったのもあります。

――では、ざっくりトータルで1週間とか10日とかかかった感じでしょうか?

藤井棋士: そうですね。それくらいだと思います。

――今回のソフトでは、最強にすると四段とのことですが、あれはあくまでアマチュアの四段ということですよね(注:将棋の級段位は、アマチュアとプロでは全く基準が異なり、プロの一番下の6級が、アマチュアの三~五段相当といわれる)。最強レベルに勝てれば、奨励会(注:プロ棋士養成機関。通常一番下の級が6級である)に入れるかどうかくらいで、現在の藤井棋士に比べて、棋力はかなり低いですよね。

藤井棋士: はい、そうですね。今回のソフトは、初心者からのユーザーさんをターゲットにしていますので。

――ただまあ、このソフトに勝てるようになれば、それが小学校低学年とかくらいなら、奨励会に入れる可能性はあるくらいでしょうか。

藤井棋士: そうですね。このソフトは、四段を選べば実際の四段の人と同じくらいの棋力になるように細かく調整されていますので、この四段に勝つようになれば相当の棋力があると思います。

――説明では初心者向きといわれてましたが、中級者でも十分歯応えがあるわけですね。

藤井棋士: そうですね。

来年はタイトル挑戦を目指す

――藤井七段の将棋での目標は何でしょうか? タイトルの期待はあると思いますが、来年の抱負や将来の目標などを教えてください。

藤井棋士: 今年はタイトル挑戦には届かなかったので、まずは、そこを目指すというのが大きな目標になるかなと思います。また、実際、いろいろ経験する中で、自分の課題が分かってきたので、そういった課題を克服して強くなっていけたらと思っています。

――将来、プロ棋士になりたいと考えている子ども達にも、今回のソフトは役に立つと思いますが、そうしたお子さんや、このソフトを買おうかどうか考えている将棋の初心者に対して、何かメッセージをいただけないでしょうか。

藤井棋士: 今回のゲームは将棋のルールが分からない人でも、そこから楽しみながら学べるというものになっていますので、多くの方に遊んでいただきたいなと思います。また、このゲームを通じて将棋を知っていただいた方が、今後の将棋界で活躍するようなことになれば、こちらとしても非常に嬉しいなと思います。

――ありがとうございました。