インタビュー

EVO 2019を優勝したボンちゃん選手は今、まったく喜んでいなかった

「Red Bull Kumite Japan 2019」ウメハラ選手、ときど選手、ボンちゃん選手、ガチくん選手にインタビュー

12月21日~22日 開催

場所:Aichi Sky Expo

 レッドブル・ジャパンによる「ストリートファイターV アーケードエディション」の世界大会「Red Bull Kumite Japan 2019」が12月21日に開幕した。場所は愛知県常滑市の「Aichi Sky Expo」。21日は予選会となり、22日に本戦が開催される。

 「Red Bull Kumite」の特徴は、数多くのトッププロ選手が集まりながら、プロ選手が獲得ポイントを争う「カプコンプロツアー」とは切り離されたエンタメ色の強い大会であること。例年はプロツアー最終戦の「CAPCOM CUP」直前、フランスのパリで開催されていたが、今年はスケジュールが「CAPCOM CUP」の直後となり、さらに日本での開催となった。

 1年の集大成である「CAPCOM CUP」終わりに「Red Bull Kumite」が来たことで、とにかく楽しむようなお祭り的雰囲気がかなり強くなっている。今回、大会初日の会場でウメハラ選手、ときど選手、ボンちゃん選手、ガチくん選手にインタビューできた。1年の終わりのお祭りということで、それぞれに2019年の総括と今後の展望を伺った。

“修行の年”を抜け、ウメハラ選手のガイルが猛威を振るうか

 まずウメハラ選手は、2019年を「修行の年でした」と一言。現在メインで使用しているガイルは決して強いキャラクターではないため成績面では振るわなかったが、工夫面では手応えがあったため来年に活かしていきたいとした。

【ウメハラ選手】
冷静な立ち回りのためにやっていることは「特にない」が、唯一、対戦席に着く瞬間に「楽な試合はない、やるぞ」と気合を入れて座ることはルーティンとしているという

 12月16日に実施されたVer.05.001アップデートによって、ガイルは「まだわからないが、おそらく5強のキャラクターに入るのでは」という感覚もあり、今後もガイルを使い続ける気持ちがある。

 ガイルを使っていて楽しいのは、今まで「安全運転で立ち回るのが伝統」だったのに対し、現在のガイルは一発のスキが大きいながらも「攻めなきゃいけない」キャラクターになっているところ。もともと好きだったが、攻める姿勢を求められる点が「新鮮でいい」とした。

 「Red Bull Kumite」については、「CAPCOM CUP」が終わっていることで本大会に集中できるところが最大のメリットで、次回開催も「『CAPCOM CUP』と関係のない時期にやってくれると嬉しい」という。また「新バージョン開始直後で大きな大会をやる」のも好きで、その点も今大会の注目点だという。

ときど選手が“人と違うやり方”を意識する理由とは?

 ときど選手は、「注目のされ方が変化した年だった」とした。ゲームをプレイする以外の活動が増えたり、スポンサーが個人に付くなど、自分が思っている以上に幅が広がったという。

【ときど選手】
「自分への対策が丁寧で、ここ最近勝てていない」という理由から、Problem X選手を個人的注目選手に挙げた。リベンジを狙っているという

 ときど選手は著書「世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0」が12月に発売されたばかりだが、そこで多く割かれているのがメンタル面へのアプローチだ。そのことについて聞くと「勝負は一瞬。平常心でやっていられないし、緊張する中でもパフォーマンスを出すためにはメンタルが大切だと思った」とした。

 ちなみに周りの選手にメンタルの話を振っても、「また始まった」と言われるだけで、一向に興味を持たれないそう。これについては、多くの選手の中で、根幹にある攻略や技術の向上のプライオリティが高いからではと分析した。

 ときど選手がメンタルへ注目しているのは、自分自身に「攻略や技術論構築が苦手」な自覚があり、「他の選手と違うところで差をつけないといけない」という危機感があるからだそう。では他の選手がメンタルに注目しはじめたらピンチなのでは? と聞いてみると、「そうです」とあっさり答えた。裏を返せば、だからこそ「今がチャンス」なわけだ。

 このインタビューの直前、Punk選手が「今後対戦したい相手」に「ナーフされた豪鬼を使うときど選手」を挙げていた。若干煽られ気味のコメントだったが、そのことを伝えるとときど選手は「Punk選手ならどのキャラクターとやっても面白そうだけど、かりんならいい勝負になりそう」と答えてくれた。幅を広げ続けるときど選手の来年の活躍も実に楽しみだ。

EVO優勝も後悔の年に。リベンジに燃えるボンちゃん選手

 一方ボンちゃん選手は、今年の結果に「非常に納得いっていない」と吐露。ボンちゃん選手といえばEVO 2019の優勝をはじめとして、数々のタイトルを獲得して最高の1年であったとも見えるが、2019年後半になると優勝からは遠ざかり、「CAPCOM CUP 2019」も“負け負け”の25位。野球のペナントレースで例えるなら「前半戦は首位を走っていたのに、負けが込んで気づけばBランク状態」のような感覚であり、決して喜べないそう。

【ボンちゃん選手】
20代前半で活躍する海外選手が多いことについて触れ、「日本の若手もそうなったらいいのに」と次世代のことも考える兄貴的存在。「若手は順当にやって順当に負けることが多い。格上の相手と当たるときは、戦略として時に大胆な行動も必要では」というアドバイスを送りたいという

 特に「CAPCOM CUP 2019」では、初戦の対戦相手とのキャラクターの相性が悪いとわかっていたものの、入念な準備ができなかったことに心残りがある。「もっとやるべきことがあったと思う」とストイックになりきれなかったことが、何より悔しいのだとした。

 しかし、EVO 2019で優勝したことで、ボンちゃん選手は未獲得タイトルである「CAPCOM CUP」優勝が現在の最大の目標になった。「CAPCOM CUP 2019」で悩まされた使用キャラクターについては、現在のバージョンでは「ナッシュが強い」という肌感覚があり、今後の喧騒次第ではサブキャラクターとして使用するかもしれないという。

 来年はプロツアーのレギュレーションが変わるが、まずは「CAPCOM CUP」出場者の枠に入ること。2019年後半の忘れ物を取り返す気持ちで、年末の大勝負に挑みたいとした。

“チャレンジ精神”を取り戻したガチくん選手の逆襲

 そしてガチくん選手は、目の前の勝負よりも「他のことに気を取られる1年だった」と振り返った。

【ガチくん選手】
インプレスのTwitchチャンネルにて、配信番組「ガチくんに!」を毎週金曜日21時より放送中。PC Watchの若杉編集長と「楽しくやっています!」とのこと

 昨年の「CAPCOM CUP」を優勝したことで、一気にプロとしての道が開けた結果、「プロとしての立ち居振る舞いや言動はどういったものか」を考える時間が増えた。

 また選手としては「チャレンジャー」という自覚が薄まったほか、実際の大会でもはっきりと対策されていることを実感した。精神面でも試合でも今まで以上に考えることが多くなり、結果として勝負に集中できないようなやりづらさも感じたそうだ。

 一方で、「Red Bull Kumite」は「自分がプロになるきっかけになった大会」という自覚が強くある。招待された2017年の「Red Bull Kumite」で2位になり、その後レッドブルと契約。2018年の「CAPCOM CUP」で優勝したことで、一気にブレイクした。

 「Red Bull Kumite」については、お祭りであることに加え、今大会のYHC-餅選手のように、「普段はトーナメントで見ないプレーヤーが登場する」ところに大きな価値を感じている。また登竜門としては、「色々な選手に出てきてもらって、どんどん上位を追い上げてほしい」とコメントした。

 自身への対策に苦しんだ1年だっただけに「上位を追い上げてほしい」とは意外な言葉だったが、そうなることで「ストV」コミュニティが活性化するし、ガチくん選手ももう一度チャレンジ精神を思い出すことができるからだそう。

 特に「CAPCOM CUP 2019」での1つの出場枠をかけたオープン戦で勝ち抜き、本戦で15位まで上り詰めたライバル、もけ選手のここ最近の活躍は驚異に感じている。ただそれは悪いことではなく、ライバルの存在があることで自分が高まるという確信がある。様々な選手の活躍を力に変えつつ、2020年は今年学んだことを結果に反映できるようにしたいとした。

 「Red Bull Kumite」はショウアップされた大会であり、プレイの技術と同時に、選手の背景やドラマを知るともっと楽しめることと思う。「Red Bull Kumite」公式サイトではわかりやすいプロフィールや、独特のユーモアで選手を紹介する動画も掲載されているので、12月22日の本戦に備えてぜひご覧いただければと思う。