インタビュー

浅井企画の浅井良一常務、大好きなゲームについて大いに語る

好きなゲームは「ウィザードリィ」。浅井企画ゲーム部で「ゲームを遊ぶ楽しさを思い出して欲しい」

8月収録

 2018年7月、国内でのeスポーツの盛り上がりに呼応して、ある芸能事務所でユニークな試みがスタートした。「浅井企画ゲーム部」である。

 老舗の芸能事務所である浅井企画が、「ファミリー層やライトゲーマー層にeスポーツへの扉を開いていく」という基本方針のもと、さっそく所属芸人の皆さんが週替わりで様々なゲームに取り組む番組浅井企画ゲーム部Reportを配信している。8月15日現在、6回の放送が行なわれているが、eスポーツ云々というよりは、概ね芸人が好き放題にゲームを遊んでいるだけであり、良い意味でゲームファンの期待を裏切ってくれる番組に仕上がっている。

 この企画の仕掛け人が浅井企画常務取締役の浅井良一氏だ。7月に行なわれた発表会で、パートナーのサードウェーブの担当者から、浅井氏が実は大のゲーマーで、ドスパラユーザーという話を聞き、より深く話を伺ってみたいと思い、本インタビューを企画してみた。

 インタビューには浅井氏に加え、サードウェーブでeスポーツ事業全般を担当している榎本一郎氏にも同席していただき、浅井氏と共にその舞台裏を語っていただいた。また榎本氏には、8月25日よりグループステージがスタートする同社主催のeスポーツ大会GALLERIA GAMEMASTER CUPについても話を伺ったので、合わせてお楽しみ頂きたい。

浅井氏の想像以上のゲーマーっぷりに終始笑いの絶えないインタビューとなった

浅井企画の浅井常務はパソコン少年、ゲーム少年だった

浅井企画常務取締役の浅井良一氏

――浅井企画さんとサードウェーブさんのコラボ企画である「浅井企画 ゲーム部」の活動が始まりましたが、発表会の時に浅井さんにご挨拶させていただいた時に、実はゲーマーで、ドスパラのPCを持つほどのPCユーザーで、浅井企画ゲーム部の企画は浅井さんが主導されたと伺って、浅井さん自身に興味を持ったんですね。まずは浅井さんのゲーム遍歴から伺っても良いですか?

浅井良一氏:僕はファミコンの前からゲームをやっていて、パソコン少年でもありました。もう30年以上前の話になりますが、うちのオヤジ(浅井企画代表取締役社長 浅井良二氏)に秋葉原まで連れてこられて「何か欲しいものあるか」と言われて、単純にボタンの多さで選んだのがNECのPC-6001なんです。

 それでパソコンのことを知り始めて、PC98シリーズですとか、FM TOWNSとか、当時のパソコンを一通り触っていく中で、IBM PCが外国で流行っていて、これから日本に入ってくるということで、自作パソコンというものがあるということを知って、ドスパラさんとかでパーツを買うようになっていった感じですかね。

 僕は横浜なので、横浜にもお店がありましたし、秋葉原にも行きました。当時、パソコンをやるような友人が3~4人いたんですけど、電車賃とゲームソフト代だけ握って秋葉原に行ってましたね。当時はまだメイド喫茶とかありませんでしたから、薄暗い路地にボタンとか、スイッチとか並べてあるのを眺めながら歩いていた記憶があります。“秋葉少年”でしたね。

――当時、どれぐらいのスペックのPCを使っていたんですか?

浅井氏:486の前ですよね、386、286あたり。ほかにサイリックスというCPUもありました。ドスパラさんとかに行ってどのCPUがどれだけ速いんだということを仲間とアレコレ話し合ったりしていましたね。

――浅井さんがパソコン少年だった頃、榎本さんはもうIBMに入社してDOS/V PCを売っていた時期ですよね?

サードウェーブ取締役副社長 榎本一郎氏

榎本氏:そうです。ちょうどIBMのDOS/Vを日本に持ってくるというときです。PS/55というノートブック、まだThinkPadの前です。PS/Vというデスクトップもありました。IBMのDOS/Vの開発は大和なんです。アメリカのIBM本社ではないんです。大和研究所が日本のDOS/Vパソコンを作ったんです。

 というのは、当時、パソコンに日本語を表示させるために漢字ROMを入れていたんですね。NECさんのPCシリーズなどもそうですが、すべてハードウェアだった。そのコストを下げるために、ソフトウェアで画面に表示させよう、ビジュアル化するということを大和研究所で行なっていたんです。DOS/VのVはビジュアルのVですから。それを「第3の波を作ろう」と日本に広めようと最先端で取り組んでいたのがサードウェーブですよ。パソコンを自作するためのパーツを取りそろえて、お客様のニーズを聞いて、面倒くさいならその場で作ってしまおうとやっていたのが自作パソコンの始まりですよね。

――その自作したパソコンは、どういったことに利用していたんですか?

浅井氏:僕はベーシックとかC+とか言語をやっていましたね。動機はゲームセンターのゲームを自宅でも遊べるようにするためで、当時、もの凄くちゃちいんですけど、ゲームの移植をするのが流行っていたんですね。「ゼビウス」など当時ゲームセンターでヒットしていたゲームを見て、プログラムを組んで遊ぶということをやっていたんですが、ベーシックだから動きが遅いんですよね。それでどうしたら動きが速くなるのかなということで機械語をやったりしつつ、それっぽいゲームを組んでは自宅で友達と遊ぶということをやってましたね。

――そこまでプログラムに入れ込んでいたとは驚きですね。なぜそのままプログラマの道に進もうとは思わなかったんですか?

浅井氏:楽しいことは趣味にしておきたくて、これを仕事でやれと言われたらしんどいなと、当時は自分がやりたいゲームをどれだけ再現できるかということがおもしろくて、これを仕事でやるというか、好きなゲームを作るのがヤダなと思うことがヤダだったんで、そこは趣味のままでしたね。

――PCではどのようなゲームを遊びましたか?

浅井氏:エニックスさんの「ポートピア連続殺人事件」。それから「ウィザードリィ」をはじめとしたApple IIのゲームが日本に移植されるようになってきた時期だったので、「ウィザードリィ」や「ウルティマ」あたりを遊び込んで、そうしたらもっと本場のゲームが遊びたくなって、それでApple IIの互換機にOrangeというものがあったんです。

榎本氏:あったかなぁ? あんまり記憶にないな(笑)。

【浅井常務が好きなゲームその1「ポートピア連続殺人事件」】
「ドラゴンクエスト」の生みの親である堀井雄二氏が1983年に生み出したアドベンチャーゲーム「ポートピア連続殺人事件」。スクリーンショットは2001年にエニックスからリリースされたiアプリ版

浅井氏:Apple IIはめちゃめちゃ高くて手が出なかったので、Orangeという互換機を買った人の家に遊びに行くということをやってましたね。秋葉原でゲームソフトだけ買って遊ばせてもらうんです。

――そこまでするとは本当にゲーム好きなんですね。どのようなジャンルのゲームが好きなんですか?

浅井氏:「ウィザードリィ」でロールプレイングゲームというものを初めて知って、ゲームの中で自分がというか、キャラクターが色んな経験をして育っていくというのがおもしろくて、今でも好きですね。中でも「ウルティマ」と「ウィザードリィ」は衝撃的でしたね。

【浅井常務が好きなゲームその2「ウィザードリィ」】
1981年に誕生したRPGの元祖的な存在「ウィザードリィ」。日本でも大ヒットし、日本独自の派生シリーズも生まれるなどファンの多いシリーズ。スクリーンショットは、1998年にリリースされたプレイステーション版

――日本では1983年にファミリーコンピュータがリリースされて、日本中でファミコンブームが起きます。浅井さんはこういったコンソールゲームは遊ばなかったんですか?

浅井氏:遊んでました。ファミコンは中学2年か3年の時に発売で、1週間前から友人と「『ゼビウス』が家で出来るらしい」と話し合っていて、発売日におもちゃ屋にダッシュした記憶があります。

【浅井常務が好きなゲームその3「ゼビウス」】
1983年に誕生した縦スクロールタイプのシューティングゲーム「ゼビウス」。スクリーンショットは2011年にリリースされたiOS「NAMCO ARCADE」より

――当時、当然eスポーツという考え方はまだなくて、直接人と対戦することも少なくて、2人で交互にプレイしてスコアを競うという遊び方が主流でした。浅井さんはそういう“てっぺん”を目指すゲーマーだったのでしょうか?

浅井氏:僕はそこまではなくて、とにかく画面上で自分が思ったようにモノが動くというのがおもしろかったんです。たとえば、テレビは人が作ったモノをただ視聴するだけですが、ゲームは自分が上下左右とやるとその通りに動いてくれるのが凄くおもしろくて、自分でそういうゲームを作ってみたくてベーシックをはじめたという感じでしたから、スコアを競うというところまでは行かなかったですね。

――なるほど、今でもゲーマーですか?

浅井氏:はい、未だにお恥ずかしながらゲーマーです(笑)。

――いやいや、全然恥ずかしくないと思います。若い時にゲーマーだった方でも歳を取り、それなりの立場になると「もう遊ばなくなった」という方が多いんですが、今でも続けているのは本物だと思います。どういったゲームを遊んでいるのですか?

浅井氏:パソコンゲームですね。最近だと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」や「Dead by Daylight」などを遊んでいます。昨夜も午前2時ぐらいまでやってました(笑)。

榎本氏:負けました。ゲームに対するあまりの造詣の深さに(笑)。

【浅井常務が好きなゲームその4「Dead by Daylight」】
1人の殺人鬼が4人のサバイバーを狩る非対称対戦型のサバイバルホラー「Dead by Daylight」。このゲームが好きということは浅井氏は相当ディープなPCゲーマーだ

――それは凄い(笑)。それでは浅井企画 ゲーム部において浅井さんは、「よくわからないので若手芸人に任せるよ」という立ち位置ではなく、「こうしよう、ああしよう」と顧問として自ら主導する立場なんですね。

浅井氏:そうですね。僕がゲーム好きなので、実は「僕がやろう」と言い出したところがあって(笑)。もともと、うちの若手の芸人達と、もっとゲームを遊びたいなと思ったことが発端なんです。2~3人の芸人とはよく遊んでいたんですけど、今はオンラインでもっとたくさんの人と遊べるじゃないですか? だったらもっと大勢で遊びたいなと思って「ゲーム部作ってみんなで遊ぼうよ」と僕が言い出したんです。

 世間的にちょうどeスポーツというキーワードも出てきた頃だったんですが、浅井企画としてeスポーツを真面目にやるとお金が掛かっちゃうな、難しいなと思っていたところに、「じゃあ、どこかスポンサー付けばできますか?」というアイデアが社内から出てきたので、「それならできるね」という話をしたら、中嶋というマネージャーが「じゃあ、僕、営業行ってきます。どこ行きましょうか」と言うので、真っ先に「ドスパラさんみたいなところが付いたらできるんじゃないの?」と。それで中嶋がサードウェーブさんにコンタクトを取って営業に行ったんです。

 正直、門前払いを食らうだろうと思っていたんですよ(笑)。営業から帰ってきた中嶋に「どうだった?」って聞いたら、「結構話を聞いてくれて、行けると思います」というから、「ウソ、行けんの? じゃあちゃんと真面目に考えなくちゃダメだな」と(笑)。

榎本氏:(笑)。

――サードウェーブさんにお願いした内容とはどのようなものだったんですか?

サードウェーブ佐久間氏:中嶋さんから伺ったのは、「うちの常務(浅井氏)がゲームが好きで、もともとドスパラのユーザーで、今もゲームが好きで、eスポーツを始めたいと考えています。みやぞんさんがパソコンをまったく触ったことがなくて自作企画をしたら楽しいんじゃないか、うちの芸人みんなでゲームをしたら楽しいんじゃないか」というざっくばらんとしたお話です。そのときはまだ「ゲーム部」という構想ではなくて、みやぞんさんにパソコンを作って貰うというものだったんですけど、そこからどんどん話が大きく膨らんでいってゲーム部を作ろうという流れになっていきました。

榎本氏:フックとしてみやぞんさんの話はあったけど、LFSが出来ていたので、LFSを使ってゲームを使った交流の場、芸人が集まってゲームを遊んで、部室みたいに使って貰ったら良いんじゃないかというのはかなり早い段階で決まっていたよね?

佐久間氏:そうです。2回目の打ち合わせの時にはそういう話になりました。

榎本氏:浅井企画さんからは、「本格的にゲームが遊べるような場所について何かご協力いただけることはありませんか?」って恐る恐る聞かれたんですけど、LFSが念頭にあったので、俺も佐久間も前のめりで、「ぜひ遊びましょうよ」と。

佐久間氏:浅井常務がゲーマーで、芸人と一緒にゲームを遊んでいるという話を伺っていたので、「だったらぜひLFSを使って下さい」と。

浅井氏:その中嶋がANZEN漫才の担当で、あらぽんという太っているほうは本当にゲーマーで、「モンスターハンター」シリーズなんかをやりこんでいるんですが、みやぞんは機械が苦手な体育会系で、「みやぞんにパソコン買わせようぜ(笑)」って話をしていたんです。それでゲームを一緒にやろうぜ、という想いもあるんです。

――私は浅井企画 ゲーム部でおもしろいなと思ったのは、“eスポーツ部”ではなく、“ゲーム部”としたところです。ゲーム部にした意図は何ですか?

浅井氏:正直、eスポーツでトップを目指すというのはプロの方がやることで、僕らが真面目にやったところでたかがしれていると思ったんです。それよりもゲームをもっと普及させたい。日本ってゲームを作る側は、世界的に著名な方がたくさんいて、世界中で知られていますが、その一方で、遊び手に対する理解はまだ遅れているかなと思っているんです。

 たとえば、日曜日に食事しようと誘われたとき、「草野球行くんだ」と言えば「そうか、仕方ないな」になるのに、「ゲームやるんだ」と言ったら、「何ゲームなんかやってんだよ」になってしまう。それがちょっともったいないなと感じていて、もっと気軽にゲームが遊べる環境ができたら、僕なんかも「ゲームなんかするなよ」って言われずにゲームが遊べるし、というところで、eスポーツでてっぺんを目指すのではなく、ゲームをする人を増やしたい。ゲームの地位向上というか、普通にみんな遊んでるよ、ということを多くの人に知ってもらうために、eスポーツ部というのは置いておいて、僕らはゲーム部でいこうということになりました。

――驚きましたね。その“ゲーム人口の裾野を広げていく”という浅井常務の考え方は、サードウェーブさんのeスポーツの取り組みとまったく同じですよね。

榎本氏:まったく同じです。素晴らしいなと思います。ゲーム部というネーミングそのものが浅井企画さんがやりたいことを表わしていると思います。eスポーツというのは、ゲームの中のひとつのパートに過ぎません。ゲームが広がれば、当然eスポーツも広がるし、ゲームの裾野を広げる活動というのは支援していきたいと考えています。

 今回の企画でおもしろいなと思ったのは、浅井常務自身がドスパラユーザーで、パソコンのことをよくご存じで、ゲームの世界観も知っているし、芸人さんを活用しながら自分の世界を広げようとしている。

 それから、浅井企画さんがもっているポテンシャルの部分ですよね。親しみがあるじゃないですか? 関根勤さんをはじめとした嫌みのない人たち、愛嬌があって、親しみがある。芸能人ぶってなくて、ファミリー層にリーチできる。eスポーツの普及という視点で見た場合、今までにない要素がふんだんにあって、ゲームに取り組んでくれて、その傍らでeスポーツもやってくれれば、とても良い広がり方をするのではないかと思ったんです。

 eスポーツそのものを少し特殊なものだと思っている人がまだ多いです。もちろん特殊な人たち、スペシャルな技術を備えた人はいますが、その入り口は普通なもので、誰にとっても親しみのあるものだということをうまく広げていきたいですよね。決して特殊じゃないんだと。

 ゲーミングPCも同じなんです。全然特殊なものではなく、普通のPCと同じです。スペックが高かったり、高機能なパーツが使われていたりというだけで、大げさに構えるようなものではない。みやぞんさんがゲーミングPCに触れてくれて、そういったことを伝えてくれたらいいなと思っています。

浅井企画ゲーム部の活動内容について

浅井企画 ゲーム部の部員の皆さん

――浅井企画 ゲーム部は、これまでに3回放送が行なわれて、3回とも拝見させていただきましたが、個人的にはとても好きな番組です。時代の流れに乗って無理矢理eスポーツするのではなくて、ゲーム本来の楽しさ、仲間と一緒にゲームを遊ぶとこんなに楽しいんだよということが伝わってくる。私個人としても、ゲームメディアの人間としても、忘れかけていた風景があって、勤務時間中に笑いながら見ています(笑)。浅井さんはここまでどのような感想をお持ちですか?

浅井氏:色々変えていかなきゃいけないところもあるんですけど、形としてはあれでいいのかなと思っています。スーパーファミコンのコントローラーをポケットに入れて持ち歩いて、友人の家で一緒に遊ぶとか、あの感覚ですよね。自分のコントローラーだけボタンのへたりが凄いみたいな。みんなで代わる代わる「ストII」の対戦をして、「次、俺」みたいな、そういうのが凄い楽しい想い出としてあるので、それを再現できればなと。

 僕が今ちょっと心配してるのは、今の子供達はそういう遊び方をしているのかなと。昔はああだったけど、今のこういう風に楽しめるんだよ、ワイワイ楽しくゲームできるんだよというところを見せていきたいですよね。

【浅井常務が好きなゲームその5「ストリートファイターII」】
言わずと知れた対戦格闘ゲームの元祖「ストリートファイターII」(1991年、カプコン)。浅井氏は当然「ストII」も仲間と遊んでいた。どうもパッド派のようだ。スクリーンショットは2018年5月に海外でリリースされた「Street Fighter 30th Anniversary Collection」より

――視聴者も色んな反応をしてておもしろいですよね。もっとeスポーツの側面を強化して欲しいとか、もっとゲームに注力して欲しいとか色々な要望が出ています。今後、こうしていこうという考え方はありますか?

浅井氏:eスポーツについては、まだどういう方向に進むのかまだ定まっていないということもあるので、様子を見ながら、上仲(横浜ヨコハマ 上仲誠彦氏)が「ぷよぷよ」が得意なので、それをやったり、「ウイニングイレブン」や「鉄拳」が得意な芸人もいるので、競技的なものにも対応できるように準備は進めています。ただ、ゲーム部として基本はみんなでワイワイ遊ぶというところを変えるつもりはないですね。

――放送第2回の上仲さんと「ぷよぷよ」を対戦する回はおもしろかったですね。発表会の時もそうでしたが、なんというか「ぷよぷよ」芸が固まってきて(笑)。

浅井氏:そうそう、8連鎖してもみんなで「下手くそ」っていう(笑)。でも、友達と遊ぶときってあんな感じじゃないですか? お父さんと子供とか、おじいちゃんと孫とかがテレビの前でワイワイ楽しむという感じを演出できればと思っています。巧いプレイが観たかったら、うちのチャンネルじゃなくてプロの方がやっている配信を観て貰った方がいいと思うんですよ。たぶん、そっちのほうがよっぽどスカッとする映像があると思いますので。ただ、うちの配信は楽しいですよ、という感じでいきたいですね。

【浅井企画ゲーム部Report #2 ぷよぷよ編】
筆者お気に入りの回。浅井企画 ゲーム部のぷよぷよ芸が炸裂している

――浅井企画 ゲーム部はLFSが“部室”ということになっていますが、ゲーム部の芸人さんたちはLFSに来て遊んでいたりするんですか?

浅井氏:そこはまだ実はできてないんですよ。芸人が遊んでいるゲームがコンソールゲームがメインなので、自宅で遊ぶということが多くて、部室で活動するということはまだできてないですね。ただ、サードウェーブさんから、ゲーミングPCをお借りできたので、主要メンバーの手元にはゲーミングノートPCがあって、Steamのアカウントも取って、PCゲームを徐々に学んでいるので、そのうちみんなで遊びに行けたらなという話はしています。

――視聴者の中には、芸人さんたちの反応から、「本当にゲームが好きでやっているのか?」と疑う人もいて、ゲームに対しては真面目にやって欲しいと思っている人が多いのかなという感じですね。

浅井氏:このゲーム部は「ゲームが好きな奴」ということで集めたメンバーなので、嫌いな芸人はいないと思います。ゲームやったことないのに引っ張り出されたのはみやぞんぐらいですかね。彼については単純に僕らがやらせてみたいなという(笑)。

――発表会でもみやぞんさんはPCのことが本当にまったくわかってない感じでしたもんね。まったくわからない状態から、サードウェーブの力を借りて、PCの知識を身につけていくという企画は楽しみですよね。

発表会ではPCのことがまったくわかってない風だったが元気いっぱいだったみやぞんさん

浅井氏:はい。パーツ選びからやって1台組んで、そのPCでゲームをやるというところまでやってみたいと思います。

――それはいつぐらいに配信予定ですか?

浅井氏:今はちょっと某局のマラソンの準備があってその練習や準備で忙しいので、それが終わってから9月の半ばぐらいに落ち着いてくると思うので、そのタイミングでお店を訪問して撮り始めようかと考えているところです。

――本人はやる気なんですか?

浅井氏:やる気です。あの子は何でもトライするのが好きなんですよ。僕と担当の中嶋がPCゲームの話ばっかりしていて、それを聞いてたみやぞんが「おもしろそうですね」というんで、「みやぞんも遊ぼうよ」と言ったら興味を示していたので、たぶん大丈夫じゃないかと思います(笑)。

――現在放送は、ほとんどeスポーツ色がないですが、今後、そうした放送も増えていくんですか?

浅井氏:そうですね。今回、発表会を大々的にやらせてもらったおかげで、制作サイドの方から色んなお話をいただくようになりました。その中に、「eスポーツの大会をやるんですが、参加しませんか?」というものもあって、せっかくならそこに向けて、みんなで練習して参加したりとか、そういう形でeスポーツもカバーしていけたらいいなと思っていますね。ただ、トップを目指すというよりは、「配信を見ている君も出られるよ?」ということを伝えられればいいかなというぐらいですね。

 と言いながら、次回放送は浴衣で「バイオハザード」というおふざけ企画というか、単純に女の子の悲鳴が聞きたいというしょうもない企画なんですけど(笑)。

【浅井企画ゲーム部Report #4 納涼浴衣でバイオハザード編】

――放送2回、3回と尻上がりに面白くなっていて、ゲームを触媒とした芸人ネタが次々に披露されて、放送を見ながら仕事をするようになってきたぐらいです。視聴者を増やすという意味でもったいないなと思うのは次回予告がないまま、「はい、終わります」とすとーんと終わってしまうところですね(笑)。

浅井氏:番組自体、見切り発車なんですよね(笑)。だいたい放送が終わった時点でまだ次回何をするかが決まっていないんです。少しずつ余裕が出てきてるので、浴衣で「バイオハザード」というおふざけ企画もできるようになってきて、ほかにいくつか企画があるみたいですけど、テレ朝で芸能事務所対抗戦みたいな収録があって、うちの事務所は出ないんですけど、MCで流れ星が出て、eスポーツに関する話などもあるみたいなので、裏からビデオが撮れればそういう映像を流してもいいかもしれませんね。次回予告は入れるようにしていきます。

――配信にまだ部長の流れ星 瀧上さんや、副部長のANZEN漫才 あらぽんさんが出てないというのも残念ですね。

浅井氏:配信が月曜日夕方なので、なかなか芸人のスケジュールを空けるのが難しいんですよね。ANZEN漫才のあらぽんは最近引っ越して、ようやくネットが通じてゲームを一緒にやりました(笑)。配信もしたいですと言ってましたね。

 関根さんが「みんゴル」が大好きなので出て貰おうと思っているんですが、せっかくなので関根さん呼んで「みんゴル」やって貰うだけではもったいないので、何かおもしろい見せ方がないか、たとえばオンライン対戦してみたり、色々企画を練っているところです。ただ、生放送だと誰と繋がるかわからないのでそのあたりもクリアする必要がありますが。

ANZEN漫才と流れ星の4人による「ストリートファイターV」エキシビションマッチ

――生放送にこだわっていますが、何か理由があるのですか?

浅井氏:生実況は観ててもモチベーションが違うと思うんです。今モニターの向こうでライブでやっているというのと、録画したものを観るというのでは、やっぱり観る方の熱意も違うと思いますし、そのライブ感は大事にしたいと思っています。YouTuberとかは撮ったものを編集してどんどんアップするようなやり方をしていますけど、僕らは全部生で行きたいし、テレビ番組もそうですけど、やっぱり生のライブ感に勝てるものはないんですよね。今LFSに行くと、わちゃわちゃしてるのを実際に観ることができるわけで、「だったら僕も行ってみようかな?」となってくれればいいですし、放送中に遊びに来てくれてもいいわけです。

――あの月曜の放送時間もLFSに行けば、中で放送を生で観られるんですか?

佐久間氏:観られますよ。通常営業中ですから。

榎本氏:一度、有名な配信者がLFSで生配信することを事前告知したら、結構並んでましたよ。ファンの方なのだろうと思いますが、浅井企画さんにはLFSは部室としてどんどん使っていただいて構わないという話はしていますので、LFSの楽しみ方のひとつとして、ファンと交流する機会があってもいいですよね。

――浅井さんもその場にいるんですか?

浅井氏:行けるときは行くようにしています。

――しかし、それだけゲーム好きなら、浅井さんが出れば盛り上がりますよね。

浅井氏:いやいや、あくまで僕は裏方なので(笑)。

――榎本さんはゲーム部の活動をどのようにご覧になっていますか?

榎本氏:私自身は、以前から言ってますが、eスポーツが良いバリューチェーンで繋って、独自のエコシステムが構築できればいいんです。芸能事務所さんがeスポーツを扱うというのは、その派生のひとつだと思っています。ストレートな商売ではありませんが、これによってゲームを遊ぶ人が増えるでしょうし、タレントさんの好感度や知名度が上がるかもしれないし、メディアや放送業界が取り上げる際に、こう言った形でゲームに関わっている方のほうが出やすいというのはあるでしょう。今その素地の部分を少しずつ作っていただいてる段階だと思います。

 今eスポーツ業界は、今までまったく関わりの無いと思われていた方達が多く関わってくれています。それを通じてそれまでeスポーツに縁の無かった一般の方もその存在を知ってくれる……というエコシステムが生まれればいいなと期待しています。

 そういう意味で浅井企画さんには、今まで私たちが気づかなかったようなゲームの楽しみ方を配信されているので、今後の配信がどうなるのか楽しみですよね。みやぞんさんの自作企画なんて楽しみでしょうがないですよ(笑)。

――現時点で、決まっている企画があれば教えて下さい。

浅井氏:浅井企画 ゲーム部の特徴と言えるのは、ゲームメーカーの許諾を頂いているところですね。ですので、コナミさんからは「ウイニングイレブン」を使って何かできませんか?と提案を頂いたり、最新ゲームの配信もできるんじゃないかと期待しています。

【浅井企画ゲーム部Report #5 ウイニングイレブン2019メディア体験会】
浅井企画 ゲーム部でメディア対抗戦に参加。下手な先輩と巧い後輩の掛け合い漫才がおもしろい

――「鉄拳」では、eスポーツチームの「Walker Gaming」と提携していましたが、どのような活動を行なっていく予定ですか?

浅井氏:その辺もいままさに企画を立てている段階ですね。発表会の後にうちの若手の芸人から「僕もゲーム部入りたいです」という要望があって、「どんなゲームが好きなんだ」って聞いて回っているところで、こいつはこのゲームという具合にリストアップしている段階で、大会があったら出して見たり、色んなことができるかなと思っているところです。「鉄拳」に関しては、「鉄拳」が好きな芸人を集めて、プロの方と対戦するのか、教えて貰うのかはまだ決まっていませんが、おもしろいことできないかなと思っていますね。

――毎週扱うゲームタイトルを変えながら色んなことができそうですね。

浅井氏:そうですね。毎週タイトルを変えながらeスポーツにこだわらず色んなことをやっていきたいですよね。現在、SIEさん、コナミさんなど色んなメーカーを回って許諾を頂いているところです。

――サードウェーブさんが懐が深いなと思ったのは、「みんなのゴルフ」のようなコンソール専用タイトルも扱って良いところですよね。

浅井氏:そうですね。サードウェーブさんには申し訳ないのですが、ゲーム部と名の付く以上、良いだろうということで、やらせていただいています(笑)。

 ただ、僕がPCでゲームをやるからわかるんですが、今は割とPCでも遊べます。いわゆる独占タイトル以外はだいたい遊べるので、PCで遊べるものはPCで遊ぶようにしています。ただ、「ロケットリーグ」みたいにコンソールで購入したゲームでもPCでは遊べなかったり、PCのDLCを買ったのに、コンソールには反映されなかったりとか、そういうことがあるので、部内でも「じゃあどっちで行く?」みたいな話はしていますね。

――いかにも部活らしいエピソードですね。

浅井氏:そうなんですよね。「ストV」や「鉄拳」でもコンソールならそのままコントローラーで遊べますけど、PCだと「あ、コントローラーないじゃん」みたいな話もあって、どうしようかということを話している段階ですね。

――部員は今何人いるんですか?

浅井氏:この写真に写っているのが基本メンバーで、それプラス新しく入りたいと言ってきた奴が5~6人ぐらいというところですかね。

インタビューが行なわれた榎本氏のオフィスにはよく見えるように浅井企画 ゲーム部の写真が飾られている

浅井企画のレジェンド芸人はいつ登場する!?

――発表会で関根さんがぽろっと欽ちゃんの名前を出していましたが、浅井企画には萩本欽一さんや小堺一機さんなどレジェンド級の芸人が何人もいますが、彼らはゲーム部の存在を知ってるんですか?

浅井氏:知ってると思いますよ。大将(萩本欽一さん)もタブレットで麻雀とかしてると聞いてるので。

――そういった方がゲーム部にふらっと現われるようなこともありますか?

浅井氏:どうなんでしょうねえ、聞いてみないとわからないですが、ゲーマーか? というと多分違うと思うので、難しいかもしれませんね。

――ということは、いわゆる長老格でゲーマーというのは関根勤さんだけなんですね。

浅井氏:そうですね。関根さんは昔からゲーマーで、ゲームセンターにふらっと立ち寄って一般の人と一緒になって遊んで、隣に座った人がビックリするという話もあるぐらいなので、本物のゲーマーですね。

独自のネタで発表会を盛り上げる関根勤さん

――発表会はまさに関根勤ショーで、大変面白かったですけど、関根さんが放送にいつ登場するのか私も楽しみにしています。本当に「みんゴル」できるのかなあと。

浅井氏:関根さんが事務所に遊びに来たときに「遊んでみますか?」と言ったら、「じゃあやってみようか」といって遊んでいたのは見たことがあります(笑)。ゲーム部顧問ですから、いずれ登場していただく予定です。せっかく出ていただくなら見せ方を考えないとというところですね。

【浅井企画ゲーム部発足会見】
ゲーム部は5分30秒あたりから入場を開始する

――いつ出演するかは決まっているのですか?

浅井氏:それもまだです。できれば「みんゴル」だけじゃなくて他のタイトルにも挑戦して貰いたいので、何を遊んで貰うのかとか、どう練習して貰うかとか、色んなことを考えています。

――現在、週1回行なわれているゲーム部の配信ですが、これはいつまで行なわれるんですか?

浅井氏:この部がある限り、配信していきます。いつまでという区切りは一切定めていません。

――発表会では10回分ぐらいの配信内容が書かれていましたが、数カ月で終わってしまうわけではないんですね。

榎本氏:僕らはそんな単位では考えていません。私が会社にいる限り続きます(笑)。

――そうなんですね。では、今はまだ難しいけど、将来的に実現してみたいことというのは何かありますか?

浅井氏:ゲーム部のメンバーが大会に出るということはやっているので、将来的にはうちの事務所主催の大会とかはやってみたいですよね。あとメーカーさんが興味があればうちのタレントを使ってゲームを作っていただいて、それで大会を開くなんてことができたら最高ですよね。

――芸能事務所がeスポーツに取り組むというケースでは、吉本興業さんが「よしもとゲーミング」として活動されています。プロeスポーツチームとして、お笑い抜きでかなりストイックに活動していて世界大会にも積極的に参加していますが、プロのアスリートの育成ということはあまり興味がありませんか?

浅井氏:はい、そこは興味がありません。プロはプロに任せて、僕らは仮にプロ野球で言えば、その下の下の草野球チームみたいな。プロ野球は見て楽しむし、だけど自分らも野球やるしという。

――eスポーツ的な活動ですと、横浜ヨコハマの上仲さんが8月18日の「ぷよぷよチャンピオンシップ」に参戦するということで、結果が楽しみですよね。

浅井氏:そうですね。メンバーを応援に行かせたいんですけど、そこに入れるかどうかわからないんですよね。ゲーム部の活動として応援したいですね。

――放送以外の、言わば課外活動はどうなっているのでしょう?

浅井氏:それは個人個人の活動に任せています。まだ夜な夜なゲームを楽しんだりしてるレベルですけど、YouTubeだと時間関係ないので、今後はそういう個人の活動も配信していければと思っています。夜中にメンバーをかき集めてゲリラ的に放送してもおもしろいかなと思っています。

――榎本さんは、浅井企画さんとのコラボレーションをどのような形で育てていきたいですか?

榎本氏:ロングタームでいうと、ここで鍛えたメンバーたちが、色んな番組や大会に出て活躍してくれることですよね。たとえば、みやぞんさんが「CS:GO」で凄い動きをしてくれたら感動しますよね。

 先日、ゲーム学科を作った専門学校に呼ばれて、ゲストスピーチで90分話す機会がありました。それが浅井企画さんとの発表会の後で、その話題も出したら、生徒さんから「みやぞんさんは何をやるんですか?」という質問が出て、こういう企画を考えているという話をしたら、凄く喜んでくれたんですね。

 というのは彼らは全員プロゲーマーを目指してますが、彼ら自身にまだ日が当たっていない。芸能界の有名な芸能人が、ゲームやeスポーツに取り組んでくれるのが嬉しいんですね。発表会は数多く記事になりました。その中で関根さんは「ゲームをやると頭良くなるんだってよ」とか、「使い方によっては判断力も上がるんだって」という発言をしました。それが彼ら生徒にとっては嬉しかったみたいです。浅井企画ゲーム部は僕らにとっての応援団なんだという見方をしていましたね。

 芸能事務所との取り組みは、ゲームの裾野を広げるという意味でも、正しい認知を広げるという意味でもプラスの効果があると思っています。学生達の反応もとてもポジティブでした。「プロの道が途絶えたらサードウェーブに入りたいんだけどどうしたらいいですか?」と聞いてくれる学生もいて個人的に嬉しかったですね。

――サードウェーブさんは、eスポーツ大会を自ら主催していますし、他の大会への協力も行なっていますが、そういった大会に部として出場していく予定はありますか?

浅井氏:ありますよ。むしろぜひ出させていただければと。1回戦でボコボコに負けてみんなで笑って帰るというのでもいいですし。

――ではぜひ8月に開催されるGALLERIA GAMEMASTER CUPに出場して貰いたいですね。

浅井氏:いやいや無理です(笑)。eスポーツにひたむきに取り組んでいる人に怒られるんじゃないかって思っていて。eスポーツを真面目に取り組んでいる人を、もちろんバカにするつもりはないですが、立ち向かうつもりもなくて、下の方から頑張れ頑張れって応援したい方なんですよね。普段はみんなでゆるくゲームを遊びながら、上に上がりたい奴がいればそれを助けたりもするよということをやっていきたいんですよね。

――そういう意味ではゲームの間口を広げる取り組みから、eスポーツまで活動内容は幅広いですよね。

浅井氏:そうですね。ゲームと名の付くものならなんでもやっていこうという気持ちです。

――ゲームって、やらない人はやらないまま大人になってしまうので、コントローラーの操作すらできない人も一定の割合でいます。でも実は、少し触ってみるとすぐわかるようになりますし、すぐ楽しさが理解できるようになるので、最初のとっかかりを如何に作るかというのが大事だと思っています。そう言う意味では、ゲーム部の取り組みにはとても期待してます。

浅井氏:そうですね。そういう人たちのきっかけになれればいいですよね。「みやぞんでもできる何々」とかぜひやってみたいですよね。

――このゲーム部の活動の最終的な目的は何ですか?

浅井氏:そうですねえ。ゲームって恥ずかしくないよ、楽しいよってことを伝えたい、ということでしょうか。僕ぐらいの年でゲームやっているというと「えー、ゲームなんかやってるの?」と言われることがあるので、大人の趣味として認知度が上げられればいいかなと思っています。

――芸人さんは喋りのプロなので、ゲーム大会の実況解説というキャリアパスもあるんじゃないかと思っています。配信でも畑さんのちゃきちゃきしたうまい仕切りを見ていると、ゲーム実況にも向いているのかなと思ったりもしました。

浅井氏:長い目で見ると、そういう展開もあるといいですよね。eスポーツがもっと盛り上がってきたときに、うちのメンバーが実況を担当したりするような。今は儲かると思ってやってませんから。

――ビジネスについてですが、今は純粋に商売っ気ゼロの、本当の部活動ですか?

浅井氏:そうです。

――ただ、将来的には何かに結びつけば良いなとは思っているのでしょうか?

浅井氏:そうですね。eスポーツの大会がたくさんあるんだということも部を始めてから知ったことで、そこに視線を送りながら「eスポーツってどうなの?」と見ている人が多いことも知って、部の立ち上げと共に、色んな話がバーーッと来たんですね。だから、最初は本当にこれお金にはならないよねと思っていたんですけど、今は頑張れば行けるんじゃないか? というところまでは来ていますね。

――発表会後に、芸能界でどのような反応があったのか知りたいですね。

浅井氏:今eスポーツに絡めた番組がいくつか始まりつつありますが、それ以外にも制作会社のほうで様々な企画が立てられていて、そういうところに出ませんか? というお話だったり。うちとしては「はい、出ます出ます」という感じです。ただ、まだどこも模索している段階なので、具体的に決まったという話はないんですよね。

 まだみんなeスポーツって何なのか、eスポーツ大会って何をやって誰を呼べばいいのかわかっていないんですよね。だから、あの発表会を知って、「じゃあ、浅井企画さんに聞いてみよう」という流れになっているのかなという感じですが、聞かれても「いや、うちも部を作っただけなんで、何もわかりませんよ、むしろ僕が知りたいんですが」という話があったりして(笑)。うちはゲーム好きのマネージャーが多いので、メーカーさんとのゲーム使用許諾も話が早いんですが、そこでも聞かれるみたいです。

榎本氏:このインタビュー前に浅井常務とお話をしていて印象的だったのは、芸能界で大事なのは“嫌われないこと”だそうです。好かれなくてもいいので嫌われない。嫌われてしまうとチャンネルを変えられてしまうから。eスポーツもそういうフェイズに入っているのかなと思っています。好かれなくてもいいから嫌われる活動だけは避けなければならない。文化のひとつとして市民権を得るためには、そこが大事かなと、そう思いますね。

――LFSが部室なら、ぜひLFSを日常的に使っていただいて、気づけばファンと交流しているぐらいに身近な存在になるととても素晴らしいと思いますね。

浅井氏:そうですね。発表会にも、流れ星とANZEN漫才のファン10数人を呼んでいたんですけど、瀧上は格闘ゲームが好きなので、100人組み手とかやってもいいでしょうし。瀧上については、実はゲーム部を立ち上げる前に「ストリートファイターV」の生実況を3~4回やっているんですよ。それは瀧上がふらっと事務所に来て「やります」といって事前告知なしではじめたんですが、最初は1人も観てくれないんじゃないかと思っていたんですけど、SNSで広がったのかファンの人が観てくれて。やっぱり、ファンの芸人が質問に答えてくれるのは嬉しいみたいで、こんなに反応がいいんだったらゲームで何かできないかなと思ってはじめたというのもありますね。

――ゲーム部を実際に走らせてみて、ゲームとの向き合い方といいますか、見方が変わった部分はありますか?

浅井氏:意外と応援してくれる方が多かったのが嬉しかったですね。こういう芸人の企画って「どうせゲーム好きじゃないんだろ?」という斜に構えて見ている人も多いんですよね。そういう人たちに叩きに入られるとこちらとしてもモチベーションが下がってしまうので、それは避けたかったんですけど、実際には応援して下さる方が多くて、「あ、これはやっていけるな」という感触は得られましたね。

――なるほど。ちなみにTV番組ですと、何十万何百万人の方が観るわけですけど、Web配信だとなかなかそこまでは行きませんよね。現時点だと数百ビューぐらいですが、「少ないなー」というガッカリ感はないのですか?

浅井氏:いやいや、最初からそんなに観られると思ってやってませんから。楽しくゲームやれればそれでいいと思ってますので、視聴者数が30人40人でも、「おーこれを40人も観てくれてるんだー」って感じですよ。最終的に1,000人ぐらいの方が観てくれればいいかなと思っています。

――わかりました。それでは最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

浅井氏:ゲームを遊ぶ楽しさを思い出して欲しいなと思っています。以前は徹夜してまでゲームを遊んでいたのに忙しくなってやらなくなったお父さんとかにもぜひ配信を見ていただいて、楽しかった子供時代を思い出していただいて、またちょっとゲームを買って遊んでみるとか、ゲームをはじめるきっかけになってくれればと思っています。

【浅井企画ゲーム部】
eスポーツを見てワイワイ楽しむ。ここに着目した浅井企画は、いかにも人びとに笑顔を提供する会社らしいと思う

――榎本さんには、GALLERIA GAMEMASTER CUPについて質問させて下さい。第2回 GALLERIA GAMEMASTER CUPは、優勝すると2つの国際大会に出場でき、かつ2位と3位のチームには国際大会のひとつであるeXTREMESLANDへの現地観戦権が与えられるという異色の内容になっています。第1回からの違い、今年の狙いについて教えて下さい。

榎本氏:前回から世界を目指す大会ではありました。前回は3タイトルで大会を行ないましたが、複数タイトルだとハンドリングが難しくて、IPホルダーさんとの話し合いをした結果、我々のビジョンに対してもっとも共感を示してくれたのが「CS:GO」でした。そこで今年は「CS:GO」1本で行こうと決まった時に、ちょうど「IeSF」のほうからJeSUへの問い合わせが来たんですね。

 JeSUへ「CS:GO」の日本代表をこの期間で選んでくれないかと依頼が来て、IeSFとしてはJeSUが公認してくれるんなら選び方は任せるということだったんですが、JeSUとしては日本代表を選ぶからには予選大会をやりたいと、それで我々にお声がけを頂いたという流れです。

 我々は、東アジア大会日本予選をショートタームで協力させていただいたという実績がありますから、「榎本さん、こういう話があるんですけど、協力いただけませんか?」と依頼が来たとき、「我々はGGCを準備していますから、せっかくだからダブルカップにしますか」と逆提案をしました。それぞれの国際大会は主催が違いますから、当然それぞれに許可を取らなければなりませんが、交渉して問題ないというお墨付きをいただきました。優勝チームはパンパシ(パンパシフィック水泳選手権)と、世界選手権の両方に出場できる、という話ですよね。

【IeSF】
IeSFはInternational e-Sports Federationの略で、国際eスポーツ連盟。JeSU(日本eスポーツ連合)も加盟している

――まさに日本代表という考え方ですよね。

榎本氏:そのとおりです。国際大会が2つあって、それぞれ別のチームが行くというのはなんか変じゃないですか? ですから1チームがその両方に行くという形にしました。ただ、1チームだけに栄誉、名誉が集中するのも何だなあと思って、2位と3位のチームに対しても賞品を用意しました。eXTREMESLANDの観戦枠です。国際大会に行って現地で観戦できる権利を贈れば、選手達のモチベーションも上がるかなと思いまして。

 「どうせ勝てないから出ても意味がないよ」となってしまったら盛り上がりません。「優勝は無理でも2位や3位なら目指せるかもしれない」と思ってもらいたい。やっぱり、私たちはeスポーツで夢を与えたいんですよね。頑張ったことに対するご褒美といいますか、「どうせ」とか始まってしまうと参加意欲が薄れてしまいますから、それでは試合が盛り上がらない。万人にチャンスがあって、負けても夢が得られる、そういうものであって欲しいなと思ったんですね。

【第1回GALLERIA GAMEMASTER CUP】

――今大会はどんなチーム、どんな選手に参加して貰いたいと思いますか?

榎本氏:まったく無名で、ド新人で、「こんなうまい選手がいたの?」みたいな。日本の「CS:GO」チームには強いチームがいますけど、彼らを脅かすような存在が出てくれるといいなと思いますね。世代交代を促すような若い力の台頭に期待したいです。

 それからやっぱり多くの人に参加して貰いたいです。1年前よりもeスポーツは確実に盛り上がっていますし、去年は知らなかったけど、開催されてその存在を知ったという人もいるでしょうしね。大会に参加して、試合を観戦して、やっぱりeスポーツっていいなと感じてくれて、また来年頑張ってくれればいいなと思いますね。

その涼やかな風貌と、素晴らしい実力で、GALLERIA GAMEMASTER CUPの台風の目となったSCARZ AbsoluteのLaz選手。今年も新たなスターの登場に期待したい

――では、最後にeスポーツファンに向けてメッセージをお願いします。

榎本氏:サードウェーブとしてはこの大会に限らず、eスポーツの普及のために色んな層へのアプローチを続けていますので、GALLERIA GAMEMASTER CUPは世界に繋がる、まさにプロに近い大会です。ぜひ上を目指すために参戦していただいて、ここから日本のeスポーツ界をリードするような人材が育ってくれればいいなと思っています。

――期待しています。ありがとうございました。

浅井企画とサードウェーブの取り組みに今後も期待したいところだ